Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

21th TIFF Selection : 「8月のランチ」

2008-10-28 23:45:47 | Cinema な時間


「8 月のランチ」

原題: PRANZO DI FERRAGOSTO (2008 年 イタリア)
監督: ジャンニ・ディ・グレゴリオ
出演: ジャンニ・ディ・グレゴリオ、ヴァレーリア・デ・フランチシス、マリーナ・カッチョッティ
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今回の TIFF で見た作品の中では、これが一番良かった。

「本当に小さな宝石のような作品で、愛さずにはいられない、ほんわかした人間ドラマ」(TIFF DAILY NEWS Oct.26 Sun DAY 9) と矢田部プログラミング・ディレクター絶賛の通り、こういう作品を見つけると、ちょっと小躍りしたくなる嬉しさがこみ上げてくる気持ちは分かるような気がする。「見て良かったぁ」 と素直に思える作品。

ジャンニ・ディ・グレゴリオ監督はこの作品では主演俳優の顔も持つ。監督としては、コッチ見てと言えばアッチを向いてしまうような素人のおばあちゃん達とのアンサンブルをまとめあげる指揮者のような演出手腕が光る。俳優としては、劇中 4 人のおばあちゃんたちの世話して引率する先生のような役で見ていてホッコリする。演出と演技がどこか重なる部分も面白い。

Q&A もユーモアたっぷりで実に面白く、この監督には人をひきつける力があるらしい。1 つ質問すると、もうずっと話が続く・・・


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ジャンニ・ディ・グレゴリオ監督の Q&A 概要メモ
2008/10/26 [Bunkamura シアターコクーン]

 登場するおばあちゃん達は実に個性的だが、キャラクター作りはどのようにしたのか。身近な人がいたのか、それともすべて想像上の人物像なのか。

4 人のおばあちゃんのうち、1 人は 90 歳で自分の伯母さん、1 人は 93 歳で家族の友人、あとの 2 人は、ローマの老人ホームで募集をかけ、100 人の応募者の中から選んだ。

撮影中すぐに分かったことは、これはもう演出不可能、手に負えないということ(笑)。彼女達はたいていこちらの指示とは、正反対のことをする(笑)。

脚本はしっかり作りこまれていたものだったが、彼女達の話す内容や行動が実に面白かったので、脚本はヨコに置いておき、ラインだけおさえて、彼女達に自由に演じてもらい、その姿をカメラで追う方向にした。

撮影中、夜は、スタッフも自分も疲れ果ててぐったりしていたのだが、彼女達はエネルギッシュで、明日は何をするのかしらとあれこれ聞いてくることもあった。

彼女達と仕事をすることによって、人生について教えられたことは大きいものだった。

この作品は現実のストーリーがベースになっている。自分自身も一人息子で 10 年間ほど母親の世話をした。母親は典型的なイタリアの母親で独占欲が強い。劇中の彼女達を通じて、年配の人々の力強さ、弱さ、孤独を描きたいと思った。

自分も実際にストーリーと同じような状況があった。アパートの管理人から老女の世話を頼まれたがその時は断った。でも、あの時断っていなければ、自分はどうしただろうかということでこの作品のアイデアが生まれた。

困難だったのは、制作会社がなかなか見つからなかったこと。老人を扱う映画はイタリアでは成功しない、無理じゃないかと言われた。プロデューサーを探すのに 7 年を要した。老人を抱える問題や苦悩を笑わせることで伝えたかった。


 8 月 15 日というのは特別な祝日なのか。

特別な宗教的な意味があるわけではない。重要なのは、この日の前後 2~3 日間は誰も働かないということ(笑)。みんなバカンスで、家族が集まって会食をしたり旅行に出かけたり、都会では老人が置き去りにされて孤独だ。

イタリアの都会でも近所づきあいが少なくなった。


 この作品では監督兼俳優だが、役者または監督に専念する気はなかったのか。

彼女達のキャスティングが決まった後、男優を探すのが難しかった。条件は、中年で、借金があって、母親と暮らしていること。最後の企画会議で、その条件だったら、オマエがやるしかないだろうと言われて・・・。

実は若い頃、アカデミーに通い、役者の勉強をしていた。しかし、シャイな性格だったので、今まで演じたことはなかった。今回そのときの勉強が役に立った。何しろ数時間の会議で決まってしまったので、悩む時間もなくて、長く考える時間があったら演じることに悩んだかもしれない(笑)。


 おばあちゃん達の会話の中にあるエピソードがとてもリアルだが、あれは脚本にあったのか、それとも即興なのか。

いくつかは元々脚本にあったものだが、かなりの部分は即興。彼女達に自分の思い出を話してもらったら、そのエピソードの方が脚本より面白かった。


 おばあちゃん達は一般人ということだが、一般人が映画に出演することによって、出演前と後、あるいは撮影中に彼女達に変化は見られたか。

彼女達を選ぶ前には、女優を起用することも考えた。しかし、女優には時として冷たさや型にはまったものが見られる。これは役者への偏見ではなく、この作品には一般人を起用する方がいいと考えた。

彼女達は、事前の顔合わせを行わず撮影当日に顔を合わせた。会うとお互い印象が悪かったようだ。撮影が進むにつれて仲良くなった。今では、自分にとっては 4 人の新しい母が増えた感じで、よく電話をかけてきては、やれ 「飲みすぎるな」 とか 「夜はどうしているのか」 とか気にかけてくれる(笑)。


 「ゴモラ」 の脚本も手がけておられ、今回監督の幸せそうなお顔を拝見できてよかった。

この作品と 「ゴモラ」 の公開時期がたまたま重なってしまった。この作品は 10 年前から企画してようやく制作にこぎつけたこともあって、「ゴモラ」 の撮影現場に行くことはできなかったのが残念。通常なら脚本家として現場に赴き、製作を手伝うことができたのだが。

 * 「ゴモラ」 はナポリのマフィアを扱った映画で、原作者はその内容の深刻さから現在危険な状況に置かれているため警察の監視下にある。


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21th TIFF Selection : 「パブリック・エナミー No.1」

2008-10-28 00:53:23 | Cinema な時間


「パブリック・エナミー No.1 (Part 1 & Part 2)」

原題: Mesrine: L'Ennemi public n°1 / L'Instint de mort (2008 年 フランス)
監督: ジャン=フランソワ・リシェ 
出演: ヴァンサン・カッセル、セシル・ド・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ
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TIFF


