ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

セコムが進出するあらたなる「安心」とクラウドに求められる要件

2011年07月11日 | ネットビジネス
セコムがインターネットを活用した新しいサービスを始めたという。セコムといえばホームセキュリティの最大手。これまでであれば、家庭に設置されたセキュリティカメラとホームモニターを設置し、その情報を一般電話回線やISDN、IP電話を通じてセコムのコントロールセンターと接続する形態。

 大切な情報は画像データでお預かり、セコムが新ホームセキュリティを開発

こうした「自宅」の「防犯」対策に加え、身分証明書や緊急連絡先などの「個人情報」をインターネット経由で預かるサービスを12月から始めるという。こうすることで、「災害時に顧客が家族の安否などを迅速に確認できる」になるという。東日本大震災契機に、「従来のホーム・セキュリティの機能だけで十分か、という議論を行」い、「震災で服用薬の種類が分からなくなったとか、家族の連絡先の記録が残っていない、家族写真データが持ち出せなかった」といった問題に対応するために、セキュリティシステムを進化させるのだという。

具体的に提供されるメニューは、以下の4つ。

1)健康保険証などの身分証明書や家族写真、服用薬情報などの個人情報をデータセンターで保管する「データの預かりサービス」
2)家族どうしや複数の契約家間での画像や伝言などの共有を可能にする「データ共有機能」
3)セコムグループが提供する食品通販や生活支援サービス、損害保険などの申し込みを端末経由で可能とする
4)企業や金融機関からの情報提供などが可能となる「マイページサービス」

このうち1)と2)はセコムのデータセンターに情報が蓄積されるのだろうから、これは一種のクラウドサービスだと思えばいいのだろう。

実際にインターネットの世界では写真が画像、メッセージを保管するサービスは数多存在している。あるいは「家族」という限定ではないかもしれないが、SNSなどもこうした機能を提供するサービスだといえるだろう。単純な日々の伝言や録り溜めた写真のアーカイブであればともかく、震災以降に本当に必要になるような「個人情報」―健康保険証の情報や服用薬情報、あるいは銀行口座や保険証書など―、これら機密性の高い「個人情報」を預けるとなると、預け先を選ぶことも大切だ。

こうしたクラウドサービスの場合、A)セキュリティ、B)可用性、C)アクセサビリティ、D)継続性という観点から評価擦る必要があるのではないかと思う。

「A)セキュリティ」は特にここで述べる必要もないだろう。「機密性の高い」個人情報が漏洩すれば個人の実害としての被害も大きいし、そのためのセキュリティ対策を適切に実施できるかどうかは大きな問題だ。世の中に登場したハッキング技術に対し対応するという発想ではなく、よりプロアクセティブな、より最先端なセキュリティ対策を実施する事業者でなければならない。

「B)可用性」とは、いつでも利用出来るようにするということだ。こういうと当たり前のように聞こえるかもしれないが、今回のような大規模災害を想定した場合、クラウドを提供するためのデータセンターも当然、DR(ディザスタリカバリ)を行われていることが前提だ。それも30km圏内にセカンダリーのデータセンターを用意しているというのでは不十分で、電力危機にも対応できるように、隣接地域を越えた地点でのバックアップセンターが必要になるだろう。極論すれば海外という選択肢もある。

それだけではない、メイン系とセカンダリー系で情報の誤差、ロスをどれだけ無くすことができるかも大事だ。1日に1回バックアップをとっているので、それに戻せますという程度では問題外だろう。常に最新の状態を提供できなければならない。

「C)アクセサビリティ」は、利用者の側から見たときにどれだけ接続性が担保されるかということ。それはもちろん特定の端末(ex.PC)からの接続性もそうだけれど、それではネットワークの回線数だったり帯域だったり、経路の話になってしまう。今の時代それだけではなく、マルチデバイスに対してどれだけ接続性が担保されているかということも大切だ。

例えばセコムの場合、ホームモニターから各種サービスに接続できることを想定しているようだけれど、例えば震災で自宅が被害にあったり、通信回線や電力線が被害を受けたときに、そのデバイスからしかアクセスできないというのでは話にならない。モバイル環境でのPCやケータイ、スマホ、あるいは電話での問い合わせなどマルチデバイスでの対応をどこまで担保できるかというのも大きな課題となる。

「D)継続性」というのは、このサービス、この事業を継続して提供できるかどうかという問題だ。こうしたネット上のサービスは一極集中化が進みやすい。複数の事業者が参入したとしても、(サービスの差がなかったとしても)特定の一社以外はビジネスとして成立しないかもしれない。

しかもクラウドサービスというのは先行投資が必要な上に、継続的な投資も必要になる。それがサービス品質の差につながる。企業判断として常に「撤退」のリスクが存在することになる。

情報を預けたものの、預け先が早々に撤退したのでは話にならない。この「継続性」の問題はクラウドサービスの場合はこれまで以上に大きな問題として意識しなければならないだろう。

セコムの場合、「継続性」のリスクは必ずしも大きくないだろうが、世のクラウドサービスを提供している事業者の中にはベンチャー企業も多い。もちろんそれらベンチャーだからできること、機敏さや新規性といったこともあるのだろうが、その分、「継続性」のリスクは高い。今回のような機密性の高い情報を扱う場合には、ある程度、規模の大きな企業を選択するべきなのだろう。


2 コメント

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こんにちわ (Gangangansoku)
2011-07-12 06:36:24
そうですね、預かってもらうのはいいのですが、個人がアクセスする力(ネットにつなぐツールや環境)を奪われたら、どう家族の情報も聞き出せばいいのってなりますよね。 課題は多そうですね
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Unknown (beer)
2011-07-12 22:05:07
これまでだとセコムとネットのサービサーが競合することもなかったと思うんですが、業界のボーダーを越えた競争突入です。いやー大変な世の中ですw
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