一本の樹の中にも流れている血がある
そこでは血は立ったまま眠っている
1960年、寺山修司23歳!の処女戯曲。冒頭の自作詩をモチーフにつづられた、
難解かつ文学性の高い戯曲、らしい(読んだことはまだない)。
タイトルの「失敗作」というのは逆説的、というか・・・
観客(自分も含めて)にどの程度原作者寺山および演出家蜷川の意図が伝わっていたかは怪しいものだ、という意味を含めたつもりです。
伝えたかった意図とは別のところで、それぞれの観客がそれぞれのインパクトを抱いて帰った、という点ではタイトル前半の「魅力に満ちた」のほうに主眼があるのですが。
ご存知のとおり、ストーリーやキャストを細かく説明するような親切なブログではないので、詳細が知りたい方は自分でぐるぐるしてください。
けっこう年は食ってるつもりだが、さすがに寺山や60年安保の時代は実感としては記憶にない。ただ、日本の猥雑な原風景、そして若者が政治のことを熱く語る時代だったことは物心ついたかついてないかの自分にもうっすらインプリントされている感じはあって。
芝居の中で決して交わることのない2グループ。
ひとつは美しきテロリストグループ(森田剛・窪塚洋介・寺嶋しのぶ)。そしてもうひとつが猥雑な世間グループ(六平直政ほか)。
どちらとも絡むわけでも絡まないわけでもなく登場するパンク歌手(遠藤ミチロウ・圧巻)。
猥雑な世間グループの猥雑さがなんとなく足りない気がしたのは、やはり現代の、しかもこぎれいなコクーンという空間だったからだろうか。
こびと・ヤクチュウ・オカマの登場人物がそれぞれ、小人症・拒食症・性同一障害などのこぎれいな言葉に置き換えられた感じかな。
猥雑グループが猥雑でなければテロリストグループの崇高さが立ち上がってこないと思うんだけど、現代の大資本下でいわゆる「アングラ表現」をすることの難しさ・限界みたいなものを感じてしまった。
闇のない世界なのだなあつくづく2010年の日本というところは。(あるんだけど隠してるといったほうがいいのか)。
まあ小難しいことを論じ始めると長くなるので、とりあえず気に入った役者を並べておこう。
まずは先ほど圧巻!と書いた遠藤ミチロウ。正直田口トモロヲと混同する程度の知識しかなかったのだが(苦笑)パンクシンガーの底力を見せ付けられました。もう打ちのめされてしまった。ぜひライブにいってみたい。どうしようおっかけになったら。
そして若手の中では六平の息子役(趣味・猫殺しw)の大橋一輝。非常に難しい役なんだけど、独自の間合いのユーモラスな感じと、純粋で危ない感じのバランスをぎりぎりのところで保っていて、これはもう芝居カンがいいとしかいえないと思った。まだ22歳の大学生らしい。今後期待。
美しきテロリスト三人はそれぞれに悪くなかった。
森田剛に関しては期待値ゼロだったから、思ったよりは健闘していたというイメージ。小柄な体が少年の一途さを現すのに適していたのかな。リアルな芝居は、窪塚との対比なんだろうけれど、寺山ワールドからは浮いていたような気もしたけど。それも演出意図なのかもしれないし。なんせ小難しいワールドwだからなあ。
なんと18歳wの役をそれなりに見せていた寺嶋しのぶはさすがの存在感。この人の魅力は(同じ梨園出身の松たかこもそうなのだが)声ですね。怒鳴ったり張ったりしなくても、心の中に染み渡るようにきっちり客に伝わるあの声。
さて、あえてここまで触れなかったのだけれど、出ました!
世紀の美青年。世紀のカリスマ。世紀の逸材。
もう大絶賛してしまいます。自分の語彙の貧弱さがもどかしいほどにすばらしかった窪塚洋介。
なにがすばらしいって、容姿です。
もともと美青年だとは思ってたけど、ちょっと馬鹿っぽくて甘いところがいまいちだったのが、さまざまな(本当にさまざまだった)人生体験を経て、甘さがそぎ落とされ、恐ろしいほどのとがった美貌がこれまた震えるほどの存在感とともに舞台の上でそれこそ血のように立ち上がってゆらゆら燃えていたのだ。
はい、一目ぼれです。
せりふは正直堅いし、初舞台というのがうなずけるように空間のなかで長い手足をもてあましているように見える場面も再々。いや、それすら魅力的だったりするのだが。
色悪という歌舞伎用語がこれほど当てはまる逸材はないと思った。
舞台の上の窪塚を見つめながら
あー伊右衛門やらせたい
あー太陽を盗んだ男いいだろうな
あー赤と黒のジュリアンソレル!
あー砂の器!
あー倉橋由美子のさそりたち!
あーあーあーあーあー
と次から次へとやってほしい役がlavieの脳裏に湧き出て湧き出て・・・
ごめんなさい。途中からは森田ファンのジャニーズおたくのようにただの窪塚おたくになって、寺山や蜷川はどーでもよくなってました。
ひひひ。lavie名物訳知り顔からミーハーへの豹変ですな。
数年前の事故のとき、よくぞ神はこの逸材を天に召されることなく、地に落としてくださった・・・あ、堕天使もいける!!
早速探して読んでしまったブログでも舞台にはまったようなことを書いているので、ぜひとも今後もどんどん舞台に出続けて、その麗しのカンバセと麗しの肢体を拝ませてください。
できるならばもうちょっとだけ台詞回しも上達してくれれば、文句ないのですが
とりあえず完成度とか言い出すといろいろあるわけだが、(受け取り手のこちらの感性度wにも問題あるし)遠藤ミチロウと窪塚洋介を再発見できただけでもこの芝居を見てよかった、と心から思った。
終演後、森田ファンらしきおねえちゃん二人連れが「なにあれ、近未来SF?」と語り合ってるのを聞いて肝をつぶした。
アラサーのおねえちゃんにとってはテロリストがいるニッポンなんてSFとしかかんがえられないのだろうね。でもおねえちゃんたちも「ゴウクン超よかった!」って満足してたし。まあ窪塚超きれい!ってミーハーに堕してwしまったあたしがどーこーいえる権利はないわな。