美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




森美術館の南條史生館長がアートディレクターを務めた『シンガポ
ール・ビエンナーレ 2006/2008』から、政治的、社会的文化的な問
題提起をする作品を選んだ展覧会。映像作品が多いので好き嫌いは
分かれるかもしれませんが、これはいい企画だと思いました。

『バチェラー 二重の理論』リー・キーボン(韓国)
水の中にゆったりとたゆたう書物はヴィトゲンシュタインの『論理
哲学論考』。そんな仕掛けがなくても視覚的に十分に美しい作品で
す。


『シジフォスの神話』トマス・オチョア(エクアドル)
普通の人たちが自分の言葉で語る自爆テロ。その言葉は実行犯の両
親や生活、信仰にも及びます。想像力。モロッコとスイスで取材さ
れたインタビュー映像に、それぞれの土地の生活の様子が挿入され
るのも効果的です。

『農民とヘリコプター』ディン・Q・リー(ベトナム)
オープニングは童謡から始まります。
> トンボが空高く飛ぶときはお天気...
> トンボが中くらいを飛ぶときはしとしと雨...
> トンボが低く飛ぶときはざあざあ降り...
どことなく懐かしさを感じさせるメロディーに続くのはヘリコプタ
ーの爆音。自分たちのヘリコプターを持つことに情熱を燃やす人、
昔の記憶が生々しく残る人。そんなインタビューの合間にベトナム
戦争や『地獄の黙示録』の映像が挿入されます。今昔、好悪、虚実、
いろんなものがないまぜになって、迫ってくるものがありました。

『裁判所21号法廷』セルジオ・プレゴ(スペイン)
写真機を設置した部屋の中央に立ちのぼる煙。そのイメージを端か
ら繋いでいくと、もくもくとした彫刻のように見えます。これは面
白い。

『アドレス(プロジェクト:アナザーカントリー)』アルフレド&イサベル・アキリザン(フィリピン)
海外からフィリピンに送られた荷物を集積させた作品。几帳面に詰
め込まれた宅配便を几帳面に積み上げた様は圧巻です。


『私の闘い』リスティナ・ルーカス(スペイン)
ニューヨークのストリートで熱く語られるのは芸術の可能性。芸術
体験を共有することによって共通の価値観を持とうというメッセー
ジ。そんなことを語るこの人がこれからどんな作品を作っていくの
か。あるいは作ってきたのか。とても興味があります。

『ECHO』松蔭浩之(日本)
やばいです。剥き出しの暴力。凄いと思った。

『日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ』会田誠(日本)
やばいです。剥き出しの脱力。凄いと思った。
# この作品だけはお昼にビールを引っかけてから観ました...(^^;

『漂流する人々』チャーリー・ニジンソン(アルゼンチン)
今回の映像でもっともインパクトに残った作品です。ボリビアの塩
原で撮影された映像。どこまでも続く水辺に合わせ鏡のように写っ
た空...そこに住むのは貧しい人々なのだそうですが、水と空との境
界にたたずむ人影は、とても荘厳なイメージだと思いました...


単に問題を提起するだけではなく、いろんな視野を喚起してくれた
り、それをイメージとして昇華させていたり、興味深い作品が多く
ありました。

堂島リバービエンナーレ2009『リフレクション:アートに見る世界の今』 8/8 - 9/6


なお、上の写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁
止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。


おまけ その壱
シンガポール・ビエンナーレのサイト
# 次は来年...

おまけ その弐
本展の出展アーティスト、会田誠と松蔭浩之の女性談義

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コメント
 
 
 
教えてください (meme)
2009-08-25 21:07:55
今週末行く予定ですが、全部見るのに
どのくらいの時間がかかりましたか?
 
 
 
Re: 教えてください (lysander)
2009-08-26 00:55:20
memeさん
こんばんは

> どのくらいの時間がかかりましたか?
途中、堂島リバーフォーラムのカフェでビールを
補給したりしたので、二時間半以上かかりました...(^^)
 
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