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中道の憂鬱- 社民党の場合
しかし、仕分けという手法は、構造改革を継承する性格をもっている。現実に今回も対象のなかに国民にとって削ってほしくない、ならない項目があって、反発が生まれた。科学技術をめぐる会場でのやりとりとその後の一連の動きは、このことを象徴する出来事だった。聖域をもうけないといいながら、仕分けにはなじまない、政治の判断を待つなどという口実で手をつけなかった、たとえば思いやり予算などが一方であった。
一般にムダの排除という点で事業仕分けは支持をえているのだろうが、上にあげた聖域を残す点で、従来の自民党の予算編成とまったく同じだ。思いやり予算で米軍への予算配分を直接、削減するようなことは、民主党政権は、恐ろしくてできなかったということだ。しかし、首相自身が繰り返しのべてきた米国との対等な関係に着目するのなら、どうして仕分けの場で、思い切った方針をとれないのか。事業仕分けそのものが政治の一シーンであるはずなのに、政治の判断を待つなどといって、先送りするのは奇妙なこと。このように言い訳をする蓮舫の姿は、官僚を前に厳しい表情と口調で詰問する姿とあまりにも対照的ではないか。彼女のこの2つの姿こそ、民主党の二面性を体現している。参院選以降のこれまでの同党の二面性は今も続いているということだ。それは、一つ例にとれば、生活重視といってきながら、仕分けで教育や医療に手をつけるということに示されている。
この二面性を正すのは、2つあるように思う。
一つは、いうまでもなく国会の外の新自由主義に反対する社会運動であるだろう。民主党の圧倒的な議席のもとで、国会外の国民の声のありかがどこにあるのか、それは大きな意味をもつ。もともと保守党として出発した民主党だけれど、小沢の参院選での転身によって、つまり本来、新自由主義を支え推進するという同党の方針を一時的であるにしろ、(支持を広げるために)国民、とくに地方の生活を守るという立場を公にしてきた。言い換えると、国民の声に敏感だということでもある。それゆえ、国民の意識動向によって今後も民主党が動く可能性を否定できない。
もう一つは、このエントリーの本題にかかわる。社民党の役割である。あえてここでは中道とよぶ。
幅広い立場の民主党の議員たちは、党を割ってでも自らの信念を貫こうとするよりも、それを横においてでも政権交代という目標に向かうことの方が重要だと考える者で占められているということをここ数年の経過は表している。だから、連立を組んでいる以上、中道とはいえ、民主党議員からみると、左からの意見をもつはずの社民党の位置は際立つだろう。が、今のところ、同党の役割は発揮されず、ほとんど精彩を欠いているといってよいだろう。連立を組むときの福島瑞穂の言葉はまったく頬被りされたままだといえる。政権の中で民主党に軌道修正を迫るなど、まったくできてはいない。社民党の重要な旗であるはずの米軍基地移転問題で、福島瑞穂がどれほどの圧力を鳩山にかけられているのか。
むしろ社民党は、連立のなかで埋もれ、本来の位置取りを失いかけている。
民主党は、社民党に形式的に配慮することはあっても、同党を連立の相手として対等平等に扱い、意見を尊重するということはこれまでも少なくともなかったし、これからもないと思える。基地問題でも、仕分けにしたってカヤの外だ。そのことは、福島自身がよく理解しているはずである。福島の憂鬱は、それがあるとすればこの辺りにある。
民主党の戦術が、民主党による絶対多数の獲得という目標にある以上、連立という外形は、それまでの一種の装飾にすぎない。最近の国会改革での小沢の独裁的だともいえる姿勢、強権は、事の次第では社民党がやっかいものにされる可能性を十分に想像させる。その意味で、社民党は本来の主張を貫きうるのかどうか、社会党を長年、支持してきた人びとから問われるはずだ。連立に留まるにしても、離れるにしても。そして、連立を決めた福島自身が言行不一致を問われるだろう。米軍基地移転問題の結論次第では、社民党は裏切ったというそしりを免れない。
沖縄の願いを社民党は今こそ引き受けなければならない。国会の外での監視と行動は、民主党にむけられるだけでなく、社民党にも本来の姿勢を貫くよう迫るという意味で重要ではなかろうか。
(「世相を拾う」09272)
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