laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

九月歌舞伎まとめ

2008-09-30 | agenda

今月のMVP

 

すっごく悩んだ結果、今月は二人同率!

年齢順で

 

歌六@逆櫓の権四郎

時蔵@加賀見山の尾上

 

どちらも品といい格といい、力といい、甲乙つけがたい。
確実に贔屓の役者になりました。

 

次点はなしでもいいんだけど、
ここ数ヶ月、明らかになにやらいい感じになってきた

扇雀@狐狸狐狸のおきわ。

仇でありながら一途というなかなか難しい役をよくこなしたと思う。


おきわが福助だったら段ちゃんは後半あそこまでよくならなかったのでは?なんちって。福助ファンだよ、あたし。

 

今月のMIP

 

というわけで贔屓目半分で

段治郎

後半本当に凄くよくなっていた。
姿と声がいいのだから、色気が出てくれば鬼に金棒。

 

次点

松次郎

前回の龍馬がゆく!の立ち回りで怪我して長期休業してたんだってね。
そのお詫びも含めての粋なキャスティングだったのか。よく応えて奮闘してた。

次点2

市蔵と松也

実盛物語はこの二人でなんとか形になっていたというべきでしょう。

 

惜しかったで賞

七岐大蛇衆@日本振袖始
国生@勢獅子

 

 

今月のMDP

 

海老蔵くんも本人比ではがんばっていたほうだと思うし、特に腹が立つこともなかった今月。

あたし、最近観劇度量が広くなってきたのかな?

強いて言えば三越のぢいさんばあさんの橋之助・孝太郎コンビ。
若いときも老けてからもわざとらしすぎでしょう。

ってことでこの二人を次点に。該当者はなし。

 

 

今月の一押し!

 

総合点で文句なく

逆櫓

 

 

次点は悩んだ末、やはり時蔵に敬意を表して

加賀見山

これで岩藤が成田屋だったらなあ・・・

 

次次点

盛綱陣屋

 

今月は全体に面白かったなあ。

 


自主的二本立て

2008-09-29 | cinema

たいていの映画はご近所二本立てに下りてくるのを待っちゃうあたしであるが、この二本は待ちきれなかった。たまたま同じ映画館でやってたので、一石二鳥とばかりに、自分で二本立て作っちゃったのですが。

さて。

 

画像は闇の子供たちより。映画オリジナルの部分を象徴している映像かと。

 

闇の子供たち

 公式サイトはこちら

原作の凄味を失わずに、刺激と露悪趣味を薄めて、より、訴えるものが強くなったような。傑作だと思う。
無駄に扇情的な場面はないのに、きっちり、状況の深刻さは伝わる映像からは、監督の阪本順治がこの映画を撮るにあたって相当な準備と決意をもって臨んだであろうことが伺える。
ただ、原作そのものの欠点でもあるのだが、幼児売春の話と臓器売買の話の両輪が、交互に描かれていくため、注意深い観客でないと、話の筋を追うのがかなり困難なのではないだろうか(あたしは原作を読んでいたので、筋が混乱することはなかったが)。

 


映画に描かれている状況は、現実として、東南アジアの貧しい地方ではありえることだろうし、それを映像で、しかも日本映画として突きつけられることの重さは、想像した以上のものだった。
日本人の主要キャストでは、宮崎あおいの、青臭く、理想主義だけで突っ走るボランティア女と、心臓病の子供を抱える両親を演じる佐藤浩市、鈴木砂羽が巧い。イマドキの若者カメラマン役の妻夫木はちょっと屈託がなさ過ぎるかな。山田孝之あたりだと暗すぎたかしら?


