(Image source: nkino)
おめでたいニュース・・・
チャン・ジン監督、5月ご結婚おめでとう
結婚しちゃったら、『小さな恋のステップ』みたいな作品はもう書けない? だって、妻子持ちにはああいうシナリオは書けないって、ジェヨンが言ってたから・・・ それとも、以外とメロ路線に走ったり・・・
おめでとう記念ということで、レビュー(もどき)をすっかり怠けていた監督の長編デビュー作『あきれた男たち(기막힌 사내들)』(1998年 監督:チャン・ジン)を再見。
国会議員連続殺人事件に絡んで、容疑者としてあがってくる男4人。それぞれ、事件とは無関係にもかかわらず、その奇妙な行動と、偶然と奇跡と誤解から、警察から目を付けられる。果たして、警察はこの事件を解決できるのか。おかしな4人組の運命は・・・という感じのストーリー。あらすじを書くと面白くなくなっちゃうので・・・適当に書いてみた。
オフビートどころか、オフ x 3 ビートぐらいのノリ 。10年前のチャン・ジン コードには、監督も若かったせいか(笑?)、最近の作品よりももっとスピード感もあって、1度可笑しさのスイッチが入ると、すべてが頭の中で可笑しくなってしまう。音楽も洒落てるし、途中からミュージカルになってしまったのには驚き。
笑いや緊張感、スピード感の中にも、必ずふと胸を摑まれるような気持ちになる場面やセリフがあるのは、変わらないのねー。だから好きなのよね 。
この作品、監督の長編デビュー作品なのに、面白いことに、これまでの数々のチャン・ジン作品の趣きがすでに垣間見えていたりするのは気のせいかしら。冒頭の刑務所は、『偉大なる系譜』を思わせるし、電柱は『小さな恋のステップ』だし、刑事と容疑者のかみ合わなさは『拍手する時に去れ』だったり、男が4人並ぶとキラーじゃないけど奇妙な男版『Gun&Talks』だったり、刑務所から出所した父と娘というテーマは新作『息子』みたいだし・・・
この出演陣は、お見事というほどバランスが取れている。チェ・ジョンウォンとヤン・ペクチュのおっさんコンビ、ソン・ヒョンジュの間の抜け具合、シン・ハギュンのハッとするほど溢れる若者の色気、イム・ウォニの調子はずれな刑事・・・ ハギュのデビュー作であることは知っていたけど、あれ、ジェヨンも出てたのね・・・前に見た時は気づかず(なんてこった)・・・ それに、若き日のオム・テウン?って思ったら、やっぱりそうだった。見どころ満載!
結婚して、若い嫁さんにデレデレでもいいけど、作品はどんどん書いてね、監督。
『絶対の愛(原題:時間)』の公開記念、キム・ギドク監督のレトロスペクティブ、スーパー・ギドク・マンダラ(2/24~3/16)の初日。ギドク監督の第2作目にあたる『ワイルド・アニマル』(1997年)の上映に先立ち、監督が舞台挨拶に登場。(今回、第1作目『鰐』は諸事情により上映できなかったそうだ。)
ギドクファンが多いことは知っていたけど、もちろん会場は満席で、熱かった。
この作品は、ギドク監督が、ほとんど無一文の状態でパリに渡り、パリで撮影。韓国公開当時はいつの間にか、映画館から消えていたそうで、まさかこの作品が再び劇場で上映されることになるとは思ってもいなかったそうだ。
この作品を発表後は、「危険な監督」のレッテルを貼られ、『悪い男』の頃には、「悪い監督」と呼ばれたとか。第1作目『鰐』は、100人の評論家のうち2人しか自分の作品を支持してくれる評論家はいなかった。その2人とは、現在CINE21の編集長と、映画評論家チョン・イルソンだそうだ。
撮影エピソードは、ストリップ街の撮影時に警察がやってきて、この場所で撮影するなと警告された。どうしても撮影するとダダをこねたら拳銃で脅されたが、フランスは芸術の国であるはずなのにどうして撮影してはないけないのかと、壁に拳を10回ぶつけて猛抗議したところ、警察が30分だけの撮影許可をくれ、その後撤収したとか。結局そこで30分間に撮影したのは5カット。
「『ワイルド・アニマル』で描きたかったのは、3人の人間。韓国から留学してきた男(チョ・ジェヒョン)、脱北した北朝鮮の男(チャン・ドンシク)、養子縁組で韓国を離れパリで育った女(チャン・リュン)。」
この3人がパリでめぐり合いその交流を描いたものなのだけど、舞台がパリということもあって、無国籍映画を観ているような、そんな感じがした。3人とも国を離れた理由はまったく異なるが、共通しているところは、異国での生活が、他人を利用し、他人から利用され、ひたすらに孤独であることと、この3人には、同胞の血が流れていることだ。
「パク・チャヌク監督『JSA』の低予算版と思ってください」
たしかに、南と北の人間が心を通わすというテーマを持っており、国とか国境とかそういうしがらみにとらわれていない。そして、ギドク監督自身もこの作品は自身の愛国心の表れと語っていたが、外(海外)から見た自分の国に対する郷愁やら愛しさが随所に感じられた。
「面白くないかもしれないけど、この作品があってこそ、今の自分がある。」
「思ったよりは、いい作品だと思う。」
日本初公開。監督の言葉通り、本当に思ったより良かった。ギドク監督の作品は、セリフが少ないことで知られているが、この作品は雄弁だ。2人の男を軸にした人間関係も多彩でしっかり描かれているためか、ギドク監督の最近の作品と比べ、人間臭さがぎっしり詰まっている。でも、韓国内では支持されそうもないなぁ。色々な意味で、過激というか、チャレンジングな描写が多い。
ギドク作品は、低予算、非主流を貫いているため、製作期間も短いことで知られるが、この作品からも緊張感が溢れていて、インテンシブ(集約的)な時間の流れを感じた。
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『絶対の愛』↑ギドク監督サイン入り鑑賞券!
