「着うたフル」のサービスが開始となるがこれは果たしてiTMSや音楽配信の対抗馬となりうるのか。「着うた」は異例の大ヒットとなったが、この流れと「着うたフル」の流れは基本的には別モノと考えた方がいいだろう。同じブランドを担ぎながらも利用用途が違いすぎる。
「着うた」は聴くものではない。自分のお気に入りの曲で電話が鳴り、周囲に対して、自分のセンスやスタイルをアピールし、あるいは自慢するためのものだ。もちろん自分にとってお気に入りの曲であることが大前提ではあるのだが、「周囲に対して」というのが普及のためのポイントになっているのだろう。ちょっとした自慢、話題の中心となること――そうした要素が手ごろな値段で買えることに価値があるのだ。
これに対して、「着うたフル」はあくまで個人の世界に閉じるものだ。少なくともウォークマンの代わりとして使うのであればヘッドフォンは必須であり自分の好きな曲をいつでも聞ける必要がある。間違っても周囲に自慢するためにがんがんスピーカーから流すというものではない。
東洋経済「通信はどこまで安くなるか」の囲み記事の中で、「着うたで、モバイルとの音楽ニーズが高いことを再認識した」という神山KDDIメディアビジネス部次長のコメントがあったが、これなども本当に特性の違いを理解しているのか疑わしい。
ウォークマン以来の音楽をいつも身近に楽しみたいという欲求の延長線上に「着うたフル」はある。しかしこれは所謂「モバイル」ということが重要なのではない。iPODやHDDプレーヤー、メモリープレーヤーであろうとデバイスとしては何でもいいのだ。そうした欲求を満たすためにより便利なデバイスとして、どういう形態がありうるか、ということが大切なのである。
「ITmedia:「着うたフル」に関する5つの疑問」の記事を見る限り、「着うたフル」はminiSDカードを利用してダウンロードした楽曲をムーブできるようだ。電話番号を鍵としたセキュリティをかけており、機種変更後も番号が同じであればダウンロードした曲を引き継ぐことができるという。着うたフルの1曲あたりの容量が1.5MBなので、128MBのSDカードを使った場合、85曲ほどを常時持ち歩けるようになる。
ITmediaモバイル:「着うたフル」に関する5つの疑問
CNETjapanの記事によると、ジャケット写真などの画像や歌詞などとともに配信するというから、これは実際の利用用途としては大して使われないだろうけれど、友達にちよっとした時に自慢したりと感覚的な部分で嬉しいサービスだろう。
KDDI、第3世代携帯電話向けに音楽配信サービスを開始
ただ個人的な感想としては、既に持っている音楽資産を活用できるのかどうか、SDカードというメディアが適切なのかというのも疑問として残る。
iPODの場合、既に持っているCDやMP3ファイルをそのまま取り込むことが可能だ。まして日本の場合、持ち運べる音楽デバイスとしてはMDが普及している。これら既存の資産をSDカードに移すなり何なりして利用できるのかどうかは普及のためのポイントとなるのではないか。結局、家のミニコンポではCDやMDを使わざろうえないのでは、わざわざ外出する時のためだけに「着うたフル」で曲を買うという気にはなれないだろう。
いったん個人が手に入れた音楽はあくまで個人が好きな場面で聞けるものだ、という視点で音楽デバイスは作り上げなければならない。
もう1つ、楽曲を保存するメディアが何故SDカードなのだろうか。これがSDカードが非常に普及しているというのなら別だが、単にデバイスの大きさとメーカー側の論理で決められたという気がしてならない。USB接続を可能とするのであればPCへの保存、家庭ではPC経由での再生といった展開も可能であるし、ソフトバンクの「ネットワークHD」ではないけれどキャリア自身がネットワークストレージを提供すればSDカードなど持ち歩くことなく、いつでも自分の聞きたい曲をネットワーク経由で聴くことができる、という環境が提供できるはずだ。
『「コンテンツ」と「メディア」の分離の向こうに』にでも軽く触れているが、(著作権法の整備などの条件は置いておいて)デジタル化の進展によって「コンテンツ」と「メディア」が対になって結びつく必要はなくなった。僕は「U2」の「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」というコンテンツ自体を購入したのであって、CDというメディアを購入したのではない。だからそれをMDで聴こうが、iPODで聴こうが、PCで聴こうが関係がない、ということが可能なわけであり、であれば、ネットワーク上にストレージし、PCやネットワーク接続が可能となったステレオ、モバイル、カーオーディオなどあらゆる個人のデバイスで利用可能とする――これが将来的な流れでありビジネスモデルとなりうるのではないかと思っている。
あらゆるデバイスとまでいかなくとも、KDDIの端末に関しては「電話番号」やそれ以外の個人識別子が合致する限り、購入した曲やこれまでの自分の資産を利用可能なフォーマットにエンコードし直すことでネットワーク上に保存し、いつでもダウンロード可能とする、といったことくらいはやって欲しかったところだ。今のSDカードに保存というのはあまりに中途半端な形であり、興醒めしてしまうのだが。。。
【東洋経済「通信はどこまで安くなるか」を読んで】
通信はどこまで安くなれるか ―固定電話をめぐる争点