今回の TIFF では、個人的な目玉はこの作品。

Part 1 は先週末フランスで公開されたばかり。Part 2 は現地でも未公開? ということで、TIFF ではできたてのホヤホヤを見ることができたわけだが、見る前は暗黒街のフレンチ・ノワールだったら Part 1 と Part 2 の一挙上映 4 時間耐えられるかしらんと、ちょっと心配もあったけど、そんな心配は不要。もう始まったら 4 時間なんてあっという間。お尻が痛いとか思う暇もなかった。

ジャンルは、ノワールじゃないな。フランスに実在した公共の敵 No.1 の異名を取ったジャック・メリーヌ(Jacques Mesrine なんだけど、劇中のジャックいわく、「メスリーヌではなくメリーヌ」らしい・笑)の生涯を追った伝記的ノワールかな(笑)。

映画の冒頭の但し書どおり、「映画はフィクションであり、個人のイメージを完全に描くことはできない」ということを念頭において見るべきジャック・メリーヌの生涯。

何しろ展開が早くて、瞬きさえも許されず(笑)。

「このヤマに乗る?乗らない?」、「よし、乗った。乾杯」、と言った途端、次の場面では刑務所の扉が開く。扉が閉まると、次の場面では、子供が増えているし・・・。ええーーーっと、数分のうちにあれよあれよと過ぎて行く場面もあれば、脱獄場面は息を飲むジワジワ感ありと、緩急のツボがなかなかオツ。

ジャックを演じたヴァンサン・カッセル、民衆の敵、公共の敵なのにこんなにカッコよくちゃダメでしょ・・・と(笑)。

Part 1 では、ジャックがパブリック・エナミー No.1 の名を欲しいままにするまでが描かれ、どちらかというとギャング映画の流れ。欲しいのは金、女、酒 ・・・。Part 2 では、パブリック・エナミー No.1 の称号に陶酔しきって、さらに反体制色を強めていく展開。フランス映画ではよくありがちなイデオロギー的な要素が加わる。右派か左派か、いや俺は 「革命家だ」 と言い出す。

もちろんジャックが、パブリック・エナミーへの道を突き進むきっかけがなかったわけではない。何が正しくて何が悪いのか、それを判断する価値観や 「法」 に対する疑問もチラリと描かれている。

パブリック・エナミーであっても所詮人間。劇中では、彼のすべてを憎み切ることもできないキャラクターになっていることも否めない。

だからといって、ジャックを英雄視したり義賊扱いしているわけではない。ドラマティックな生涯を追っているけれど、そんなドラマ的な情緒を押し付けられることなく、冷静に見ていられる。

ただ、ジャックが通り過ぎたフランスの政治・社会背景について説明がほとんどない。説明がありすぎてお堅い感じになってもいやだけど、もう少し説明があったら良かったのに。

Part 1 と Part 2 が連続で見られたのはラッキーだった。 賛否両論がありそうだけど、娯楽大作としては、緊張感もあってなかなか見応えある作品だと思う。


ヴァンサン・カッセル、第 21 回東京国際映画祭 最優秀男優賞 受賞おめでとう!



21th TIFF Selection : 「下女」&「火女 '82」

2008-10-26 23:36:08 | K-Movie Notes


話題のキム・ギヨン作品を 2 本。


「下女」

原題: 하녀 (1960 年 韓国)
監督: キム・ギヨン
出演: キム・ジンギュ、チュ・ジョンニョ、イ・ウンシム
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「火女 '82 」

原題: 화녀 '82  (1982 年 韓国)
監督: キム・ギヨン
出演: キム・チミ、ナ・ヨンヒ、チョン・ムソン
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2 本ともチケは SOLD OUT。韓流スターも蹴散らす人気の高さ(笑)。チケットを先に押さえておいて良かったとつくづく思った。

「火女 '82」 の上映時、何に驚いたって、観客の男子率の高さ。70 %ぐらいは男子だったかと。横一列に女子は平均 2~3 人。ワタシ、これまでこんなに多勢の男子に囲まれて韓国映画を観たことがない。一体何が起こったのかと。

シネマート六本木などで韓国映画に群がるのは大方は女子という構図が見事に打ち砕かれた瞬間だった(笑)。日本の男性の観客が、それほどキム・ギヨン作品に関心を寄せているとはね~。やはり、今年カンヌで上映されたことも大きいのかしら。

「下女」 では、アン・ソンギ先生の子役時代 (8 歳)の名演技も十分に堪能。

この 2 本、プロットは基本的に全く同じ。というのも、「火女 '82 」 は、「下女」 のリメイクである 「火女」 (1971 年) をさらにリメイクした作品。夫婦の設定や、子供の役割、夫に絡んでくる女性が少し異なるけど、若い家政婦に振り回される夫婦、そして家庭の崩壊という直球型のプロットには変わりない。個人的には、やはり原点といわれる 「下女」 の方が好き。映像的にもモノクロの世界が内容にしっくりくる。

「漢江の奇跡」 と呼ばれた経済成長を経験する1970 年代をはさんだ、1960 年代と 1980 年代の製作時期を考えると、同じプロットでも 「下女」 は、中産階級の形成初期という社会背景が浮き彫りにされ、「火女 '82 」 では中産階級の成熟が垣間見える。

確かにどちらもツッコミどころ満載、というと軽すぎて申し訳ないぐらい語りたくなってしまう作品。登場人物は個性的だし、家の中の構造(階段とか台所とか)だって普通なのに妖しげだったり、女性からモテモテの夫はなぜに音楽関係者なのかとか・・・

1960 年のセリフやキャラクターが面白いと思えること自体、この作品の持つ普遍性のようなものを感じる。

「下女」 の上映後、キム・ギヨン フリークによるトークショーが予定されていて楽しみにしていたのだけど、舞台挨拶が長すぎて映画の上映が押し、上映が終わったのがもう 23:00 近く。この時間からトークショーを聞いていたら、まちがいなく終電を逃す・・・と諦めて、とぼとぼ劇場を出た。

劇場を出たところで出くわしたのが、イ・ミョンセ監督!! 劇場に入るときに入り口で立ち話をされている姿をお見かけしたのだけど、こんな大物監督には滅多とお目にかかれないと、握手  