(Image source: towerrecords)
普段ほとんど日本のドラマを見ない私でも、ちょっと見てみた NHK土曜ドラマ(21:00~)「ハゲタカ」が面白い。まだ第1回目。NHKのまわしモノじゃないけど、NHKらしい社会派ドラマ。なかなかキャスティングもいい。
不良債権処理にあえぐ日本経済と、その時代に翻弄される人々を描くドラマ。その時代といってもつい最近のこと。1990年代後半、新聞やTVのニュースで「不良債権」という文字を見ない日はなかった。
証券会社・銀行がバタバタと倒れ、金融業界の再編が進み、スパイラル不況に陥り・・・と、そんな暗鬱な日々も喉元通りすぎれば・・・ということか。なんでも、今は景気も落ち着いて上向いているとか(ホントか・・・)。よく分からないが、新橋の週末の飲み屋の盛況ぶりが、それを語っているかも・・・
それに、自分には関係ない世界とも言い切れない。直接的ではないにせよ、実際に悲劇も起こったし、何よりも自分の価値観が大きく揺らいだ。そんな時代を振り返るドラマ。単純にセンチメンタリズムに浸れないところが重たいのだけど。
これに合わせたわけじゃないけれど、タイミングよく(?)この「ハゲタカ」を見る前に映画『バブルへGO~タイムマシンはドラム式』(監督:馬場康夫)を見た。バブル崩壊の原因となった政府の愚策を食い止めるために、母と娘がタイムマシンに乗って1991年へ旅立つ。ホイチョイらしい企画。全編が、パロディとアイロニーから成立しているため、笑っていいものなのかとやや躊躇しながらも、やっぱり笑った、笑った。
ヒロスエ・・・ 1児の母とは思えない。かわいいし上手い。邦画界では蒼井優やら上野樹里やら、ニュー世代の若手女優陣が台頭しているけど、ヒロスエだって十分若い。若いのに自分のポジションをしっかりわきまえて演じられる、そんな感じ。
阿部ちゃん・・・最近めちゃくちゃ売れてない? 映画でもひっぱりだこ。顔がちょっと濃いし、モデル出身というだけで終わるのか思いきや、いまやすっかり性格俳優の貫禄。
薬師丸ちゃん・・・「セーラー服と機関銃」のまま。ヒロスエの母親役をやる年齢なのね。
怪優伊武雅刀、劇団ひとり、伊藤裕子・・・ とキャストは豪華。
日本は、そんなに金満体質だったのか。お金はあるところにはあったのか。というより、私は、1990年~1991年にかけてバブル絶頂期に日本にいなかったので、バブル絶頂期を体験していない。バブル崩壊直前のバブル退廃期の象徴ともいうべき「ジュリアナ東京」だって知らない。ヒラヒラの羽がついた扇子をクネクネさせて踊ってみたかったのに・・・
しかし、♪Can't Take My Eyes Off Of You♪ って、ほんとあの時代を象徴する曲ね。もうすぐ、ハゲタカが飛んでくることも知らず、陽気でハイテンションで何の憂いもない。この曲を聴くと、自然に体がリズムに合わせて動きだしてしまいそうで・・・
『トンマッコルへようこそ』上映情報 !
『トンマッコルへようこそ』の上映情報(東京・神奈川)をいただいたので、まだ見ていない方、何度も見たい方は是非・・・(って、自分の覚書ですが)
横浜 シネマ・ジャック (
2/24(火)~3/9(金)
10:50/15:50
*『木更津キャッツアイ ワールドシーズン』(13:20/18:20)と2本立て
下高井戸シネマ (
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3/3(土)~3/9(金)
10:00/12:25
飯田橋ギンレイホール (
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hand_iine.gif)
4/7(土)~4/20(金)
11:25/15:35/19:45
*『弓』(9:40/13:50/18:00)と2本立て
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「ハハのテンテンクラブ(<하하의텐텐클럽>)」というラジオ番組(SBS POWER FM)で、DJ のハハ(하하)が、チョン・ジェヨンの熱烈ファンで、ぜひラジオ番組に出演してほしいと公開出演ラブコールを送ったとか。マネージャを通さず、直接交渉を貫きたいらしい(笑)。
こんなことがどうして記事になっているのか、よくわからない
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おまけに、「정재영♡하하」 が 一時、Naver の検索キーワードの Top1 に躍り出たらしい。こんなことがどうして? 話題になるのか、不思議だわー。
きっとジェヨンがラブコールに応えたら、またニュースになるに違いない・・・
一体ハハって誰? ハハの名で『恋愛術士』、ハ・ドンフンの名で最近では『誰が彼女と寝たのだろうか』などの映画にも出演。TV番組でもラジオ番組で活躍のマルチタレントらしい。
ハハの正体→
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もし、ジェヨンが出ることになったら聴くだけ聴いてみたい気もするけど・・・
このラジオ番組は SBS POWER FM で 毎日午後10時~12時に放送。
実は今、これを書きながらこのラジオ番組をリアルタイムで聴いているのだけど、ラジオだから映像はもちろんないし、何を言っているのかさっぱり・・・
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おっと、ジェヨンの話をしてる・・・ ということはわかるのだけど・・・
まったくお手上げ・・・ハハ(←これ、オチです。笑うところね
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今週後半、クレーム処理案件でヘロヘロ、さらに暗雲漂う来週を思うと超ブルーな金曜夜。そんな私に届いたこのDVD。それこそ、 Welcome 『웰컴 투 동막골』韓国限定版
「遅ればせながら」のファンなものだから、自分が目覚めたときはすでに完売状態。限定5000個だと言われていたけど、本当はもっとあったのかな?
あと少し待てば日本語版発売になるし、絶対に買うまいと思っていたのだけど、ある日手が滑った。韓国製ならではの(なぜか)
何度も見ているのに、何でまた見ているんだか・・・
だって好きなんだもん、この映画。日本でのレビューを読むと、評価は色々、観る人によってホント視点って違うものなのね。個人的には、自分が気に入ればそれでいいので、超自己満足&自己完結型。
絵コンテBOOkを見ると、映像は絵コンテにほぼ忠実に再現されている。絵コンテの中で最も異なる部分は、人民軍兵士リ・スファの容貌・・・ 頭は bold(=ハゲ)だし、顔は細面で小さくラッキョウみたいだし、あご髭は聖徳太子の髭を短めにカットしたみたいだし、顔の傷は顔の中央に縦に入ってるし・・・ bold なジェヨンは見たくないので、そこは、絵コンテに忠実じゃなくてよかった
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そして、監督パク・クァンヒョン、ジェヨン、ハギュン、へジョンの4人のコメンタリー。韓国語で何を言っているかわからない。わからなすぎて、とっーてもイライラ、ストレス溜まりそうだし、見てて意味あるのかーと思いつつ。いいの、いいの。たまーーーーに拾えた言葉にいたく感動できるから
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あまりにも静かだった『ウェディング・キャンペーン』のコメンタリーと比べて、このコメンタリーでは、監督がひたすらしゃべり続ける。どのテイクも思い入れが深いことがうかがわれる。それに加えて、キャスト3人、特に、男優2人がチャチャ入れるものだから、映像見てないんじゃないのーと思うほど、うるさいコメンタリー(爆)。
最後の戦闘場面なんて、泣けるポイントなはずなのに4人で大爆笑しているのは、なぜ? 作戦会議で武器の配置を指示するハギュのセリフ、「イチョゲ・・・、イチョゲ・・・(こっちにxxxを、こっちにはxxxを)」に、異常なほどみんな反応していることはわかったのだけど。うーむ、言葉が分からないって悲しい・・・ いつの日か、せめて半分ぐらいは絶対わかるようになってやる・・・と、こういう時だけ学習欲ボルテージが上がる
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へジョンが悲しい場面と言っていたのは、ピョ・ヒョンチョルが丘の斜面で草そりを楽しんだ後、橋を爆破して人々を殺した罪悪感に苛まれる場面。ここは鳥肌がたつほどハギュの名演技。
監督が悲しい場面と言っていたのは、ヨイルが流れ弾にあたって死んでしまったあとの、怒り収まらぬソ・テッキの行動。ここは、リュ・ドグァン君が全部持っていった場面。
コメンタリーを見ながら、この作品で、どの場面が好きかと聞かれた時のために(聞かれてないけど)、整理してみた。
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どうも「ヨイル&ソ・テッキ」がらみシーンはお気に入りだ。
ついでにどこでジェヨン堕ちしたかというと、冒頭、リ・スファが岩陰から人民軍の兵士達を引き連れて出てきた途端、
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面白いもので、無謀にも言葉のわからないコメンタリーを見るという無意味な作業にも、収穫があった。ホント、最後の最後、エンディングなのだけど。あの「蝶」の意味がわかった。私はあの「蝶」はてっきり森の精霊か何かだと思っていた。どこかの監督インタビュー記事で、あの「蝶」には深い意味があるけれどあえて明言しない、というようなことが書かれてあった。この記事がひっかっかっていたのだけど、ファンタジーコードでうやむやになっていた。ようやく謎が解けた
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そんなこんなで、深夜3:30まで、ひとりトンマッコルNIGHTは続いた。その後眠りについたら、夢の中では、トンマッコルの人々が総出演の豪華版だった(笑)。
(Image source: bokkou.jp)
週末は、なぜか男くさい映画を2本立て続けに見てしまった。『あるいは裏切りと言う名の犬』と『墨攻』。まったく異なるジャンルだし、異なる地域の作品。どちらの作品の男たちも、なんだかステキだった。フレンチなオッサンも、アジアンなオッサンも、好きだ。重ねた年齢の分だけ輝いていて、ヒーローであっても、悪役であっても、共感できてしまう。
でも、自称ビジュアル系なので、写真はやっぱりアンディ・ラウ!! 『あるいは裏切りという名の犬』 (2004年 監督:オリビエ・マルシャル)
銀座テアトルシネマの朝は早い。朝9:001回きりの上映って、会社に出勤する平日より早起き。京橋近辺は歩いている人もまばら。それなのにテアトルシネマの受付前は大行列。熱かった・・・
「これぞ、フレンチノワール」という作品なのだそうだ。私はあまりフレンチノワールを見ていないので、「これぞ」かどうかわからないけど、確かにストーリーも面白かったし、何よりも俳優がすばらしかった。愛妻家で忠実な刑事レオ (ダニエル・オートゥイユ)vs 野心家の刑事ドニ(ジェラール・ドパルデュー)。2人とも顔に刻まれた皺に、人生の深みや背負っているものが見えてよかった。等身大だからいいのだ、無理な設定にならなくて。人物設定って重要。この2人以外の登場人物も多彩でありながら、ほころびがない。
