ネット上のニュース記事などでも大きく報じられていますので、ご存知の方も多いかと思いますが、昨日大韓民国の全羅南道・珍島(Chindo)沖で、450名以上の旅客が乗船した貨客フェリーが転覆・沈没するという大事故が発生しています。
今回発生した事故は、清海鎮(Cheonghaejin)海運が仁川(Incheon)~済州(Jeju)島間を運航している旅客フェリーで発生しており、同社は専ら韓国内の旅客航路を運航する事業者ですので、事故以前の日本における知名度はかなり低かったと思いますが、同社は今回事故が発生した仁川~済州間航路以外に、仁川や麗水(Yeosu)を出航する離島航路の運航なども行っています。
仁川~済州間は韓国の国内旅客航路では最長距離・時間を誇る事でも知られ、清海鎮海運が運航する各航路の中でも、代表格的存在と言えます。
この航路は仁川・済州両港を定刻では夕方に出航し、目的港には翌朝到着となる夜行運航で、所要時間は片道13時間半程、移動と宿泊を兼ねて節約旅行を目論む向きにも絶好かと思いますし、船旅を楽しむのにも程よい所要時間かと思います。
最近国内の離島へ足を伸ばす機会も多く、韓国へも幾度も足を運んでいるMAKIKYUとしては、機会があれば船で韓国本土から比較的手頃に足を運べる韓国の離島・済州島へも…と思っており、その際の選択肢の一つとして清海鎮海運の仁川~済州間航路は悪くないと感じていました。
(MAKIKYUは昨年まで国内各都道府県の中で沖縄県だけ未訪という状況が長く続いていましたし、大韓民国も38度以北の北韓(北朝鮮)を除くと、各道・広域市の中で済州道のみ未訪という状況です)
この仁川~済州間航路では週5便が運航され、運航事業者・清海鎮海運HPを見ると、同航路ではセウォル号とオハマナ号の2隻が就航船舶として案内されており、今回の事故はその内セウォル号の航海中に発生しています。
MAKIKYUは実際にセウォル号の姿を見た事はないものの、このセウォル号は清海鎮海運HPに掲載されている外観画像(写真は清海鎮海運HPの画像転載です)などを見ると、結構綺麗な船と感じます。
清海鎮海運での就航からはまだ1年程度しか経っていないのですが、建造は1994年、フェリーとしては比較的古参の部類に入ります。
というのも、元は1994年に就航したマルエーフェリー・鹿児島~沖縄航路で活躍していた「フェリーなみのうえ」で、2012年の「フェリー波之上」就航に伴って同社から退役、売船されて装いを改めたものです。
(写真は「我孫子の伊東様」から頂いたもので、マルエーフェリーでの活躍最末期の2012年に鹿児島港へ入港する、往年の「フェリーなみのうえ」です)
韓国では同船以外にもかつて日本で活躍していたフェリーが売船され、船名や装いを改めて活躍している事例が、国内航路だけでなく国際航路も含めて数多く存在しており、実際にMAKIKYUが韓国発着の国際航路に乗船した際にも、かつて日本で使用していた船舶に当たったことがあります。
またMAKIKYUは「フェリーなみのうえ」が就航していた頃のマルエーフェリーには乗船した事がありませんが、同船がマルエーフェリーで就航していた末期、共に鹿児島~沖縄航路で活躍しており、外観も比較的類似している「フェリーあけぼの」(現在もマルエーフェリーで就航中)には昨年1度乗船しています。
(その際の様子などを取り上げた記事(該当記事はこちらをクリック)も公開していますので、興味のある方はこちらも見て頂けると幸いです)
マルエーフェリーでは2009年秋、紀伊半島沖で東京~沖縄間を結ぶ「ありあけ」の転覆事故が発生し、事故原因は船内に多数積載していた積荷が一方に偏る事で、バランスを崩し操舵不能になった事が大要因と言われています。
この事故では乗客数が少なかった上に、人命に影響が及ぶ事がなかったのが不幸中の幸いだったものの、同航路が長期運休(後に倒産した旧有村産業の「クルーズフェリー飛龍21」を中古購入して運航再開)に追い込まれたほか、多数の積荷廃棄をはじめ、沿海の漁業にも多大な影響が及ぶなど、世間を騒がせる大きなニュースとなってしまった事は、記憶に残っている方も少なくないかと思います。
今回の事故を聞くと、事故発生現場や運航事業者こそ異なるものの、「ありあけ」転覆事故の再来と感じた方も少なくないかと思いますし、MAKIKYUもその一人ですが、今回の事故では多数の死傷者や行方不明者の発生も報じられており、「ありあけ」転覆事故を遥かに超える被害が発生、途上国を除けば近年では極めて稀な大事故になってしまったと感じます。
不幸にも今回の事故で亡くなられた方の冥福を祈ると共に、負傷者の早期回復を願いたいものです。
「フェリーなみのうえ」こと「セウォル」号も転覆した後に海底へ沈没してしまい、同船にとっても非常に残念な形での最期になってしまいましたが、今後清海鎮海運で同種事故が再発する事がない事は勿論、他社も含めて…と感じる所です。
詳細な事故原因究明と万全な再発防止策が取られ、再び同種事故の報を聞かずに済む事を強く願いたいものです。
(お断り)記事作成時にはアクセス可能となっていた清海鎮海運HPですが、その後記事公開前に再度確認したらアクセス不能となっており、清海鎮海運HPへのリンクをクリックしても表示されない可能性もあります。
今回の事故と直接関係してるかはわかりませんが、客室の増床が原因で重心が傾いて沈没したとしたら、今後の船の改造にかなり厳しい規制がかかるのではないかと思われます。
カーフェリーの事故との事なので、帰省で佐渡汽船を使う身としては他人事とは思えないですね。船に乗ったら救命胴衣の場所を確認したいと思わされた今回の事故でした。
元々フェリーなどの船舶、特に旅客輸送を伴う船ともなれば、不測の事態を想定し、相当余裕のある設計を行っているかと思いますので、多少の改造程度では大した影響は出ないかもしれません。
しかしながら本来の想定を超えた改造などを次々と…となると、特に中古売船などで老朽化している船には、相当な影響が出るかもしれません。
今回の事故では客室だけでなく、貨物積載部分でも随分改造されている様ですので、まだ事故原因の詳細究明はこれからですが、多岐に及ぶ諸改造が事故を引き起こす大要因になった可能性は否定できないと思います。
船の改造に関しても、元々厳しい安全基準を求める日本船籍の船などであれば、厳しく取り締まる事もできると思います。
とはいえ国際航路などでは税金を安く浮かせると共に、余り安全基準を求められない(安全に関する費用を浮かせる)目的もあって、途上国に籍を置く便宜地籍船も数多く存在しますので、これらまで含めて取り締まるのは内政干渉に当たり、かなり難しいかと思います。
ただ航空分野での特定国・会社の航空機飛行禁止(EUにおける北朝鮮・高麗航空の大半の機種が飛行禁止など)の如く、旅客輸送を行う船に関しては、自国へ乗り入れる国際航路で安全基準を満たさないものに関しては、入港禁止や運航停止処分を行う事は、積極的に実行した方が良いかと思います。
救命胴衣に関しても、各地で船に乗船すると、船内に備えられているのは目にするものの、実際に使用を意識した事などは…という状況ですので、特に海外の船などに乗船する時には、所在などをよく確認しておいた方が…とも感じたものです。