ちょっとミスキャストでは?と思われたのが主役の江口洋介。
いや、全然悪くないし、彼としては出来る限りの熱演だと思うのだが。
…原作にないあるキャラが映画では与えられていて(ラストまで明かされない)、その部分が、どうしても江口には似合わないのよ。どんなに荒れている演技をしていても、江口にはどうしようもない「さわやかさ」(本人がどうかはしらない。いわゆるニンってやつですね)があって、内なるどす黒さが感じられないだもの。
できれば、香川照之とか、内野聖陽あたりがやってくれたら、もっと映画全体に説得力が出たと思うのだが。

あと、ペドフィリア役の欧米人があまりに紋切り型のデブorハゲ親父だったのにもちょっと萎えた。まあこれはしょうがないのかな。

と文句をいうとしたらそれくらいで、役者はほぼ全員よかった。(江口も、決して悪いわけではないし)。特に子供を売買するタイ人役の青年、売られてゆく少年少女の子役たちがある意味自然すぎる演技で、この映画に真実の重みを加えてくれていた。

昨日の芝居(THE DIVER)も重かったけれど、今日の映画も相当重い。
ただ、どちらも、いやな重さではなく、感動に通じる重さなのである。

 

TOKYO! 公式サイトはこちら

 

…重い映画の後、すぐに現実世界に戻らなくて済んだ、という意味ではこれを見てよかったのかも。

いや~二つ目のカラックスの映画のタイトルじゃないけど「糞!」な映画でした。
ゴンドリー、カラックス、ポン・ジュノという三大監督がTOKYOをテーマに短編を撮る、というテーマ倒れに終わった、というか、三大監督に、スポンサー(どこ?日本だよね?)がバカにされている、というか・・・

ゴンドリーのは、「現代欧米人がいかにも作りそうな」TOKYO映画ってことでまあただのつまらない映画。
カラックスのは・・・これ、同じような状況の映画を逆の立場でフランスをテーマにして向こうで上映したら、明らかに反日運動が起きるんじゃないか、そこまで行かないとしても問題になるんじゃないか、と思われる酷い内容ですよ。
ところで、「日本人の目は女の性器(一応上品に表現しました)みたいで気持ち悪い」っていう台詞があったんですが、これってフランス人が一般的に言ってる悪口なんでしょうか。その昔「日本人は性器(これまた上品に表現)が横に割れてる」ってのは聞いた事があるんだが。
カラックスの映画まで嫌いになっちゃいそうな、それこそ「MERDE!!」な映画でした。
ポン・ジュノのが三本の中ではいちばんマシといえばマシだったかな。それにしても大学祭でもちょっと気のきいた学生なら作れそうなレベル。香川照之が無駄に熱演。

…三本まとめて、TOKYO!が今のところ、今年見た映画のワースト1です。

友人知人を誘わなくてよかった。つか、誘ってみたけど乗らなかった人は、大正解!です。

数年前、『誰も知らない』(大傑作!)を見てどよ~~~んと沈んだ気分が、超糞映画『東京タワー』への怒りと呆れで、なんだか癒されたのを思い出しました。
あれはご近所映画館のお仕着せ二本立てだったのだけれど、同じようなコースを今日は自分で辿ってしまったわ。

あ、どっちも糞は「東京」がついてる!偶然か?


とまどい、痛み、そして大きな感動

2008-09-28 | spectacles

野田作品、ロンドンで上演後の上演、英語で演じられる、この条件でなんとなく、去年のTHE BEEみたいなものかと思っていました。

例によって予習ゼロでしたし。

 

いやあびっくりした。いきなり舞台に傳左衛門さん(歌舞伎囃子方田中社中の家元)がいるんだもん。何これ?

って思ってよくよくタイトルを見たら、ちっちゃく野村萬斎企画/現代能楽集Ⅳって書いてあるじゃないすか?
そんなこと知らずに観にいったのはあたしだけ?

