ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

辛坊キャスターの海難救助とセーフティネット

2013年06月25日 | Weblog
読売テレビのアナウンサーだった辛坊治郎さんが盲目のクルー岩本光弘さんと共に、ヨットで太平洋横断を目指したものの遭難、海上自衛隊によって助けられたというニュースは、ちょうどその会見が報道ステーションの時間とかぶったということもあり、話題になった。

辛坊さんらヨットで遭難 救助後会見ノーカット1/4(13/06/22)


その際、辛坊さんが「「本当にご迷惑をお掛けしました。……私たち2人のために大切な税金を使っていただくことになった」と発言したこともあって、この救助の費用を誰が負担するのかがネットやテレビで話題になっている。

今回の救助に際しては、自衛隊からは計4機が出動しており、燃料費や人件費を含めると1000万円以上になった可能性が高い。テレビでは早速、この費用を税金で負担すべきか否かを街角でアンケートをとったりしている。「助かってよかった」「人命が1番」と考えている人は税金での負担に肯定的で、「(仕事などではなく)自分で趣味でしたことに対して税金を費やすのは…」「自己責任では」といった批判的な意見も見られた。

個人的に感じたのは、結局はこうした挑戦を社会がどう位置づけるかということだろうと思う。

例えば、これを経済の事例に当てはめると、「起業」と「セーフティネット」の議論に通ずるのかもしれない。

もちろん「起業」というのは、起業家個人の利益追求がベースにあるわけだけれど、こうした新しい企業が搭乗することで停滞した市場を活性化させたり、新たな雇用や周辺ビジネスを生み出すことを期待できる。そうしたことから「起業」そのものは望まれている。

しかしその一方で、これまでの日本の中小企業は個人の「信用」に負い過ぎている。もちろんビジネスの世界はうまくいくことばかりではない。倒産することだってある。中小企業が金融機関にお金を借りたとき、その担保を社長個人に負わせ過ぎてしまっては、一度の失敗で立ち直る機会を失ってしまう。

そうした状況がまかり通れば、「起業はリスクが高い」として皆が回避してしまうかもしれない。そうなっては経済そのものも停滞したままだ。そうならないために、つまり「挑戦」へのモチベーションと「リスク」回避を実現するために何らかの「セーフティネット」が必要となる。

今回の辛坊さんの「挑戦」もこれと同じだと考えることができる。

こうした「挑戦」は日本国民を前向きにさせるし、成功すれば明るいニュースとして盛り上がっただろう。あるいはこれを機にヨットに挑戦する人が増えたり、挑戦の様を伝える番組や書籍、雑誌で経済的にも盛り上がるかもしれない。無謀でもいいからやればいいというわけではないが、こうした「挑戦」は肯定されていいはずだ。

とすると、その失敗のリスクについては何らかの「セーフティネット」があってもいいのだろう、と思う。

その上で、そのセーフティネットをどのように組み立てるのかは議論されてもいい。今回の場合、海上自衛隊の費用などは税金で賄われるようだけれど、例えば「保険」のようなものがあり、それで費用を賄えるのであればそうしたものでもいい。それであれば、全額を税金で負担する必要もないし、挑戦する側もリスクを想定した上で計画を立てることもできるだろう。

全てを「自己責任」とすれば、リスクが重荷となり社会から「挑戦」が失われる。かといって、全てを「税金」では釈然としない人もいる。そのバランスをとるための仕組みもまた市場の中で作り出すことができるのだろう。


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