MAKIKYUのページ

MAKIKYUの公共交通を主体とした気紛れなページ。
初めてアクセスされた方はまず「このページについて」をご覧下さい。

中国鉄路乗車記:G117次(乗車日:2012年7月13日/CRH380A)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は列車乗車日を記事投稿日扱いとして、後日公開したものです)

MAKIKYUは7月に久々に中国を訪問した際には、出来れば北京到着後に列車で武漢へ抜け、その後武漢~広州間高速鉄道に乗車して華南へ向かい、その後華南から列車で上海周辺へ…という大まかな計画を立てており、ダメなら北京から上海まで、本数が多く、乗車券も買い易い高速列車で直接…と考えていました。

この計画だと北京~武漢と、華南~上海間の火車票(列車乗車券)手配が問題となるのですが、北京到着日に華南~上海間は乗車券手配に成功し、後は武漢への火車票をどうするのか…という状況でした。

北京~武漢間は北京西站から漢口站や武昌站へ向かう夜行列車(寝台+座席や全車寝台)が何本か運行しており、他に武漢以遠へ向かう列車も多数存在するのですが、各列車の寝台は数日先まで「没有」の嵐が吹き荒れる状況でした。

発売当日で全列車完売と言う程ではないにしても、乗りたいと思った時に乗れない程、この区間では需要に対して供給が追いついていないのが現状で、それどころか在来線を走る昼行CRH(D~次の動車組)ですら、数日先の列車で空席がようやくという有様でした。

こんな状況であれば、一般の中国人民なら諦めて硬座で10~12時間程度我慢して…という所で、多数の火車票購入希望者がひしめく乗車券売り場では少しでも安く目的地へ行きたいがために、1000km以上の距離を移動する際にも、最初から硬座の火車票を求める人民も多数見受けられる程で、当日の無座票などを買い求める人民の姿を見ると、MAKIKYUはとても…と感じてしまいます。

日本人でも硬座乗車こそが中国鉄道旅行の醍醐味と感じていたり、運賃の安さに魅力を感じて、他列車・車両に空席があっても、長距離の列車移動で敢えて硬座・無座を選んで乗車する人物も存在しますが、長時間の硬座乗車は車両の居住性や車内環境など、特快空調車でも日本の青春18きっぷによる普通列車乗り継ぎなどとは比べ物にならない程劣り、非常に疲れます。
(MAKIKYUが帰国の際に乗船したフェリー内では、昆明~上海間を硬座で移動したという方や、成都~ウルムチ間を硬座で移動したという方(共に日本人女性の一人旅)も居られ、どちらも全然平気と言ってましたので、相当な猛者と感じたものですが、中国鉄路に関する書籍を出版される様な事情通の方を除き、日本人一般には硬座での長時間乗車はおススメできません)

日韓の快適な鉄道旅行に慣れきったMAKIKYUにとって、空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)位ならまだ無座でも…とは感じるものの、出来れば北京~武漢間を硬座で移動するのは避けたいと感じ、他に妥当な方法はないのだろうか…と感じたものでした。

そこで鉄道旅行のバイブルとも言える時刻表とご相談になるのですが、上海(上海虹橋)~武漢(主に漢口站発着)の動車組列車(D~次)はそこそこの本数が運転されており、乗車券も比較的買い易そうな気がしましたので、北京南駅の乗車券売り場でこの列車の空席状況を尋ねると、2日前の段階で空席ありとの事でしたので、北京南~上海虹橋間の高速動車(G~次)と、上海虹橋~漢口間の動車組列車(D~次)を、途中の南京(南京南站)で乗り継ぎ、武漢へ移動する事にしたものでした。
(北京南~南京南間の高速動車組乗車券購入は、列車が頻発している事もあって楽勝、特に運賃が割高な上級席ともなれば、余程の事がない限り当日購入でも大丈夫かと思います)

南京を経由して武漢へ向かうとなると、直接京広線を南下して武漢へ向かうよりは、距離にして300km程遠回りとなり、まして運賃面でも割高な高速動車などを利用するとなると、かなり割高(新空調硬臥の直通列車利用と比較し、高速動車+動車組2等座乗車でも2.5倍程)になりますので、普通の人民が移動手段として鉄道を利用するのであれば、まず考えられない経路になります。

とはいえCRH視察を最大の目的として訪中したMAKIKYUにとっては絶好の方法で、現地物価を考えると高過ぎるものの、日本の物価に比べれば激安な運賃設定(1500km強を移動しても、日本円に換算した金額は4桁で収まります)もあり、北京~武漢間で硬座や航空機利用は避けたいけれども、寝台が満席で買えない…という時には、鉄路迷(レールファン)以外の日本人旅行者一般にもおススメの方法かと思います。

