美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




久しぶりに観ました。それこそ十五年ぶりでした。学生の頃は
名画を観に映画館に赴く的な気張りで、正直言ってあまり面白
くなかった。今回再見したところ、単純に面白かった。

一人の女性を巡る、タイプの異なる四人の男性の悲喜こもごも。

ドイツ占領下のフランスで、通貨の暴落を恐れたお金持ちが早
く財産を処分したいという都合もあったようですが、贅を尽く
した舞台美術。長さ150メートルの犯罪大通りをオープンセット
で組むのだもの。見世物小屋や劇場を含めてディティールがす
ごく凝っています。これはひとつの街ですね。

エキストラの数も半端じゃない。千人単位の街の人たちがフレ
ンチカンカン踊って、大道芸見て見せて、馬車に乗って、すれ
違って、すって、すられて...
あの開放感はどういうことだろう。抑圧された状況だからこそ
表現できた自由への渇望ではないでしょうか。

昔はもどかしかった劇中劇のパントマイムも、今なら味わいが
感じられます。もどかしさの原因を自分なりに考えると、当時
の善悪の判断で、以前は白塗りのバチストがとても可哀想で、
ずるい奴らに陥れられているような印象を持っていたのでした。
だからああいったゆったりとした所作にいらつきを感じたので
しょう。

今回あらためて観たところ、この映画には、完全な善人、完全
な悪人は、出てこなかったと思います。それは普段の生活でも
思いあたるところで、相性の良し悪しはあるにしても、完全な
善人、完全な悪人なんているわけありませんものね。そうした
眼で見ると、バチストの悲しげな動きはガランスへの煩悶であ
るとも考えられます。

そうした人が生きていく上での機微というか、とても繊細な状
況を、あえてメロメロのメロドラマにしてしまうところが何と
も粋だと思いました。

若者君だったころにはちっとも面白くなかった丁丁発止の台詞
の応酬も耳に心地よく感じられました。
# といいますか、字幕が目にしみるといいますか...


それにしても公式サイトの大げさな宣伝文句!
全世界映画史上燦然と輝く金字塔!
こういったいかにも名画を奉るような言葉に惑わされることな
く、肩の力を抜いて観るのが吉でしょう。

この作品は、日本で洋画のオールタイムベストテンなどの企画
があると常に上位にくる作品です。それはそうでしょう。公開
された1952年あたりは、まだまだ戦争の傷跡が残っていたので
しょうから。ちなみにこの年のキネマ旬報ベストテンで3位に
なっています。1位は『チャップリンの殺人狂時代』、2位は
『第三の男』でした。

さて、それでは海外での評判はどうでしょう。

インターネットムービーデータベースでは平均点は高いものの、
投票者が少ないために、トップ250からは漏れています。

あるいはこんなランキングもありますが、51位。

やっぱりアメリカ映画が幅をきかせる英語圏のランキングでは
分が悪いのでしょうか。欧州の映画ランキングなどがあれば、
是非、見てみたいものです。

また、原題がこんなです。

仏:Enfants du paradis, Les
英:Children of Paradise

舞台から一番離れた天井に近い席を『パラダイス』というのは
慣用なのでしょうか?あと『チルドレン』で普通の人々を指す
ような使い方はするのでしょうか?

もし、語学に詳しい方がいらしたら、コメントいただけると幸
いです。

とりあえずは金曜日まで、池袋西口メトロポリタンプラザ8階
のシネ・リーブルでやっています!

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