新185『岡山の今昔』岡山から総社・倉敷へ(備前の干拓、児島湾、近世~戦後)

2022-02-12 19:01:20 | Weblog
185『岡山の今昔』岡山から総社・倉敷へ(備前の干拓、児島湾、近世~戦後)


 さて、近世もかなり大詰めになっての江戸時代の後期まで、封建時代の生産関係の下で基本となる生産力のは発展は、およそ次のような推移をたどったようである。

 「1661~1670年代の貢米(単位は100石)は1992、1665年の人口(単位は100人)は2472。1671~1680年代の貢米(単位は100石)は1908、1679年の人口(単位は100人)は2442。 1721~1730年代の貢米(単位は100石)は1821、1721~1726年の人口(単位は100人)は3418。1751~1760年代の貢米(単位は100石)は1878、1750~1756年の人口(単位は100人)は3243。1781~1790年代の貢米(単位は100石)は1831、1786年の人口(単位は100人)は3216。 1861~18706年代の貢米(単位は100石)は1738、1872年の人口(単位は100人)は3319。(山崎隆三「江戸後期における農村経済の発展と農民層分解」、岩波講座日本歴史12・近世、1963.12に所収)

 さらに、戦国・近世からの干拓の延長線上にあるのが、現在の児島湾の西の端、湾奥には締切堤防の建設なのであって、その西は児島湖となっている。岡山県岡山市南部の児島半島に抱かれた児島湾中部に位置し、江戸時代以来の干拓でやや縮小していた地帯である。
 この堤防建設を計画したのは農林省で、土地改良事業として、1951年(昭和26年)に着工する。この事業の中身は、児島湾干拓地の水不足解消と灌漑(かんがい)用水の供給が主目的。つまり、農業用水の確保が本命であったらしい。用水確保のほか、塩害・高潮被害の除去などの目的も含まれていたという。
 計画では、総延長1558メートル、幅30メートル(現在の岡山市南区築港から同区郡(こおり)まで)をつくる。これに沿って工事が進み、1959年(昭和34年)には潮止めが、1959年(昭和34年)には完工となる。こうして、淡水湖としての児島湖が誕生した。
 この人工湖の面積は10.9キロ平方メートルで、ダム湖を除いた人造湖としては建設当時世界第2位、ただし水深は浅い。笹ヶ瀬川(ささがせがわ)と倉敷川、妹尾(せのお)川などが、これに流入する。これらから流入する水、土砂などによって湖水の汚染が進んでいるともいわれるが、この締切堤防は岡山市中心市街地から児島半島東部への短絡路線にもなっていて、このあたりの人びとの交通の利便の役割も果たしている。

 こうして海を仕切って我が国において最初にできた児島湖なのだが、その後の展開でいうと、やはり湖沼法との関連で岡山県にスポットが当てられるようになったことではないだろうか、そのことは、環境行政に詳しい由比浜氏により、次のように語られている。

 「国の責任官庁が不明では、県が浄化事業を実施しようにも補助金申請先がない。したがってこれまで県が実施できたのは工場などの排水規制指導、河川への清水導入、流域下水道建設、合成洗剤問題PRなどであった。
 1985年(昭和60年)暮れに湖沼法が制定され、県は水質保全計画を翌年春にまとめ、国と協議のうえ、全国に先がけて1987年(昭和62年)に計画決定をみた。1985年度(昭和60年度)のCOD10ミリグラム/リットルを5年間で8.8ミリグラム/リットルにまで改善する目標で、下水道整備、底泥凌渫(しゅんせつ)、排水対策等々を講じようというのである。目標達成自体、大変な努力を要するし、流域下水道は第一期工事が完成しても流域の一部をカバーするにすぎず、加えて処理場からの大量放水を湖沼・湖外のいずれに行うのかは地元との大争点である。
 1987年(昭和62年)5月に農林水産相は農林水産省を児島湖管理者とし、管理を岡山県に委託する旨決定した。農林水産省所管ということは、土地改良法にもとづく事業が主体となる関係上、委託を受ける県側の主役は水質保全課ではなくて耕地課である。そのため、どこまで環境改善が達成されるか不安がる向きもある。しかしともあれ、行政として児島湖問題に取り組む体制ができたといえる。」(岡山大学教授・由比浜省吾「大干拓の歴史と再生への努力ー児島湖」ー「日本の湖沼と渓谷11ー中国・四国、宍道湖と帝釈峡・祖谷渓」ぎょうせい、1987に所収)