ストーリーは能の海人(よく知らない、というより全然知らない)と源氏物語、それに現代日本のよくある不倫ストーリーが絡んで、という、まあ割りとありがちな展開なんだけれど、役者の能力と、卓抜な演出、とくに小道具の力で、知らず知らずのうちにぐんぐんストーリーに引き込まれてゆく。

実は途中までは「源氏を卑小化しちゃって・・・」みたいにちょっと心の中で眉をひそめている部分もあったりしたのですが。
見終わってあたし、ころっと意見が変わりました。
源氏物語って、卑小で卑近なんだよね。だからこそ、現代に至るまで、人々の心を打ち続けてるんだと思う。日本の、われわれが、妙に古典の大作なんて崇め奉っているより、ずっと海外の、先入観に囚われてない人のほうが、源氏の卑小な偉大さに気づいているんじゃないだろうか。

…って、これ作・演出野田秀樹だし。

立派に日本人だし。

 

…こういう作品を観るたびに、野田って、いい意味で日本人じゃないなあ、と思うのです。
日本の作品を、外からの目線で客観的に再構築させると、本当に天才的。
逆に先日のアイーダみたいな、外国作品を日本風にアレンジするのはまるでダメ。(少なくとも愛陀姫に関しては)。日本人なら後者のほうが得意そうなものなのに、本当に不思議な人だ。

 

後半のストーリー展開は、個人的にはちょっと痛くて、辛くて、重すぎる部分があったのだけれど、(ラストで胸が苦しくて、ちょtっと本気でたまらなかった)その痛みも含めて、真に感動させられました。
その辛く、美しいラストシーンで、海人(THE DIVER)というタイトルをこの作品に付与した野田の意図がはっきりしたし、個人的には辛いながらもいちばん好きなシーンだった。

 

源氏物語の翻案なのに一人として美男美女は出てこない。なのに、ちゃんと源氏物語の世界になっている。

すばらしい役者(特にキャサリン・ハンターの肉体表現、ハリー・ゴストロウの存在感)、天才的ともいえる野田の空間演出力、そして何よりつむぎだされる言葉の力。正直英語はそれほど堪能でもないので、前半は字幕が邪魔だったりしたのだが、後半、字幕を見ることすら忘れて(別に英語のヒヤリング能力が飛躍的にアップしたわけではない)、物語世界に引きずり込まれていた。

現代演劇の一つの最高峰をあたしは今宵見たような気がする。

 

THE BEEは日本キャストによる日本語版もあったのだが、もっと日本的な題材のこの作品を、あえて自分以外は英国人キャストの英語版のみで上演した野田の意図、大正解だったと思う。

そのことで、「源氏物語」というイメージから、われわれ日本人が自由になれて、本当に野田の物語世界に没入できたのだから。

 

冒頭でびっくりさせられた傳左衛門ほかの田中社中も大活躍!
とくに傳左衛門さんは、きっちり芝居にまで一役かんでいるんだよ!

 

ぜひもう一度観たいと思っているのだが、チケット売り切れなのよねぇ・・・・

立ち見、するかなぁ。 


一直線!

2008-09-25 | monologue

野球には興味ゼロなのだけど、野球選手・監督では好きになった人がけっこういる。

昔から思いつくままに並べると、太田幸司・江夏・田淵・野茂・桑田・・・

最初の一人はともかく、一癖あるヤバ系、だけど仕事だけはちゃんとするみたいのが好きらしい。

そんな系列と全然違うけど(そして最初の一人とも違う)、なぜかずっと好きだったのが王貞治。名コンビと謳われたもう一人の魅力がまったく分からないあたしにとって、昭和の名選手・名監督といえばこの人に他ならない。

っていっても選手時代の業績を知るには、子供過ぎたり、野球に興味がなさ過ぎたりってことで、何がいちばん好きかといわれるとこの胴上げ姿。
みごとな一直線!この人の人生や性格まで象徴しているようで、観ていてほれぼれ。

オリンピックに胴上げ(される)って種目があれば、金メダル間違いなし!と
ひそかに愛好していた。

 

 

…昨夜のホームラストゲームのあとの、胴上げ、ゆるんでいて、ただの人の胴上げになっていた。あえて画像は載せません。

お疲れなのねやっぱり。

なんとかお元気に、余生をいっぱいいっぱい楽しんでください、と祈りたい。

こういう人こそ、幸せな老後を楽しむ資格があるのだと思う。

 

トップ画像はダイエー初優勝のときのものらしい。

高さといい、直線具合といい見事としかいいようがない。
胴上げされる予定の方は、これを見てイメージトレーニングするように!