通信はどこまで安くなるか ― ブロードバンドをめぐる争点
「着うた」は聴くものではない。自分のお気に入りの曲で電話が鳴り、周囲に対して、自分のセンスやスタイルをアピールし、あるいは自慢するためのものだ。もちろん自分にとってお気に入りの曲であることが大前提ではあるのだが、「周囲に対して」というのが普及のためのポイントになっているのだろう。ちょっとした自慢、話題の中心となること――そうした要素が手ごろな値段で買えることに価値があるのだ。
これに対して、「着うたフル」はあくまで個人の世界に閉じるものだ。少なくともウォークマンの代わりとして使うのであればヘッドフォンは必須であり自分の好きな曲をいつでも聞ける必要がある。間違っても周囲に自慢するためにがんがんスピーカーから流すというものではない。
東洋経済「通信はどこまで安くなるか」の囲み記事の中で、「着うたで、モバイルとの音楽ニーズが高いことを再認識した」という神山KDDIメディアビジネス部次長のコメントがあったが、これなども本当に特性の違いを理解しているのか疑わしい。
ウォークマン以来の音楽をいつも身近に楽しみたいという欲求の延長線上に「着うたフル」はある。しかしこれは所謂「モバイル」ということが重要なのではない。iPODやHDDプレーヤー、メモリープレーヤーであろうとデバイスとしては何でもいいのだ。そうした欲求を満たすためにより便利なデバイスとして、どういう形態がありうるか、ということが大切なのである。
「ITmedia:「着うたフル」に関する5つの疑問」の記事を見る限り、「着うたフル」はminiSDカードを利用してダウンロードした楽曲をムーブできるようだ。電話番号を鍵としたセキュリティをかけており、機種変更後も番号が同じであればダウンロードした曲を引き継ぐことができるという。着うたフルの1曲あたりの容量が1.5MBなので、128MBのSDカードを使った場合、85曲ほどを常時持ち歩けるようになる。
ITmediaモバイル:「着うたフル」に関する5つの疑問
CNETjapanの記事によると、ジャケット写真などの画像や歌詞などとともに配信するというから、これは実際の利用用途としては大して使われないだろうけれど、友達にちよっとした時に自慢したりと感覚的な部分で嬉しいサービスだろう。
KDDI、第3世代携帯電話向けに音楽配信サービスを開始
ただ個人的な感想としては、既に持っている音楽資産を活用できるのかどうか、SDカードというメディアが適切なのかというのも疑問として残る。
iPODの場合、既に持っているCDやMP3ファイルをそのまま取り込むことが可能だ。まして日本の場合、持ち運べる音楽デバイスとしてはMDが普及している。これら既存の資産をSDカードに移すなり何なりして利用できるのかどうかは普及のためのポイントとなるのではないか。結局、家のミニコンポではCDやMDを使わざろうえないのでは、わざわざ外出する時のためだけに「着うたフル」で曲を買うという気にはなれないだろう。
いったん個人が手に入れた音楽はあくまで個人が好きな場面で聞けるものだ、という視点で音楽デバイスは作り上げなければならない。
もう1つ、楽曲を保存するメディアが何故SDカードなのだろうか。これがSDカードが非常に普及しているというのなら別だが、単にデバイスの大きさとメーカー側の論理で決められたという気がしてならない。USB接続を可能とするのであればPCへの保存、家庭ではPC経由での再生といった展開も可能であるし、ソフトバンクの「ネットワークHD」ではないけれどキャリア自身がネットワークストレージを提供すればSDカードなど持ち歩くことなく、いつでも自分の聞きたい曲をネットワーク経由で聴くことができる、という環境が提供できるはずだ。
『「コンテンツ」と「メディア」の分離の向こうに』にでも軽く触れているが、(著作権法の整備などの条件は置いておいて)デジタル化の進展によって「コンテンツ」と「メディア」が対になって結びつく必要はなくなった。僕は「U2」の「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」というコンテンツ自体を購入したのであって、CDというメディアを購入したのではない。だからそれをMDで聴こうが、iPODで聴こうが、PCで聴こうが関係がない、ということが可能なわけであり、であれば、ネットワーク上にストレージし、PCやネットワーク接続が可能となったステレオ、モバイル、カーオーディオなどあらゆる個人のデバイスで利用可能とする――これが将来的な流れでありビジネスモデルとなりうるのではないかと思っている。
あらゆるデバイスとまでいかなくとも、KDDIの端末に関しては「電話番号」やそれ以外の個人識別子が合致する限り、購入した曲やこれまでの自分の資産を利用可能なフォーマットにエンコードし直すことでネットワーク上に保存し、いつでもダウンロード可能とする、といったことくらいはやって欲しかったところだ。今のSDカードに保存というのはあまりに中途半端な形であり、興醒めしてしまうのだが。。。
【東洋経済「通信はどこまで安くなるか」を読んで】
通信はどこまで安くなれるか ―固定電話をめぐる争点
通信はどこまで安くなるか ― ブロードバンドをめぐる争点
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます