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民主党の非民主性は3乗比の法則によって強調される。
しかし、別の立場から、仕分けの視点そのものが問題視されています。たとえばスーパーカミオカンデにからんだやりとりに象徴的なような、現場からの強い反発を受け、事態収拾に民主党政権は今、直面しています。スパコンにかぎらず、事業仕分けは大学研究にも白羽の矢をたてているわけで、9大学学長がこれにはそろって反論しているし、野依良治氏は、「将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか」というこれ以上の形容はない表現で、民主党の態度を皮肉ってしまいました。
考えてみると、日本国は、これまでも教育やスポーツにつぎ込む予算の割合が各国にくらべて格段に低いといわれてきました。教育やスポーツは為政者にとっては関心の薄い、軽視すべき対象だったということの裏返しです。
つまり、事業仕分けというものは、これまでの構造改革同様、効率化の名でいかに費用削減を達成するかというのが第一義に考えられてきたわけ。税収が大幅に落ち込むことが予測されるからなおさらというのです。国家財政のあり方そのもの、先にあげた教育やスポーツを例にとるならば、それにかける比重がそもそも少ない現状を振り返ってもよさそうなのですが、そんな方向に検討は向かいません。まさに削減をどこで、どれくらい確保するのかに汲々とする、端的に削減額を争うしかけであることは否めません。この限りでは、従来の予算編成ととまったくかわりません。
一方で衆目が監視する公開という手法は、いかにも民主的であるかのように思わせました。だが、単純にそうとはいえません。そもそもの仕分けの基準に国民が関与しているわけはむろんないし、基準は財務省の目をくぐっているということも指摘されているのですから。
事業仕分けに現れたこうした(民主党の)強引さは、民主党の政権運営の経験(の浅さ)による部分がないとはいえないにしても、要因はほかにもあるのではないかと思えます。民主党の強引さはこの事業仕分けだけでなく、たびたび繰り返されています。それは、周知のとおり、国会運営にもみられました。強行採決です。
政府のこうした強引さは、むろん民主党のとる態度の強引さであって、小沢一郎と関係のないところでのことでもありません。
少し現在から過去をふりかえってみます。
民主党はそもそも構造改革推進の立場でした。政権交代可能な二大政党政治の実現は構造改革路線をすすめるためのものであったし、そのために生まれでた第二保守党だったのですから。だが、07年の参院選では、しかも、地方で集票することが勝利の条件として、従来の立場、構造改革推進路線を投げ捨て、生活重視というスローガンをうちだすこともあえて小沢は厭わなかった。この路線変更は、小沢が独断ですすめたものです。消費税増税についても同じ(*1)。小沢が増税を封印するといえば、誰もがいわなくなる。換言すれば、このような小沢の独断が生きるような、同党の非民主性が参院選での同党の議席増を生み出したといえるでしょう。
小沢の独裁性は、これまでの政治過程のなかでもしばしば強調されてきました。小選挙区制のもとで、民主党の議席が07年参院選、09年衆院選と二度つづいて大幅な議席増が実現しています。前者は、上にのべたとおり、小沢の臭覚が利き、政策論争まで封印し、構造改革路線を表面的には放棄したことでもたらされました。後者においては、自民党のすすめてきた構造改革にたいする批判を背景にするとともに、都市部の中間層のなかでの、むしろ自民党にかわって構造改革を推進できる、スムースにすすめる勢力として民主党が選択をされたと解釈されてもいます。
二大政党制のもとでは3乗比の法則が働くといわれています。
つまり、選挙での議席数は、得票率の3乗に比例するというわけです。この法則に従えば、少数政党が徐々に排除されていくというだけでなく、政権交代可能な二大政党政治の実現も危うくなるということが推測できる。この間の2回の国政選挙が証明しているように、失政で支持を失うと、議席は極端に減り、互角に争う条件そのものを奪う。現に、今年の衆院選では、民主党、自民党の得票率(小選挙区)はそれぞれ47.4%、38.6%でした。議席数は221対64という具合に極端です。
小選挙区制と結びついた二大政党政治は、こうして民意とかけ離れる。日本の国会が代表民主制を体現するものであるのなら、国民の意思が反映された代表の選出が可能でなければなりません。つまり、国会は、いわば社会の縮図として多様な意見や立場が尊重される必要がある。ところが、現実には、小選挙区によって社会の縮図とは異なる、もう一つの縮図が結果として生み出されることになっています。上記の民主党、自民党の議席に端的なように。
小沢は、支持されたのだから、民主党の政策が実行されて当然という考えが言葉の端々にでてきます。選挙で勝つためには、自らの政策をも歪めた上に、つまり票をかすめとろうという意図が働き、その結果、その上に小選挙区によって民意はさらに歪められる。
小沢の独裁制はこのような連関と親和し、機能するのです。民主党の比民主性は小選挙区制のもとでいっそうなお強調されるのではないかと推測するのです。
来年の参院選はその意味でも興味深いものだといえます。
(「世相を拾う」09269)
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*1;投票日の翌日に、メディアがこぞって、民主党に豹変することを求めたのは記憶に新しい。
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