なぜか『グリーンカード』の人(どうしても名前が覚えられない)の野心や卑しさを非難できなかった。どんな人の心の奥底にも秘められた部分のような気がして、責める気になれなかった。刑事モノの映画やドラマは、最終的には正義はどこにあるのかという話に尽きるような気がするのだけど、やっぱり見てしまう。
ノワールに欠かせないというファムファタール的存在は、妻だったり娘だったりするのだけど、これがまた美しくて。ノワールというだけあって、暗黒、暗闇の世界だ。冒頭から「地下」を思わせる背景が意味深なシーンだった。
裏社会と警察が テンポよく動き回る。石造りの建物、道、街並みが重厚でもあり、冷たくもあり、ヨーロッパを象徴する風景が印象的だった。
『墨攻』 (2006年 監督:ジェイコブ・チャン)
智謀・策略が渦巻く紀元前の戦国時代の話である。紀元前にすでにこんな崇高な思想家とその支持者が存在していたということ自体驚き。とかく民度が問題視される現代の中国とは、あまりにギャップがあり、中国の歴史の奥深さは半端ではない。
「非攻」、「兼愛」などの十箇条を掲げる墨子の思想を支持する墨家。「非攻」を貫き、敵に攻められたら守りに徹するから、守りのプロなわけだ。「非攻」が実現すれば、確かにこの世に戦いは起こらない・・・
戦闘シーンはブラピの「トロイ」?を思わせるようなCGシーン。こちらの作品は、正義を問うものではない。戦争の愚かさは、いつの時代でも同じである。人の心の闇でもある、嫉妬、不信感、所有欲、権力欲、一体何がそれほど人を戦いに駆り立てるのか・・・
趙に侵攻された梁を救うために、守りのプロ集団墨家からやってきた革離(アンディ・ラウ)は、趙の10万の兵を率いる智将巷淹中(アン・ソンギ)から梁城を死守する。革離の智略に辛酸をなめさせられた巷淹中は、敵でありながら革離という人間に興味を抱き、戦のプロとして革離と1対1で対峙することに賭ける。
攻めのプロと守りのプロが戦ったら、戦いは平行線で、やがて共倒れになってしまう。本来なら、互いを理解し、補足する道もあるというのに、そんな道をとることは許されない時代。そこで何を選択すべきかということを問われるような気がした。
そして、「兼愛」(自分を愛するように他人を愛せ)を説きながらも、革離は自分に好意を寄せてくれる女逸脱(ファン・ビンビン)から、愛する相手を間違えていると言われ、そして、その女が愛する相手だと気づいたときはすでに時遅く、救うことさえできなかった。守りのプロは、守りに徹しすぎて女性をも落とせないのか?(笑)。笑うところではないが皮肉だ・・・
(Image source: cine21 @10th PIFF)
まったく・・・珍しく予約までしたDVD『ウェディング・キャンペーン コレクターズエディション』がなかなか届かなかった。コレクターズ版要らなかったかも、と実は注文後ちょっと後悔したこともあり、別に急いでもいないからいいのだけど・・・ それにしても配送予定日が過ぎてもウンともスンとも音沙汰がないのは頭にきたので、クレームしたらギフト券頂戴しちゃった・・・あはははー、そんなつもりじゃなかったのにぃー、でもあちらのミスだからねー
既にスクリーンやらVCDで見ていたので、コレクターズ版で真っ先に見たのは、なんといっても、監督ファン・ビョングク、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサン、スエの4人のコメンタリー付き映像。かなりウケた。普通、4人でコメンタリーと聞くとうるさそうなのに、4人とも映画に入り込んじゃって、口が重たい、重たい ・・・ (笑)
ジェヨンは、自分の姿を見て、「小汚い」とか「暑苦しい顔だ」を連発しているし・・・
「あの風景はCGか?」と監督に確認したり、「空の色がよくない。ココは夕焼け空がほしかった」とか、「セットなのにセットに見えないところがイイ」とか、コメントがやたらスタッフの視点だし・・・
ジュンサンは、ポイントが微妙にずれていて、会話を盛り上がるかと思えば、盛り下げるし、自分が一番泣けた場面がココというところで、他の3人の反応が「えっ・・・」だったし・・・
スエは、このシーンもあのシーンも「大変だった」、「監督に怒られてばかりで・・・」(監督は怒ってない・・・と反論)と控え目なようでいて、マンテクの7:3分けの髪型をジェヨンが現場で「レスリー・チャン風」と言って聞かなかったと笑いとばすし・・・
監督は、「スケジュールがおしてて」、「時間がなくて」、「新人監督だから編集が未熟で」を繰り返すかと思えば、マンテクがパンツ一丁でいる場面で、「(ジェヨンが)パンツを二重履きしてたのがやっぱり映像で分かってしまう」と残念がってるし・・・
てんでバラバラなコメンタリーにケラケラ笑いながら
