チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「小さな建築」隈研吾

2024年08月23日 05時10分22秒 | 

晴、30度、82%

 建築物、大きいもの小さいもの、新しいもの古いものどれも興味深く観ます。公共の建物、商業施設、民家、私はどれもに建てた人の反映を見ます。

 2013年に発行の「小さな建築」、隈研吾の本です。建築の歴史は大きな自然災害を契機に発展、変化を遂げているという視点で書き進められています.そしてご自分の美観でしょうが、大きな建築は醜いと書かれていました。隈研吾の建造物は確かに大きさを誇るものではありません。2013年という年でお分かりかと思いますが、2011年の東北地震がこの本を書くきっかけだったのではないかと想像します。

 昔は大火災で街が焼け野原になりそこに人間は次々に大きな建造物をつくりました。それは東京に限ったことではなく、パリやニューヨークでも同じだそうです。大きさを競う根元には建築素材のコンクリートや鉄材の量産が貢献します。建築家は大きさ、形、外観に奇抜を好むように思います。そこは「小さな建築」という隈研吾も同じです。「大きな建築」の中にある「小さな建築」は目を惹きます。隈研吾の建築の本は素人の私にも読みやすく、いつもたくさんのことを教えてくれ「建築物」への思いが深まります。

 振り返って自分住むこの家を見ました。築100年近く、耐震設計なし。床下に潜れば柱の基盤は「石」です。屋根裏に入れば大小の「梁」が釘を使わずに接続されています。地震が来ればペシャッと潰れそう、火事に遭えばすぐに燃えるでしょう。「小さな小さな建築」です。

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「はじまりの谷」丸橋賢

2024年08月21日 05時09分54秒 | 

晴、31度、76%

 新聞の新刊の紹介で気になる本がありました。本屋に行かなくなって数年、プチンと押したら翌朝、ポストに入ります。

 作者は80歳で初めての文壇デビュー、昭和の初め頃の上州の山間の話です。小学校に上がる前の少年と村の老人との交流が描かれています。この本を手に取りたいと思ったのは、「昭和」の匂いを嗅ぎたかったからです。「昭和」の山の暮らし、人の営み。AI、ジェンダー、スマホなどが出てこない「昭和」の話を読みたいそんな気持ちでプチんとしました。

 動物の生死、子供から見る大人の穢さ、老人の動かない大きさに支えられ少年が成長して行く七話の短編集です。作者丸橋賢さんは歯科医師だそうです。ご自分の専門分野の本も出していらっしゃいます。文芸作品はこの本が初めて、そんな作者の背景も本には大事な要素です。主人公の少年にご自分を重ねる、いえ、当のご本人の思い出かもしれないと読みました。いい話です。ところが上州の自然も少年の心の動きも何か一つ迫ってくるものがありません。香り、匂いが伝わってこないのです。山を抜ける風の音も動物の小さなうめきも、耳に届かない。全て描かれているのに彷彿とさせるものがありませんでした。失礼ですが、持っているののを表す言葉が素直過ぎるのだと思います。

 本の帯に「映像化」と書かれていました。映画になった「はじまりの谷」を想像します。上州の山の緑、野生の動物、少年、老人。やっと私の中でこの「はじまりの谷」が色付くのを感じました。

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「MAD HONEY 」ジュディ・ピコー

2024年08月17日 05時15分23秒 | 

晴、28度、82%

 日本でジェンダーというと男女差をなくす、また「同一性結婚」などが取り上げられますが、もっと奥の深いものがあるのを知りました。男の子に生まれながら「男性」であることを受け入れられない、そして「女性」であると信じて「性転換手術」で「性」を変えることがあるのは知識では知っていました。アメリカやタイではそうした「トランス」と呼ばれる人たちが多いそうです。一見、女性に見えても元は男性。男性に見えても元は女性。「性転換手術」は身体を作り変えます。女性に転換した場合は子供が産めないと言うだけの身体を作るそうです。

 女性の身体になった「トランスジェンダー」の女の子が死体で見つかりその交際相手であった男の子が犯人として疑われる話です。殺されたとされる「トランス」のリリー、犯人と疑われるアッシャーの母の二人の追憶形式で話が進みます。「サスペンス」とこの本はカテゴリー分けされていますが、裁判シーンも多く最後に犯人が分かるまで一気にストーリーの展開の面白さを味わえました。