これ以外にも女シリーズと呼ばれるいくつかの作品では、こうやって続々と家庭が崩壊していくのかどうか・・・確かではないけれど、ちょっと病みつきになりそうな女シリーズはぜひ鑑賞してみたいなぁと。

 


21th TIFF Selection : 「THE CODE/暗号」

2008-10-26 22:15:12 | Cinema な時間


「THE CODE / 暗号」

監督: 林 海象 (2008 年 日本)
出演: 尾上菊之助、稲森いずみ、宍戸錠、松方弘樹
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ワールドプレミアだし、スクリーンの中の菊之助は見たいでしょ・・・ とミーハーごころまるだし。この作品、一般公開は来年夏だそうで、ずいぶんと間があくのね。そして、どこかの国の映画を思い出すけど、映画祭での上映を試写会代わり(?)にするのが流行りなのか、今回上映されたのは TIFF バージョンになるそうだ。監督いわく、公開バージョンはちょっと違うらしい。

林監督の 「探偵事務所 5 」 シリーズのひとつ。シリーズで 「 5 」 がつく探偵を 100 人出すという企画らしい。菊之助は 「探偵 507 」 役。

ストーリーは、「ふーん」 という感じで進み、「へぇ」 というような特別な驚きや意外性はあまり見受けられたなかった。先の展開も何となく読めてしまい、話の流れというか全体の波に乗れないというか、勢いがないというか・・・。ただ、いろいろなコダワリが込められているというのは、画面からも滲み出ていた。林監督の以前の作品をいろいろ見ていると共通点があってもっと楽しめるらしいが、ワタシは残念ながら知識がなかったもので・・・。


尾上菊之助と稲森いずみ、宍戸錠と松方弘樹、この 2 組の話が主副となるのだけど、この 2 組は繋がっている話なのに、繋がりに説得力がなくて、どうでもいいような間の取り方で話を引き延ばしているような~。どうも編集がいまひとつだわなどと素人勘ぐりしていたら、公開バージョンとは違うという話を聞き、ああ、やっぱりね~と納得。


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林 海象監督の Q&A 概要メモ
2008/10/21  [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6]


 尾上菊之助や稲森いずみらのキャスティングについて。

自分自身が尾上菊之助のファン。舞台も見に行っている。企画の段階で、周囲が無理だろうと言う中、尾上菊之助にオファーしたら引き受けていただいた。

宍戸錠とは、これまで何度も映画を撮っているが、意外と彼の役まわりにアクションがなかった。「錠ささん、今回アクションできますか?」 と聞いたら 「できる」 というので決闘の場面などアクションを取り入れた。

稲森いずみとは、以前「キャッツアイ」で一緒に仕事をした。美女でクールという役どころにぴったり。性格もさっぱりしている。TV 出演が多く意外と映画に出演していない。演技も上手いので起用した。

ちなみに、今回、劇中で稲森いずみの背中に彫られた刺青は難しかった。絵と言うより暗号という設定なので。毎回撮影のたびに書いていたら大変な労力なので、試行錯誤の上、毎回書かずにすむような方法を考えついた。方法はここでは言えないけど。

暗号についてもスタッフ全員が素人。「暗号事典」 という本を読んで参考にしたり、その本の著者の先生を招いて講義をしていただき、暗号についての理解を深めた。


怪奇モノが好きなのか。江戸川乱歩とか意識したのか。

探偵モノ、怪奇モノは好きだけど。推理モノ、ホラー モノは嫌い。金田一とかホームズは推理をするでしょ。乱歩はほとんど推理していない。怪奇テイストは好き。

劇中では本物の暗号を使った。

小道具も好き。七つ道具にこだわって製作したけど、編集の都合で 3~4 つしか使われなかった。


 次の探偵モノの企画は。

今回の作品がシリーズの中締め的な位置づけにある。公開を待ってから考えたい。

ところで、劇中の冒頭でチネチッタが爆発する場面があるが、普通、爆発されるという設定なんて嫌がるのにチネチッタは快諾してくれた。また、川崎が舞台でもあり、川崎市長自ら出演していただき、川崎市民の協力を得ることもできた。

上海ロケでの裏話。上海の撮影所には小道具の銃がないという情報を事前に得ていて、上海で銃撃戦の部分を撮影するのに、さてどうするかとスタッフ一同頭を悩ませた。ところが、現場には本物の銃はあるという(笑)。劇中に出てきた多くの銃は本物。撮影中、もちろん空砲だったが、実銃で何が起こるかわからないし怖かった。そういう意味では、ガンアクションにはリアルな緊張があふれていると思う。


 劇中で流れる 「早春賦」 には何か意味があるのか。

当初は陸軍中野学校の校歌にしようかと思ったが、軍国的な歌であること、歌として乗れないし、歌姫が歌うイメージとは程遠いのでやめた。


 劇中さまざまな種類の爆弾を目にするが、あれもリアルなものか。

爆弾は見たことがないので、すべて想像上のもの。お決まりだと分かっていても、爆弾は 1 秒前に解除する(笑)。

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21th TIFF Selection : 「銀河解放戦線」

2008-10-24 00:00:54 | K-Movie Notes


「銀河開放戦線」

原題: 은하해방전선 (2007 年 韓国)
監督: ユン・ソンホ
出演: イム・ジギュ、ソ・ヨンジュ、パク・ヒョックォン
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TIFF


昨年 PIFF で見逃した作品。だいたい見逃した作品に限って、面白い作品が多いのはなぜ?

この作品は、コロコロと展開するストーリーが面白くて、あらすじを書けと言われてもちょっと無理かな・・・

一番のツボは、「소통(疎通)」 。このキーワードが出てくるたびに、大笑いしそうになったのだけど、場内は声をあげて笑っておらず。それでも、ワタシと、ワタシの左隣のガイジンさん、右隣の若い女性は、かなりウケていた。

                 
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ユン・ソンホ監督 Q&A 概要メモ
2008/10/20 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6]


 「木村レイ」 という日本人俳優役が出てくるが、この役のモデルはいるのか。

モデルはいない。演じている役者は、間借りしている家の息子さん。アイドルっぽいけど、精神的にちょっとおかしくて、理性的・合理的に関係ないところで物事を解釈しようとするそういうキャラ。


 タイトルの「銀河開放戦線」が戦隊モノっぽい意味は。

日本の黒沢清監督作品などが好き。素朴な内容なのに、タイトルが大げさだったりする。この作品で登場する主人公の彼女の名前ウナは「銀河」という意味。ウナとの失恋を乗り越えるのがテーマ。


 劇中、PIFF の横断幕が出てくるが、TIFF、日本、東京を意識したのか?

