Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

「タチマワリ~悪人よ、地獄行き急行列車に乗れ」 (韓国 / DVD)

2008-12-29 23:54:31 | K-Movie Notes



「タチマワリ~悪人よ、地獄行き急行列車に乗れ」

原題: 다찌마와 리 - 악인이여 지옥행 급행열차를 타라 (2008 年 8 月)
監督: リュ・スンワン
出演: イム・ウォニ、コン・ヒョジン、パク・シヨン、リュ・スンボム



今年、これが最後の韓国映画 DVD 鑑賞作品。これを見てからじゃないと年を越せない? と思うほど気になっていたわけではないけれど、商品が届くと珍しくいそいそと開封、即プレイヤーへ!

これぞ、スーパー B 級ムービー。でも、あちこちへのオマージュ作品らしい

短編 「タチマワリ」 から、かな~り進化してて、話のスケールも、グローバルに展開!?(笑)。上海、アメリカ、スイス、満州へも飛び、大忙しのタチマワリ。タチマワリったらお洒落度もアップして、ヨジャたちにもモテまくり、えらくカッコよくなっているではありませんか。

この作品、まるで旅役者の 「芝居」 を見ているようだった。お洒落なステージじゃなくて、旅芝居が回る小さな芝居小屋の舞台で繰り広げられる 「活劇」 の感覚。
セリフまわしも無声映画の弁士のようだし、泥臭くて、セットもどこかチープなのに、遊び心満載(遊びすぎ? ・笑)。

金の仏像探し、仏像の中のリスト・・・これはイ・マニ監督の 「鎖を断て」 と同じプロット。時代設定は一体いつなんだか、いやもう、凄くへんてこな日本人出てくるわ、それに、一体何語を話しているんだか、ちゃんぽん語じゃない !! 論理的に深く考えることに全く意味がなくて・・・

この作品、今年最大の話題作 「ノム」 とともに、ウェスタンジャンルへの回顧的作品として取り上げられていたけれど、ウェスタンなのかというと、そうでもなく、どちらかと言うとスパイアクション? ウェスタン風味、お得意のカンフー風味あり。凝りに凝っている。それと衣装に現われる独特の色彩感覚も面白い。

この作品、まず、タチマワリって何者よってところから知らないと面白くないかも。それに、この B 級テイストを受け入れられないと、何やってんだかとドン引きになる可能性も。見る人の嗜好性によって、感じ方がかなり大きく左右されてしまいそう。だから B 級なんだろうけどね。

そして役者も多彩。みなさん遊んでるでしょ・・・と思えるほど、楽しそう。ファン・ボラの変わりように驚いた。ファン・ボラだって分からなかったもの。

ストーリーは一応(笑)ちゃんと筋が通っていて、設定はおかしくとも、そこは故意におかしくてしているのだから、あっさりスルーする潔さ(?)淡白さも必要かな。ともあれ、
この独特の雰囲気が今なおべったりあとをひく(笑)。



韓国映画ショーケース 2008 「目には目を 歯には歯を」

2008-12-20 00:49:01 | K-Movie Notes

「目には目を 歯には歯を」

原題: 눈에는 눈,이에는 이 (2008 年 韓国)
監督: クァク・キョンテク、アン・クォンテ
主演: ハン・ソッキュ、チャ・スンウォン


刑事モノのネタはそろそろ尽きているのか、それとも尽きているようでなかなか尽きないのか。

そして、韓国映画における刑事像も、新たなキャラクターを作り出すのはなかなか難しいようだ。カン・チョルジュン(@「公共の敵」)みたいな、やさぐれ強烈キャラ刑事がすでにいるしね~。

上 ↑ のポスターなんて、見た目が完全に 「カン・チョルジュン」 のティーザーとカブっている。ハン・ソッキュの上着が、テカテカしているところまで。

公共の敵打倒と復讐劇を合わせたような話。意外だと思わせてくれる展開は意外となく(笑)、ストーリは単純。単純なのに複雑そうに見えたのは、カーアクションと登場人物の背景の多さかな。

男前の主演 2 人を前にしながら、私の目はオネエ役のイ・ビョンジュンに釘付け(笑)。ここでなぜオネエ役が登場するの? とか、キャラがオネエである必要性はあるのか? とか、追及するばするほどややこしくなりそうだ


刑事と犯人の知能ゲームに巻き込まれる快感も、手に届きそうで届かないという緊迫感もいまひとつで、なんだかとても冷静に座っていられた。あちこち引っかきまわすのでないところが、ツボだったのかしら。

どこまでがワルでなくて、どこからがワルなのか、その辺りの線引きやら、正義の駆け引きは、ちょっと面白かったけどね。

ハン・ソッキュの高らかなベルベットボイスの笑い声が耳に残ったままだわ~。


韓国映画ショーケース 2008 「セカンドラブ」

2008-12-19 23:50:27 | K-Movie Notes


「セカンドラブ」

原題: 두번째 사랑 / Never Forever (2006 年 アメリカ/韓国)
監督: キム・ジナ
出演: ハ・ジョンウ、ヴィラ・ファミーガ


舞台が NY というので楽しみにしていた作品。NY と言っても、ほとんどチャイナタウンだったけど。それにしても、真昼間に上映する内容じゃないかも。夜の上映回の方がいいんじゃないの?と思うぐらい、あの場面が多くて苦笑。別にいやらしくないからいいけど。

夫に問題があるため不妊に悩む妻が、夫のためにどうしても子供をもうけるために夫以外の男に身を任せる切ない話かと思ったら、結局のところ、「自分の子供」 が欲しい女の話だった。

体だけ、正確には子種だけが目当てで夫以外の男に体を許したところ、何が良かったのかその男に惚れてしまった。この男が子種をくれたから?

残念ながら、女がその男に惚れる過程、その男が女に惚れる過程のいずれもほとんど描かれていないので、ある時点から突然相思相愛、熱烈カップルになって戸惑った。ここをどっぷり描いてくれていたら、もう少し共感できたかもしれない。言葉より体が先に出てくると、 本能的でエゴに近いものを感じてしまう。

Korean American 社会で成功している敬虔なクリスチャンの夫の家族に対するカメラの視線がなぜかとても冷ややかに感じたけど、何か恨みでも?