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手の内を明かしてしまうというのは、ある種の禁じ手で、観客に対して正攻法ではないけれど、シネマート新宿で見た時は小さなスクリーンだったので、よく見ていなかった部分がたくさんあったのだなと思った。それでも、監督の思い入れや伝えたかったことを聞くと、「あー、そうなのか」と納得する一方で、やっぱり私(観客)に伝わっていない部分が多いのかなぁと思った。編集って難しいのねって、自分の感性の鈍さを棚上げにして(笑)。
それぞれの演者のキャラクターづくりには文句なしではあるけれど、作品そのものには実はあまり共感できなくて、どうしてかなぁーと思ってたら、この伝わらなかった部分の多さだったのかもしれない。
この作品は第10回釜山国際映画祭クロージング作品で、公開前に話題を集めて期待された作品だったようだけど、興行的には100万人に届かずジェヨンが悩んだという記事をどこかで読んだような気がする。ワンテイクごとの熱き思いと編集後のフィルムにはかなりギャップが出たような作品なのかもしれないなー、なんてね・・・。
(Image source: kaf-s.com)
韓国アートフィルムショーケース@イメージフォーラムにて『キムチを売る女』(2005年 監督:チャン・リュル 中国・韓国合作)を鑑賞。2005年カンヌ国際映画祭批評家週間ACID賞受賞他、世界各地の映画祭で15の賞を受賞した作品。
実は、アートフィルムの鑑賞は得意ではない。「アート(芸術性)」よりも、どうしても安易な「エンターテインメント(娯楽性)」に傾きやすい。アートフィルムは、「寿司の味のわからねぇ者は寿司を食うな」と言わんばかりの頑固オヤジのすし屋のようでもある。最初から暖簾をくぐらせてもらえないような気がする。
というのも、寿司の味がわかる者とわからない者に分かれるように、アートフィルムが理解できる者とできない者に分かれるからだ。私は間違いなく後者なのだけど、食い意地がはっているので、頑固オヤジの寿司だって食べたくなる。美味しいかもしれないので、食べなかったら損だから。
主人公は、韓国と中国、2つの国にルーツを持ちながら、どちらにも属しえない朝鮮族で、キムチ売りの女スンヒ(リュ・ヒョンヒ)。キムチの露天商で生計を立てながら、息子チャンホ(キム・パク)を育てる日々。キムチを買いに来る男たちとの交流が描かれている。
同じ朝鮮族、同胞ということでスンヒが心を開いた男は、既婚者キム(ジュ・グァンヒョン)。ある日、密会現場をキムの妻に見つかり、キムはスンヒを娼婦だと偽ったため、スンヒは留置所送りになる。そこには、スンヒのキムチをいつも買ってくれる警官ワン(ワン・トンフィ)がいた。ワンは婚約者がいながら、スンヒを逃がす代わりに肉体関係を強要する。そして、ワンの婚約者から、結婚式の料理にキムチを出したいので、キムチを納めるよう頼まれる・・・
監督自身が朝鮮族ということもあってか、ドキュメンタリーのようにも見えるリアルな作品。セリフも少ないし、衣装も質素で、登場人物の衣装はほとんど変わらない。音楽も流れないし、スンヒが住む家に装飾品は何一つなく、印象的なのは直線的な白壁の空間と青い戸口や窓枠。崩れたレンガの壁や乾燥して白茶けた土地。華美なもの、余分なものが一切そぎ落とされ、「素」みたいなものしか存在しない。
必要最小限のものしかないのに、ストーリーはしっかり組み込まれていて、雄弁だったりするから面白い。スンヒと男たちの関わりも、直接的で、情緒はあるのだろうかと思うほど無味乾燥のように見えるのだけど、それが却ってドロドロな心情の裏返しだったりする。
映画を見ながら、スンヒが売り歩くキムチがとても美味しそうに見えて、キムチが食べたくて、食べたくて・・・でも、ラスト近くの「事件」で食べたくなくなったのだけど・・・ アートフィルムを見ながら、やっぱり食欲が先行してしまう私は、頑固オヤジからムッ とされる客かもしれない・・・反省(笑) 。
スンヒとキムを演じた2人は演技経験がなく、本作品がデビュー。それに引き換え、子役は中国の演劇大学付属クラスでみっちり演技の勉強をしているというからビックリだ。子役がこの作品のピエロ的な役回りで、コミカルでありながら物悲しかったり。
一番好きな場面は、スンヒが中国人の女性に朝鮮舞踊を教える場面。手の動きがしなやかで、たおやかで、作品の中で最も優雅さを感じた場面。
この作品は、夏目漱石の小説「夢十夜」が原作。私も本棚の奥から引っ張り出してきて、原作を予習してから見た。「夢十夜」はちょっと難解ということは覚えていたので・・・原作を読んで行ってよかった。原作を読んでないと、分かりづらい。
気合が入りすぎて空振り三振な作品、奇をてらいすぎて意味不明な作品、正面から漱石と向き合った作品、原作のイメージを壊さずに超解釈がおもしろい作品と玉石混交。
勘弁してよねー、と思ったのは、十夜のうち4つの話が、グロさやエグさで奇抜さを売りつつ、そしていまだに貞子ちっくなホラー仕立てという、同じような手法を取っていること。日本映画界、活況を呈しているといえども、まだこのテが王道なのか、意外と貧弱。十話のうち、そんな話が1つぐらいあってもいいけど、4つもあるとかなりうんざり
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夢というのはとてもあやふやなもので、自分も夢を見たことは覚えていても、具体的な内容は覚えていないことが多い。漱石の文章もそんなあやふやな部分を文字に置き換えているのだから、その作業自体はものすごくエネルギーが刷り込まれているような気がする。解釈は100人いたら100通りできそうな、そんな夢のお話。