そして乗車当日、上海虹橋行き高速動車の発着する北京南駅へ向かうと、駅構内に入場する際に金属探知機による荷物のセキュリティチェックがあり、その後列車別に指定された改札から入場する際には、係員から実名制(外国人の場合は旅券番号)が記された乗車券と身分証(外国人の場合は旅券)を提示する様に求められ、本人確認を行ってから自動改札機に乗車券を投入(改札)と、日韓の高速列車に比べて随分面倒で不便な印象が否めません。


改札を経てホームに向かうと、既に乗車するG117次は入場しており、北京~上海間の高速列車は主に2形式(CRH380A/CRH380B)が用いられているのですが、MAKIKYUが乗車するG117次はCRH380Aの方でした。
(高速動車(G~次)ではなく、運賃は安いものの所要時間が長い動車組列車(D~次)を利用した場合などは、別形式に当たります)

CRH380Aは新幹線タイプのCRH(CRH2)の改良増備版とも言える車両で、CRH380B(ドイツICE3タイプ・CRH3の改良増備版)と混用されています(一応運用は決まっている様ですが、同一路線・区間を走る列車でも、乗車列車によって車型が異なります)ので、1本前の上海虹橋行きはCRH380Bが充当されており、天津へ足を運ぶ際にCRH3に乗車した事もありますので、CRH380Aの方に当たれば…と思っていたMAKIKYUとしては念願通りの巡り合わせです。

このCRH380Aは新幹線タイプの改良版だけあって、見た目は何となく日本の新幹線を連想するものの、CRH3と大差ない外観のCRH380Bとは異なり、塗装や前面デザインなどがCRH2とは大きく異なっているのが大きな特徴です。

前面デザインや塗装は、抜群の高性能とデザインを誇りながらも、座席数や乗降口位置などが他車両と異なる事で運用し難く、近年東海道~山陽新幹線直通のぞみ号という花形からは退役を余儀なくされ、現在は編成を短縮して山陽新幹線内で細々と活躍している車両を連想させるものがあります。


ただ車体断面は丸っこいこの車両特有のものではなく、CRH2(=E2系)に近い形状となっている事もあって、複数種の新幹線を継ぎ接ぎした様な奇妙な雰囲気となっており、個人的にはデザイン面で余り格好良い車両とは感じないのですが、これに中国ならではとも言える釣り目形のヘッドライトが配されています。

他国の技術や実績をふんだんに用いながらも、数本はベース車の開発国から直接輸入したCRH2やCRH3・CRH5などの動車組列車用車両や、ほぼドイツ風の雰囲気が漂うCRH380Bとは異なり、一応中国ならではの車両という事になっており、中国側も独自開発車両である事を盛んに謳っています。
(実際にホームに入線しているこの車両を目にすれば、何処かの島国で活躍している高速列車の2番煎じ的な印象が否めないのですが…)


車内に足を踏み入れると、客ドアやデッキ周辺などはCRH3やCRH5、韓国KTXなどの欧州系高速車両の雰囲気ではなく、これまた何処かの新幹線と錯覚してしまいそうな雰囲気が漂っています。


客室もMAKIKYUが乗車する2等座(普通車相当)は2人がけと3人がけの、背面テーブル付き回転式リクライニングシートがズラリと並び、CRH2の進化系車両ならではといった感がありますが、座席モケットはベース車そのもののCRH2とは異なり、座面スライド機能は廃され、モケットも新幹線N700系普通車の色彩を濃くした様な印象を受けます。

ただ天井や半透明ガラスを用いた荷棚の造作、ミラー仕上げで装置本体が目立たない様になっている車内LED文字案内装置などは、CRH3(ドイツICE3タイプ)に類似しており、様々な高速車両の美味しい所を寄せ集めた雰囲気があります。

しかし側面窓は2席で1つの大窓、そしてブラインドは各窓毎に上げるか下げるかしかできない構造は頂けないもので、後発だけに様々な車両の利点を寄せ集めるチャンスがあるにも関わらず、大窓の中央にブラインドレールがあり、各席毎にブランドを任意の位置で下ろせる構造とする事で、様々な旅客のニーズに細やかに対応できる構造を採用しなかった点は、少々に残念に感じます。

この2等座席は結構盛況で、見た限りでは8割以上の座席が埋まり、3人がけの中間席でも埋まっている箇所が多く見られるなど、北京~上海間の高速鉄道は結構な本数・両数で運行している事も考えると、高速鉄道開業前は需要に対して供給が大幅に不足していた事が露呈されているとも言えます。