日本に来たかった!(冗談です)。プサンで撮影したし、日本語も意識した。ただ特定の街を設定したくなかった。劇中、都市名が出てくる部分は、「ピー」(xxxx)っと音声をかぶせた。海の近くで開催された映画祭という設定にした。

日本を盛り込んだのは、自分が日本から影響を受けているから。アニメより、漫画をよく読んでいた。ここではわざと大げさに描いた。


 音楽が魅力的だったが、何かこだわりがあるのか。

予算が 700 ~ 800 万しかなかったので、著作権使用料を払えるほどの余裕がなかった。そのため、使用料が不要な曲(マウリ族の音楽、イタリアのパルチザンとか)を選んで編曲してもらった。


 監督のお母様やインディー系の監督さんがカメオで出演しているようだが、予算がなかったからか。その一方で、認知度の高い女優さんも出ているようだが。

予算があっても同じキャスティングだった。もっと予算があったら、キャスティングに使うのではなく、撮影回数を増やしたかった。ちなみに、出演スタッフにはちゃんと支払った。ただ、比較的認知度の高い女優さんであるキム・ボギョンさんとイ・ウンソンさんは、ギャラを受け取らなかった。


  この作品で伝えたかったことは?

「疎通」 です(笑)。「コミュニケーション」 とか 「対話」 という言葉はよく使われるが陳腐に聞こえる。「見てくれる人と疎通をはかりたい」 などと言ったりする。実際にはとても複雑なことだと思う。あえて疎通できない状況を設定して、心を開くことの重要性を伝えたかった。


制作資金を集めるのに苦労したのか。韓国映画業界は大変な状況なのか。

自分自身、元々、映画学科でもないし、コマーシャルフィルムを撮ることを目指していたわけではなく、たまたま撮らないかと声をかけてもらったのでそんなに苦労しなかった。ただ、スターの出ていないプロットでは資金が集まらないという、そんな状況をコメディタッチで描いてみた。

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21th TIFF Selection : 「モーツァルトの街」

2008-10-23 23:32:21 | K-Movie Notes


「モーツァルトの街」

原題: 모차르트 타운 (2008 年 韓国)
監督:
チョン・ギュファン
出演: オ・ソンテ、チョ・ユラン、ブレイズ・グバト
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「超」 低予算(3000 万ウォン= 270 万円)、撮影回数 12 回。監督さん、初めての長編だということで、予算がなくて頑張って撮ったという熱意は伝わってきた。でも・・・

① カンペ(ヤクザ)、② 上から出すもの、③ 下から出すもの。
韓国映画の定番的要素とも言える描写。

こうした新進(?)の監督作品ですら、この定番的要素がついてまわり 「またか」 と。特に ③ については Q&A でもショックを受けたと述べた観客がいた。このタイトルだけを見てチケット買われた方は、イメージと違うと思う内容かもしれない。



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Q&A 概要メモ
2008/10/19 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6]


 この作品を撮ったきっかけは何か。

旅行者の視点を通してみた社会を撮りたかった。旅行者の目に映るものというのは、一過性のものでしかなく、社会に潜む人々の哀しみの深さまでは推し量れない。そういう人々が抱える哀しみを描きたかった。


 「モーツアルトの街」 というタイトルについて。異邦人から見た街、違和感を表現したかったのか。なぜベートーベンでないのか。

実は、ベートーベンであっても、メンデルスゾーンであってもよかった。ただシナリオを書いているときに、偶然ラジオからモーツアルトのソナタがかかり、ソナタはどこか哀しみを伴っており、やはりモーツアルトがしっくりくると思えた。

また、場所もソウルでなくとも、東京でもロンドンでも北京でも成立するストーリーだと思う。


 女性の視点から、月経の染みと排泄というシーンはショッキングだ。そこまでして描く理由は何か。

不快感を与えてしまったとしたら申し訳ない。悲しみの象徴として月経を、不条理の象徴として排泄を表現しており、そこにインパクトを与えたかった。


 キャスティングの苦労話を。

ともかく低予算作品なので、キャストは全員ノーギャラ。知名度のある俳優にも声をかけたが、ことごとく断られた。韓国人のキャストは、演劇方面の俳優にお願いした。また、外国人のキャストが必要だったが、何しろノーギャラなので、外国人が多く行き交う梨泰院(イテウォン)を歩き回っては声をかけて見つけた。外国人キャストは、みな素人なので演技トレーニングをしてから、演じてもらった。


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旅行者の視点というが、そんな視点ってあったっけ?(ワタシ、寝てた?)
どちらかというと、交差点の売店に一日中座り、時々カメラを取り出し、行き交う人々を写す女性に焦点が当てられ、彼女がのぞくファインダーを通した視点というなら話はわかるけれど。

その彼女と彼女が撮影した写真に残された複数の人々の日常のストーリーが並行していて、それがところどころ繋がっていくというプロットは良かったかな。低予算という割りには、あれもこれもと話を詰め込まれていた。

奇をてらったインパクトとか挿入しなくても(韓国映画を見慣れていても不快に感じた)、淡々とカメラをのぞいていてくれたらなぁと。

 

 


21th TIFF Selection : 「がんばればいいこともある」

2008-10-23 23:19:17 | Cinema な時間


「がんばればいいこともある」

原題: Aide toi et le ciel t'aidera (2008 年 フランス)
監督: フランソワ・デュペイロン
出演: フェリシテ・ウワシー、クロード・リッシュ、エリザベス・オポン
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前半・・・テンポも良くて、ちょっとシニカルな含み笑いもあり。
後半・・・隣のじいさん絡みの話で、やや重たくなってくる。