 日本は社会体質から「性」のことは伏せてしましがちです。アメリカも自分から「トランス」だと言う人は少ないそうです。アメリカやタイでは数の多さは日本の比ではないはずです。実際に自分の「性」に悩んでも「性転換手術」にまで及ぶ人が少ないのかもしれません。今後日本も「トランス」と呼ばれる人が表立ってくるような気がします。

 ジュディー・ピコーはずっと気になっていた作家です。彼女の最新作がこの「MAD HONEY 」です。かなりの数の著作があります。日本でも数冊翻訳が出ています。「MAD HONEY」は最新作、和訳が出るかどうかわかりません。昨日のランダムハウスのベストセラーでもこの本が紹介されていました。 

 国が違っても人間であることに変わりはありません。「ジェンダー」「トランス」のことが日本でも取り沙汰される日が近いように感じます。この物語、主人公のアッシャーもリリーもまだ10代です。その設定も「ジェンダー」の悩みを抱えてるからこそだとわかります。サスペンスとして読めば筋立ての良い話でした。

 ジュディ・ピコーの旧作が届くのを待っているところです。

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カズオ イシグロ「THE SUMMER WE CROSSED EUROPE IN TAHE RAIN」

2024年05月22日 05時03分18秒 | 

曇、19度、89%

 4月30日、カズオイシグロの新刊が出ました。予約注文の時、いつもと表紙の感じが違うなと思い到着を待っていました。

 届いた本をめくると、イラストと詩で構成されています。カズオイシグロがアメリカのジャズシンガー「ステイシー ケント」に作り送った「歌詞」16編が収められています。彼がステイシーに歌詞を書き送ったのは数年前、ステイシーは贈られた詩のいくつかをレコーディングしています。イシグロの本に先立って、「ステイシー」の新しいアルバムが発売されています。 全ての歌詞が「カズオイシグロ」による16曲です。

 「カズオイシグロ」の本を初めて手に取って30年以上経ちました。今でも香港のアイスハウスストリートにあった洋書店で日本人の名前の背表紙を見た時の感動が忘れられません。求めたのは邦題「日の名残り」でした。彼の本は全て読んでいます。ノーベル賞を取ってからは馴染み深い作家になりました。「カズオイシグロ」は音楽家になりたかったと何かで知りました。作品の隅々に「音楽に造詣がある」と感じます。数年前には黒澤明の「生きる」をリメイクした映画も作っています。イギリスに舞台を写したこの映画も素晴らしい出来でした。「カズオイシグロ」は映画にも精通しています。

 この数日、「ステイシー」の歌声を聞きながら、「イシグロ」の書いた歌詞を読み直しました。ステイシーの細い歌声、心地よく響きます。映画「カサブランカ」を下地に書いたと思われる歌詞、フランスの男優「ジャンギャバン」を歌った歌詞、映画「インドシナ」の「カトリーヌドヌーブ」を歌った歌詞。それぞれを彷彿させる歌です。本、レコードの題名は雨のヨーロッパを旅するとなっていますが、日本の「新幹線」を歌い込んだものも入っています。

 翻訳が出るのかどうか?わかりませんが、「ステイシー」の歌声と共に「カズオイシグロ」の歌詞を読んでみてください。珍しく晴れた天気が続きました。雨のヨーロッパではありませんが、余情ある歌の数々でした。

 

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「おさんぽステッチ」エルメスの絵本

2024年03月13日 05時02分48秒 | 

雨、8度、75%

 ここ半月、久しぶりに針を持ってチクチク。親指の力が若い頃のようにしっかりしていないので歩みの遅いチクチクです。 針を持つのが好き、雨の日が多いので針を持つと尚更落ち着きます。

 刺し掛けの大きな刺繍枠をテーブルに出したまま買い物に出かけました。本屋さんの前を通ると積まれたプロモーションの本の「ステッチ」の文字が目に飛び込んできました。絵本です。パラリとめくりました。改めて表紙を見ると「エルメスの絵本」と書かれています。あのエルメスです。立ち読みしました。

 革職人のおいじさんの元に「犬」が首輪を作って欲しいとやって来ます。その犬と一緒におじさんは散歩に出かけます。そこで出会う動物たちにおじさんはバックや帽子、服を作ってあげる話です。表紙の色は「エルメス」のハウスカラーのオレンジ、作者は「100%ORANGE」フランス人かな?本屋の店先で調べたら、日本人のご夫婦のイラストレーターだとわかりました。「おさんぽステッチ」は日本のエルメスが作った本でした。ちょっと迷いましたが家に持ち帰りました。

