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写真はものの見方をどのように変えてきたか 第二部『創造』(東京都写真美術館)
美術
/
2005-07-16
というわけで東京都写真美術館十周年特別企画の第二部です。第一
部が写真創世記の技法を示していたのに対して、第二部ではカメラ
という道具を使うことによる表現の広がりに焦点をあてていました。
断然、こちらの方が楽しい...
カメラオブスキュラと呼ばれていた頃のカメラは絵画のモデルを写
すために使われていたようですが、光を固定できるようになってか
らは表現としての写真が工夫されます。その第一歩が絵画のような
写真を撮ろうという試みです。ミレーの絵画のような農村の風景を
撮った写真もありました。ただし、こうした写真は作為的になりや
すくてどうもうまくない。油絵だったら色もつきますしね...
といったところから写真らしい工夫をしていくことになります。
表現としての写真の基本は光を捕らえるということ。自然をモチー
フにした写真の中でも雨上がりの陽射し、雲の輝き、路面の反射、
そうしたきらきらした光が息づいて見えました。
日本の写真家では福原兄弟の作品にモダンな香り。モダンとは言え、
日本人でなければ表現できない構図だったりモチーフだったりして
いるように思いました。
スティーグリッツから始まる著名な写真家たち...今回は流れを追う
展覧会なので、スティーグリッツ1枚、アウグスト・ザンダー3枚、
ブラッサイ1枚...と、著名な写真家の作品でも限られたものしか観
られません。その中でも印象に残るのはカルティエ・ブレッソン...
代表作の水たまりを飛び越える男のイメージは、それまでは静的だ
った写真に動きを与えたこの表現は、多くの写真家に影響を与えて
いることでしょう...
風景写真ではアンセル・アダムスの『月の出』が印象的です。横長
のシャープな画面はすみずみまではっきりしています。手前の墓地
には夕暮れであろう水平の光が射していて、それは遠く山の上にか
かる雲に複雑な影を与えています。その背景の沈んだ闇の中に、ぽ
っかりと浮かび上がる月...こうしたイメージを絵画で表現すること
はできないのではないかな。写真の風景描写に新しい地平を切り開
いた作品だと言えるでしょう。先日、奈良原一高の写真について書
きました(
これ
)。あの広い平野を大きくとらまえる作風は、きっと
アンセル・アダムスから影響を受けているに違いありません...
と、これは、重い月...
ブランクーシの彫刻の写真は一点の隙もありません。ぴんと張り詰
めた空気。無駄のない形態。光。自分の彫刻は自分でしか写真に撮
れないと考えたのにもうなずけます。ブランクーシの作品集には求
龍堂から出ていた『
ブランクーシのフォトグラフ
』があります。も
う絶版なのだな...あぁ~...あの頃はよく本屋で見かけたのになぁ...
買っておけばよかった~...古本屋巡りか...
桑原甲子雄のひょうひょうとした電柱を俯瞰した作品や、市井の人
を写すのがとても巧みな木村伊兵衛の沖縄も印象的です。そして、
最後の部屋の、アヴァンギャルドな日本人の写真家たち...戦前、戦
中にこんな大胆な作品が撮られていた事に、少し驚き...夜の街に浮
かぶ時計が酔っ払っているかのような小石清イメージや、青い壁に
自転車漕ぐような平井輝七のイメージは、初めて実物が見られまし
た...あとは山本悍右という人の、砂浜に浮かぶ人の写真...小さな
白黒の作品なのですが、とても不思議なイメージでした...
・
写真はものの見方をどのように変えてきたか
(第二部は7/18まで)
・第一部の感想は
こちら
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