上映時間 90 分というコンパクトさは GOOD。

主演のフェリシテ・ウワシー、とてもチャーミングで、次から次へのふりかかる災難の解決策を見つけていく姿は好感が持てる。娘の結婚式で涙、涙する母・・・でも涙の意味が・・・(笑)。本来笑っちゃいけないところで、笑えてしまうというブラックな面白さと、不幸と幸せの絶妙なミックスが見どころ。

登場するのがアフリカ系フランス人(黒人)がほとんどというフランス映画は、これが初めてらしい。

Q&A では、フェリシテ・ウワシーが登場。
フェリシテ・ウワシーは、14 才から舞台に立ち、長編映画 15 本に出演。

                   
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Q&A 概要メモ
2008/10/19 [TOHO シネマズ 六本木ヒルズ Screen7]


 この作品に出演するきっかけは。

ロマン・ポランスキーの <Doute> という舞台に出演していたときに、監督が舞台をご覧になって、この作品への出演をオファーしてくれた。シナリオを読んだら面白くて、すぐに監督に電話をして、「本当にこんな politically incorrect な内容で撮るのですか」 と聞いたら、「撮る」 と仰ったので OK した。

 どんな問題にも解決策はあるという主人公をご自身はどのようにとらえたか。

監督とはいろいろ共通点がある。たとえば、70 年代のイタリア映画が好きなところなど。中でも、不幸を笑いで吹き飛ばすという主題が良いと思っている。不幸を真剣に考えると頭に銃を撃ち込むことになってしまうから。主人公のソニアを突き動かすものは、諦めないということ。問題を一つづつ解決して希望を持っている。私も解決策はあると思うのでソニアと似ている。


  原題の「Aide toi et le ciel t'aidera」 は、「天は自らを助くる者を助ける」 という意味だが、邦題の 「がんばればいいこともある」 とは違いがあるように思えるのだが、どう考えるか。

原題を聞いたときに、ロマン・ポランスキーのジョークを思い出した。そのジョークとは、「モシェという男は、『宝くじが当たりますように』 と毎日神に祈りを捧げている。しかし1ヶ月すると、神はモシェの前に現れ、『モシェよ、少なくとも宝くじを買っておくれ』 と言う」。

この作品で描かれている背景は、パリのメインストリートを外れた、疎外された社会が設定されている。そこは、何かを手に入れるためには努力をする、という考え方が失われた社会。原題も邦題も同じ方向だと思う。


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Away from PIFF - Epilogue -

2008-10-13 01:09:55 | K-Movie Columns



最終日は時間もあまりなくて遠出もできず、
近場で散歩など・・・



そういえば、場所は知っているけれど
確認していない有名すぎるロケ地 「チング通り」 とか 
行ってなかったなぁと。




クルム鉄橋
学生たちが勢いよく走っていた鉄橋 @『チング』



クルム鉄橋の上から・・・ タイヤアート??(笑)





ちょっとレトロな映画館だなとカメラに収めましたが、
よくよく見たら 「成人映画館」 でした(笑)。





街の変貌に伴い、
ロケ地もなくなってしまったり、大きく変わってしまっていたりします。
特にロケ地への想い入れがあるわけではありませんが・・・





道路を隔てた対照的な 2 つの建物。 

 

 時の流れを感じてしまった
ホテル クラウン 工事中(涙)
ココ、見たかったのに・・・


@ 『甘い人生』

 
 

一方、道路を隔てた向かい側は、時の流れが止まってる


ホテル クラウンを見下ろす建築現場
まだ建築中?
ではなくて放置状態のようです。


@ 『甘い人生』

 ◇


そんなこんなで、今年もまた駆け足の PIFF が終わってしまいました。

東京ではこれからいろいろな映画祭やらイベント目白おしですね。

そうやってスクリーンを渡り歩いているうちに、
年末になってしまうのです・・・ううっ

 
~ FIN ~

 


* こんな自己満足の旅レポに、お付き合いくださった方、ありがとうございました。


 


Out-of-PIFF III : 『神機箭』

2008-10-12 23:50:04 | J.J.Y. Filmography


『神機箭』

原題: 신기전
監督: キム・ユジン
出演: チョン・ジェヨン、ホ・ジュノ、ハン・ウンジョン、アン・ソンギ


かろうじて中ヒットしてくれたおかげで、公開 1 ヶ月目にしてようやく見ることができました。制作発表から 1 年半。そんなに長く待ったわけではなかったですね(笑)。

最初にお断りしておきますが、ワタシの視点には思い切り フィルタ がかかっていますので、ご了承ください。また、以下、ネタばれを含んでいます



冒頭から、このビジュアル系バンドのボーカルさんみたいな方は一体どなた?という感じで始まり、ちょっとカッコすぎやしませんかチョン・ジェヨン。しかも細いっ!!!

こんなカッチョいいまま 130 分あまり続くのかと思うと、クラクラ しました。エンディングまで身が持つのだろうかと・・・。

なぜかめっちゃ強いし(笑)。1 対 100 ぐらいの立ち回りでも、難なくすり抜け、Ninja のごとく軽い、キレのある身のこなし、一体何者なのでしょう(笑)。

なのに、頭なでなでして~って、女心わしづかみ?

アクションも、ロマンスも、コミカルさも、気の毒なぐらい、あれもこれも要求された役だったのではないでしょうかね。そりゃ、撮影中に原因不明の発熱で倒れるはずだわ・・・と思いました。



公開前、この作品については、製作者自らが 「ウリナラの誇りを表現した」 というような発言をしていることもあり、仮想敵国を仕立て上げて民族主義を煽るような部分があるということで、レビューもそのようなところに批判的だったりしたので、ちょっとイヤだなと思っていました。

でも、なんだか、肩透かしを食らいました。

インタビューで、「セリフが幼稚で」 とか、「演技がオーバーで」 とジェヨンは気にしていましたが、それって、ストーリーが単純明快、つまり誰が見てもわかる起承転結で構成されているからで、作品自体は何かを鼓舞したり、メッセージ性の濃いものではなく、ただの痛快 「時代劇」 のカテゴリに入ると思います。

それに、結局のところ、この話って、王子さまとお姫さまの恋物語に尽きるのではないでしょうかね(王子かどうかは各自の判断にお任せしますが・笑)。そういう意味では、ストーリーは幼稚です。