(続く)

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新♦️930の1『自然と人間の歴史・世界篇』グローバル資本主義における所得分配(おおよその見当)

2022-02-12 09:50:49 | Weblog
930の1『自然と人間の歴史・世界篇』グローバル資本主義における所得分配(おおよその見当)


 2022年2月現在、新型ウイルス感染拡大は、まだ、止まっていない。同時にこの問題は、現代世界で、一部を除いて支配的な社会経済体制である資本主義の運営や仕組みにも、大いなる課題や疑問を投げかけている。

 例えば、2020.10.3のNHKのBSニュース(フランス放送局発の部分)によると、「フランスでは、救援センターの利用者が3月以来3倍に増えています」とのこと。
 同センターは、食事に事欠いている人々に食べ物を無料で提供する活動をしており、フランスでは新型コロナウイルス下で貧困者が増大していることからこのような急増になっている、と分析している。

 このような話はいま、世界のいたるところで、その有効性がわかっていても行われていないか、目指されていたり、様々なかたちで行われているところなども散見されよう。

 それにしても、この問題はその発生からすでに10か月目を迎えつつあり、その根は深く、新型ウイルス感染拡大は、各人の「命の値段」にも波及してきているのではないだろうか。

 ついては、かかる新たなかたちでの貧困、「社会的弱者」などへの経済的なしわ寄せがなぜ避けられていないのか、しかも、そのような社会になっている根本的理由をあきらかにしようとの取り組みは、まだそう多くないように感じられる。
 ここでは、そのような取り組みの一助として、資本主義社会における所得分配の階級的性格について、すこしなりとも、「なぜそうなっているのか」を中心において考えてみよう。

 所得が増加(減少)するにつれ人々の消費の割合が減って(増えて)いくのは改めて証明を必要としない自明の事柄だと言われる、はたしてそれは心理法則であろうか、いや、そうではないと考えられよう。
 その理由は、同じ「所得」でも労働者の所得と資本家の所得ではそのあり方が異なるからだ。

 いま貯蓄をS、労働者の所得をW、資本家の所得をP、労働者と資本家の所得に占める貯蓄の割合をそれぞれsw、spとすると、Sは両方の所得の合計したものなので、次式が導かれよう。

S=swW+spP  ①
さて国民所得はY=W+Pなので、①式をこのYで割ると、

S/Y=sw+P/Y(spーsw)  ②
この式においてS/Yは国民経済全体に占める貯蓄の割合(貯蓄率)、
P/Yは資本分配率。

 ここで資本家の貯蓄率(sp)は労働者の貯蓄率(sw)より大きいと考えられることから、国民所得の分配問題とは優れて階級的な問題であることが分かる。

spーsw>0  ③


 もちろん、これには「資本家の貯蓄率(sp)は労働者の貯蓄率(sw)より大きいとは思わない」との反論が出されるかもしれない。


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 次は、現代の多くの人々が日頃大きな値の方がよろしいという評価をしている経済指標の中から、国内総生産と労働生産性を中心に、それらの相互関係を考えてみよう。

 粗国民国民所得、経済成長、労働生産性などの関係式について(拙ホームページから転載)

 まずは、数学公式z = xyの中の変数x,yについて、{(x+Δx)+(y+Δy)-xy}/xy=Δx/x+Δy/y+ΔxΔy/xyとなり、Δx,Δyが十分に小さいときは最後の項を無視できてΔ(xy)/xy=Δx/x+Δy/y(2変数の積による合成関数の変化率式)となる。

 上記の変化率の公式を導き出すには、z=xyの対数をとって(logz=logx+logy)、両辺を微分してもΔ(xy)/xy=Δx/x+Δy/yを導ける、その導出方法はこうなる。
log z = log xy
log z = log x +log y
両辺を微分して
Δz/z= Δx/x + Δy/y
Δ(xy)/xy = Δx/x + Δy/y
よって、2変数の積による合成関数の変化率式が示された。