こちらはほんの数年前、WBC優勝時のもの。ガン手術後、60代の線じゃないでしょう。高さはやや不足気味だけど見事に一直線。

 

…書いてるうちにカンタの胴上げも見たくなった。綺麗だろうな。

と結局このオチかよ。

 


名演・迷解説付&イチマタノオロチ

2008-09-24 | kabuki a Tokio

あまりの感動に、再見を誓った前回の観劇から5日。

 

二度目・・・観劇環境って大切ですね。
後ろの列のおばさま四人連れと、隣の席の老夫婦がもう・・・
せっかくの名演も台無しでした。

 

龍馬がゆく

このときは静かだったのです。たぶん分かりやすい芝居だったから集中しておられたのでは。

あらら亀ちゃんよ、かわいいわね。
武田信玄やってた人でしょ。
違うわよ。
え、違った?
ねえねえ違う?
(2つおいた隣のおばさまに向かって)
あたし、しらなーい(うるさい)

 

ってこの程度。
ちょっとうるさいなと思ったけど、まあ我慢できなくはない。
この後どうなるか、まだ知らないあたしでした。

 

で、前回でストーリーは十分分かっているので、今回は松次郎くんとサトピーに集中しました。中でも後半、捕手の大将で出てくるサトピー、前回見逃したので、凝視しました。
もうそれだけで満足。

やっぱりこの芝居はつまらない。
やっぱり松緑くんはけっこうかっこよくなって来てる。

 

 

逆櫓

 

コレが楽しみで、一等席を奮発したの言うのに!

 

老夫婦

あれが吉右衛門よ。
ちがうだろう、声が違うじゃないか。
いやだ、そうじゃないの。おじいさんにそっくりよ
(三代目時蔵にか!)
そうかなあ・・・(違う)

しばしあって。

やっぱり違うじゃないか。
あらそう?
お前は大体いつも物事を決め付けすぎる
(夫婦喧嘩を芝居の最中にするな)。
あれはなあ・・・ウタロクだよ。(違う)

 

四人連れおばさま

 

いったん幕が閉まって逆櫓の稽古の場面。

 

ほら、今度は玉様の芝居よ(まだだ)。
そうよね、玉三郎と福助と染五郎・・・あらら、誰が誰?
一人多いわよ
(染五郎だけはいるわな)。


玉様がいない!と騒ぎ続けるおばさまがた。
結局浅葱幕が降りる直前にまだ逆櫓が続いてるということに気づいた模様。

それをきいた隣の老夫婦がひじをつつきあって
声を殺して笑ってる。

 

あんたら、人のこと笑えませんから!

 

こんな調子でほぼどちらかのグループが喋り続け。
何度か睨んだのですが、まったく気づいていただけず。
途中で静かになったと思ったら、みなさん安らかにおやすみでした。
このまま目覚めなければいいのに!

計六人のご近所さんに小さな殺意を覚えた2時間でした。

ウタロクじゃない、歌六の名演技も台無しにしてくれる超超むかつくBGMでしたよ。

 

振袖始

 

おばさま方はこれがお目当てだったらしく、前半は静かでした。
老夫婦は今度は福助が玉三郎かどうかでひと悶着。
もういい加減にしてくれ!