そんな夢の中のあやふやなものをいざ映像で表現するとなると、顔がなかったり、顔を覆ったり、目がつぶれていたり、音がなかったり、醜い創造物を動かしたり、時間軸を動かしたりと、それぞれ趣向をこらしているようでいて、結局は同じようなとらえ方だったような気がする。
私が一番面白いと思ったのは、「第六夜」(監督:松尾スズキ)かな
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これは、原作に忠実でありながら、現代的解釈をしっかり音楽とダンスで表現するところが斬新。そしてコミカルさが軽快。かなり気に入っている。
ダンサーTOZAWAの運慶 →
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/98/15f3aa1e46726f042166e0191234091f.jpg)
正面から漱石と向き合っていた作品は、第一夜(監督:実相寺昭雄)、第二夜(監督:市川崑)、第九夜(監督:西川美和)。この3つは安心して見ていられる。
第七夜(監督:天野喜孝・河原真明)は、アニメ、いやゲームを見ているような不思議な感覚。セリフが英語に翻訳されたりして、映像は奥行きが深くてとてもキレイ。
第十夜(監督:山口雄大)はグロさもあるのだけど、なぜかハリウッドの「マスク」や「チャーリーとチョコレート工場」のパロディと思しきところもあったりして。好きじゃないけど、まぁ、笑える・・・
ここでひとつづつ私が解説するよりも、興味のある方は、公式HP(
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hand_iine.gif)
ちなみに、HPでは漱石ユメ占いなるものがあって、もちろん事前に占ってもらったら、第六夜だった。第六夜は、作品の冒頭が蓮の花から始まることもあり、これまた私のHNにぴったんこ。第六夜とは、なかなか相性よし・・・(笑)
『正しく生きよう』(監督:ラ・フィチャン)1月31日にクランクアップ
[EPG: 2007/02/07 05:56 ]
「主演俳優チョン・ジェヨンは、この日、弾丸が飛び交う緊迫した状況(?)の中でも、笑って演技を終えた。最終日の撮影内容は、警察が銀行内に立てこもるチョン・ドマン(チョン・ジェヨン)を狙い撃ちにしようとした場面。ところが、弾丸が銀行の窓ガラスに届く前に、血のりがガラスに・・・ (笑うところ???)
チョン・ジェヨンは、真剣な演技の中にも、コミカルな表情と笑い声で現場を盛り上げた。緊迫した状況を一瞬のうちに笑いに巻き込むチャン・ジン式ユーモアを見せてくれる前代未聞の銀行強盗劇に関心が寄せられている。チャン・ジンとチョン・ジェヨンのコンビのシナジーを見せてくれる作品。4月公開予定。」
コンビって・・・やっぱりお笑い路線だったのか、あの2人。いやー、監督はラ・フィチャンなのに、「ラ」の字も出てこない。チャン・ジン色に隠れちゃった?
さて、誰でしょう、ビジュアル系です(爆) この場面カットされたりして・・・
「私のミュージカル遠征記」って・・・(←これ使えそう、ネタ帳入り)
[노컷뉴스: 2007/02/02 9:58]
ミュージカル「天使の足の指の爪」で熱演しているユ・ジュンサンの舞台をチョン・ジェヨンとスエが鑑賞。 2人で見に行ったのは、このミュージカルの話題づくりに協力したのかな。 6日には、ユ・ジテ、キム・ジュヒョク、キム・ジスら、スターが続々鑑賞に現われているとか。このミュージカル、二重人格者の話らしい・・・ジキルとハイドっぽい? 食べる演技は楽じゃない?
[SBS芸能ニュース 2007/02/06]
CFでも映画でも食べる演技は、楽じゃない、苦役だ・・・という話題。
何度も撮り直すたびに食べなくちゃならないし・・・
で、映画で食べる場面といえば、有名なのが、活だこを食べてカンヌを制したチェ・ミンシク。たこの吸盤が鼻に吸い付いてNG続出(爆)。
さらに、『マイキャプテン、キム・デチュル』では盗掘師のチョン・ジェヨンが土を食べる場面があるのだけど、あれって本当に土を食べたのかと、ひそかにそのプロ根性を尊敬してたら・・・違ったのね・・・特製の食べられる土だったとか(笑)。そりゃそうだよね。何テイクも土を食べたら死んじゃうよ・・・
『偉大なる系譜』レンタルビデオ 4週連続首位
[연합뉴스 2007/02/06 6:30]
そんなに人気があるのなら、もうちょっと長く劇場で上映してくれてもよかったのに・・・(恨み節・・・)
ビデオのみならず、DVDでも1位だけど。こちら、チャン・ジン監督のコメンタリー付きだから、本編もさることながら、こちらの特典が絶対面白いと思うの。
キネ旬の2006年の映画界総括記事(「キネマ旬報 No.1477」)より、外国映画部門から韓国映画だけを抜き書きしてみた・・・ キネ旬2006年第80回ベスト・テン 外国映画採点表
No. 3 グエムル-漢江の怪物- [監督:ポン・ジュノ]
No.14 うつせみ [監督:キム・ギドク]
No.17 王の男 [監督:イ・ジュンイク]
