美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




今日は東京都写真美術館の『マリオ・テスティーノ写真展』に行った。
開催は日曜日(11/21)まで。写真美術館の二階、三階を使っていた。大
きなフロアを仕切ることなく、壁一面に大振りな写真をゆったりと展
示している。ブランド物の服はほとんど持っていないけれど、ファッ
ションの世界にはなんとなく興味がある。学生の頃にヴィム・ヴェン
ダースの『都市とモードのビデオノート』を観た影響だったかな。一
流の映画監督がファッションデザイナー山本耀司の仕事を追ったこの
フィルムの中の世界は、とても刺激に富んで見えた。その中でヴェン
ダースとヨウジ・ヤマモトが一冊の写真集を巡って共感する場面があ
った。アウグスト・ザンダーの『二十世紀の人々』という写真集。こ
れはドイツの様々な職業の人たちを正面から撮影したカタログ的な写
真集です。モデルは必ずしも経済的に恵まれた人たちではないけれど、
その人たちが着ている日常的な服・実用的な服はとても美しいと思う。
厳しい冬の寒さに耐えるためのコート。そのコートにできるしわに美
しさを感じる。そんな服が仕立てられたらいいな。そんなことをファ
ッション・デザイナーが訥々と語っていた。それがすごく印象に残っ
ている。
# もっとも彼がデザインした洋服は一着も持っていませんが...

そのうちにスーパーモデルなんて言葉が広がるにつれて、世の中全般
的にファッションへの関心が高まっていたのではないかな。ファッシ
ョンやモデルを特集する雑誌、テレビ番組が増えていったように思う。
あるいは私の関心がそちらに向かっていたのか。

そんな中で観たのが文化村の『ピーター・リンドバーグ写真展』だっ
た。

スーパーモデルを主役にしたピーター・リンドバーグの写真は、ファ
ッション写真というよりも作家性の高いポートレートのようにみえた。
モデルたちが、ある時は激しく、ある時は静かに、感情をあらわにし
ながらフレームに収まっていて、とても生き生きしていた。この頃は
ナオミ・キャンペルやシンディ・クロフォードが有名だったけれど、
リンドバーグ展の会場で人気があったのはケイト・モスというモデル
さんだった。

背が小さくて他のモデルに比べると地味な印象を持ったのだが、若い
女の子たちには身近な存在に思えるようで、彼女の写真の前で口々に
可愛いねと言っていた。女性にはこんなモデルさんが人気あるのか。
そう思った。

一方、私の好みはアンバー・ヴァレッタというモデルさん。すらっと
した清楚なポートレートが何枚かある中で、天使の羽をつけて通りに
佇む写真がとても好きだった。『ベルリン天使の詩』にかぶれていた
せいだろう。彼女の写真が欲しかったのでカタログを買った。おかげ
で、今、こうして当時の事を思い出すことが出来ている。

その後、ファッション写真への興味が高まって、ちょこちょことその
手の写真集を買うようになった。その中の一冊に『kate』がある。こ
れはケイト・モス本人が自分で選んだお気に入りの写真を一冊にした
もの。当時二十歳前後の女性の、とても表情が豊かな、気持ちのいい
写真集です。ソフトカバーで求めやすい価格だったけれど、今は売り
切れているみたい。

そんなファッション(あるいはモデルさん)に対する趣味も次第に薄ら
いでいたのですが、今回はなんとなく写真美術館に足が向いた。ポス
ターのペインティングした女性はケイト・モスだった。気付かなかっ
たのは不覚だった。

ケイトの写真から始まる二階の会場で、大きな写真を少し離れたとこ
ろからゆっくりと見て回るのは気持ちよい。お客さんには若い女性が
多かった。ダイアナ妃のポートレートなどもあった。日付は1997年と
ある。随分と最近の写真に思えて戸惑った。その後の不幸を考えると、
こんなに元気そうなダイアナ妃の写真はあまり見たくなかったな。

三階に行くとさらに有名人の写真が増える。ローリングストーンズや、
ミック・ジャガーとその家族の写真。ロン・ウッドの家族は下着姿で
風呂場で撮られていた。これはロッカーとしてどういうものだろう?

今回、一番、印象的だったのはマドンナの写真だった。マドンナはデ
ビュー時から知っているので、なんだかんだと気になる存在だ。コン
サートの模様を収めたドキュメンタリー映画のDVDも持っているく
らい。今回は1998年のレイ・オブ・ライトのジャケットやエビータ
衣装をまとったポートレートがあった。エビータの写真は静かで美し
く、絵画のように見えた。その中で最も好きな一枚は、マイアミで撮
影されたプライベートの写真だった。とても穏やかな、良い表情をし
ていた。

一枚だけ、懐かしのアンバー・ヴァレッタの写真があったけれど、と
てもけばくて、見ていられなかった...

美術館のショップにはピーター・リンドバーグやヘルムート・ニュー
トンの写真集が平積みされていた。私にとってはそちらの方が王道に
近いように思える。こうした写真集を手に取ることで、今回、マリオ・
テスティーノをきっかけにファッション写真に興味を持った人も、ま
た、ちょっと違った方法論を見つけ、新しい世界にはまっていくに違
いない...

コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (なしはち)
2004-11-24 01:21:29
トラックバックのお返しありがとうございました。マリオ・テスティーノ展は、若い女性客が多かったですね。ボクは、彼女がドレスアップして来ただけで、一緒に歩くのを気恥ずかしく思うような人間なので、こういうものの埒外に存在してるんですが、まぁ、見ていて豪華な感じはしましたです。
 
 
 
Unknown (lysander)
2004-11-27 02:12:11
コメントありがとうございます。



会場は気持ち良い見せかたでしたけれど、

写真としてはいま一つ好きになれません

でした...



ファッション写真もいろいろな人がいろ

いろな人を撮っているので、自分の好み

の写真家やモデルを探すのは、結構、楽

しいと思いますよ。
 
 
 
TBありがとうございます (おけはざま)
2004-11-29 23:30:51
拙blogにトラックバックありがとうございます.



この展示,大きなプリントが迫力でした.モデルの瞳の虹彩がきれいに写ってるのに感動しました.



大好きなキャメロン・ディアスに萌え萌え



では,また.(今後ともよろしくお願いします.)

 
 
 
マリオ・テスティーノ写真展 (GrandPrixEyes)
2004-12-22 23:52:59
はじめまして。blog拝見させて頂きました。

話題としては、1ヶ月以上前で旬は過ぎていますが、

とても大好きな写真家なので、コメントさせて頂きました。

神戸在住なのですが、開催時に東京に行ったので、

時間を調整して写真展に足を運びました。

素晴らしかったと言えば十分に伝わると思いますので、多くの言葉は控えますが。

写真集では伝わらない、様々なディテイルが伝わってくる感じでした。

 
 
 
Re: マリオ・テスティーノ写真展 (lysander)
2004-12-23 01:54:16
コメントありがとうございます。



> 写真集では伝わらない、様々なディテイル



そうですね。どんなにきれいに印刷しても本物

にはかないませんものね...



また、良ければ、書き込んでください。
 
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