Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

男の香り・・・『墨攻』と『あるいは裏切りという名の犬』

2007-02-15 23:25:13 | Cinema な時間


(Image source: bokkou.jp)
週末は、なぜか男くさい映画を2本立て続けに見てしまった。『あるいは裏切りと言う名の犬』と『墨攻』。まったく異なるジャンルだし、異なる地域の作品。どちらの作品の男たちも、なんだかステキだった。フレンチなオッサンも、アジアンなオッサンも、好きだ。重ねた年齢の分だけ輝いていて、ヒーローであっても、悪役であっても、共感できてしまう。

でも、自称ビジュアル系なので、写真はやっぱりアンディ・ラウ!!


 『あるいは裏切りという名の犬』 (2004年 監督:オリビエ・マルシャル)

銀座テアトルシネマの朝は早い。朝9:001回きりの上映って、会社に出勤する平日より早起き。京橋近辺は歩いている人もまばら。それなのにテアトルシネマの受付前は大行列。熱かった・・・  

「これぞ、フレンチノワール」という作品なのだそうだ。私はあまりフレンチノワールを見ていないので、「これぞ」かどうかわからないけど、確かにストーリーも面白かったし、何よりも俳優がすばらしかった。愛妻家で忠実な刑事レオ (ダニエル・オートゥイユ)vs 野心家の刑事ドニ(ジェラール・ドパルデュー)。2人とも顔に刻まれた皺に、人生の深みや背負っているものが見えてよかった。等身大だからいいのだ、無理な設定にならなくて。人物設定って重要。この2人以外の登場人物も多彩でありながら、ほころびがない。

なぜか『グリーンカード』の人(どうしても名前が覚えられない)の野心や卑しさを非難できなかった。どんな人の心の奥底にも秘められた部分のような気がして、責める気になれなかった。刑事モノの映画やドラマは、最終的には正義はどこにあるのかという話に尽きるような気がするのだけど、やっぱり見てしまう。

ノワールに欠かせないというファムファタール的存在は、妻だったり娘だったりするのだけど、これがまた美しくて。ノワールというだけあって、暗黒、暗闇の世界だ。冒頭から「地下」を思わせる背景が意味深なシーンだった。

裏社会と警察が テンポよく動き回る。石造りの建物、道、街並みが重厚でもあり、冷たくもあり、ヨーロッパを象徴する風景が印象的だった。


 『墨攻』 (2006年 監督:ジェイコブ・チャン)

智謀・策略が渦巻く紀元前の戦国時代の話である。紀元前にすでにこんな崇高な思想家とその支持者が存在していたということ自体驚き。とかく民度が問題視される現代の中国とは、あまりにギャップがあり、中国の歴史の奥深さは半端ではない。

「非攻」、「兼愛」などの十箇条を掲げる墨子の思想を支持する墨家。「非攻」を貫き、敵に攻められたら守りに徹するから、守りのプロなわけだ。「非攻」が実現すれば、確かにこの世に戦いは起こらない・・・

戦闘シーンはブラピの「トロイ」?を思わせるようなCGシーン。こちらの作品は、正義を問うものではない。戦争の愚かさは、いつの時代でも同じである。人の心の闇でもある、嫉妬、不信感、所有欲、権力欲、一体何がそれほど人を戦いに駆り立てるのか・・・

趙に侵攻された梁を救うために、守りのプロ集団墨家からやってきた革離(アンディ・ラウ)は、趙の10万の兵を率いる智将巷淹中(アン・ソンギ)から梁城を死守する。革離の智略に辛酸をなめさせられた巷淹中は、敵でありながら革離という人間に興味を抱き、戦のプロとして革離と1対1で対峙することに賭ける。

攻めのプロと守りのプロが戦ったら、戦いは平行線で、やがて共倒れになってしまう。本来なら、互いを理解し、補足する道もあるというのに、そんな道をとることは許されない時代。そこで何を選択すべきかということを問われるような気がした。

そして、「兼愛」(自分を愛するように他人を愛せ)を説きながらも、革離は自分に好意を寄せてくれる女逸脱(ファン・ビンビン)から、愛する相手を間違えていると言われ、そして、その女が愛する相手だと気づいたときはすでに時遅く、救うことさえできなかった。守りのプロは、守りに徹しすぎて女性をも落とせないのか?(笑)。笑うところではないが皮肉だ・・・