晴、5度、71%
福岡市の中心部、福岡城址に隣接してお城の外堀の延長のようにあるのが大濠公園です。周囲2キロ、中国の西湖を模して作られたとも言われる中之島がある景観のいい公園です。周囲には能楽堂、市立美術館、アメリカ領事館、NHKの放送センターがあります。お濠では、 スワンボートも乗れるようです。私が福岡にいた頃は普通のボートでした。
この大濠公園、いい思い出がありません。小学校3年の時に福岡で初めてできたスイミングスクールに入れられました。小学生は私一人、私学の中高校の水泳部が主体でした。温水プールもあるのですが、冬の間は日本人独特の持久走で体を鍛えるといってこの大濠公園を早朝走らされました。長距離走るのは大嫌いでした。父が家から大濠公園まで車で送ってくれ、ここから学校までまた車で送ってくれるという生活でした。走りたくないので中之島をゆっくり木に隠れながら歩きました。つまり、大濠公園が好きではありません。
香港で走り始めて、20年。よく書きますが、香港島のボーエンロードを走りました。20年間同じ道でした。野生の獣にも出会う都会の真ん中とは思えない道でした。帰国することを決めて以来、はて福岡ではどこを走ろうかと思案します。我が家は四角に位置し、東西南北どこにでも向かって走れます。どうも治安が香港より心配な福岡ですので、都心に向かうことにしました。しかも、陽が出てから走り始めます。幹線道路沿いを走りましたが、距離がいまひとつ伸びません。そこで思い出したのが大濠公園です。一周走れば距離が増えます。
大濠公園も走る人がいっぱいです。近くの高校の生徒たちも混じっています。皇居や神宮のランナーのような派手な服装は見られません。普通にジャージで走る人が多く馴染みやすい大濠公園です。私は香港では長袖や長いスパッツを履くことがほとんどなく走っていました。日本より10度近く気温が高いからです。帰国前、走るための防寒用の衣類を買い揃えました。
大濠公園をルートに入れてから3週間ほど経ちます。小雪がパラリと降ったこともありました。途中は住宅街を走り抜けます。道の掃除をする人、生徒のために緑の旗を持つ人、みなさん挨拶してくださいます。日本って、平和な国だと感じます。
中之島の東屋です。小さい頃と違って中之島で近道などしません。走りやすい道路設計がされています。
快晴の日にはこんな景色を見て走ります。高いビルなど一つも見えません。つい先日までビルばかり見て走っていたのが嘘のようです。
私が小さい頃は、このお堀の水位は博多湾の干満に左右されていました。昨今埋め立てが進んでいます。今も水位が変わるのかしらと思いながら、朝日を映す水面を見やります。気持ちのよい空間です。同じところを走るのが苦手なので、一周で切り上げて家に向かいます。この景観から、1日のエネルギーをもらっています。 お堀端の柳の芽も膨らみ始めました。大濠公園の四季の移ろいをお届けできると思います。
走るのが嫌だった子供の頃から半世紀、変われば変わるものです。朝日を見ながら、あと10年走りたいと欲張ります。