MAKIKYUのページ

MAKIKYUの公共交通を主体とした気紛れなページ。
初めてアクセスされた方はまず「このページについて」をご覧下さい。

成田スカイアクセスの新規開業駅・成田湯川駅~立派な駅も問題点が山積

2010-07-24 | 北総監獄

開業から1週間が経過した成田スカイアクセス(京成成田空港線)ですが、同線の新規開業区間は印旛日本医大~(成田)空港第2ビル間が18.1kmもあるにも関わらず、主たる目的がスカイライナーによる空港への速達輸送である事や、運行地域が首都圏屈指の辺境(空港周辺は当然として、印旛日本医大駅周辺もとんでもない所ですので…)という事もあり、新駅開設は1駅のみとなっており、近年の日本における都市近郊鉄道にしては異例の状況と言えます。

その一つだけの新駅は「成田湯川駅」と呼ばれ、MAKIKYUも開業2日目にこの駅を視察したのですが、建設時の仮称では「成田ニュータウン北」と呼ばれていただけあり、成田ニュータウンの北端に位置しています。

 
駅舎は新駅だけあって非常に綺麗で、真ん中に待避線を配してその両側にホームを設けた配線や、高架上のホーム~地上の改札間は途中フロアを経て3層になっている構造などは、新幹線の新駅を連想させる程です。

 
駅自体はややホームが狭いと感じたものの、新駅だけあってバリアフリー対応は万全で、ホームには空調完備の待合室も設置され、ホーム~改札間を移動する際も、途中フロアなどは結構凝ったデザインになっているなど、結構立派な駅と感じたもので、「成田スカイアクセス」は実質的に「開発を止めた某鉄道」の延伸線でありながらも、駅名標など成田湯川駅の各種標識類は京成様式となっており、この様を見ると「開発を止めた某鉄道」ではなく京成の駅である事を実感させられます。

また成田湯川駅は京成グループのバス事業者・千葉交通がかつて成田営業所(湯川車庫)として車庫を構えていた場所で、新駅開設に伴って立ち退き→成田営業所移転となっている程ですので、成田スカイアクセス開業と同時に行われた千葉交通バスのダイヤ改正では、既存の成田ニュータウン内を走る湯川車庫発着便が、新しく整備された成田湯川駅ロータリーに乗り入れています。

路線バスの便はメインとなる成田駅西口~吾妻~成田湯川駅間の路線だけでも毎時3~4本程度、他系統を合わせるとそれ以上の本数となり、成田駅から成田湯川駅方向へは23時台の深夜バスも設定されている程ですので、東京の都心からは結構離れたエリアとはいえ、路線バスの運行と言う面では、北総監獄(千葉ニュータウン)内の各駅などよりもはるかに充実しており、バスの便は非常に至便です。

ただ肝心の成田スカイアクセス(鉄道)は昼間40分間隔、時間帯によっては運転間隔が1時間程度開く「アクセス特急」だけに限られる上に、終電も22時台と都市鉄道にしては極めて早いだけに、新駅が開設されても鉄道よりバスの方が至便と言う状況になっています。

成田湯川駅を発着するバスの主たる目的地となる成田駅は、成田ニュータウン内を運行するバスは主に西口発着となるものの、JR駅反対側の東口側に出れば京成成田駅も近く、ここからは昼間20分間隔で都心方面へ向かう特急などが出ている事を考えると、いくら成田スカイアクセスを運行する列車が早くても、既存の京成本線利用の方が使い勝手が良いのが現状です。

その上成田スカイアクセスは実質的に「開発を止めた某鉄道」(元○○開発鉄道)の延伸線と言っても過言ではないだけに、運賃体系も極めて高額な運賃で悪評名高い「開発を止めた某鉄道」の運賃体系とほぼ同レベル(厳密に言えば「開発を止めた某鉄道」区間のみの利用は、成田スカイアクセス開業後に雀の涙程の値下げが行われていますので、「開発を止めた某鉄道」区間より更にタチが悪いです)、その上「成田スカイアクセス」新規開業区間では割引率の高い時差回数券や土休日回数券の設定もありません。


