人生は長過ぎる

2016-11-11 13:33:08 | 戯言
人の一生なんて短いものだとよく言われる。
確かに、宇宙の、魂の、長い歴史を考えれば、人の一生なんて短い。
でも、実際に生きている人間にとって、人生は短いだろうか?
そんなはずはない。

私たちの親の世代のことを考える。
親が生まれた時代。戦前である。
想像もできないような大昔である。
戦前、戦中、戦後を生きた母は偉大である。
時代の流れというものをどう感じていたのだろうか?

私が子供の頃だって、最早大昔である。
小学生が書いた未来の予想図みたいなのとはちょっと違うけれど、
当時は想像もできなかった世界が広がっている。
だから、ずっとずっと長生きをして、世の中の変化を見たいと思う人もいるかもしれない。

祖父は、死ぬことを怖がっていたと、母が言っていた。
そうだったのだろうか?
祖父も母も、90年近くも生きて。
何て長い時間だろう?

祖父は80歳になった時に、回顧録を書いた。
ずっと日記をつけていたので、それを見ながら書いたのだろう。
手書きで、コピーしたものを綴じたもの。
伯父たちが、祖父の願いをかなえるために試行錯誤して完成させたのを覚えている。
どこまでの親族や友人知人たちに配ったのか。
実家にに何部か残っていたはずだ。
何年か前に、それが読みたくなって、母に聞いたが、
探しておいてくれると言ったものの、どこにあるのかわからなかったのだろう。
私の手元にはなかなか来なかった。

先日、姉が見つけて渡してくれた。
一通り目を通す。
手書きで読みづらいし、全く興味のない内容もあるので、
全部は読んでいないが。

序文を読んで感じ入る。
身体は死とともに無となる。
それは良いが、ただ何となく未練の残るのは、折角此の世に生を受け、
80年以上永い間に、私の周囲に生じた様々の出来事、何らかの形で宇宙空間に投じた波紋、
それは一体どうなるのだろうということである。


『何らかの形で宇宙空間に投じた波紋』
そんな表現ができる祖父のことを思う。

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