ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

人間工学的デザインを駆使して行儀よく座る

2011年03月09日 | Weblog
特に意識させることなく人の行動を管理する――こういう書き方をすると嫌な顔をする人もいるかもしれないけれど、これはいたって当たり前のこと。人間工学・情報工学を利用して行動を管理することはどこにでもある風景だ。

例えばJR東日本では、迷惑な座り方ができないように山手線に新型座席を設置するらしい。

JR東:迷惑な座り方できません…山手線で新型座席試行へ - 毎日jp(毎日新聞)


7人掛けのシートであってもちょっとゆとりを持って座る人がいたりすると、6人しか座れなかったりする。あるいは7人が座っていたとしても人によってスペースのとり方は様々だ。股を開き7等分されたスペースよりも多く使う人、PSPを胸の前に抱えて両肘を背もたれにまで押し当てる人、足を前に突き出し立っている人のスペースを狭くする人…

そうした人に「もっと詰めてください」「足が邪魔です」とはなかなか言いにくいもの。そこで自発的に詰めてもらうために、7人掛けのシートなら腰の収めるべき位置に窪みを作ったり、端から2人目と3人目の間にポールを立てたりしてみせる。そうすることで結果として7人が座ることになる。

今回、JR東がやろうとしていることは、膝を開いたりすることができないように谷を作ったり、深座りするように前部をゆるやかにカーブをかけたりしている。

なるほどこれで行儀よく座らせるわけだ。

こうしたことは当然、デザインと密着に関わっている。あからさまに人の行動を制限するようなものは反感を抱かせるし、周囲の風景と溶け合うことも必要だ。

公園の入り口などでちょっと体をくねらせないといけない柵があるのは、単に「公園」っぽいからではなく、自転車やバイクの侵入を防ぐためだし、公園のベンチの真ん中に突起があるのは座る場所を分割しているからではなく、浮浪者がそこで寝るのを防ぐためだ。

テレビのリモコンだってそう。あまり使わないボタンはカバーの裏側に設置してチャンネル選択ボタンのようによく使うボタンは表に出す。電源ボタンは色を変えて目立たせる。

あるいはこういう場合もある。大事だけれど慎重に扱わなければならない場合は、ボタンを押すまでの手続きを複雑にすることで、間違いを防ぎ冷静さをもとめるようにする。「CTRL」+「ALT」+「DEL」を同時に押さないと再起動させないとか、ケースを割らないと非常ベルのボタンを押せなくさせているとか。

そうした工学的なデザインの観点からすると、「はやぶさ」のトイレについている「非常通報装置」の設置位置やデザインは「適切」とはいえないだろう。

「はやぶさ」緊急停止 子供が非常通報装置押す  - MSN産経ニュース



せっかくの新しい車両にケチをつける気もないのだけれど、これは押した子供に責があるというのは酷だろう。デザインが人の行動を誘導・管理する以上、それが予期せぬ方向につながることだってありうる。誤解をさせないデザインや手順を踏まなければならないようなデザインなど、もう少しやり方を考えてもよかったのではないだろうか。

感覚的なものでもあるだけに、デザインを決めるというのは難しい。


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