おまけに都市鉄道にしては駅間も長いために、成田湯川駅からの大人1名の最安運賃は440円(印旛日本医大駅まで)と言う大手私鉄では他に類を見ない超高額運賃が特徴となっており、成田空港までは市内にも関わらず500円、空港第2ビルまでであれば千葉交通バス(280円)とJR成田線(190円)を成田駅で乗り継ぐよりも高額なのは呆れる限りで、この駅の運賃表を見ると、やはり特急列車(こちらは要特急料金ですが、普通列車が運行していない区間のみを利用する場合は、特例で乗車券のみでの乗車が可能です)しか停車しない、北の大地にあるJR2駅(こちらも隣駅までの最安運賃は同額の440円です)を連想してしまいます。

しかも定期乗車券の割引率も極めて低く、成田スカイアクセス開業前の「開発を止めた某鉄道」に準ずる極めて高額な運賃設定であるために、隣駅である印旛日本医大駅までの通学定期券ですら1ヶ月1万円を超過し、京成本線経由の通学定期券であれば、京成上野~京成成田間(普通運賃810円)でも1ヶ月5460円ですので、その凄まじさがどの程度か理解頂けると思います。

都心までの通勤定期券ともなれば、これも京成成田駅~都心方面間(京成本線経由)の倍以上という超高額(一例としては、成田湯川~都営日本橋まで1ヶ月52470円)となり、成田湯川駅周辺の住民が都心へ通勤する場合、成田駅までのバス定期+快適に通勤するための「モーニングPASS」(モーニングライナー月間定期券)を買い足したとしても、既存の京成本線を利用した方がずっと安い状況です。


この様に成田スカイアクセス利用は「不便で高い」という状況であるために、成田湯川駅は周辺もそこそこ開けているとはいえ、近隣住民の利用は余り期待できず、実態は列車退避・行き違い箇所に駅を開設し、空港旅客輸送のついでに北総監獄~成田ニュータウン間の旅客輸送も行っている程度と言っても過言ではない状況で、近くに駅が開設されたと喜ぶ地域住民も、余りに高額な定期代故に会社から最寄り駅の利用を却下される事が頻発するのでは…と感じた程です。
(それでも北総監獄から成田北高校への通学などは、定期代が極めて高額ながらも、本数の少ない路線バスや自転車で木下駅など~成田線成田駅から路線バスと言う経路に比べ、成田スカイアクセス開業で随分便利になっているのですが…)

こんな有様ですので、設備的には立派な駅で駅周辺もそこそこ開けているにも関わらず、乗客の利用は余り見込めず、MAKIKYUが訪問した際も開業したばかりの路線と言う事で、様子見に来ている乗客ばかりと言う雰囲気を感じたものです。

先週の成田スカイアクセス開業では新型AE形による最高速度160km/hの「スカイライナー」が注目を集め、こちらは評判も悪くない様ですが、それに比べて一般列車の「アクセス特急」は問題山積で、成田湯川駅の現状はその象徴の様にも感じたものです。


JR成田線(我孫子支線)との交点にも関わらず、成田線に駅が設けられていない事はJR側の事情もあるかと思いますので、様々な所で騒がれている事ですが、この件は将来に期待と言う事で、当面は致し方ない事(京成側としても、充実した運行本数を誇るグループ会社・千葉交通バスのドル箱路線に影響が及びますので、余り歓迎しないかと…)かと思います。

しかし成田湯川駅は構造上下り(成田空港行列車発着ホーム)からの上り列車発着も可能な構造となっており、成田空港を発着しない成田湯川~都心方面の列車設定も可能ですので、その気になれば通勤ラッシュ時間帯に合わせて「開発を止めた某鉄道」の一部列車を印旛日本医大などから延伸する事も可能なはずです。

また成田湯川駅以遠(成田空港方面)も、JR線との並行区間が始まる地点周辺にはAEONをはじめ、様々な店舗(ロードサイド型ばかりですが…)が集中しており、ここには交換設備とホームを設けられる程の空間もありますので、その気になればここにも新駅を設置する事は可能なはずで、都心からの成田空港アクセスには力を入れつつも、一般列車に関しては北総監獄~成田空港間の輸送などに最小限の「アクセス特急」を走らせているだけで、2の次といった印象が否めないものです。

成田スカイアクセスの基盤整備を大々的に行い、10km以上もの新線を開業させた事を考えると、地域還元の意味も兼ねて、経営上の負担にならない範囲でもう少し一般列車を充実させると共に、活用出来るものはもっと生かして利便性の向上に繋げては…と感じたものですが、こんな事を感じてしまったのはMAKIKYUだけでしょうか?