 珍しく本屋で本を買いました。本を抱えて家に向かう気持ちは最高です。家に帰って刺繍道具散らかったテーブルで一番好きなシーンを開けました。 おじさんと「犬」は散歩の途中でペンギンに会い、おじさんはペンギンにスカーフを作ってあげます。空を飛ぶためのスカーフです。この絵が好きです。流氷が浮かぶ海の周りにペンギンの模様。「このスカーフが売り出されたら、買いたい!欲しいな、このスカーフ。」このページを開いたまま、チクチクと刺しています。

 「犬」はおじさんのお店を手伝うようになりました。 そしておじさんはこの「犬」に「ステッチ」と名前をつけました。

 何のことないお話ですが「ペンギンのスカーフ」が気に入って買ってしまった「エルメスの絵本」です。裏表紙は布張り、エルメスらしいこだわりです。エルメス好きな友人にこの本の話をしました。この続編でそれぞれの動物の話が出版されているとのことです。友人も探しているけど「エルメス」の直営店でしか売られていず、すでに完売だそうです。ペンギンの話の続きが読みたいと思いますが、思い続けていると手に入るものです。本よりも「ペンギン柄」のスカーフが欲しい。

 

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「冬に子供が生まれる」佐藤正午

2024年02月08日 04時59分33秒 | 

雨、5度、85%

 佐藤正午の7年ぶりの本「冬に子供が生まれる」を読みました。7年前、帰国後最初に読んだ日本の小説は確か佐藤正午の「月の満ち欠け」でした。岩波文庫に現代作家、しかも現存の作家の作品があることに驚いて手に取りました。後で知ったことですが新しい岩波書店の社長の英断だったそうです。

 宗田くんのスマホに一通のメッセージが届きます。「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」このシーンから始まる話です。一日足らずで一気に読み上げました。UFOを見た子供たち3人と一人の女の子の小学から40歳近くになるまでの入り組んだ人生、常識からは外れるけれどあり得るかもしれないと思わせる佐藤正午独特な世界です。読み進めて行くと誰の目から見た話なのかと?訝りました。どこかに目があるのに誰の目だか分からずにいました。宗田くんたちの中学校の教諭の目線が途中で明らかにされます。最後はその70歳近い教諭がこの物語をパンデミックの間も書き進めていたと、教諭に佐藤正午自身を被せます。

 結末がない話です。読み終えた人は、それぞれに自分がこうあって欲しいと思うように仕上げられています。ああでもない、こうでもない、ご自由に。それが余韻を作ります。人の心の中の暗い部分を垣間見るような話でした。でも、後味は悪くない。

 一気に読めたのは、福岡は毎日雨、それとこの本を開くとわかるのですが、仮名遣いが読みやすくできています。漢字が圧倒的に少ない本でした。

 雨の日に家で古い映画を見るのもよし、新刊の本を読むのもよし、雨は人の心に何かを呼び起こすように思います。

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「山の上ホテル物語」常盤新平

2024年01月20日 05時07分16秒 | 

雨、11度、80%

 東京お茶の水にある「山の上ホテル」、戦後にできた小さなホテルです。山と付きますがお茶の水界隈はなだらかな丘陵です。その小高い丘陵に立つホテル、戦後の作家たちが「かんづめ」と言って締め切り間近になるとこのホテルに篭って原稿を仕上げた話は有名です。このホテルでの思い出をまたその作家たちは至るところで紹介してます。

 上京したての私はその昔、学校はサボってお茶の水界隈をよく歩きました。お茶の水の駅からだらだらと坂を下り神保町の古書店を覗くのが楽しみでした。当時は大学が3つほどありました。この辺りの街の匂いは古くからの東京の匂いだと感じていました。高校の時、大学の下見に上京した私を一回りほども歳の違う友人が連れて行ってくれたのが「山の上ホテル」のティールームでした。中に入ったのはその時一度だけです。

 作家常盤新平が書いた「山の上ホテル物語」2002年刊行の本です。時折急に興味を引くものが出てくると、本を検索してプチンとします。状態のいい古本が届きました。このホテルに出入りした作家たちの逸話を集めた本かと思って開きました。思いの外、このホテルを作った「吉田俊雄」の人となり、ホテルで働く人たちとの関わりを描いた本です。