ソルジュ(チョン・ジェヨン)が戦ったのは、愛する女性ホンリ(ハン・ウンジョン)を救わんがために戦っただけで、ホンリはホンリで、神機箭の開発は父親の遺志を継ぐ科学者としての使命みたいなもので、「お国のために」 という部分はさして強く(いえ、ほとんど)感じられませんでした。

クライマックスシーンとなる、明+女真族(?)の大部隊と、チャンガン(ホ・ジュノ)とソルジュとその仲間たちの少数部隊の戦闘場面。戦闘が始まろうとする時点で、すでに民族主義なぞ霞んでしまうほどのお子チャマ劇的、夢物語な設定にやや呆れもしましたが。見せ場なのにね・・・。

民族主義を煽っているのならば、もっと観客を動員して、大ヒットしたのではないでしょうかね~(笑)。観客の反応も単に、神機箭が天から降り注ぐ CG シーンに(ちと『HERO』 っぽい)、おおーと拍手する程度で、これが民族意識を高める引き金になるとはとても思えません。

その上、歴史認識云々でことさら取り上げるほどの格調の高さもありません。単なるフィクション史劇にすぎず、それ以上それ以下でもないと思います。


褒めているんだか、貶しているんだかですが、どちらにも振れないというのが正直なところです。ともあれ、ジェヨンのカッコよさが際立っているのは確かで、どうせならもっとワタシがメラメラと嫉妬するようなロマンスに仕立てあげてほしかったわ~(←そっちか)。





13th PIFF Selection IV

2008-10-12 02:09:57 | K-Movie Notes





 From WORLD CINEMA

Shadows in the Sun (UK)
監督:David Rocksavage
出演:Jean Simmons, James Wilby, Jamie Dornan, Ophelia Lovibond




唯一見た韓国映画以外の海外作品。

1960 年代後半のノーフォーク(英国)。1 人暮らしの老女ハンナ(ジーン・シモンズ)は、孤独な青年ジョー(ジェイミー・ドーナン)に世話をしてもらっている。ある日ハンナを引き取りにやってきた息子とその家族。ジョーと関わることにより、家族の絆が変化してゆく・・・というような話。

① 字幕からの開放、② ノーフォークの美しい景色、③ イケメンの出現、この 3 つの要素により、この作品に対する個人的な評価が上がってしまたことは否定しません。

この作品、まだ各地の映画祭をまわっていて、リリースされていないようです。

しかし、ノーフォークの息を呑むような美しい自然の風景には心から癒されます。ゴテゴテしたものがどこにもない単調な風景は、淡々としたストーリーとマッチしています。

ジョーという天涯孤独な青年と 3 世代家族を対比させながら、互いに関わり合い理解し合う過程もオーバーな表現がなく、何よりも気負いがなくて、肩の力がスッとぬける作品でした。淡々と描いているのに、情感あふれるところが汲み取れてしまうところが気に入りました。
 

さて、ここで見つけたイケメン、ジェイミー・ドーナン

カルバン・クラインやアルマーニのモデル。どこから見てもカッコイイわけです。俳優経験はほとんどなく、前作は 『マリー・アントワネット』(監督ソフィア・コッポラ)のフェルゼン伯爵役。キーラ・ナイトレイと付き合って破局し、ゴシップの多いプレイボーイらしいです。

この作品では風景にすっぽりはまっていて、モデル独特の嫌みなところはどこにもありませんでしたね (甘いっ?)

 

 

 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

똥파리 (糞バエ)/ Breathless
監督: 양익준 / Ik-june YANG




見た後に原題が 「糞ハエ」 と知りました。英題の 「Breathless」 とはなんだかイメージが違いますが、糞だけに、臭くて息ができないとか?そんな意味じゃないですよね(爆)。

借金の取立てチンピラ、サンフンはケンカっぱやい。ある日、女子高校生ユニと出会うが、ユニはサンフンを怖がるどころか、喰らいついてくる。崩壊した家族という同じ痛みを抱える 2 人は、互いを心の拠り所とするようになる・・・というお話。

口から出るセリフは 「クソ」 がつく F ワードだらけ。韓国語では 「シ」 から始まる単語ですが。でも、あまりに量が多いせいか英語字幕では F ワードが訳されていませんでしたが、当然かな。

カンペに借金の取立て。韓国映画ってホントにこの素材が好きなのねと、最初はやや冷ややかに観ていたのですが、これがですね、もうだんだんと引き込まれて、ストーリーはよく出来ているし展開も良かったし、俳優さんも良かったのです。

最後が少しくどくて、これで終わりかな・・・ と 3 回ぐらい思いました。もう最後の最後まで見せないと気がすまない監督さんなのでしょうか(笑)。余韻を観客にもたせるなんてことはしないみたいです。

おかげで 130 分とやや長めの上映時間でしたが、消化不良なんてことは起こらず、完全消化。これも監督さんの自伝的作品だそうですが、とても力強い作品であることはまちがいありません。

最後には、ちょっとサンフンを抱きしめてあげたくなるぐらい、感傷的に入り込んでしまいました。


13th PIFF Selection III

2008-10-11 23:52:49 | K-Movie Notes





 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

푸른 강은 흘러라 (青い川は流れよ)/ Let the Blue River Run
監督: 강미자 / Mi-Ja KANG




中国吉林省の朝鮮民族自治州延辺の話。延辺自治州は、西南部に白頭山がそびえ、この山から豆満江が流れ、北朝鮮との国境に接している地区。この作品は、延辺の小説を元に映画化されたそうです。

タイトルになっている青い川はこの 「豆満江」 を指すようで、「푸른 강은 흘러라 (青い川は流れよ)」 は、日本で獄死した詩人ユン・ドンジュの詩の一節だそうです。この詩にある 「川の夢は海だ」 という一節も印象的でした。

ユン・ドンジュ自身も延辺出身でしたね。ユン・ドンジュの詩集も読んでみたいと思っています。


延辺に住む仲良しの17歳の少年と少女の多感な日々を、韓国へ出稼ぎ出ている少年の母親の話を絡めて淡々と綴った話。


上映後の Q&A で ・・・

「延辺に住む人たちの生活をそのまま表現したかったので、ドキュメンタリーのようだと言う人もいるけれど、自分からは何かメッセージをおしつけるのでなく、ただ感じて欲しい」 と監督は語っていました。

