(Image source: kaf-s.com)
韓国アートフィルムショーケース@イメージフォーラムにて『キムチを売る女』(2005年 監督:チャン・リュル 中国・韓国合作)を鑑賞。2005年カンヌ国際映画祭批評家週間ACID賞受賞他、世界各地の映画祭で15の賞を受賞した作品。
実は、アートフィルムの鑑賞は得意ではない。「アート(芸術性)」よりも、どうしても安易な「エンターテインメント(娯楽性)」に傾きやすい。アートフィルムは、「寿司の味のわからねぇ者は寿司を食うな」と言わんばかりの頑固オヤジのすし屋のようでもある。最初から暖簾をくぐらせてもらえないような気がする。
というのも、寿司の味がわかる者とわからない者に分かれるように、アートフィルムが理解できる者とできない者に分かれるからだ。私は間違いなく後者なのだけど、食い意地がはっているので、頑固オヤジの寿司だって食べたくなる。美味しいかもしれないので、食べなかったら損だから。
主人公は、韓国と中国、2つの国にルーツを持ちながら、どちらにも属しえない朝鮮族で、キムチ売りの女スンヒ(リュ・ヒョンヒ)。キムチの露天商で生計を立てながら、息子チャンホ(キム・パク)を育てる日々。キムチを買いに来る男たちとの交流が描かれている。
同じ朝鮮族、同胞ということでスンヒが心を開いた男は、既婚者キム(ジュ・グァンヒョン)。ある日、密会現場をキムの妻に見つかり、キムはスンヒを娼婦だと偽ったため、スンヒは留置所送りになる。そこには、スンヒのキムチをいつも買ってくれる警官ワン(ワン・トンフィ)がいた。ワンは婚約者がいながら、スンヒを逃がす代わりに肉体関係を強要する。そして、ワンの婚約者から、結婚式の料理にキムチを出したいので、キムチを納めるよう頼まれる・・・
監督自身が朝鮮族ということもあってか、ドキュメンタリーのようにも見えるリアルな作品。セリフも少ないし、衣装も質素で、登場人物の衣装はほとんど変わらない。音楽も流れないし、スンヒが住む家に装飾品は何一つなく、印象的なのは直線的な白壁の空間と青い戸口や窓枠。崩れたレンガの壁や乾燥して白茶けた土地。華美なもの、余分なものが一切そぎ落とされ、「素」みたいなものしか存在しない。
必要最小限のものしかないのに、ストーリーはしっかり組み込まれていて、雄弁だったりするから面白い。スンヒと男たちの関わりも、直接的で、情緒はあるのだろうかと思うほど無味乾燥のように見えるのだけど、それが却ってドロドロな心情の裏返しだったりする。
映画を見ながら、スンヒが売り歩くキムチがとても美味しそうに見えて、キムチが食べたくて、食べたくて・・・でも、ラスト近くの「事件」で食べたくなくなったのだけど・・・ アートフィルムを見ながら、やっぱり食欲が先行してしまう私は、頑固オヤジからムッ とされる客かもしれない・・・反省(笑) 。
スンヒとキムを演じた2人は演技経験がなく、本作品がデビュー。それに引き換え、子役は中国の演劇大学付属クラスでみっちり演技の勉強をしているというからビックリだ。子役がこの作品のピエロ的な役回りで、コミカルでありながら物悲しかったり。
一番好きな場面は、スンヒが中国人の女性に朝鮮舞踊を教える場面。手の動きがしなやかで、たおやかで、作品の中で最も優雅さを感じた場面。
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