No.38 トンマッコルへようこそ [監督:パク・クァンヒョン]
No.41 弓 [監督:キム・ギドク]
No.51 送還日記 [監督:キム・ドンウォン]
No.66 ユア・マイ・サンシャイン(原題:君は僕の運命)[監督:パク・チンピョ]
No.69 力道山 [監督:ソン・へソン]
No.80 僕らのバレエ教室 [監督:ピョン・ヨンジュ]
読者選出外国映画ベスト30
No. 6 グエムル-漢江の怪物- [監督:ポン・ジュノ]
No.17 トンマッコルへようこそ [監督:パク・クァンヒョン]
No.18 うつせみ [監督:キム・ギドク]
No.29 弓 [監督:キム・ギドク]
「グエムル」は、パクリ疑惑でひと騒動あったけど意外と一般観客からの支持が厚いのね。個人的にはあの家族の描き方は好きだったけど、化け物がちょっとダメだった。それと、もう少しパク・ヘイルの出番を多くしてくれたら・・・でも、あれはやっぱり「ソン・ガンホ、ここにあり」という作品かな。
「トンマッコルへようこそ」が評論家の間でも、読者選出でもそこそこ健闘していて嬉しい限り ・・・何しろ無名の新人監督だし、主演俳優だって日本で無名に近いのに。おすぎのプロモが少しは功を奏したのか。配給元である日活の期待の1本だったとか。興行的には苦しかったらしい。
クロウトにしかウケないのかと思ったキム・ギドク作品は、映画ファンの間ではもうすっかり評価が定着しているのね。個人的には、「サマリア」と「春夏秋冬、そして春」が好きなので、「うつせみ」と「弓」は一歩履き違えると大いに誤解されそうな作品で危うい感じがした。
キネ旬データによると、2006年日本で劇場公開された韓国映画は67本(コリアンシネマウィークやシネマコリアを含む)。ひと月に5本は公開されたことになるけど。今年のラインナップで確定しているのはまだ14本。企画ものもあるからもう少し増えそうだ。
で、びっくり仰天なのが興行データ。韓国映画1位は、なーんと「連理の枝」6億4000万円。それでも、一体いくらで買い付けたのか採算が取れなかったとか。以下、「デイジー」5億円、「美しき野獣」4億1000万円、「タイフーン」3億7000万円、「グエムル」が2億7900万円。
「連理の枝」って、昨年見た中でも、とりわけ時間の無駄でしかないドン引き作品だったけど、興行収入と質の間にはいかにギャップがあるかなんだかよくわかる・・・もちろん、興行収入は占有劇場数が左右するので、数字が正確には何を示しているのかわからないけど・・・
耐え切れず見てしまった『偉大なる系譜(거룩한 계보)』(2006年 監督:チャン・ジン)。別に耐える必要はなかったのだけど、あらすじも、予備知識も蓄えていなかったので、どうしようかなぁーと思ったけど・・・。英題は、『Righteous Ties』、正義の絆、高潔な絆、道理のある絆、とでも訳すのか。ヤクザに正義って、何か相反するものがあるような気がするけど・・・。
以下、覚え書きなので、あしからず。
見終わって・・・・
某韓流スターの純愛映画よりも、はるかに笑え、はるかに泣けて
しまった・・・
ええーっ、これ、そういう映画だったの。また、チャン・ジン監督にやられた?
先日ノワールコメディとか勝手に言ってしまったけど、なんだか違う。ヒューマンドラマだと思う。この映画、見かけはヤクザ映画だけど、こんなにも血をみることの少ない韓国ヤクザ映画はあまりないかも。アクションはあるけど、目を覆うようなバイオレンスはほとんどないため、これまでの数々の韓国ヤクザ映画とはまったく異質なもの。
Two Top で2人の男のガチンコ対決というフレコミ(って、あちこちの記事に書いてあったと思うのだけど)もなんだか違う。正確な「友情の系譜」には、チョン・ジェヨン、チョン・ジュノ、リュ・スンヨンの3人が登場する。このトライアングルがストーリーのベースなのだけど、実際の展開はチョン・ジェヨンが主導していて、それにジュノ&スンヨン+仲間達という構成なのかな。私的には、ジェヨン主演で申し分ないのだけど、チョン・ジュノより、リュ・スンヨンの存在の方が気になった。
この作品の中で、浮きまくっていたのがチョン・ジュノ。本人がその気になれば、韓流十天王に入れたかもしれないソフトで甘いマスクだし、見る前から浮きそうな気がしてたけど、でもこれは明らかに意図的であることもわかる。あの甘いマスクに、笑顔は見られない・・・。
それに、ヤクザなのに自分は会社員だと主張してるし・・・このテのキャラ、どこかで見たような・・・思い出した。『甘い人生』のキム・ソヌ室長。殺し屋かと聞かれて、ホテル・マネージャーと応えていたし、この室長も笑わなかった。
ところで、チョン・ジェヨンの役名が「トン・チソン」なのだけど、えっ、『恋ステ』でもトン・チソンだった。こちらのトン・チソンはあのとぼけたトン・チソンとは似ても似つかぬ役だけど、ジェヨンは、やっぱり別人のごとく、こちらのチソンをしっかり自分のものにしてた。とてもステキ。
脱獄場面は、某海外TVドラマのパロディもあっておもわず吹き出した(爆)
刑務所内の場面が多いのだけど、撮り方が面白くて、見せ場が要所要所にしっかり入れ込んである。そして、音楽がいいので、これでかなりの部分を持っていかれた。
メイキングとかまだ見てないので、ちょっと予習してから、また見てみることにしよう・・・