心をくすぐるようなメロラインもなく、China Town を 「中華街」 と訳すのはやめてほしいなぁとか、2 人が喧嘩する場面で、「あんたはアッチも下手くそ」 と言われているのに、字幕ではオブラートがかかった訳になっていて、ハ・ジョンウに気遣ったのか?(笑)と突っ込みを入れつつ、夫が悪役に仕立て上げられるのを哀れに思っているうちに、終わってしまった。

いかにも女流監督の作品という感じで、「女流」 の部分がことさら作品から滲みでているようで、もう少し共感できる部分が欲しかったなぁ。



 


韓国映画ショーケース 2008 「あの人は遠くへ」

2008-12-15 22:03:30 | K-Movie Notes


「あの人は遠くへ」

原題:님은 먼곳에(2008 年 7 月)
監督: イ・ジュニク
出演: スエ、チョン・ジニョン、オム・テウン、チョン・ギョンホ、チュ・ジンモ
link to KMSC2008


大作目白押しだった今年の韓国映画界。一応大作と言われていた夏~秋の公開作は全部見たけど、唯一、自分の中でしっくりきた作品はこの作品だけだった。

公開時に見たときは、もちろん字幕なしだったが、日本語字幕が付いて、自分の解釈と違うところがなかったことに驚き。自分の解釈といっても 「想像」 にすぎなかったけれど、言葉が分からなくても伝わるってすごいことだとつくづく感じ入った

現地で公開されたとき、特に若い女性からの支持を得られなかったと監督がぼやいていた記事を読んだけど、特に 「スニ(スエ)があそこまで行く理由がわからない」 というコメントが多かったそうだ。

私は逆に 「どうして分からないのだろうか」 と思った。今の世の中は、女性にも選択肢が多いということなのだろうか。

あそこまで行かなくても、他にも選択肢があったかというと、スニの置かれている状況にはなかったような気がするし、だいたい妻に黙ってベトナムに行くなんて許せない、完全無視ってどういうことよ と問いつめたくなるでしょ(笑)。 

監督の Q&A でも明確にされているけれど、私も 「そりゃ、自分のためでしょ」 と思った。自分はこの先、誰と、何を支えに、どう生きるのかと、自分探しに近いのかもしれないとも思えた。



============================



以下、ネタバレバレです。
*こちらも記憶がおぼろげなので、細かいところは正確ではないと思います。ご了承ください。*


 イ・ジュニク監督のQ&A  きゃ~~

まず、「意図したところが伝わっているか、ちょっと怖いなぁ~」 とのご挨拶。


Q: ストーリーについて

A: 韓国は短い時間の間に経済的に急成長を遂げ、その分、痛みも伴いました。特に 70 年代の若者。ベトナム戦争は、これまで素材として主にアメリカの作品の中で取り上げられてきました。朝鮮戦争からベトナム戦争、いずれも西欧のイデオロギーの対立から生じたものです。アジアの視点でのベトナム戦争を描いてみようと思いました。この作品では、ベトナム戦争へ出征した夫を探しに行く女性が主人公です。

この主人公を演じたスエは、自分の母親の時代における女性像のイメージ。現在美人ともてはやさされているのは欧米化された顔立ちだけど、スエは整形手術もしていないですしね(笑)。


Q: ラストシーンで登場する隊長さんは、いつも監督の作品で、ちょこっとだけ出演なさっているようですが、なぜいつもちょこっとだけ出演されているのでしょうか。

彼は、演技が上手なのですが、俗に言う成功はしていないのです(笑)。もともと大学路で活躍する舞台俳優で、子供が 2 人います。学費などで大変だと聞いているので、子供の教育の足しにと思い(笑)。私の作品ではなかなか彼に合う大きな役がなくて、でも、最近、他の監督さんの作品で大きな役をもらったそうですよ。

彼と同じような立場の役者を助けていきたいです(笑)。
彼の名前は、シン・ジョングンです。


Q: エンディングで、お互い抱きつくでもなく抱き合うこともなく、オム・テウンが跪き、スエが立っている場面が印象的ですが、あの場面の意図は?

意図は 2 つあります。韓国の女性は、ある意味、これまで男性に抑圧されてきました。それを内面から吐き出させるという意味。頬をぴしゃりと叩くところは、強い否定でもありますが、それはイコール強い肯定になります。

そして、オム・テウンを跪かせたことについては、韓国の男性は自分が間違っていても反省しません。私もです(笑)。私自身が反省しなくてはならないという気持ちをこめました。


Q: スニ(スエ)はどうしてあそこまで、何のために行ったのでしょうか。

自尊心、プライドのためです。夫は自分のことを認めてくれなかった、自分は何も悪いことをしていないのに認めてくれなかった。夫が間違っていることに夫自身に気づいてほしかった。単純な男女間の愛情よりももっと強いものです。

スニがサンギルの頬を叩く場面では、スエにこう指示しました。
1 発目は、「(俺を)愛しているか?ですって」
2 発目は、「愛が何かわかっているの?」
3 発目は、「これが愛よ」


Q: 監督にとって音楽は何ですか?

私は、1960 年代~ 70 年代に10 代を過ごしました。みんな貧しくて楽しみはラジオしかなかった。両親は勉強しろとばかり言うので、思うように聴けず、夜中、布団の中で聴いていました。

勉強も英語もできなかったけど、アメリカのポップソングは 1 回聴いただけで覚えました。もちろん内容も理解していませんけれど、リズムや、その時に心に残った感情は覚えています。


Q: 音楽についてですが、「님은 먼곳에」 がこの作品の主題歌のはずなのに、なぜ最後は 「Oh, Danny Boy」 が流れるのか不思議なのですが。

A: そこに気づいてくれて嬉しいです。「Oh, Danny Boy」 は、アイルランド民謡で親が息子を想う曲です。この作品では、エンディングで、ジョンマン(チョン・ジニョン)が 2 人を見届け、後ろを振り返ってフェードアウトする瞬間に 「オーダニーボーイ」 切り替わります。そこには、妊娠させた愛人ジェニー(チョ・ミリョン)を思い出すジョンマン、サンギル(オム・テウン)を想う母、自分を捨てたジョンマンを想うジェニー(クラブで彼女が歌っていたのが 「Oh, Danny Boy」)、サンギルを想うスニ・・・ いろいろな想いをこめ、このあと、捨てた愛人のところへ戻るであろうジョンマンを想像してもらいたいと思います。


Q: ベトナム戦争について。

A: ベトナム戦争を扱った作品には、ネガティブな題材が多いのが気になりました。政治的な話ですが、朝鮮半島は今でも休戦中です。東西の冷戦は西欧が作りだしたもの。21 世紀になっても朝鮮半島ではこの問題が解決できないのは、なぜでしょうか。ベトナム戦争は解決しているのに、半島はまだ冷戦から抜け出せていません。何か視点を変えて描いてみたかったのです。

たとえば、洞穴に住むベトコンの生活場面を描いていますが、アメリカではベトコンは悪人扱いだけれど、地下の洞穴でも子供に教育を施したり、きちんと生活を営んでいました。ここには、善悪はない。あるのはただ立場の違いだけだということを伝えたかった。反米ではありません。弱者に対して温かい目で見守りたいのです。


Q: 次回作の予定は?