ただし、
Y=L・y:(4.1)
Y:粗国民所得
L:生産部面の年間平均労働者数
y:平均労働生産性(生産部面の平均労働者数で粗国民所得を割ったもの)
(4.1)式を微分して変化率をとると、
△Y=L・△y+△L・y+△L・△y
右辺の3項目目は微小数なので省略して、
△Y=L・△y+△L・y:(4.2)
(4.2)式を(4.1)式で割ると、
△Y/Y=△y/y+△L/L:(4.3)
粗国民所得の成長率△Y/Yを=r(アール)、労働生産性の向上率△y/yをα(アルファ)、雇用の増大率△L/Lをβ(ベータ)とおくと、
r=α+β:(4.4)
次に、人口一人当たりの粗国民所得(Z)の増大率に対する雇用の増大と労働生産性の向上をみる。一国の総人口をN、人口の自然増加率をλ(ラムダ)=△N/Nとおくと、
Z=Y/Nの変化率△Z/Zは、(4.4)式を動員して
△Z/Z=(△Y/Y)/(△N/N)=r-λ=α+β-λ:(4.5)
この式から、労働生産性の向上率が大きいほど、雇用の増大率が大きいほど、人口の自然増加率が小さいほど人口一人当たりの粗国民所得(Z)の増大率は大きくなる。この中の雇用の増大が賃金上昇に通じて資本の利潤増大を脅かすのであれば、資本家が利潤のために一番に取り組もうとするのは、労働生産性の上昇による利潤の増大ということになる。

 一方、労働生産性に一番に寄与するのは、資本装備率であって、それは生産関数に表される。

(この後、追加予定)

 しかして、労働生産性向上の要因については、次に列記するように様々ある。

(1)技術的生産条件、労働の技術装備度(労働者定員一人当たりの固定生産価額)
(2)労働者の熟練度、専門的知識、生産上の経験
(3)労働と生産の組織形態
(4)生産の集約度
(5)自然的条件
(6)国民経済の構造変化へのシフト
(7)生産条件の動的要因(エネルギーなど)
労働生産性は、大まかに技術的要因と非技術的要因とに分かたれる。 
(1)技術的要因(労働の技術装備度の引上げなど)
(2)非技術的要因(基本的に投資要因以外)


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ハロッドの経済成長率に関する見解について

 経済成長の推進力はどの要素に依存するのだろうか。というのは、ケインズが扱ったのは短期(生産力、すなわち生産設備が一定と仮定)であったので、中・長期スパンでみた場合の供給面の増加は考慮に入っていなかった。
 とはいえ、財・サービスの生産が拡大するためには、需要と供給がともに増大することでなければならない。前者は、消費と投資(閉鎖体系でいうと)を増やせば増加するのだが、供給は、労働や資本を増やし、技術進歩があれば増加する。あわせて、需要の一部である投資は、資本に追加されることにより資本ストック(K)を増加させ、そのことをもって供給能力の増大をもたらすのが知れている、これを「投資の二重性」と呼んでいる。
 そこで、イギリスの経済学者ハロッドは、この投資の供給能力増大効果に着目して、ケインズ理論を基礎とした独特の成長理論を構築しようとした。

 これについては、現実成長率(G)、保証成長率(適正成長率)、自然成長率の3つから成り立っている。
 まずは、保証成長率の導出(資本を完全に利用した場合の均衡生産量の成長率)
は、次のとおり。

1、「財市場」が均衡しているときの経済成長率を「保証成長率」(Gw:warranted rate of growth)という。この「保証成長率」(Gw)が達成する条件は、「貯蓄率」(s)と「資本係数」(ⅴ)で表すと次の形になろう。

Gw = s/v (保証成長率=貯蓄率/資本係数)

ここに「Gw = s/v」の導出のために、単純化して、政府部門と海外部門がないと仮定して、話を進めていく。
財市場の均衡条件は、「Y=C+I」と「Y=C+S」より、次の形になる。

