「ヤンキー先生」参院選出馬と現場の落差

参院選出馬の「ヤンキー先生」出演ビデオ、１万本回収へ 
「ヤンキー先生」として知られる義家弘介氏の参院選出馬によって法務省が８４０万円をかけて制作した同氏出演の広報ビデオが上映できなくなっている問題で、長勢法相は６日の閣議後の記者会見で、全国の保護司会などに配布したビデオ計１万本を近く回収する方針を示した。「役所が応援しているかのごとく思われないよう、きちんとした対応をしたい」と話した。
法務省によると義家氏は昨秋の出演依頼の時点では「出馬の予定はない」としていたという。法相は立候補について「憲法上の権利に対抗できるかといえば、できない。出た以上は立候補してはいけないと言うわけにもいかない」と困惑をにじませた。

何ともお粗末な話ですね。国家財政の規模からすれば微々たるものかもしれません。
でも、８４０万円といえば、労働者の年間平均賃金をはるかに上回ります。一瞬にして泡となって消えたわけです。
回収は当然でしょう。法務省は損害賠償請求くらい考えたほうがよいかもしれません。

義家氏は経験年数はけっして長くはありませんが、教師出身です。ニックネームに象徴されるような経歴をもちながら、教師になった。それから、横浜市の教育委員、そして政府諮問機関の教育再生会議委員にまでのぼりつめました。
のぼりつめたといいましたが、氏の以上の経歴は明確な一つの志向を示していると私は思います。

けれども、同じ教師でつぎのような生き方もある。
愛読しているＯ氏のコラムです。（写真・右をクリックすると拡大します）
Ｏ氏は、なぜ生徒は問題を起こすのかを本気で話し合う教師が驚くほど少ない、と嘆きます。そして、まともに教育を考える教師は、現実には潰されている、と指摘します。

ならば、そうでない一方はどうなのか。
目に見える実績を追い求めるわけです。
目に見える実績とは基本的には数字化された学力をいうが、他に不登校、いじめなどの問題のあるなし、服装や生活習慣のチェックなどに教師の力が問われるそうだ。出世欲の旺盛な教師ほどこれらの数字に意識過剰になるという。

義家氏もまた、生徒と向き合ってきたはずです。そのきっかけが何かは私には分かりませんが、現場を氏が離れたとき、向き合っていたときのまなざしはおそらくどこかに消失したのでしょう。
だから、義家氏の身体とは切り離されているはずの「ヤンキー先生」という名を、それでも売りにしようとするものの魂胆を私は嫌悪するのです。そして、氏の立候補は、コラムのいう出世欲の旺盛な教師をつくろうとする政府の意向を象徴するものでしょう。
そして、バーンアウトし、もう頑張れない、いつ辞めるかを考えてばかりいる教師からすれば、教師という職業に就いている自分と重ね合わせて、なおさら絶望の底に落とされるかもしれないと思うわけです。

Ｏ氏の言葉を繰り返せば、まともに教育を考える教師は、現実に潰されているのです。
教育のこんな現場の報告から、義家氏の自民党からの立候補の意味を考えるのです。

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