ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

SaaS、クラウド時代に必要なSIerの営業思考

2009年11月23日 | ビジネス
ネットビジネスに携わってきた人間からすると、SI(オンプレミス型のシステム構築)とSaaSやクラウドというものは全く別物に映る。しかし果たして法人営業担当やSIerの営業担当者はこの違いを理解しているのだろうか。そんなことを、ふっと感じたのは社内の研修に参加したとき。法人営業の担当者向けの研修だったのだが、その中で聞かれた声が「これからはクラウドの時代だから、クラウドを通じてSI受注を拡大していきたい」というもの。まぁ、営業的な「掛け声」としては正しいのだろうが、どうも違和感を感じえない。

現状、「SI」と言うとき、お客さんのシステムを構築するという意味合いが強いだろう。もちろんデータセンターを提供する(自社資産の場所貸し)、ホスティングサービスを提供する(自社資産の時間貸し)というものもあるだろうが、それはシステム全体のインフラ部分だからであって、アプリケーション部分はあくまでお客さんのものだ。

しかしSaaSといわれるものはそうではない。単純化して言うならアプリケーションを含めた全体の時間貸し/リソース貸しである。

このことはどのような影響があるのだろう。

これまでは顧客単位で構築していたものが、自社が用意したシステムを複数のお客様で共有することになるのだから、当然、

・システム構築のための初期投資の発生(お客様資産→自社資産へ)
・SEの縮小(お客様単位で必要だったSEが自社開発に必要な分のSEに)
・お客様毎のカスタマイズ思考→全体最適思考へ
・収入モデルの変更:構築時の一時的な収入モデル→サービス利用モデルへの転換

つまりこれまで「建設業」だったものが「サービス業」「飲食業」に転換するようなものなのだ。

営業担当からすれば仕事を取ってくればいいんだから一緒だよ、という声が聞こえるかもしれないが、そう単純なものでもない。建設業であれば、大きな案件、でっかいビルの建設や都市開発の案件を受注することが売上を上げる意味でも、効率性の意味でも優れている。しかし飲食店の場合はどうだろうか。いくら客単価が通常のお客さんより高いといっても、少数のそんなお客さんだけを相手にしていては店の回転率は上がらない。ましてやメニューにない料理(カスタマイズ)をその都度対応していては、(お得意様を囲い込むにはいいのだろうが)回転率や効率はあがらない。。

SaaSモデルは自社資産のリソース貸しである以上、稼働率を高めること、利用率を高めることが利益の源泉だ。飲食店と同じように、より多くのお客さんに利用してもらう、利用頻度を多くするといった営業戦略が必要となるのだ。

そうなると当然、顧社別の対応というよりもセグメント化された「層」をどのように取り込むかという観点で考える必要がある。この切り替えが実は営業部門にとっての難題かもしれない。

もちろん、実際には単純にオンプレミス型/SaaS型という区分ではなく、HaaS/PaaS+カスタマイズされたアプリケーションといった形もあるだろうし、プライベートクラウドとして顧客内部でシステムを用意することもあるだろう。そうした複雑な事業モデルに対応して、営業戦略も考えねばならないのだろう。


1 コメント

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Unknown (どら)
2009-12-02 02:56:04
初めまして。

とても参考になる記事でした。
仰る通りだと思います。

個人的には、SaaS 化できるサービス(飲食タイプ)と、SaaS 化できないタイプ(建設タイプ)をうまく切り分け、それぞれサービス化していく必要があると思っています。

もちろん、飲食タイプとするならばある程度汎用性がなければいけませんし、それはすなわち提供側の初期投資(当然、要件定義にも時間がかかるし、汎用性を持たせる開発にも時間がかかるはず)が増えるという事になると思いますから、そのあたりの事前リサーチと最終的な妥協案をどの程度で実現するか、あるいはその妥協案をお客様にどの様に説明・説得して導入して頂くかが営業の手腕として問われると思います。

私の会社も SaaS 化に乗り出そうと考えている所ですが、色々な意味で身が引き締まる思いです(武者震い?失敗への恐怖?)。
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