A: 1598 年の豊臣秀吉の明国出兵がテーマです。反日ではありません。過去の歴史を感情だけでなく、成熟した視点で見るということ、相手を攻めるより、まず自らを省みようということです。タイトルは 「雲から抜けた月のように」 です。

できるだけこれまでと違う役者を使いたいと思います。とくに生活に困っている役者さんを(笑)。


==========================



ユーモアたっぷりで、通訳さんへの配慮を忘れないなかなか楽しい Q&A でした。やっぱりこの監督好きだわ~

「恋愛が苦手で、深い恋愛を経験したことがありません、不幸なことですが・・・。でも男性と恋愛する気にはなれません(笑)」 (←「王の男」 の時から言い続けていることなんだとか)。

Q&A 終了後、監督が出てこられないかしらと少しばかり粘ったのですが、タイムアウトとなり悔やまれますが、なぜか男性ファンの居残りが多く、きっとあの後、やっぱり男性に囲まれていたのでは?と(爆)。

シン・ジョングン、「神機箭」 にも出てたわ~そういえば。 


韓国映画ショーケース 2008 「サグァ」

2008-12-15 21:52:06 | K-Movie Notes


「サグァ」

原題: 사과(2008 年 10 月)
監督: カン・イグァン
出演: ムン・ソリ、キム・テウ、イ・ソンギュン
link to KMSC2008

2005 年の東京 FILMeX で紹介されていたのに、韓国での公開までに約 3 年を要している。なぜにそんなに時間がかかっていたのか、事情はよく知らないけれど、見た限り、内容に問題があるというわけではなさそう

久々にキム・テウ萌え した作品。
内向的な男性を演じさせたら、右に出るものはいないぐらい細やかな演技をする。いらいらするところもあるけれど、癒されるところもあるから、無碍にできないわ~と、こそっと女心をくすぐられる。本当のキム・テウはどんな人なのかと、ちょっと興味がわいてくる。

またこういう内気な男性に限って勝気な女性に惚れるというパターンはあまり珍しくないけれど、やはり自分に持っていないものに惹かれるのは男女間の常だと言えるのかな(笑)。

最近、よく見かけるイ・ソンギュン。「夜と昼」 にも出ていたっけ。ミンソク(イ・ソンギュン)の方がキャラ的にわかりにくいと思った。7 年間も付き合った挙句に愛し方がわからないと言って別れておきながら、結婚・出産後もヒョンジョン(ムン・ソリ)に未練がましく付きまとうという悩める子羊? か・・・。

結局、最後に決断するのは女なのね。フェミニズムの映画じゃないけど、なんだかズルくない? 男ども・・・。

ストーリーにはドラマティックな展開はないけど、監督が述べているように、恋愛を形作るものは真っ赤なハートだけじゃないというのは、なんだか頷けるような気もしてきた。

 

=================================


以下、ネタばれあり。(とくにエンディング)
***記憶がウロ覚えなので、表現は正確ではないと思います。あしからず。***

 上映後の監督ミニインタビュー

Q: 監督はシナリオも書かれ、この作品はサン・セバンスチャン国際映画祭 新人脚本賞(2005 年)とトロント国際映画祭 国際評論家協会賞(2005 年)を受賞し、世界で評価されていますが、この作品の魅力とは何ですか。

A: はて、何でしょう? 日常の男女が何を感じて、どんな愛を育んでいるかという、日常を映しだしているところでしょうか。


Q: サグァには、謝罪とリンゴという 2 通りの意味があります。タイトルにはどのような意味があるのでしょうか。

A: タイトルをつける時にとても悩みました。普通 「恋愛」 というと、赤いハートを思い浮かべるでしょうけど、私はなぜか青いリンゴを想い浮かべます。登場する 3 人が、愛し合い、そして謝るという、両方の意味合いがあります。


Q: ヒョンジュン(ムン・ソリ)がミンソク(イ・ソンギュン)に青いリンゴを渡すところは、そこを象徴しているのですね。

A: はい。


Q: キャスティングについてお聞かせください。

A: ムン・ソリについて。この年代で一番演技が上手だからです。撮影中、喧嘩をするほど話し合いました。撮影中はご結婚前でしたが、愛の形についていい結果が出るといいなぁと思っていたらめでたくご結婚されました(笑)。本当に勉強になりました。

イ・ソンギュンについて。最近ドラマで活躍中ですが、この作品はドラマ「コーヒープリンス 1 号店」 の前に撮影したものです。それまでの作品は比較的明るい役柄だったので、ここでは真剣な恋愛ものを、楽しく演じていただきました。

キム・テウについて。とても受け身な男性の役柄なので、演技力が問われます。韓国の男性は典型的に、強く、リードする存在で、ときに暴力的に描かれます。ここでは内面的なものを押し出してもらいました。韓国の男性にも殴らない人も、喧嘩しない人もいます(笑)。


Q: エンディングは 2 通りの解釈があるように思えますが。

A: 男性と女性では、反応が異なるようです。男性は、ああこのまま離婚するのだなぁと、女性は、この 2 人はやり直すのだろうなぁと。

私の意図は後者です。この 2 人はまだ別れるには、出会ってからの時間が短すぎます。愛情を得ることよりも、得た後にその愛をどう継続して育むかが重要だと思います。


==================================

 


TOKYO FILMeX ① 「夜と昼」

2008-12-02 23:55:53 | K-Movie Notes


「夜と昼」

原題: 밤과 낮 (韓国 2008 年 2 月)
監督: ホン・サンス
出演: キム・ヨンホ、パク・ウネ、ファン・スジョン、キ・ジュボン

link to FILMeX


今年のベルリン国際映画祭出品作品 ホン・サンス監督の 「夜と昼」 を東京フィルメックスで鑑賞。

この監督の笑いはいつも独特。ドッカンと笑うのではなく、フッと鼻から息を吐き出すような笑い。そんな息をフッ、フッと吐いていたら、右隣席の男性に睨まれた。でも左隣席の男性だって、私同様、フッ、フッと息を吐いていた。

そして、ホン・サンス作品に登場する男は、いつもあんな体たらくで、こちらはたいていイラっ とさせられる。私の周囲にはいないタイプ(笑)。周囲にいたら、何がしたいのか、はっきりしてよっ!と思い切り噛み付くと思うのね。

あっ、でもキム・テウ(@「女は男の未来だ」)はなぜか許せてしまう・・・
あはは、単に好みの問題かもしれないけど。


それにしてもこのさえない男のパリ日記は一体いつまで続くのかと、途中で不安になった(笑)。起こるべくして起こった中年男の運命の恋愛劇というわけでもなく、画家としての自分探しの旅でもなく、日記が淡々と綴られる。

スクリーンを見つめながら、どこでどういうケジメをつけるのかと気になってしようがなかった。私を睨んだ隣の男性は、何度も何度も時計を見ていた。なんでこんなに長いのかと、思っていたのだろう。上映時間 145 分。

でも、最後は雲の中から呆気なくやってきた(この主人公の画家は雲の絵が得意)。ドラマティックな展開なんてもちろんなくて 「なんとな~く」 雲の中で終わった。あらら~。