 戦後ホテルを作り、今も100室前後のこじんまりしたホテルはそこにあります。大型のホテルが林立する東京で「吉田俊雄」が思い描いた真心のあるホテルは4代目社長として孫が引き継いでいます。「吉田俊雄」はどんな人だったか?一橋を出て旭硝子に就職、その後ホテルを起します。妻と共にホテルを拡張しつつ、「旅館の気配りとホテルの持つ快適さ」を伝えています。ホテルマン、いえ「ホテル屋」と自称していたようです。気配りがあり豪快で着る物にも気を配り、自分の下で働く人たちを大事に育てた人です。彼の元で働いた人たちの話でこの本はできています。

 50年近く前訪れたこのホテル、古い素敵なホテルだという印象でした。その後、アメリカの建築家「ウィリアムボリス」が作った建物だと知りますます興味が湧きました。本の中では「ウィリアムボリス」のことには触れられていません。ただ、アメリカ人が建てた物だと記述があります。

 食事が美味しいこともこのホテルの特徴だそうです。贅を尽くしたというのではなく、真からうまいものを出してくれるような気がします。ミーハーの私は泊まってみようとウェッブで予約表を開けました。ところが半年先まで満室状態です。日本に帰国して上京しても息子の家に泊まります。本も古本もプチンとして手に入れます。あるかないかわからず神保町の古本屋を一軒一軒訪ね歩く必要がなくなりました。検索してプチンで状態がいい古本が手に入ります。一昨年、この街を歩きたくて「お茶の水」駅におりました。駅も駅周辺もモダンに新しくなっていました。歩いて淡路町まで行こうと思っていたのですが、あいにくの雨、傘を持っていなかったので諦めました。大学は郊外に居を移しましたが、「ニコライ堂」や裏道は昔と変わらないのではと想像します。そして学校にも行かずこの街を歩いていた二十歳になる前の私のを思い出します。

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「日本の建築」隈研吾

2023年12月26日 05時29分04秒 | 

曇、5度、75%

 義母が亡くなって以来、本を読む気が起こりませんでした。じっと字を見つめていると気持ちも沈みます。先月末、新刊案内で建築家「隈研吾」さんの「日本の建築」を知りました。早速送ってもらいました。やっと本を読む気持ちになりました。「日本の建築」のページをめくったのは二日前ことです。一気に読み終えました。

 隈研吾さんという「木」の美しさを生かした建築物が頭をよぎります。「日本の建築」は戦前からの西洋建築家の系譜を辿って、対比をさせる形で描かれています。対比の対象は日本の西東、つまり京の建築と東京の建築の違いです。西の流れの建築家、東の流れの建築家。そしてそこに日本でも活躍した西洋からの建築家がどう日本建築を見つめたかを考察しています。

 本の初めご自分が建築家を目指したきっかけとなる「ブルーノ・タウト」の木の箱の話が出てきて、来日したタウトが日本建築の自然と結びついた美を喚起した話に進みます。世の中は世界中がコンクリートと鉄を使った建造物が「強い」建築物としてもてはやされていた時です。木と紙でできた日本建築は「弱い」ものとして対比されています。建築のことなどほとんど知らない私ですが、隈研吾さんの息遣いまで感じる文章に引き込まれて読み上げました。

 建材の「丸太」と「製材」、室町時代の「北山文化」と「東山文化」などの対比は私にも理解できました。柱の重要性、それをどう見せるかがまた建築家によって違うことも興味が湧きました。そして本の最後、隈研吾さんが今のような建築スタイルに至ったかが解き明かされています。「バブルの崩壊」です。それまで強い建築物を東京で作っていた隈さんでしたが、全くお仕事がなくなったそうです。そんな時、四国の山中の村の建物の改築を頼まれたことが「木」を使う建築への目覚めだと書かれています。

 鉄やコンクリートを使った「国立競技場」、強い建造物も設計されていますが、そのどれもに「木」の美しさをこれでもかというほどに見せてくださっています。大きな建築だけでなくすぐ隣にあるお店の建築にも手を染められ、これからどんなお仕事をなさるか楽しみな方です。

 「日本の建築」を読んで書きたいことがたくさんありました。メモまでして読みました。ご興味があればどうぞ手に取ってください。久しぶりに本に没頭した2日間でした。

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「The Well Gardened Mind」庭仕事の真髄 スー・スチュワート・スミス

