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JR九州の観光特急「指宿のたまて箱」(車内編)

2011-06-16 | 鉄道[九州・JR]

先日「MAKIKYUのページ」で取り上げたJR九州の観光特急「指宿のたまて箱」(通称いぶたま)ですが、この列車は外観だけでなく車内も種車とは随分変化し、観光列車に相応しいものとなっています。

 
木をふんだんに用い、ロゴなどを多用している辺りは、某デザイナーの最近の傾向が強く出ており、随所にあるフリースペースや子供向けのベビーサークル、それに本棚の設置など、某デザイナーが最近デザインを手がけた列車の定番と言える装備も一通り揃っています。

2両編成の各車両で木材の色彩を変える事で、車内の雰囲気を異なるものとしている点も、このデザイナーが過去に手がけた幾つかの改装車両にも見られる点です。


JR九州をはじめ、某デザイナーが手がけた各社の様々な改装車両に乗車した事があるMAKIKYUとしては、物凄く目新しさを感じるものではない気がしますし、宮崎地区の観光特急「海幸山幸」と同種の簡易な駅名案内表示装置なども、もう一工夫が欲しいと感じたものです。
(駅名案内は観光情報なども交えたLCDモニターが望ましい所ですが、JR九州ではワンマン運賃表示を除き、全般的に普及度が芳しくないのは惜しい限りです)

ただ他地域から南九州を訪問し、初めて某デザイナーが手がけた車両に乗車した一般客などには、いぶたまの内装は相当奇抜で目新しく感じるかも…と思ったものでした。

座席配置は指宿枕崎線のいぶたま運行区間が、薩摩湾に面しており、オーシャンビューを堪能できる区間もある事から、海側は海に面した座席となっているのが特徴で、やはり左右非対称の装いで有名な伊豆急行の観光車両「リゾート21」を連想させられます。


MAKIKYUがいぶたまの指定席券を確保した際には、この海側座席に当たったのですが、通路幅を狭めない様に配慮したのか、特急車両ながらもリクライニング機能が付いておらず、また窓側に向かって座席を配置しているため、足元もさほど広くありません。

窓側に向かって配置した座席以外は、ソファータイプの座席などもありますが、2人掛けの回転式リクライニングシートが主体となっており、こちらの方が少なくとも見た目は特急車両らしい座席と言えます。


しかしながらこちらもリクライニング角度が僅かで、一応機能は付けたものの…というレベルですので、座席のグレードは決して高いとは言い難いものですが、それでも指宿枕崎線で今年初頭まで活躍した先代の観光列車「なのはなDX」指定席車の回転式クロスシート(リクライニング機能なし)よりは良いかと思います(MAKIKYUは残念ながら乗車機会がありませんでした)し、乗車時間が1時間に満たない事を踏まえると、許容範囲に収まるかと思います。

またいぶたまは種車が国鉄時代の近郊型気動車・キハ40系列となっており、内装などは派手に手を加えている反面、同種の車両を用いている鹿児島地区の観光特急「はやとの風」と同様に下回りは相変わらずで、おまけにJR九州お得意の客室乗務員乗務ワンマン運転も行っています。
(一応改造の種車に、エンジン換装車を選ぶ程度の事はしていますが…)

お陰で車端部にでも乗車するものなら、コイルバネ台車の振動は特急車らしからぬもので、騒音も静かとは言い難いのが現状で、特急列車として一般的に描くイメージを求めて乗車すると、車両自体の快適性や座席グレードなどに難ありの列車と言えます。

とはいえドア開閉時の白煙による演出をはじめ、車内には列車名にちなんで玉手箱も用意されるなど、観光列車らしい仕掛けが幾つもあり、車内の独特な雰囲気なども加味すると、観光列車としての付加価値を特急料金と言う形で反映したと考えるなら、特急と言う種別を名乗るのは違和感ありとしても、料金的には妥当な所と言えます。

また南九州を走るJR九州の観光特急は、肥薩線の「はやとの風」や日南線の「海幸山幸」では一部自由席が設定されていますが、「指宿のたまて箱」では全車指定席となっているのも大きな特徴です。
(JR九州全体で言えば、「ゆふいんの森」なども全車指定席ですが…)

以前「海幸山幸」に乗車した際には、自由席の設定数がごく少数という事も災いして、フリースペースが結構込み合っていたのには閉口したもので、最近では「はやとの風」も結構混雑する事があると聞きます。

肥薩線や日南線は列車本数自体が限られるため、たとえ立席でも移動利便性を図るためには自由席設定の意義は大きいかと思いますが、指宿枕崎線は非電化線区とはいえ、いぶたま運行区間(鹿児島中央~指宿)とその一駅先の山川までは、普通・快速列車の運行本数がそこそこ設定されている事などを踏まえると、観光列車としての雰囲気を壊さないためにも、全車指定席制としたのは評価できる施策なのでは…と感じています。

特急らしさではなく、特急らしからぬ特急として観光気分で乗車するのであれば、肥薩線の観光特急「はやとの風」と同様に非常に面白い列車と感じたものですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も鹿児島へ足を運ぶ機会がありましたら、是非一度「指宿のたまて箱」に乗車してみては如何でしょうか?