舞台はパリでなくてもいいのだけど、主人公の画家が憧れる街だし、監督がよく知っている街だから、設定は 「なんとな~く」 パリなのだろう。パリの街だからという意気込みのようなものはなくて、主人公の周りはすべて韓国人で、パリに住む韓国人コミュニティの一角を覗いたという感じ。

個人的には、ドラマ 「塩人形」 で夫婦役だった、キム・ヨンホとファン・スジョンがこの作品でも夫婦役というので、見比べると面白いかなと思っていたのだけど、ファン・スジョンはほとんど出番がなくて、ちょっとがっかり。

正直言って、私にはこの作品の奥深さなぞ到底理解できそうもない。確かにウィットのあるセリフは散らばっていたけれど、「なんとな~く」 つかみどころのない雲のような話だった。


そうそう、なぜ 「夜と昼」 なのか。タイトルの持つ意味がよく分からないなと思って検索・・・

監督いわく、まずタイトルありきの作品だったそうだ。自分が海外にいる時に、韓国にいる家族に電話をした。その時、こちらは昼なのに、あちらは夜なんだと気付き、このタイトルを思いついて、ストーリーを練ったそうだ。

こちらが昼であれば、地球の裏側は夜・・・ 当たり前のことだけど、普段、常に意識しているわけでもない。確かに、そう言われると不思議な気もするなぁ。


 CINE 21 ホン・サンス監督インタビュー ( link to


「ブレス」 (韓国版DVD)

2008-11-27 23:56:20 | K-Movie Notes


「ブレス」

原題: 숨 (2007 年 4 月)
監督: キム・ギドク
出演: チャン・チェン、パク・チア、ハ・ジョンウ、カン・イニョン



キム・ギドク監督作品は嫌いじゃない。でも、なんというか、体調のいい時に見たいと思う。ギドク作品でまだ見ていない作品は、「受取人不明」 と 「鰐」。HDD に録画したままだけど、体調を整えてからね(笑)。

さて 「ブレス」。昨年のプサン国際映画祭で、自分の目の前でチケットが売り切れ見逃して以来、日本公開時も見逃した。今年 6 月にヘイリ芸術村に行き、俄然見たくなったのに、やっぱり DVD 放置。ここへ来てようやく開封できたのは、単なるチャン・チェン狙い。

ヘイリ芸術村にご自宅があるという監督。自宅の近所なんて、お手軽な撮影地だけど、劇中でハ・ジョンウとパク・チニが演じる夫婦の家として使われた Ponetive Space (写真参照↓)を初め、ここもあそこも見た、行ったという場面にいちいち頷きながらの鑑賞も悪くない。


          

                   

          


そして、チャン・チェン。こんなに美しい囚人がいていいのかというぐらい、その容貌もさることながら、一言も発することを許されないというストイックな演技がこの作品の美しさの要かもしれない(すみません、単なるにわかファンなもので・・・)。セリフの少ないギドク作品ならではの怪演でもある。

別にここで語らずとも、あちこちですでに語られていることだけど、四季、刑務所、彫刻など、これまでのギドク作品で描かれたエレメントをいいとこ取りしたような作品。

面会にやってくる見知らぬ女の 「春夏秋冬」 ショー。最初は女の変人ぶりに唖然とするけれど、次は何が出てくるかと楽しみになるのは、この囚人と同じ気持ちなのかも。その面会の模様をモニターでチェックしているのは監督自身らしいが、この覗き見の趣味も 「悪い男」 みたいだわ(笑)。

そして、最後はそこまでいっちゃうのか・・・と。
そこまで行ったら、この囚人はまた独りぼっちになってしまうのに・・・
じゃ、次はワタシが面会に行こうかと・・・(笑)


死刑囚チャン・ジン(チャン・チェン)に擦り寄る同房の囚人は、ドラマ 「王と私」 に出演していたムン内官こと、カン・イニョンだった。あの中性的な魅力をこんなところでも披露していたのね(笑)。

ここに出てくるハ・ジョンウは、珍しくミスキャスティングじゃないかと思うほど浮いて見えたのは、この人がごく普通の人間の役だからかな。


見終わって、なぜタイトルが 「息」 なのかと、肝心なところがよく分かっていないことに気づきあわてて検索・・・

監督いわく、“憎しみが吸い込む息ならば、赦しは吐き出す息” なんだとか。 



 Cine 21 の長~~い 映画評 ( link to


 Cine 21 チャン・チェン(以下、CC)のインタビュー記事より抜粋 ( link to

Q: 今年は韓国映画でカンヌを訪ね、以前と少し気分が違うのか。

CC: ベニス映画祭で <空き家> を見て深い印象を受けた。 キム・ギドク監督が同じホテルで昼食を食べておられたので、知り合いを通じて挨拶をしたいと頼んだ。 その時は、こういう形でまたお会いするとは思っていなかった。


Q: キム・ギドク監督のどんな作品を一番好むか。

CC: <空き家> と <悪い男>


Q: ご存知のとおり、とても力強い映画だ。キャスティングされる瞬間、恐れや抵抗感はなかったか。

CC: 何の抵抗感もなかった。 韓国語もできないのに、いったいどんなキャラクターを演技するように作られるのかととても楽しみにしていた。 そしてシナリオを受けとったら、本当に挑戦してみたいキャラクターだった。


Q: キム・ギドク監督の撮影は途方もなく速い。 テンポに合わせるのに難しいことはなかったか。

CC: 率直に言うと、とても荷が重かった(笑)。撮影が速いとは聞いていたが、これほどまで速いとは想像もできなかったから。 率直に話をして、ストレスをちょっと受けたのも事実だ(笑)。だがキム・ギドク監督の立派な点は、俳優が自ら実力を発揮できる空間を十分に配慮することができるということだ。


Q: 韓国俳優との演技はどうだったか。 準備期間も短くて、言語も通じなくて呼吸合わせるのが難しかっただろう。

CC: 撮影前にあらかじめ対面を済ませていたので拒否感もなかったし、皆さん、とても良い演技者ばかりで大きな困難はなかった。 ただ、パク・チアさんと演技する時はセリフにすぐ反応しなければならないのに、いつどのような表情にするべきか把握するのが少し難しかった。

 


韓フェス 4 本立て!