 

玉三郎、髪飾りを取って、半分正体を見顕したくらいの状態がいちばん迫力があったなあ。
つか、後シテは、1/8のサトピー大蛇しか見てなかったあたし。
正直見分けられるかどうか自信がなかったのだが、細面で鼻が高いので比較的簡単に見分けられました。あとはもうその人を目で追って。
松次郎くんや音一郎くんもいたらしいのだが、もう一人で一杯一杯。

というわけで後シテの玉三郎はほぼ一回も見てないかも。

 

あたしも十分変な客です。静かなだけで。

ははは、はは。変な客ばかりの一帯だったってことで。

 

大薩摩の三味線はきょうも本当にすばらしかった。杵屋巳吉という人らしい。今後注目!

 

そしてうっとり

 

終わってからここに行ってきました。
展示内容はたいしたことはなかったのですが、音声ガイド(無料)のナレーションが勘太郎だと聞いて、これは!と駆けつけたのです。
普通の解説はもちろんですが、途中で一箇所素のしゃべりで笑ってる部分があるんです。その笑いがもう素敵で素敵で・・・
三回リピートしちゃいました。

 

やっぱり挙動不審な客ですね。ひひひ。

しかし、ナレーションだとあんなに素敵な声なのに、舞台の声(特に女形)は
どんどん酷くなっていく(パパに似てくるともいう)のはなぜなんだろう?

主に新作(山田洋次監督)のPRだったのですが、連獅子の迫力は凄い!これは絶対に観にいくぞと思いました。
文七元結も、一度は観にいくんでしょうね・・・(他人事)。

 

 

 


 


小団円?って感じ

2008-09-20 | kabuki a Tokio

初日は悪口、二回目三回目は勘太郎と段治郎のことしか(ほぼ)書いてないので、楽はちょっとは芝居のことでも書こうかな、ってことで。

狐狸狐狸ばなし

 

いまさら、なんだけど、この芝居、勘三郎に向いてるか?

伊之助っていうキャラクター、よく考えてみれば物凄いねちっこさ&ある意味ストーカ的で、人間の業のいやらしさの塊みたいな人だと思うんだけど、勘三郎が演じると、なんだか憎めない子供っぽいキャラになっちゃってて。
おきわ(扇雀。好演)があそこまで伊之助を嫌う要素があんまり見えないんだよねぇ。
まああそこまで笑いを取れるのは今の歌舞伎役者では勘三郎しかいないから、ある意味この芝居をメジャーにした功労者ともいえるんだろうけど。
見たことはないが初演の先代勘三郎のほうが、キャラ的にはねちねちしてそうで、合ってたんでしょうね。
こういう軽演劇?も家の芸ってことになるのかな。勘太郎にはあんまりやって欲しくない。中年になったらむしろ父親よりねちねちしてそうな気はしますが。

もう少しねちっこい伊之助で本来の狐狸狐狸ばなしも見てみたい、などと思ってしまった。
それこそ亀治郎あたりが伊之助をやっても別の味が出てくるかと。そうなるとおきわは誰だろう?

 

あんまりたくさん見すぎると、余計なことを考えちゃうんですね

段治郎、最後までアドリブは出なかったけど、かなりゆとりを持って、重善のいい加減で人を人とも思ってないキャラを演じきってた。何よりいやらしい色気が感じられたのが、大収穫。
ちゃんとおきわを「成仏させてる」感じだったもん。初日の重善じゃ、おきわは絶対欲求不満!って風に見えたが。

段治郎とともに初日の違和感の張本人だった井之上隆志、これもさすがに楽までにはつじつまをあわすというか、なじんでいた。ただなじみ方が、「前この役をやっていた笹野に酷似してきた」という形だったのはちょっと不満。彼なりの甚平を作ってほしかったような。