衝撃的なエンディングについての質問に対しても 「延辺の人々が直面している現実の厳しさ、リアリティを強調したかった」 そうで、それでも 「ハッピーエンドにするかしないかで悩み、エンディングは自分で判断した」 そうです。

作品中、色彩が象徴しているものは何かという質問については、「青は 「若さ」 を、「黄色」 は「孤独」を表した」 そうです。


・・・ という話を聞いたのですが、青い川が流れる先は海で、若い時には夢を抱いて、夢に向かって進めということなのかと、ぼんやり分かるようで、主題がよく分かりませんでした。

故意にドキュメンタリーと叙情詩の中間をとっているのかもしれませんが、少年と少女の関係も、母親の話も、青い川も、どれもすーっと繋がらなくて残念。




 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

약탈자들 (略奪者たち)/ The Pit and the Pendulum
監督: 손영성 / Young-Sung SOHN




個人的には、今回見た韓国映画の中ではこれが一番面白かったです。

原題が 「略奪者たち」 だと見た後で知り、英題の 「The Pit and the Pendulum」 が面白いなぁと思っていたのですが、全く意味が違うじゃない(笑)。

The Pit and the Pendulum は 「落穴と振子」 という意味で、エドガー・アラン・ポーの短編 「落穴と振子」 と同名です。何か意味があるのかなぁと思ったのですが、話は全く異なります。

Q&A で聞いてみたかったのですが、次のスケジュールが南浦洞だったので、Q&A をパスしなければならなかったため心残りです。

また、NEW CURRENTS で上映していたペク・スンビン監督 『장례식의 멤버 (葬禮式のメンバー)』 と比較して見たらもっと面白かったはずなのに、これもはずしてしまって大失態だわ~と、後悔。


同級生の死を悼み葬式に集まったクラスメートが、故人の生前の思い出話を始めると、「実はねぇ」 というような新事実が出てきて、またそれが別の話に飛躍したり、絡まったり・・・というような話。

それぞれが関わった話が、最後に一本筋が通るのかと思ったら、そうではなくて、話と話がどこかで交差しながら、また別の話とも交差していて、部屋から部屋に渡り歩くうちになかなか戻れなくなってしまう迷宮のような不思議な作品でした。

ちょっと訳のわからない話があったり、余計なところに力が入っているようにも思えましたが、全体的な展開のテンポも小気味良くて楽しめました。

最後になって、ええーっ、そうだったのか・・・と、きっとワタシがぼんやりしていたからだと思うのですが、すっかり騙されてしまってて(笑)、すぐに巻き戻したい気分でした。

 


13th PIFF - Intermission -

2008-10-10 23:59:32 | K-Movie Columns





海雲台のビーチ

今年も来たよ~
毎年この風景には癒されます。

 



PIFF パビリオン

「よいこらせっ」 とイスに腰をかけたら、
そのイスの背が ↑ でした。

おおー、呼ばれたのかしらん?
なんだかちょっと嬉しくて
カメラに収めようと立ったら
席を取られましたw





豆もやしクッパブ

プリモスの裏手で見つけた豆もやしクッパブ専門店。
こだわりの豆もやしに、黄太という魚のだし汁。
こういう何てことのない庶民的な汁モノが美味しいのです。






早朝からのチケ取り、体力勝負

6 時 30 分から並んでチケを手にしたのが 9 時 30 分過ぎ。
それでもまだまだ BOX OFFICE は
ごった返し。

 


Out-of-PIFF II : 『ゴーゴー70』

2008-10-10 23:16:41 | K-Movie Notes



『ゴーゴー70』

原題: 고고 70
監督: チェ・ホ
出演: チョ・スンウ、シン・ミナ、チャ・スンウ

チョ・スンウが歌いまくり、みんなでゴーゴーダンス

音楽が頭の中でいまだにヘビロテしています。
OST を買ってくればよかったと後悔・・・ やっぱりポチっとしておきました。

若者がダンスフロアで踊りまくる・・・どこかで見た光景・・・
あっ、ジュリアナ??(笑)

ジュリアナは、金満バブル時代のちょっとデカダンス的象徴ですが、これは、1970 年代軍事政権下の抑圧の象徴。若者の熱狂には変わらないけれど、社会文化の背景としては違いすぎますね。

1970 年代に実在した伝説のロックバンド 「デビルス」 を素材とした話。基本はよくある音楽系サクセスストーリー。基地村のバンドがソウルに上京して成功し、一大ブームを巻き起こすけれど、仲間割れ・・・そして、軍事政権下での夜間外出禁止令・・・活動再開?

ストーリー自体は、時間の流れと社会背景を追っているだけで単純なように見受けられ、エンドロールが流れると、「で、だから、何?」 と意地悪なツッコミを入れたくなりましたが、それはセリフがちゃんと聞き取れていないからだと思います。

ともあれ、見ている間はついつい踊り出したくなるほど楽しいことは確かなので、深読みするのは不粋かもしれません

作品の中での演奏は、ライブそのままを撮影したそうですから、チョ・スンウでなければ演じられないというライブの迫力も見ものです。

そしてこの作品で最も輝いていたのは、シン・ミナ嬢

演奏するバンド 「デビルス」 の前で踊りだし、ゴーゴーダンスの火付け役のダンサーという役どころですが、すっかりシン・ミナ ファンになってしまいました(笑)。

サンギュ(チョ・スンウ)にまとわりつくクラブのウェイトレスが、「ミミとワイルドガールズ」 という売れっ子ダンスユニットになるまでのその変貌ぶり、はじけっぷりがいいのです。ゴーゴーに関して言うと、実質的にはこちらが主役じゃないでしょうか。

個人的には、ミミ(シン・ミナ)に軸をおいたストーリーでも良かったのになぁと余計なことを思いました。

 


13th PIFF Selection II

2008-10-09 23:58:37 | K-Movie Notes





 From WIDE ANGLE : DOCUMENTARY COMPETITION

태백, 잉걸의 땅 (テベク、炭火の土地)/ Taebaek, Land of Embers
監督: 김영조 / Youngjo KIM 




炭鉱の街、江原道テベク(太白)が舞台・・・と聞くと、やはり昨年 PIFF で見たチョン・スイル監督の 『黒い土の少女』 が真っ先に頭に浮かびましたが、このドキュメンタリーのクレジットを見たら、Co-producer のところにチョン・スイル監督の名前がありました (たぶん)。