2008-11-18 22:55:03 | K-Movie Notes


ようやく、韓フェス 4 本立て !!
韓フェス、長期間やっているのに、なかなかスケジュールが合わない(笑)。

上映作品については、コチラ ( link to
韓フェス

以下、軽いネタバレを含みます。



 「俺たちの街」

原題: 우리 동네 (2007 年 11 月)
監督:  チョン・ギリョン
出演: オ・マンソク、イ・ソンギュン、リュ・ドクファン

                     


原題の 「우리 동네」 の 「동네」 は 「街」 というより 「町内」 という響きの方が、この作品に馴染むかも。街より、もっともっと近くて、狭い空間での出来事だから。

心の準備がないと、冒頭の映像にいきなり 「ぎぇーーーーっ」 ってことになるかもしれません。でもこれはほんの序の口であって、そのあと一体、何体出てくるか(笑)。最初に免疫つけてねってことのようで。

カワイイどころ、イケメンどころを集めておきながら、グロさ、エグさを基本とする、サディスティック路線を貫く作品なので、麗しき出演者とのそのギャップにかなり戸惑う観客もおられたようで。

確かに 「星の王子さま」 のイメージにはぴったりのリュ・ドクファン君の全裸サービスショット(?)あり。そんなサービスショットも楽しめる余裕があるかどうか・・・

どんでん返しというほどではないが、そういうことだったのかというオチはしっかりあった。一度狂った歯車は、永遠に狂い出すということなのか、なんとも哀しい話だった。

(余談:公園の碑に確か 「바르게 살자 (正しく生きよう)」 と刻まれていて、こっそりウケた。)




 「M (エム)」

原題: M (2007 年 10 月)
監督: イ・ミョンセ
出演: カン・ドンウォン、イ・ヨニ、コン・ヒョジン 

                      


スクリーンで見ておきたかった作品。でも、前半の途中で気を失ってしまった。ごめんなさい、イ・ミョンセ監督、握手してもらったのに。だってだって、とっても目が疲れんだもの(笑)。色彩はスクリーンの方がもちろんキレイだけど、あの凝りに凝った映像は、意外と小さな画面で見た方が目には良いかも。

最初 DVD で見たときは、酷評されるほどじゃないと思ったけど、2 度目になるとやはり少しクドイというか、リピート映像が多いなと思うところがあった。でもそれは一度見ていて話がわかっているから、そう思うのかもしれない。

とにかく、最初は何が何だか話がちっとも分からず、迷宮だったもの。迷宮を抜け出すと呆気ないけどね



 「正しく生きよう」

原題: 바르게 살자 (2007 年 10 月)
監督: ラ・ヒチャン
出演: チョン・ジェヨン、ソン・ビョンホ、イ・ヨンウン

                     


ソウルでこの作品を見たときは、なんだか可愛らしく、とってもヒューマンな味わいだったことが意外だった。リメイク元の 「遊びの時間は終わらない」 にはそんな感覚はなかったので。でも 「遊びの~」 を見たのがかなり前の事だったし、はっきりとは覚えていないからかなぁと思っていた。

可愛らしいと思ったのは、ポップな音楽のせいもあるかな。あの音楽が流れると、ちょっと癒される。

ともあれ、今回見てもやっぱりヒューマンな味わいは変わることなく、確認できてよかった。笑いのツボは、場内、かなりドッカンとウケていました。もともと 「遊びの~」 でも銀行内での設定は面白かったからね。

そして、登場人物のキャラクターの作り方がとにかく丁寧だなぁと、再度確認。ラ・ヒチャン監督の持ち味なのか、師匠譲りなのか。チョン・ドマン(チョン・ジェヨン)はもちろん愛すべきキャラだけど、署長さん(ソン・ビョンホ)も、行員たち、警官たちひとりひとりに至るまで、いいキャラなんだなぁ、これが・・・。

笑いたい人にはぜひおススメ・・・

 

 「楽しき人生」

原題:  즐거운 인생  (2007 年 9 月)

監督: イ・ジュニク
出演: チョン・ジニョン、キム・ユンソク、キム・サンホ、チャン・グンソク

                       


オッサンバンドの楽しき人生のウラには哀しき人生ありなんだけど。

バンドってイケメンボーカリストがいないと成り立たないのね。チャン・グンソク君がいないとこのオッサンバンドも成立しえない。しかし、"活火山" ってロックバンドとは思えないネーミング(爆)。

"活火山" の代表曲 トジルコヤ もオッサンたちが大学生だった 80 年代の曲って設定なんだけど、オッサンたちが歌うと、どう聞いても日本の 60 年代のグループサウンド風にしか聞こえない。でも、グンソク君が歌う現代アレンジでようやく 80年 代に追いつく感じ?(笑)

家庭、リストラ、子供の教育・・・と悩める 40 代のオッサンたち。友の死をきっかけにバンド活動を始めるが、ただ 「青春よ再び」 と過去を振り返らせるだけでもなく、現実逃避させるのでもなく、「自分と向き合う」 時間を持たせるという、思い切りヒューマンなストーリーで、ちと泣ける


奥さんたちにもちゃんとスポットが当たっていて、ギヨン(チョン・ジニョン)の奥さんなんて、出来た人だわ~(感心)。

失業中のくせにバンド活動していることを内緒にして、練習で夜遅く帰宅する夫に、「外に女がいるのね~」 と奥さんが詰問する。

この奥さん、ダンナにほんと惚れてるのね~と。失業中で自由になるお金もない甲斐性なしで、身なりも中年オーラ満開の男に、普通、女は寄ってこないと思うけど・・・とツッコミたくなった。奥さんが思っているほどダンナは外でモテないと思うのに、奥さんの目にはダンナはとても魅力的に映っているんだなぁ~と微笑ましかった。

ちょっとベタな演出もあるのだけど、人と音楽の関係って元々ベタなのかも。普段とても口にできないような言葉をメロディーに乗せると、歌えてしまうのはなぜかしら。

ストーリーの面では、それぞれの家庭の話が自然に展開。そして、終わり方も好きだな~。楽しき時間はあっという間。ともあれ、このキャスティングだもん。見ないなんて、もったいないわ~

 

 


可もなく不可もなく系 Part III

2008-11-17 23:45:12 | K-Movie Notes


なんとコメントしようかと悩んでしまうほど、フ・ツ・ウ。
見どころナシって訳でもないけど、おススメって訳でもなく。



「ラヂオ デイズ」 (韓国版 DVD)

原題: 라듸오 데이즈 (2008 年 1 月)
監督: ハ・ギホ
出演: リュ・スンボム、イ・ジョンヒョク、キム・レハ、ファン・ボラ、キム・サラン

           


「ラヂオの時間」 (監督:三谷幸喜)の韓国版か? とやっぱり思ってしまう。

京城モノ。ドラマを初めてラジオ放送するラジオ局を舞台にした話。ラジオ PD(リュ・スンボム)、シナリオ作家(キム・レハ)、ラジオドラマの声の出演者らが織り成すコメディ?