その一方で上級席に関しては運賃の高さもあってか、比較的空席が目立つ状況で、日韓の物価よりは安いとは言っても、MAKIKYUが乗車券を購入する場合でも決して安くは…と感じてしまう程、まして高速動車(G~次)では1等座と2等座の価格差(日本の普通車とグリーン車の様な感覚です)が結構大きく、2等座でもJRの新幹線・特急普通車レベルの設備を有する事(客車列車の軟座でも、日本の普通列車レベルかそれ以下と感じる事が多いです)を踏まえると、2等座をもう少し増やした方が…と感じてしまいます。

この1等座は、座席が新幹線グリーン車レベルのモケット違いと言った印象があるのですが、CRH380Aではただでさえ乗車率の振るわない1等座に加え、更に上級の「商務座」と呼ばれる車両も連結されており、しかも中間の1両全室がこの商務座となっているのは、資本主義国の民営鉄道ならまず考えられないと言っても過言ではない気がします。


商務座は革張り・バックシェル付きの2+1列座席が並び、東北新幹線E5系「グランクラス」の中国版とも言うべき存在ですが、設備・運賃共に破格で、日韓に比べて大幅に物価が安い中国といえども、北京南~上海虹橋間をこの座席で乗り通せば、日本の新幹線普通車で首都圏~九州間を移動出来てしまう程、物価が高い日本に住む人間の感覚でも決して安い金額ではありません。

まして中国の物価を考えると、北京南~上海虹橋間で商務座の乗車券を片道分購入するだけでも、一般労働者の月給かそれ以上という有様で、日本のグランクラスの様に少し奮発して一度(それでも結構高いですが…)と言うレベルの金額ではないだけに、利用出来る客層は極めて限られています。
(当然ながらこの車両の乗車券購入は、余程の事がない限りは当日でも楽勝かと思います)

1等座でも空席が目立つ状況でしたので、こんな車両はほぼ空気輸送状態と言っても過言ではなく、今後の経済発展で上級席需要が高まる事を見越した先行投資的要素があるのかもしれませんが、需要に対して供給が追いついていない中国鉄路の現状を踏まえると、こんな座席はJR九州787系電車のDXグリーン車の如く、せいぜい先頭車両の一部区画程度で…と感じてしまいます。


そして列車が北京南站を出発すると、MAKIKYUが降車する南京南站までは約4時間の道程、そして終点の上海虹橋站までは所要約5時間となりますが、車両・軌道共に真新しいだけあって、最高速度は温州の事故以来若干引き下げられ、所要時間が増大しているとは言っても300km/hを少々超える程度を出しており、車内に設置されたLED表示でもその運行速度が表示されます。

日本の新幹線は、大動脈の東海道新幹線は設備が古く、今日の超高速運転を見越していない設備が災いし、最高速度270km/hに押さえられ、それも車体傾斜などを駆使して最高速度で走れる区間を…という状況を踏まえると、何とも羨ましい話です。

北京~南京間は1000kmを越えており、高速鉄道開業前は列車の手配、移動共に結構な労力を要していたものの、CRHで移動する両都市間は、日本の新幹線で東京~広島間を往復する程度の手軽さで、中国鉄路の旅も随分変わったものと実感させられます。


ただ中国ならではの発車時間直前のホーム別改札のお陰で、途中各駅も列車入線時刻が迫っていないと人影が見当たらず、駅のつくりがやたらと大きいのは、日本の新幹線とは大きな違いで、軌道設備も柵等はやや簡素な印象を受けたものでした。


また日本の新幹線と同レベルの最新鋭高速列車でありながらも、給湯設備は客車列車と同様にしっかりと設置されている辺りは中国らしく、MAKIKYUも車内で方便面(カップラーメン)を食すために利用したものでした。

列車内では車内販売は勿論、食堂車の連結もありますので、食事情は新幹線やKTXといった日韓の高速列車より優れており、ブッフェなどを連結するとまではいかないにしても、日本の新幹線も車内に給湯設備のサービス位はあっても…と感じます。

そしてCRH380Aの約4時間の列車旅は、異国の車窓が広がる非日常の世界と言う事もあってあっという間、多少の遅延は見込んでいたものの、ほぼ定刻で南京南站に到着、今度は約2時間後の漢口行き列車へ乗り継ぎ、目的地の武漢を目指します。

南京南~漢口間で乗車したD3027次に関しては、別記事で取り上げたいと思います。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。