(Image source: nkino)
『マジシャンズ(原題:魔術師たち 마법사들)』(2006年 監督:ソン・イルゴン)
す、す、凄い・・・という陳腐な表現しか出てこないのだけど、目からウロコの作品。これまで130本以上韓国映画を見てきたけど、こんな映画があるんだ。いやはや、韓国映画界(演劇界)の底力を見せつけられたというか、こういう作品を見るとやっぱり韓国映画を応援したくなってしまう。
1年の終わりの12月31日、森の中の山荘でカフェを営むチェソン(チョン・ウンイン)の所へ、昔のバンド仲間(バンド名は「魔術師」)だったミョンス(チャン・ヒョンソン)とハヨン(カン・ギョンホン)、そして、通りがかりのお客のお坊さん(キム・ハクソン)がやってくる。バンド仲間だった3人がこの日ここに集まった理由、それは、もうひとりのバンド仲間だったジャウン(イ・スンビ)の命日で三周忌だからだ。3年前のジャウンの自殺は3人の心の奥深くでくすぶっていた。
95分ワンカット・ワンテイク、江原道の森の中に野外セットを作り、全編夜のシーンで撮影したというのだから、役者はもちろんのこと、カメラ、照明、音声らスタッフたちはどれほど大変だったことか。このスタッフたちの動線はどうなっているのかと気になっていたら、いつもは購入しないパンフレットに詳しく説明があり面白かった。照明が印象的だったのだけど、照明には通常の映画製作の3倍を費やしたらしい。
見る前は、演劇的空間をそのまま映画にするって、きっと動きの少ないひたすら語りの映画かと思っていたら、そんな予想は完全に裏切られた。過去と現実という時間も自由に行き来するし、登場人物たちが交差するその空間に引き込まれてしまって、まるで自分も森の中にいるような錯覚さえおきた。
95分やり直しのきかない一発勝負。現場の緊張感・集中力はどれほどのものだったのだろうか。凍えそうな木立の景色と対照的な山荘の暖炉のパチパチという音を聞きながら、作り手の熱いものを感じた。
そして、チョン・ウンインを初めとする役者の力量が光る。本番に強い演劇畑の役者たちを揃えて、誰ひとり、力みも澱みもなく、画面からはみ出すこともないし、各人がそのキャラクターの中でしっかり生きているという圧倒的な存在感にあふれていた。
まさに演劇だなー、とふと思ったのは、韓国の伝統演劇の仮面劇(タルチュム)には、決まって道化役が出てくるそうなのだけど( 読みかじり)、この作品では、ジャウンだけが現実に生きておらず、パントマイムのように道化的な存在なのかなーと思ったりした。
「Sylvia」にたどりつくまでの4人とスンニム(坊さん)のひとつひとつの交差劇が、繊細で丁寧に描かれている。この「Sylvia」という曲が、最後に流れてくるのだけど、それがとてもイイ。完全に入り込んでいたので、不覚にもウルっ としてしまったが、 LOVEHOLIC のアルバムは手に入れなくちゃ・・・
そうだ、この監督の作品『スパイダー・フォレスト(懺悔)』をまだ見ていなかった・・・
(Image source:cinematopics)
キム・ジウン監督『クワイエット・ファミリー』の日本版リメイク作品『カタクリ家の幸福』(2002年 監督:三池崇史)。
この作品、リメイクというよりは、完全に「カスタマイズ」。オリジナルはあくまでも原案であって、全く別物として見た方がいいかもしれない。登場人物の設定もあれこれ色づけされている。
キャストは、結構面白い、ジュリー、松坂慶子、武田真治、西田尚美、丹波哲郎、忌野清志郎・・・こんなメンバーよくぞ選んだ・・・
歌って踊ってマサラな香りかと思えば、ゾンビも踊る♪スリラーぁぁ♪だったり、不法投棄のゴミ山で愛を語るかと思えば、美しい高原の景色を背景にしたサウンド・オブ・ミュージックなカタクリ家。グルミットもびっくりなクレイアートが津波ごとく皮が剥けるごとく、画面ではじけ、実写と妙に融合したりして、そして、なぜ火山が爆発する・・・ってもう理解できない(爆)
こーんなちぐはぐなものを、なんとまぁ、どうやってひとまとめにしたのか。
その力量には脱帽。
クワイエット版ではあやふやな結末が、カタクリ版では明確だ。「家族の絆」という正統な結論を引き出すために、踊る必要があったのか、火山は爆発する必要があったのかとか考えてはいけない。
個人的に楽しみにしていた清志郎が演じる(自称)英国王室の血をひくアメリカ軍人リチャード佐川は、愛と青春の旅立ち風な結婚詐欺師。 有名な結婚詐欺師プリンス・ジョナ・クヒオ大佐(実は日本人)がモデルらしい。カタクリ家の長女と似非恋に落ちるけど、お財布拾ってお金抜き出してるし・・・ ということは、それってクワイエット版で長女に無理やり迫ったチョン・ウンイン+お金をこっそり抜きとったチョン・ジェヨン=リチャード、ははは、涙 出そうー。
遠藤憲一、あなただけは普通の役者だった。よかった・・・(ホッ)
ジウン監督は、この作品を見たのだろうか? そして、ジウン監督はどんな顔をしてみたのだろうか?ぜひとも感想が聞いてみたい(笑)
三池監督版とジウン監督版のどちらが好きかと聞かれたら・・・ごめんね三池監督・・・だってあちらには、ジェヨンが出てるんだもん(←それだけかぁー)。
このレビューもどきも、カタクリ家同様、なんだかハチャメチャ・・・