いろいろ笑いどころはあるけれど、オモシロイようでオモシロくない(笑)。
なんともツッコミどころ、いや、ツカミどころのない話。
京城モノ定番の独立運動家(?)の存在が話に弾みをつけるのかな~と思ったら、その辺りの話はシリアスにしたくなかったのか、弾むどころか、絡み方がな~んとも中途半端。

「ラヂオの時間」 の韓国版か? と言ったものの、「ラヂオの時間」 ほど緻密な展開が用意されているという訳でもない。コレはコレでオモシロイ というところを見せて欲しかったなぁ。
エンドロールでは、ダンシング スンボムの後ろで一生懸命運動 している(=踊っている)キム・レハをついつい目で追ってしまった(笑)。





「私の愛」 (韓国版 DVD)

原題: 내 사랑 (2007 年 12 月)
監督: イ・ハン
出演: カム・ウソン、チェ・ガンヒ、オム・テウン、チョン・イル、イ・ヨニ、リュ・スンニョン


          


「ラブ・アクチュアリー」 韓国版か? というより、TV ドラマかと思った。

4 組の愛の形が絡み合う。それぞれの話は悪くないのだけど、カム・ウソン&チェ・ガンヒのカップルの話の結末にちょっと引いてしまった。

事故に遭遇とか、若くして病に倒れるとか、メロに障害はつきものなんだろうけれど、それはバランスの問題で、ああいう非現実的な展開は、見せ方によってはとてもチープに見えてしまう。

製作者はロマンチストなんだろうか。恋愛に幻想を抱いているような、そんな憎めないところもあるのだけど。

個人的に胸キュンだったのは、プチメロウなリュ・スンニョンの男の色気。むふふ、なかなかステキ。

ところでシネマート六本木で観た 「私の愛」 の韓国版予告編にソ・シネちゃんが出ていて 「んん?」。ソ・シネちゃん、本編では見かけなかったような・・・。見逃した?



「追撃者」 (韓国版DVD)

2008-11-15 01:24:50 | K-Movie Notes




「追撃者」


原題: 추격자 (2008 年 2 月)
監督: ナ・ホンジン
出演: キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ
link to Cine21


今年の話題の韓国映画のひとつ。

ロンドンのとあるレビューでは、 "superb direction (秀逸な演出)" と絶賛。 
link to
viewlondon.uk.com

とにかく画面は暗くて、そして寒々しい雰囲気。

 

八の字まゆ毛で笑うとお人好しそうな顔なのに、頭の中ではとんでもないことを考えている被追撃者のハ・ジョンウも良かったけど、何といっても圧倒的だったのは、追撃者のキム・ユンソク。

気迫というより "鬼" 迫(造語)というべきか。演出が秀逸かどうかって、私にはよく分からないけれど、明らかに観て分かるのはまずもってこの俳優の秀逸さなのではないかしら。もうファンになりそう(笑)。

いくつか始まっている韓国映画界の賞レース。
キム・ユンソクが賞を獲るなら納得だわ・・・

 


猟奇的殺人犯とそれを追いかける 元刑事の対決  の構図が鮮明に描かれている。ただ、ストーリーや話の展開にはそれほど目新しいものは感じなかった。

猟奇性と言っても、どこかで読んだような、あるいは観たような設定だし、キム・ユンソクの執拗なオッカケぶりと、金槌を振り上げる姿はふとオールドボーイを思わせたり・・・

 


展開の緩急の間がいいというか、追い詰めるところは観ている方もガンガン追い詰められて手に汗握る感覚だし、路地や坂のような空間の使い方も面白いので、見ていて飽きることはない。

低予算の制作だったっけ?人工的なセットよりロケ中心の撮影だったせいか、「ここはお金かけて作りました」 というように見せびらかすようなところはもちろんなくて、リアリティあふれる、人間同士のガチンコ勝負と言う感じ。

 

でもね、とにかく暗くて、出てくる人がみな決して幸せそうではない。
映画を見た後にドヨ~~ン とするのは、エンタメ志向ではないという作品性のせいかもしれないし、スクリーンと現実の間にあまり隔たりがないような気がするからかもしれ
ない。

そのうち日本でも上映されるかな。


 


やっぱり、「あどぅる」 にして

2008-11-02 22:32:20 | K-Movie Notes



第 9 回 NHK アジア・フィルム・フェスティバルのオープニングを飾ったチャン・ジン監督の 「My Son ~あふれる想い~」(原題: 아들 <息子>)
。朝早い上映だったにもかかわらず、なかなかの盛況でした。

この邦題、やはりどうもしっくりきません(笑)。原題 「知り合いの女」 が 「小さな恋のステップ」 になっているのと同じぐらい違和感あり。


昨年ソウルで観たときに書いた鑑賞記に 「この作品は日本で見られるのでしょうか」などと記しましたが、公開から 1 年半たって日本にやってきたのですね~。

この作品では、父と子という普遍的なテーマをありきたりな親子愛ドラマで描くのでなく、ちょっとファンタジーなスパイスを取り入れたり、「心の中の語り」 と 「語り以外」 の部分を絶妙な交錯で見せるところが、個人的には気に入っています。

日本で紹介されることになって良かったと思いますが、不思議なことに、字幕なしで見た時の方が自分にはしっくり、グッときました。もちろん自分の思い入れのせいでもあり、すでに内容は英語字幕で確認済みなので・・・。


上映後は、チャン・ジン監督&リュ・ドクファン君の登壇による Q&A、そしてサイン会と、初めての生ドクファン君を間近で堪能しました。ドクファン君は、華奢な体つきで、一体どこにあの胆の据わった演技力が隠されているのかと思いました。話し方も落ち着いていて、声もスクリーンの中で聞く声より穏やかで、役者だなぁと感心してしまいました。

華奢と言えば、チャン・ジン監督も 5 月にパルコで拝見したときよりも、さらにスッキリしておられたような気がします。ノータイのスーツ姿がバッチリ  きまっていて、ワタシの同行者 2 人は、カッコイイを連発しておりました。 
           


Q&A でとりあげられた作品に関する質問では、初めて聞く内容はなかったような・・・

そして、やっぱり相思相愛(?)のジェヨンネタも出ました。

一緒に仕事をしたい俳優は誰かいるかという質問に、監督は、「俳優のこともあまり知らないし、他の映画はあまり見ない。ただチョン・ジェヨンが自分以外の監督の作品に出演するときは、自分の作品の時より上手く演じていたりしないか、演技をチェックしに行く」 とのご回答。


監督のサインは持ってるから要らないや~(笑)と思ったのですが、サイン会の流れでそうもいかず。しかし、いざ監督の前で DVD を差し出す手が震えてしまい、ああ、やはり、ワタシの憧れの監督なのだとあらためて悟りました。手が震えたという割には、大胆にも少しだけお話をしてみたのですが、通じてよかった
  
 

            
               


            
               リュ・ドクファン君のサイン  

ふれあいホールだけに、ふれあいたっぷりの楽しい時間でした





21th TIFF Selection : 「下女」&「火女 '82」

2008-10-26 23:36:08 | K-Movie Notes


話題のキム・ギヨン作品を 2 本。


「下女」

原題: 하녀 (1960 年 韓国)
監督: キム・ギヨン
出演: キム・ジンギュ、チュ・ジョンニョ、イ・ウンシム
link to TIFF

 