段治郎は、橋之助とも海老蔵とも違った段治郎の重善を作っていたという点でも評価できると思った。

ほかの役者では前述したとおり、扇雀が秀逸。この役は福助でも見たことがあるが、年増の色気、粘着質、愛嬌、どれを取っても今回の扇雀がいちばん。
彌十郎、巧い。巧すぎるかも。ちょっと手馴れてこなした感が見えちゃったかな。
亀蔵の牛娘はやりすぎてないところがいい。普通に重善が好きで好きでたまらない女の子に見えた。

小さい役では、酔っ払いを演じた扇一朗、初日はどっちらけの真っ青な状況だったのが、楽日はいい感じの江戸情緒を感じさせる間の持ち方になっていて、これまた大進歩。

数回見たんだけど、各回ごとにマイナーチェンジがいろいろあって(役者だけじゃなく、装置や擬音なども)、単なる手抜き公演(座組みと狂言立てだけならそういわざるを得ない)じゃなくて、ちゃんと責任を持って芝居と取り組んでるんだな、と、それこそ当たり前のことに感心させられた。

 

棒しばり

 

前回凄く感心した勘太郎だが、楽はちょっとお疲れ?

大詰めの動きもちょっと鈍かったし、一度、二度?ぐらついたり、めったに見られない動きがあったかな。

まあいいです。細かいことは。

とにかく楽しそうに踊っている姿を観られて嬉しかった。

七之助はね・・・

なんだか踊りは兄さんに任せておけばいいや、という感じなのでしょうか。太郎冠者の見せ場は少ないけどあの手を縛られての踊り、やる人がやれば凄いかっこいいんだけどね(勘太郎が染五郎の次郎で太郎をやったとき、次郎より太郎のほうが目立ってたくらい)。
あと、立役のときと女形のとき、声同じじゃない?
いくら美声でもおんなっぽ過ぎてちょっと気持ち悪い。

亀蔵の踊りはあんなに酷かったか?

わざと下手に踊ってるのか?

彌十郎が本調子なら彌十郎がやるんだろうけど、ちょと残念。
ただ、大詰めで二人の踊りにつられて思わず笑顔になるところは、亀蔵ならではの持ち味で、よかった。

 

あたしが観劇したなかでは唯一のカテコあり。
(土日は数回あったらしい)。
ま、楽だからいいか。
パパがスーツ姿で出てきたのはシラケたけど。

ファンは喜ぶんだろうけど、松羽目の舞台に出てくるんなら、せめて、紋付くらいきてくれないかねぇ。


あっちで興奮、こっちで感激

2008-09-19 | kabuki a Tokio

ちょいと口うるさい半可通の観客でもあり、同時に超のつくミーハー(マイナー志向)でもあるあたし。どっち方面でも大満足!の昼の部でした。

竜馬がゆく

 

これは出し物としてはつまらなかった。
せっかくの秀山祭で一幕持たせてもらって、曾孫の染五郎がやりたいのはこれかよ、と思っちゃいました。そもそも歌舞伎じゃないし。
歌舞伎役者がやれば何でも歌舞伎かというとそんなことはなくて、歌舞伎役者が歌舞伎の技術を持ってやらないことには、ただの芝居になってしまうといういい見本。

そもそも主要登場人物の志向がバラバラ。染五郎の芝居は、上述したとおり、普通の商業演劇の芝居だし、松緑は歌舞伎の芝居をしている。で、おりょうを演じた亀治郎はといえば、これは立派な大衆演劇だ。顔といい台詞回しといい、竜小太郎そっくりだった。
それぞれの芝居単体は別に酷くもないのだが、一つにまとまったとき、
「あんたたち、いったい何がやりたかったの?」
という代物に仕上がっていた、としか言いようがない。染五郎と亀治郎が声をやられちゃってるようなのも気になった。
主要登場人物の中では、西郷の錦之助が意外な健闘。この人は二枚目ではあるものの、二枚目の役より、こういうちょっととぼけたような役をしたときのほうが味が出るように思う。

 

…ここまで半可通部門。こっからいきなり壊れますよ。

 

この芝居の個人的なキモはなんつっても松次郎くん。数年前に浪花花形で感心して以来、何年ぶりかできちんと認知できました。しかも竜馬の警護役で、見せ場もたっぷりある大役。幕切れにだってちゃんといる!
…松次郎くんが出てくるまでは、志士役のサトピーで十分興奮してたんですが、松次郎くんの大役ぶりを見ちゃった日には思わずサトピーウォッチングを忘れてしまいまして。粗忽にも後半に再び捕手のボスで出て来てるのを見逃しました。サトピーごめん。絶対に再見しなければ!

