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引っ越しました~
by lotusruby

『ワイルド・アニマル』 +キム・ギドク監督舞台挨拶

2007-02-26 01:02:37 | K-Movie Notes

『絶対の愛(原題:時間)』の公開記念、キム・ギドク監督のレトロスペクティブ、スーパー・ギドク・マンダラ(2/24~3/16)の初日。ギドク監督の第2作目にあたる『ワイルド・アニマル』(1997年)の上映に先立ち、監督が舞台挨拶に登場。(今回、第1作目『鰐』は諸事情により上映できなかったそうだ。)

ギドクファンが多いことは知っていたけど、もちろん会場は満席で、熱かった。
この作品は、ギドク監督が、ほとんど無一文の状態でパリに渡り、パリで撮影。韓国公開当時はいつの間にか、映画館から消えていたそうで、まさかこの作品が再び劇場で上映されることになるとは思ってもいなかったそうだ。

この作品を発表後は、「危険な監督」のレッテルを貼られ、『悪い男』の頃には、「悪い監督」と呼ばれたとか。第1作目『鰐』は、100人の評論家のうち2人しか自分の作品を支持してくれる評論家はいなかった。その2人とは、現在CINE21の編集長と、映画評論家チョン・イルソンだそうだ。

撮影エピソードは、ストリップ街の撮影時に警察がやってきて、この場所で撮影するなと警告された。どうしても撮影するとダダをこねたら拳銃で脅されたが、フランスは芸術の国であるはずなのにどうして撮影してはないけないのかと、壁に拳を10回ぶつけて猛抗議したところ、警察が30分だけの撮影許可をくれ、その後撤収したとか。結局そこで30分間に撮影したのは5カット。

「『ワイルド・アニマル』で描きたかったのは、3人の人間。韓国から留学してきた男(チョ・ジェヒョン)、脱北した北朝鮮の男(チャン・ドンシク)、養子縁組で韓国を離れパリで育った女(チャン・リュン)。」 
この3人がパリでめぐり合いその交流を描いたものなのだけど、舞台がパリということもあって、無国籍映画を観ているような、そんな感じがした。3人とも国を離れた理由はまったく異なるが、共通しているところは、異国での生活が、他人を利用し、他人から利用され、ひたすらに孤独であることと、この3人には、同胞の血が流れていることだ。

「パク・チャヌク監督『JSA』の低予算版と思ってください」
たしかに、南と北の人間が心を通わすというテーマを持っており、国とか国境とかそういうしがらみにとらわれていない。そして、ギドク監督自身もこの作品は自身の愛国心の表れと語っていたが、外(海外)から見た自分の国に対する郷愁やら愛しさが随所に感じられた。

「面白くないかもしれないけど、この作品があってこそ、今の自分がある。」
「思ったよりは、いい作品だと思う。」
日本初公開。監督の言葉通り、本当に思ったより良かった。ギドク監督の作品は、セリフが少ないことで知られているが、この作品は雄弁だ。2人の男を軸にした人間関係も多彩でしっかり描かれているためか、ギドク監督の最近の作品と比べ、人間臭さがぎっしり詰まっている。でも、韓国内では支持されそうもないなぁ。色々な意味で、過激というか、チャレンジングな描写が多い。

ギドク作品は、低予算、非主流を貫いているため、製作期間も短いことで知られるが、この作品からも緊張感が溢れていて、インテンシブ(集約的)な時間の流れを感じた。

 
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