「火女 '82 」

原題: 화녀 '82  (1982 年 韓国)
監督: キム・ギヨン
出演: キム・チミ、ナ・ヨンヒ、チョン・ムソン
link to TIFF


2 本ともチケは SOLD OUT。韓流スターも蹴散らす人気の高さ(笑)。チケットを先に押さえておいて良かったとつくづく思った。

「火女 '82」 の上映時、何に驚いたって、観客の男子率の高さ。70 %ぐらいは男子だったかと。横一列に女子は平均 2~3 人。ワタシ、これまでこんなに多勢の男子に囲まれて韓国映画を観たことがない。一体何が起こったのかと。

シネマート六本木などで韓国映画に群がるのは大方は女子という構図が見事に打ち砕かれた瞬間だった(笑)。日本の男性の観客が、それほどキム・ギヨン作品に関心を寄せているとはね~。やはり、今年カンヌで上映されたことも大きいのかしら。

「下女」 では、アン・ソンギ先生の子役時代 (8 歳)の名演技も十分に堪能。

この 2 本、プロットは基本的に全く同じ。というのも、「火女 '82 」 は、「下女」 のリメイクである 「火女」 (1971 年) をさらにリメイクした作品。夫婦の設定や、子供の役割、夫に絡んでくる女性が少し異なるけど、若い家政婦に振り回される夫婦、そして家庭の崩壊という直球型のプロットには変わりない。個人的には、やはり原点といわれる 「下女」 の方が好き。映像的にもモノクロの世界が内容にしっくりくる。

「漢江の奇跡」 と呼ばれた経済成長を経験する1970 年代をはさんだ、1960 年代と 1980 年代の製作時期を考えると、同じプロットでも 「下女」 は、中産階級の形成初期という社会背景が浮き彫りにされ、「火女 '82 」 では中産階級の成熟が垣間見える。

確かにどちらもツッコミどころ満載、というと軽すぎて申し訳ないぐらい語りたくなってしまう作品。登場人物は個性的だし、家の中の構造(階段とか台所とか)だって普通なのに妖しげだったり、女性からモテモテの夫はなぜに音楽関係者なのかとか・・・

1960 年のセリフやキャラクターが面白いと思えること自体、この作品の持つ普遍性のようなものを感じる。

「下女」 の上映後、キム・ギヨン フリークによるトークショーが予定されていて楽しみにしていたのだけど、舞台挨拶が長すぎて映画の上映が押し、上映が終わったのがもう 23:00 近く。この時間からトークショーを聞いていたら、まちがいなく終電を逃す・・・と諦めて、とぼとぼ劇場を出た。

劇場を出たところで出くわしたのが、イ・ミョンセ監督!! 劇場に入るときに入り口で立ち話をされている姿をお見かけしたのだけど、こんな大物監督には滅多とお目にかかれないと、握手  

これ以外にも女シリーズと呼ばれるいくつかの作品では、こうやって続々と家庭が崩壊していくのかどうか・・・確かではないけれど、ちょっと病みつきになりそうな女シリーズはぜひ鑑賞してみたいなぁと。

 


21th TIFF Selection : 「銀河解放戦線」

2008-10-24 00:00:54 | K-Movie Notes


「銀河開放戦線」

原題: 은하해방전선 (2007 年 韓国)
監督: ユン・ソンホ
出演: イム・ジギュ、ソ・ヨンジュ、パク・ヒョックォン
 link to
TIFF


昨年 PIFF で見逃した作品。だいたい見逃した作品に限って、面白い作品が多いのはなぜ?

この作品は、コロコロと展開するストーリーが面白くて、あらすじを書けと言われてもちょっと無理かな・・・

一番のツボは、「소통(疎通)」 。このキーワードが出てくるたびに、大笑いしそうになったのだけど、場内は声をあげて笑っておらず。それでも、ワタシと、ワタシの左隣のガイジンさん、右隣の若い女性は、かなりウケていた。

                 
                  * * * * * *


ユン・ソンホ監督 Q&A 概要メモ
2008/10/20 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6]


 「木村レイ」 という日本人俳優役が出てくるが、この役のモデルはいるのか。

モデルはいない。演じている役者は、間借りしている家の息子さん。アイドルっぽいけど、精神的にちょっとおかしくて、理性的・合理的に関係ないところで物事を解釈しようとするそういうキャラ。


 タイトルの「銀河開放戦線」が戦隊モノっぽい意味は。

日本の黒沢清監督作品などが好き。素朴な内容なのに、タイトルが大げさだったりする。この作品で登場する主人公の彼女の名前ウナは「銀河」という意味。ウナとの失恋を乗り越えるのがテーマ。


 劇中、PIFF の横断幕が出てくるが、TIFF、日本、東京を意識したのか?

日本に来たかった!(冗談です)。プサンで撮影したし、日本語も意識した。ただ特定の街を設定したくなかった。劇中、都市名が出てくる部分は、「ピー」(xxxx)っと音声をかぶせた。海の近くで開催された映画祭という設定にした。

日本を盛り込んだのは、自分が日本から影響を受けているから。アニメより、漫画をよく読んでいた。ここではわざと大げさに描いた。


 音楽が魅力的だったが、何かこだわりがあるのか。

予算が 700 ~ 800 万しかなかったので、著作権使用料を払えるほどの余裕がなかった。そのため、使用料が不要な曲(マウリ族の音楽、イタリアのパルチザンとか)を選んで編曲してもらった。


 監督のお母様やインディー系の監督さんがカメオで出演しているようだが、予算がなかったからか。その一方で、認知度の高い女優さんも出ているようだが。

予算があっても同じキャスティングだった。もっと予算があったら、キャスティングに使うのではなく、撮影回数を増やしたかった。ちなみに、出演スタッフにはちゃんと支払った。ただ、比較的認知度の高い女優さんであるキム・ボギョンさんとイ・ウンソンさんは、ギャラを受け取らなかった。


  この作品で伝えたかったことは?