荒廃した街・・・
じん肺患者の補償問題・・・
高齢化、一人暮らしの老女・・・

かつては富国、興国のために隆盛を誇った産業も、ひとたび技術革新や時代の潮流に巻き込まれると、萎れて枯れ果ててしまうもの。衰退した産業の負の部分はむき出しになったまま、置き去りにされ、忘れ去られようとしている今日を描いたのでしょうか。目新しい素材ではありませんでしたが・・・

同じ舞台、テーマの話を、インディペンデンス系とドキュメンタリーという異なる切り口で見られたことはちょっと面白く感じられ、ある意味、相互補完でもありました。

ドキュメンタリーフィルムを PIFF で見るのは初めてでしたが、ドキュメンタリーならではのコンテンツの明快さと、映像のクリアさが、まぶしかったです。感傷的な部分はそぎ落とされているので・・・

この街はよく映画やドラマの舞台となっていて、チェ・ミンシク主演の映画 『春が来れば』 でも、ソン・スンホン主演ドラマ 「エデンの東」 でも使われるようです。

確かにカメラに収めたくなるようなフォトジェニックな街と言えるかもしれません。




 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

그녀들의 방 (彼女たちの部屋)/ The Room Nearby
監督: 고태정 / Taejeong GOH 




貧しく家庭教師をしながら生計を立てる若いヨンジュ(チョン・ユミ)は、狭苦しい学生寮から抜け出して、部屋を借りたいと思っている。家庭教師の口はないかと、富裕層が住む町で、広い家に1 人で暮らす未亡人と出会い、奇妙な関係が始まる・・・というような話。

「部屋」 というと、閉ざされた空間、プライベートな空間という響きがあって、個人が持つ閉塞感と社会が持つ開放感という空間の対比によって、何かを描きたいのかなぁと思ったのですが・・・。

Q&A では、「作品の意図が分からない」 という質問がありましたが、それって監督にとってはキツイ質問だなぁと・・・。受け入れてもらえるかどうかは別として、意図が伝わっていないというのは。

監督いわく、「毎日顔を合わせていても、実は人間関係は希薄。そういう、人間のかかわり合いを描きたかった」 そうですが、ということは、やはり 「部屋」 は 「孤独」 につながるような気がします。

女家庭教師と未亡人の 2 人の不可思議な関わりは、なかなか良かったです。チョン・ユミいわく、「シナリオの中にキャラクターができあがっていたので、演技で困ることはなかった」 そうですが、確かに、この女性 2 人のキャラクターは明確でした。

監督いわく、「特に女性に焦点をあてたわけでない」 そうです。

とはいうものの、ちょっとストーリーの骨格がずれていて、どこに筋があるのか分かりづらかったです。

そして、韓国のインディー系のお決まり。エンディングにはやっぱり 「衝撃波」 が送られてきました(笑)。


 


13th PIFF Selection I

2008-10-09 23:55:48 | K-Movie Notes





 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

민둥산 (木のない山) / Treeless Mountain
監督:  김소영 / So Yong KIM 


金銭トラブルに巻きこまれた母親に、2 人の小さな姉妹は伯母の家に預けられる。ところが伯母は養育を放棄し、2 人を祖父母のもとに送る。「戻ってくる」という母親の言葉を信じて待つ 2 人・・・、というようなお話。

この作品は、監督の体験を元に制作された、半自伝的な色合いを持っているそうです。

子供の大人を見つめる目は鋭く、大人の言動や振る舞いが子供の目にどう映っているのか、ちょっとこちらがドッキリしてしまうことも。

またいつ棄てられやしないかと大人の顔色をうかがう健気さには心が痛むけれど、お涙頂戴には描かれていません。この小さな子供たちには、母親への慕情そのものが希望だったりするからでしょうか。

この子役 2 人は素人ですが、あれは演技なのか、子供の自然な演技力って怖いなぁ。

母親が去るときに、ピンクのブタの貯金箱を置いていくのですが、良い子にしていたら伯母さんがお駄賃をくれるから、良い子にしてブタの貯金箱が一杯になったら、戻ってくるから・・・という母親の言葉を信じて、2 人が貯金箱を一杯にするため、小銭稼ぎにあれこれと奔走する姿はかわいらしく・・・

伯母さんがちっともお駄賃をくれないので、野原でバッタ (イナゴ?) と捕まえ、それを串刺しにして焼いた 「焼きバッタ」 (子供のオヤツ) を小学生に売って小銭を稼ぎ、稼ぎが多いと、2 人でバッタの歌を歌ってはしゃいだり・・・

大きい額のコインを小さい額のコインに両替すれば、貯金箱に入れる量が増えると考えて、街のお店で両替してもらったり・・・

こうしたエピソードにはリアリティがありました。

でも、正直なところ、作品の意図がはかりかねたのですが、家に帰って調べてみたら、この作品は監督自身の母親へのラブレター なのだと知り、ああ、そうだったのかと納得できました。

早速今年の東京 FILMEX で上映されるそうです。

 


 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

고갈 (枯渇) / Exhausted
監督: 김곡 / Gok KIM


セリフはほとんどなく、映像だけでつづられるのですが・・・
こんな大ハズレな作品も近年珍しく(爆) 。

なんといえばいいのでしょうか。制作者の自己満足を通り越して自己陶酔の世界・・・
この作品について、いかなる芸術性を語られても、受け入れることはできないでしょう。一体どんなスクリーニング(審査)基準なんだか、審査員のセンスを疑いたくなりました

上映開始 15 分ですでに席を立つ観客がちらほら・・・
30 分でさらにちらほら・・・

私も出ようかなと思ったのですが、プサンに来る前はバタバタしていて睡眠不足だったこともあり、どっとお疲れモード突入。外に出てもゆっくり座る場所もないし、ここで仮眠をとっちゃえということで、そのまま意識を失いました

ときどき、観客の 「うっ」 という呻き声や 「ひやぁ」 という軽い叫び声が耳に入るたびに目が覚め、そのたびにまた何人かの観客が席を立ち・・・(ホラーとかスプラッターとかではありませんよ)。

そして、終わりました(笑)。

まったく、こんなのまともに見たらそれこそ exhausted (ぐったり) だわー。