(財市場の均衡条件)
I=S ・・・①

「貯蓄」は「国民所得」に依存すると仮定しよう。そして、この関係を、「貯蓄率」(s)を用いてあらわすと次の形になろう。

(貯蓄関数)
S=sY ・・・②

2、次には、①に②を代入すると。

I=S=sY ・・・③

次に、「投資」(I)について考えてみよう。

「投資」とは、「生産」をおこなうために生産要素を投入すること、ここでは、「資本」を増やすことであると考えよう。

「資本」(K)の「変化分」を「⊿」であらわすと、次のとおり。。

I=⊿K ・・・④

ここで、「資本係数」(v)について考えよう。

「資本係数」とは、生産量1単位当たりに必要な資本量、これを式でいうなら、「資本」(K)と「国民所得」(Y)から、次の形であらわされる。

ⅴ=K/Y

これを変形すると、こうなる。

K=ⅴY

ここで両辺の変化分をとろう。

⊿K=ⅴ⊿Y ・・・⑤

3、
⊿K=ⅴ⊿Y ・・・⑤

これを、④(I=⊿K)に代入しよう。

I=⊿K=ⅴ⊿Y ・・・⑥

これを、③(I=S=sY)に代入すると

sY=ⅴ⊿Y ・・・⑦

これを整理すると、こうなる。

⊿Y/Y=s/v ・・・⑧

この「⊿Y/Y」は、国民所得の変化率、つまり「経済成長率」となっている。
この式では、「財市場の均衡」が達成されている状態で求められたもの、だから、この経済成長率は「保証成長率」(Gw)となる。

ハロッドの自然成長率(資本が完全に利用されているばかりでなく、労働人口の増加、技術進歩が完全に吸収されている場合の成長率。この成長率においては、ケインズのいう非自発的失業は存在しないことから、完全雇用成長率とも呼ばれる。)


4、固定資本減耗を入れるとどうなるだろうか。ここまでは、単純化のために、機械や設備などの「固定資本」の価値は低下しないと仮定して話をしてきた。だが
もし、このような価値の低下(固定資本減耗)がある場合を仮定すると、「保証成長率」(Gw)は次の形になろう。
Gw = s/v-資本減耗率
つまり、機械や設備が古くなる分だけ、成長率は低下すると考えている。
そこで、あらたな概念を考えて、

「労働市場」で「完全雇用」が達成されている「自然成長率」(Gn)は次の形になる。
Gn = 労働人口増加率
これは、「労働人口が増加した場合、同じ比率で経済が成長すれば、失業は発生しない」ということをあらわしている。
「技術進歩」があると仮定すると、「自然成長率」(Gn)は次の形になる。

5、
技術進歩」があると仮定すると、「自然成長率」(Gn)は次のとおり。。

Gn = 労働人口増加率 + 技術進歩率

 これを評して、労働人口の減少は「技術進歩」でおぎなうことができる。どちらかというと、経済成長率の最大要因は、技術進歩による労働生産性の上昇ではないか、というのであろうか。

最適成長条件

これらをまとめると、「最適成長条件」(Gw=Gn)は次の形となる。

  s/v = 労働人口増加率 

「資本減耗」と「技術進歩」がある場合は、次のようになろう。

s/v-資本減耗率 = 労働人口増加率 + 技術進歩率

6、ハロッドの提唱した3つの成長率の総括としては、次のとおり。

 こちらは、不安定性原理と呼ばれている。

 ここにあげた「貯蓄率」(s)、「資本係数」(v)、「労働人口増加率」の3つは、それぞれ別々に決まる値だとされている。
また、「ハロッド=ドーマー・モデル」では、「資本係数が固定的」と考えている。ついては、最適成長の条件である「s/v=労働人口増加率」の関係が成り立つような値が見いだせるかどうか。
 また、たとえ最適成長の状態にあったとしても、いったんバランスが崩れるとなかなか回復しにくいことも考えられている。このように「ハロッド=ドーマー・モデル」では、最適成長は「達成しにくい」ことを説明する。このことを、「不安定性原理」(ナイフエッジ原理)という。

 この関係について、教科書的には、例えばこう説明されている。
 「ハロッド成長モデルの基本的な考え方は、すでに説明した国民所得は投資の増加分に限界貯蓄性向の逆数を乗じたものだけ増大するという乗数理論と、所得の増加は新たな投資を誘発するという考え方を理論化した加速度原理の2つを結合したところにある。
 ハロッドは、3つの成長率概念、すなわち現実成長率、適正成長率、自然成長率を使って、これら成長率の相互関係から経済成長の不安定性を明らかにしようとした。これは、前章でも少しみたように彼の不安定原理(アンチノミー理論)として有名である。」(小渕洋一「イントラダクション経済学」多賀出版、1990)

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(続く)


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