「疎通」 です(笑)。「コミュニケーション」 とか 「対話」 という言葉はよく使われるが陳腐に聞こえる。「見てくれる人と疎通をはかりたい」 などと言ったりする。実際にはとても複雑なことだと思う。あえて疎通できない状況を設定して、心を開くことの重要性を伝えたかった。


制作資金を集めるのに苦労したのか。韓国映画業界は大変な状況なのか。

自分自身、元々、映画学科でもないし、コマーシャルフィルムを撮ることを目指していたわけではなく、たまたま撮らないかと声をかけてもらったのでそんなに苦労しなかった。ただ、スターの出ていないプロットでは資金が集まらないという、そんな状況をコメディタッチで描いてみた。

                  * * * * * *


21th TIFF Selection : 「モーツァルトの街」

2008-10-23 23:32:21 | K-Movie Notes


「モーツァルトの街」

原題: 모차르트 타운 (2008 年 韓国)
監督:
チョン・ギュファン
出演: オ・ソンテ、チョ・ユラン、ブレイズ・グバト
link to
TIFF



「超」 低予算(3000 万ウォン= 270 万円)、撮影回数 12 回。監督さん、初めての長編だということで、予算がなくて頑張って撮ったという熱意は伝わってきた。でも・・・

① カンペ(ヤクザ)、② 上から出すもの、③ 下から出すもの。
韓国映画の定番的要素とも言える描写。

こうした新進(?)の監督作品ですら、この定番的要素がついてまわり 「またか」 と。特に ③ については Q&A でもショックを受けたと述べた観客がいた。このタイトルだけを見てチケット買われた方は、イメージと違うと思う内容かもしれない。



                   * * * * * *


Q&A 概要メモ
2008/10/19 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6]


 この作品を撮ったきっかけは何か。

旅行者の視点を通してみた社会を撮りたかった。旅行者の目に映るものというのは、一過性のものでしかなく、社会に潜む人々の哀しみの深さまでは推し量れない。そういう人々が抱える哀しみを描きたかった。


 「モーツアルトの街」 というタイトルについて。異邦人から見た街、違和感を表現したかったのか。なぜベートーベンでないのか。

実は、ベートーベンであっても、メンデルスゾーンであってもよかった。ただシナリオを書いているときに、偶然ラジオからモーツアルトのソナタがかかり、ソナタはどこか哀しみを伴っており、やはりモーツアルトがしっくりくると思えた。

また、場所もソウルでなくとも、東京でもロンドンでも北京でも成立するストーリーだと思う。


 女性の視点から、月経の染みと排泄というシーンはショッキングだ。そこまでして描く理由は何か。

不快感を与えてしまったとしたら申し訳ない。悲しみの象徴として月経を、不条理の象徴として排泄を表現しており、そこにインパクトを与えたかった。


 キャスティングの苦労話を。

ともかく低予算作品なので、キャストは全員ノーギャラ。知名度のある俳優にも声をかけたが、ことごとく断られた。韓国人のキャストは、演劇方面の俳優にお願いした。また、外国人のキャストが必要だったが、何しろノーギャラなので、外国人が多く行き交う梨泰院(イテウォン)を歩き回っては声をかけて見つけた。外国人キャストは、みな素人なので演技トレーニングをしてから、演じてもらった。


                              *  *  *  *  *  *


旅行者の視点というが、そんな視点ってあったっけ?(ワタシ、寝てた?)
どちらかというと、交差点の売店に一日中座り、時々カメラを取り出し、行き交う人々を写す女性に焦点が当てられ、彼女がのぞくファインダーを通した視点というなら話はわかるけれど。

その彼女と彼女が撮影した写真に残された複数の人々の日常のストーリーが並行していて、それがところどころ繋がっていくというプロットは良かったかな。低予算という割りには、あれもこれもと話を詰め込まれていた。

奇をてらったインパクトとか挿入しなくても(韓国映画を見慣れていても不快に感じた)、淡々とカメラをのぞいていてくれたらなぁと。

 

 


13th PIFF Selection IV

2008-10-12 02:09:57 | K-Movie Notes





 From WORLD CINEMA

Shadows in the Sun (UK)
監督:David Rocksavage
出演:Jean Simmons, James Wilby, Jamie Dornan, Ophelia Lovibond




唯一見た韓国映画以外の海外作品。

1960 年代後半のノーフォーク(英国)。1 人暮らしの老女ハンナ(ジーン・シモンズ)は、孤独な青年ジョー(ジェイミー・ドーナン)に世話をしてもらっている。ある日ハンナを引き取りにやってきた息子とその家族。ジョーと関わることにより、家族の絆が変化してゆく・・・というような話。

① 字幕からの開放、② ノーフォークの美しい景色、③ イケメンの出現、この 3 つの要素により、この作品に対する個人的な評価が上がってしまたことは否定しません。

この作品、まだ各地の映画祭をまわっていて、リリースされていないようです。

しかし、ノーフォークの息を呑むような美しい自然の風景には心から癒されます。ゴテゴテしたものがどこにもない単調な風景は、淡々としたストーリーとマッチしています。

ジョーという天涯孤独な青年と 3 世代家族を対比させながら、互いに関わり合い理解し合う過程もオーバーな表現がなく、何よりも気負いがなくて、肩の力がスッとぬける作品でした。淡々と描いているのに、情感あふれるところが汲み取れてしまうところが気に入りました。
 

さて、ここで見つけたイケメン、ジェイミー・ドーナン

カルバン・クラインやアルマーニのモデル。どこから見てもカッコイイわけです。俳優経験はほとんどなく、前作は 『マリー・アントワネット』(監督ソフィア・コッポラ)のフェルゼン伯爵役。キーラ・ナイトレイと付き合って破局し、ゴシップの多いプレイボーイらしいです。

この作品では風景にすっぽりはまっていて、モデル独特の嫌みなところはどこにもありませんでしたね (甘いっ?)

 

 

 From KOREAN CINEMA TODAY : VISION

똥파리 (糞バエ)/ Breathless
監督: 양익준 / Ik-june YANG




見た後に原題が 「糞ハエ」 と知りました。英題の 「Breathless」 とはなんだかイメージが違いますが、糞だけに、臭くて息ができないとか?そんな意味じゃないですよね(爆)。

借金の取立てチンピラ、サンフンはケンカっぱやい。ある日、女子高校生ユニと出会うが、ユニはサンフンを怖がるどころか、喰らいついてくる。崩壊した家族という同じ痛みを抱える 2 人は、互いを心の拠り所とするようになる・・・というお話。

口から出るセリフは 「クソ」 がつく F ワードだらけ。韓国語では 「シ」 から始まる単語ですが。でも、あまりに量が多いせいか英語字幕では F ワードが訳されていませんでしたが、当然かな。

カンペに借金の取立て。韓国映画ってホントにこの素材が好きなのねと、最初はやや冷ややかに観ていたのですが、これがですね、もうだんだんと引き込まれて、ストーリーはよく出来ているし展開も良かったし、俳優さんも良かったのです。

最後が少しくどくて、これで終わりかな・・・ と 3 回ぐらい思いました。もう最後の最後まで見せないと気がすまない監督さんなのでしょうか(笑)。余韻を観客にもたせるなんてことはしないみたいです。

おかげで 130 分とやや長めの上映時間でしたが、消化不良なんてことは起こらず、完全消化。これも監督さんの自伝的作品だそうですが、とても力強い作品であることはまちがいありません。

最後には、ちょっとサンフンを抱きしめてあげたくなるぐらい、感傷的に入り込んでしまいました。