安倍政権；「それでも昔の日本には戻れない」

フィナンシャルタイムズの記事が、長期にわたってつづいている自民党政治にふれています。
それでも昔の日本には戻れない　それはなぜ――フィナンシャル・タイムズ

結論は、日本が昔の日本に戻りつつあるという日本退行論があるけれど、旧来の自民党政治には戻れないよということのようです。記事が描く、旧来の自民党政治の姿はこうです。
自民党は公共事業を通じて、都市部で吸い上げた税収を農村部に注ぎ込んだ。注ぎ込んだ金の報酬として自民党は、農村部の中選挙区から票を吸い上げ、また公共事業の恩恵を受ける色々な利益団体から「政治献金」を受け取っていた。これが、自民党の戦後体制だった。

たしかに、かつての自民党は、その支持基盤といわれた都市、そして地方の中小業者を敵にまわしはしなかった。小泉政権はそれをやった。大企業への徹底した優遇ぶりと対照的な中小業者への仮借ない切り捨て。日本の社会の亀裂、貧困と格差を同時にうみだしました。これが端的な構造改革の姿でしょう。
企業の倒産とリストラによる失業の拡大の一方で、非正規・不安的雇用が大量にうまれ、社会保障も制度改悪がつづき、そのことが従来にはみられなかった貧困と格差を拡大することになった。ワーキングプア層の増大、貯蓄のない世帯の広がり、そして自殺、犯罪の増加など、いっきに社会の亀裂を反映する問題が噴出しているのが現在でしょう。
けれど、日本を牛耳る支配層はこんな状況を手をこまねいてみているだけではありません。社会的な秩序を保つため社会を統合していく方策を追求するのです。社会を束ねる方法を考えるのです。

構造改革をやめ、かつての草の根保守の経済的基盤ともなった利益誘導政策に再びもどることは支配層は許さない。もどれないのです。だから、安倍内閣は、構造改革をすすめつつ、小泉時代に発生した社会の亀裂の手当てをするために社会統合に乗り出しました。その１つが教育基本法改悪だと考えるのです。
以前のエントリーで、安倍政権は新自由主義的「改革」を続ける一方、新保守主義的対応を求められたとのべました。この２つの面を共存させながら安倍政権はある。これが安倍首相の宿命といえるかもしれません。
松岡氏の死は、共存する２つの面のきしみが象徴的に現われたものといえるのではないでしょうか。