眠らない街

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NHK杯島-野月戦の感想戦

2007年02月12日 | 将棋
実は第3図以降、▲4六馬とされた局面、すごく良い手を指された感じがして、振飛車優勢が台無しになってしまったような感を、持ってしまいました。
しっかり読んでいない弊害ですかね
実際は、その直後に絶好の反撃があったのですが、リードを広げたと思った矢先の出来事だったので、自分が指しているわけでもないのに動揺していました
対イビアナでは、適当なさじ加減で指すと痛い目にあいます。
▲4六馬までの進行が読み筋通りであれば、本譜の反撃でも私説の反撃でも、絶好のチャンスになります。
ちょっとした自戒でした

また感想戦は、第3図と第1図の前後と中心でした。
第3図では、▲3六馬△3ニ飛▲4五馬が最善というのは、前回書いた通り。
問題は第1図前後
「既にイビアナ側おかしい」と感じなければダメと書きましたが、第一の疑問が「すんなりと石田流に組めている」点。
第二の疑問が先手の8六の角
この角は、▲6八角△5四歩▲8六角という手順を経ています。
イビアナ側は、▲5五歩から戦いを起こすことを想定し、振飛車に△5四歩と指させるために角を動かしたのですが、7七角6六銀型で▲5五歩でなければおかしいのです
また第一の疑問について、△3四飛の瞬間に▲4六銀と出来れば、振飛車側は石田流には組めません。

この辺りは、以前日記で書いたことがあります。
イビアナ側は角と右銀の位置、石田流側は△5四歩と△4五歩のタイミング。
形によって優劣があり、優劣がつかないようにお互い進めるわけですが、私の知識の範囲ではイビアナ側に分があります。
そういう意味で、島八段の指し手は、イビアナ感覚が染み付いていないと思いました。
はっきり言うと「見損なった」わけです。

今も昔も、全国区と呼ばれている人が、今回の島八段のような指し方をすることがあります。
私が通っていた調布将棋センターが凄かったのは、今回私が島八段に抱いたようなことを、皆平然と「おかしいでしょ」と言い合い、感覚を共有出来ていたところ。
そこそこ名が通っている県代表や学生強豪でも、調布メンバーと同じ感覚を共有出来なければ、容赦なく切り捨てられました。今思うとそれによる弊害もあったけど(笑)。
今回の野月七段のように、微妙な差をしっかり咎められるのが昔の調布であり、勝ち切れないのも、また調布だったのかな。

NHK杯島-野月戦

2007年02月11日 | 棋譜
振飛車-イビアナ戦における、振飛車の勝ち方のお手本になるような対局でした
一見、理想的な捌きから野月七段の完勝譜ですが、実際は次善手なら逆転という局面も多かったと思います。
プロの技術で正確に勝ち切った印象で、久々に良い対局が見れました

以下にポイントとなった局面、指し手を紹介していますが、私は半分しか当たらず、勝ち切れなかったと思います。
「振飛車が理想的に勝った試合」でなく、その他多数の「玉の遠さを生かしたイビアナらしい試合」になったことでしょう。むかつくけど

第1図は、私がTVの電源を入れた時の局面。
    

第1図以下:△6三銀左▲5四歩△同金▲5五銀△6五金▲5九飛(第2図)

この時点で、振飛車党は「既にイビアナ側おかしい」と、アンテナにピピっと来てなくてはいけません
その後の指し手が伴うかどうかは別にして、「おかしい」と感じることが必要です。
第2図は、棋譜並べをしていてもスルーしそうな局面ですが、こういう局面こそイビアナ攻略のコツがあります
    

第2図以下:△5四歩▲6六銀△7六金▲6八角△3六歩(図略)

普通に考えたら△5六歩ですが、以前、大山15世名人の棋譜を並べた時、△5六歩のような拠点重視でなく、△5四歩のように自陣重視の歩を多く見かけました。
振飛車がイビアナ相手に局面をリードする場合、飛の働きの差や馬の活用などで主張することが多いですが、△5六歩のように「更に主張」すると、全部が全部主張し切れないんですね。
△5四歩~△3六歩までの手順は、主張するポイントを1つに絞っています。
イビアナはどうせ暴れてくるので、それなら△5四歩の方が暴れられた時に有効という考え方。振飛車十分です!

第3図は、第2図から進展した局面。
    

第3図以下:▲2八馬△3九角▲2七馬△5七角成▲3六馬△3二飛▲4五馬△3八飛成▲4六馬△同馬▲同飛△4五歩▲同飛(第4図)

悪いながらも耐えていた島八段ですが、第3図で決定的なミスをしてしまいます。
▲2八馬が敗因。▲6四桂や▲7五桂の攻めを残すために馬のラインを確保したかったのですが、直接手の△3九角が激痛でした。
局後の感想戦では、▲3六馬△3ニ飛▲4五馬が最善となりました。本譜は「馬を5七に打たれた」形になっています。

しかし、▲4六同飛とした局面は、TVで観戦していて、まだまだ難しいと思ったのですが・・・
    

第4図以下:△4四歩▲同飛△7六桂▲4一飛成△8八桂成▲同金寄△5七角▲7八金打△6六歩▲5三桂△7一金▲4四角△6二銀▲6九桂△4三歩▲1一角成△7九角成▲同金△6七歩成▲6四歩△同銀▲6三歩△5三銀上(第5図)

第4図で、解説は、△6六桂▲同歩△5六角。田中トラの解説じゃあねぇ~(怒)
私は△6六歩を予想。もし▲4一飛成なら、△2三角の筋。
▲4ニ飛成でも、△4一歩が感触の良い一手で、自陣をケア出来ます。
とにかく△6六歩としておいて、△7五桂とか△5六角とかを狙い、場合によっては△5二銀打~△4一歩+△5五角のイメージでした。
本譜は△4四歩~△7六桂。正直全く見えませんでした。ここで銀1枚薄めたのはかなり大きかったですね。

また、イビアナ側の▲6九桂も良い粘り。本譜は△4三歩の好手で実を結びませんでしたが、アマ同士の対局なら、いくらでも間違えそう。
更に▲7九同金の局面で、本譜は△6七歩成でしたが、私は△6八銀を予想しました。
6筋の歩を切ってしまうと、▲6四歩~▲6三歩が面倒ですが、逆に言うと6筋の歩を切らなければ、イビアナ側に手はありません。
△6八銀▲同金△同竜~△6九竜~△8五桂のような寄せイメージでしたが、それは第5図からの寄せが見えていないからですね。プロの技術は全然上でした
    

第5図以下:▲9四香△7六桂▲9一香成△5五歩▲7八歩△8八桂成▲同玉△6八金(図略)まで、後手の勝ち。

▲9四香がイビアナ側の最後の勝負手で、これがあるから6筋の歩を切りたくなかったのですが、△7六桂~△5五歩が最短の寄せ。
△6一歩でも勝ちですが、画竜点睛を欠き、棋譜の価値を落とします。
これが見えていれば△6七歩成も納得。野月七段の正確な指し回しが光りました。

ところで・・・(続く)