2023年10月11日 05時53分55秒 | 

曇、18度、68%

 イギリス人の女性精神科医スー・スチュワート・スミスの書いた「庭仕事の真髄」,原題は「The Well Gardened Mind 」を読みました。作者のバックグラウンドも知らず、庭仕事の楽しさを書いた本だと読み始めたら大間違いでした。精神科医から見た庭仕事を歴史、精神科の治療、刑務所での受刑者の心の改善と多岐にわたる考察が書かれています。スーのご主人は世界的にも有名な園芸家だということです。

 遊牧民族が定住するに至った過程は高校の歴史でも興味あるものでした。定住して土地を耕す方が狩猟を続けるより間違いなく食べ物が手に入るという理由です。それが人間が土地を耕すようになる起源です。

 精神科医ですから「夢判断」で有名なフロイトのことにも言及されています。フロイトは生涯、庭を愛し手をかけていたそうです。オーストリアやスイスの彼の家の庭の様子は興味深く読みました。

 それ以上に驚いたのは戦争中にキャンプ地に庭を作った人の話です。食物ではなく花を育てたとのこと、戦地に花をという人の心和む話でした。アメリカでは刑務所の日課に庭仕事が組み込まれているそうです。物を育てる心、土に向かう気持ち、日の下で働くことが、受刑者に及ぼす大きな効果が書かれています。またニューヨークの貧困地区では公共の土地を庭として貸し与えることで地区の人たちの生活習慣、犯罪の発生を抑えているとの効果もあることがわかったそうです。様々な病気で入院している患者にも庭仕事、土を扱うことが精神的、身体の改善に成果を出すと書かれています。こういうことを一括して「園芸療法」というのだそうです。

 私自身30年庭のない生活から帰国後、庭仕事を再開しました。種を蒔き芽が出てくる様はいつも感動します。それが成長して花を咲かせる。、実をつける、種を取る、繰り返す作業を一年を通して日の下で土に向かいます。土、土地、強いては地球に向かっています。失敗もありますが一度の成功体験はその次を約束してくれるかのように感じます。

 難しい本でした。でも私の心に響くものがたくさん散りばめられていました。和訳の題名「庭仕事の真髄」はいただけない題です。もっと手に取りやすい題にすれば良かったのにと思います。作者の広範囲にわたる研究、参考文献の多さに驚くとともにその一端を貰えたことに感謝です。

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洋書探し 宮崎駿「きみたちはどう生きるか」

2023年09月18日 04時53分31秒 | 

曇り、24度、90%

 日本に帰国して一番困ったことは「洋書」の新刊、話題の本の情報が少ないことでした。丸善に行っても新刊は並んでいません。日本のAmazonでも新刊紹介はありません。Amazonのイギリス、アメリカに好きな作家登録はしています。その作家の新刊が出ると自動的に知らせてくれます。話題の本の情報を得るために試行錯誤しました。英語圏の出版社や本屋のウェッブサイトを登録しました。

 アメリカ・グロスターにある本屋は毎日その日の新刊や情報を知らせてくれます。先日のトピックスは本が映画になったものの新作情報でした。 右下、宮崎駿「きみたちはどう生きるか」が紹介されています。この夏、日本では映画も上映されていました。アメリカではクリスマスシーズンの映画のようです。日本人作家が紹介されると嬉しいものです。「きみたちはどう生きるか」に全く興味がなかったのに、英訳の本を見たら読みたいと思います。宮崎駿が書いた原作です。

  真ん中の本は、和訳も出ているアンソニー・ドーアの「すべての見えない光」です。11月にアメリカでは上映、ということは日本では来年の新作映画です。昨年読んだ原作「すべての見えない光」は読みながら映画になるなぁと思ったものでした。楽しみに待ちましょう。

 日本語の本は新聞などで情報キャッチができます。新刊に限らず古本も欲しいと思う本はネット検索で買い求めます。私は帰国以来ほとんど本屋へ行かなくなりました。小さい頃からあれだけ好きだった本屋です。何時間でも立ち読みしていました。孫娘に本を買う時、たまに本屋へ出かけます。蔦屋を除くと、雰囲気のいい本屋が少ないのも事実です。その蔦屋ですら本より雑貨を見て回る始末です。

 それにしても便利になりました。プチンひとつで海の向こうから新刊が10日ほどで飛んで来ます。中には送料無料も、ありがたいことです。

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