美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




今回の展覧会でのカフェトークもこれで最後か...高嶺さんを知った
のは横浜トリエンナーレの『鹿児島エスペラント』でした。あの巨
大なインスタレーションは思い出深いトリエンナーレの中でも、と
りわけ強い印象を残してくれました。

トークはそんな作品の思い出話から始まります...

高嶺さんはビエンナーレやトリエンナーレといった大規模な企画展
に懐疑的だといいます。そもそも作家のプロフィールを当然の如く
日本語と英語で要求されるのが嫌だという...鹿児島弁とエスペラン
ト語を組み合わせた『鹿児島エスペラント』はそんな違和感から生
まれたのだそうです。

この作品は現場で廃材を集めて作った作品で、実質的な制作期間は
二週間しかなかったそうです。まっくろい大きな空間に流れるアリ
ア...あの作品がそんな短期間で作られたとは...

高嶺さんはもともとダムタイプのメンバーだったそうです。ダムタ
イプはダンスを中心としたパフォーマンスをする集団です。前から
名前は知っていたのですが、観たことはなかったな...

ダムタイプではみんなの意見を聞きながら集団で創作するスタイル
をとっていたそうです。高嶺さんは時々芝居の演出などをするのだ
そうですが、やはり皆の意見を聞きながら作品を作るそうです。あ
まり自分を出したくないと言っていました。

それは川俣さんも同様で『自分の中には何もない、むしろ、人や場
から引き出されるものがある』と言います。そんな言葉を聞いて、
昨年、芸大美術館で観た『自画像の証言』のラバーの肖像にがてん
が行きました。また『オーダーがあるから作品を作るのであって、
自分の中にはオーダーがない。オーダーがこなかったら仕事をして
いないだろう』てなことも言っています。

会場からの、現代美術をどのように理解すればいいのかといった質
問に対して川俣さんは『アートというものは性急に答えを求めるも
のではなく、自分の中でゆっくり時間をかけていくもの』ではない
かと言いました。勉強すれば答えが出るわけではく、むしろ煙草の
ような嗜好品ではないかとも。『簡単に答えがでないところ、分か
り合えないことを分かるといったところがアートの面白さなのでは
ないか』『アートは答えを出すものではなく、疑問を提示するよう
なところがあって、それに答えを出すのは観客』とか。生のアーテ
ィストの言葉がとても面白い。

高嶺さんは『どこかひっかかりのあること、それを伝えるうまい方
法を見つけた時が快感』なんだと言っていました。また、言葉だけ
で作品を伝えることは土台むりなことで、そんな言語化できないも
のの中に本質があるようなこともおっしゃっていました。

面白いと思ったのは『会員制の展覧会』という川俣さんのアイデア。
京都の頑固な小料理屋のように、お客を選ぶ展覧会をしたいそうで
す。とっても面白そうだけど、私は観ることができるのだろうか...(^^:

川俣正展『通路』(東京都現代美術館) - 4/13


あと、高嶺さんの鹿児島エスペラントについて書かれた記事をいく
つか見つけたのでリンクします。
高嶺格「鹿児島エスペラント」伝 (イルコモンズのふた。)
横トリ回想:鹿児島エスペラント (delestage)

さらに東京国立近代美術館で開催中の『わたしいまめまいしたわ』
に展示されている『God Bless America』の詳細な解説。
現代美術への視点:連続と侵犯 高嶺格

コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (meme)
2008-02-25 22:12:40
連日のコメントごめんなさい。
高嶺格さんの話題となるとついつい。。。
横浜ビエンナーレでのマイベストはこの高嶺格さんの
作品でした。
タイトルは記憶せず、そのお名前だけしかと記憶し
帰宅後、ネットでどんな方かを調べました。
「水の情景」展にも作品が出展されてましたよね。
このトークショーに参加されたとは羨ましいです!
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-02-25 23:54:59
memeさん
こんばんは

> 「水の情景」展にも作品が出展されてましたよね。
あの水を使ったインスタレーションも凄くよかったですよね...

> このトークショーに参加されたとは羨ましいです!
"オーダー"があったらもっとまじめにメモしたのですが...(^^;
 
 
 
記事リンクさせていただきました (テツ)
2008-02-26 14:42:40
川俣正についての一連のレポート、
楽しみに拝見させていただいています。
この日のトークは私も聴いておりました。

拙ブログにて、lysanderさんの記事を
リンクで紹介させていただきました。

どうぞ、ご了承ください。

http://blog.livedoor.jp/schizou/archives/50930117.html

通いだすとくせになる展覧会ですね。
 
 
 
それは私です。 (artshiroto)
2008-02-26 18:15:28
アーティストは『通路』である (川俣正×高嶺格 at 東京都現代美術館)

を拝読いたしまして、この記事の中にある会場からの質問「現代美術の意味」を聞いたフトドキモノは何を隠そう、私でございます。(恥)lysanderさんは、あの日どの変にいらしたのでしょうか?少し自己紹介をさせていただきますが、私は現在休職中の身で、これからの仕事や生き方を模索中であります。悪あがきをしている中で今のところ最も興味を持っている分野が現代美術でして、従って現代美術の展覧会やギャラリーに通い始めたのはここ1~2ヶ月といったところです。あの日もそしてなんとその前の日もあほな質問をする私に川俣さんは実に判り易く大人のアーティストとして道を示してくださいました。そしてlysanderさんも大きな気持ちで会場からの質問についてレポートなさっている記事を拝読致しまして思わず投稿させていただきました。本日、高嶺さんの作品を見に近代美術館に行ってまいりました。私はあんなに判りやすい作品を実際に見もせずに、会場であのような質問をしてしまい、ご本人にひざまづいて誤りたい気持ちです。(恥)創造力と読解力に欠ける私にとってlysanderさんのこのブログ大変参考になります。
今後ともお勉強させていただきたいと存じます。
どうぞよろしくお願い致します。artshiroto
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-02-27 01:26:16
テツさん
リンクありがとうございます。

> 拙ブログにて、lysanderさんの記事を
> リンクで紹介させていただきました。
恐縮です...

私の感想では飛ばしてしまいましたが、マンガン鉱をめぐって、
その場を立ち去る自分とそこに残り続ける館長さんについて語る
高嶺さんの言葉も印象に残りました。

> 通いだすとくせになる展覧会ですね。
くさやですから...(^^;
 
 
 
Re: それは私です。 (lysander)
2008-02-27 01:37:32
artshirotoさん
こんばんは

artshirotoさんが質問さた時は一瞬ひやっとしたのですが、
川俣さんの切り返しはうまかったですね...

こういうのを観に行くのを趣味にしていると、その意味を
あらためて考えたりしないのですが、そうした自分の中で
あたり前になっている、だけど言語化したことのなかった
もやっとしたところが、川俣さんの言葉で形になったので
とてもよかったです。
# 私的には...

こういうのをきっかけにして、何か見つかるといいですね。
ではでは。
 
 
 
Unknown (panda)
2008-02-29 13:24:07
cafetalk「医療は〔通路〕である」
を聞きに行ったのですが、
(lysander)さんによる
「アーティストは〔通路〕である」
がより一層興味深く思いました。
トークのエッセンスだけでも
十分堪能できました。
また行ってこようと思います。
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-03-01 02:25:39
pandaさん
コメントありがとうございます。

> cafetalk「医療は〔通路〕である」
> を聞きに行ったのですが、
なんでも質問コーナーの途中から精神科のお医者さんの
個人カウンセリングのようになったと聞いたのですが、
いかがでしたか?
それはそれで面白そうに思うのですが...
 
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