 

逆櫓

 

見たことあるように思っていたんだけど、見てみたらまったくの初見だった。
というわけで、筋を追うのと、後述の事情により、吉右衛門の名演をたっぷり味わうヒマがなかった。これまた絶対再見しなければ!

吉右衛門がいいのは分かりきったこととして、とにかくこの芝居は、脇まですべて、みんないい。一人として???な役者がいない。これが夜の部の河内山などとの大きな違いである。
特に絶品だったのが、歌六以前からいい芝居をする人だとは思っていたが、今日の権四郎で、完全にマイご贔屓ベスト5には入っちゃったね、って感じ。
男っぷりの良さ、親子の情愛、そして何より義太夫味のあるすばらしい口跡での物語。
どれをとっても超一流。もちろんこういう老け役は最高なのだけれど、この人の主役の芝居も観たいと痛感した。
歌六と吉右衛門が対峙する場面は、現代の歌舞伎芝居の最高峰だといって間違いないと思う。本当にすばらしいものを見せてもらった。
芝雀、東蔵、富十郎、それぞれにきっちり持ち場をこなして、安心してみていられる。
今月、というか今年、いや、ここ数年で1,2を争う優れた出し物だと思った。

感動しながら脳内キャスティング寺子屋。

松王吉右衛門、源蔵歌六、千代時蔵、戸浪芝雀。

やってくれ~~~~!!!!

 

さて、ミーハーの部。

後半の立ち回りがもう大変なことになってます。
筋書きを買ってないので、確認できてない人もたくさんいますけれど、船頭実は捕手の大将でサトピー、その二人くらいあとに松次郎くん、その上、京純くんは返り越しするし、京由くんもいたし。こないだ車引の桜丸ですばらしかった桂太郎くんも発見。
あっち見てきゃ~こっち見てほぉ~。

やってる間に終わっちゃった。イケメンさんで名前分からない人も多数(上方三階さん多数乱入してる模様)。

もうぜぜぜ絶対再見してやる!写真入筋書き買ってチェックしまくってやる!

 

日本振袖始

 

個人的に姫も片はずしもあまり好きじゃない玉三郎、こういうのはもう文句なくいいですね。
特に前シテがいい。
出からして、怪しく、妖しく、美しく。この世界は玉三郎ならでは。彼の持っているザ・玉三郎な面がとてもいい方向に出た前シテだったと思う。
福助が稲田姫で出てくるんだけど、何分じっと倒れていたのかな。屈折した福助ファンとしては、眠っちゃわないか心配だったり、期待したり(こら!)。
間の大薩摩、中でも三味線がすばらしかった。
歌舞伎の囃子方とは違う人?あまり見たことのない二人だった。玉三郎のこだわりで呼んで来たのだろうか。こういうこだわりは大賛成。
後ジテは、ヤマタノオロチを具体的に八人(玉三郎+7人)で見せたのが、面白い。以前藤間紫で見たときはこういう工夫がなかったと思うし、たぶん玉三郎独自の演出だと思うが、こういうスペクタクルなのも楽しくていい、と思ってしまった。
もちろん八人出ないで一人でヤマタノオロチを表現するヴァージョンも見て見たいとは思った。数年前に芝翫が国立でやったらしい。怖ろしかっただろうなあ。わくわく。見たかった。
玉三郎はどうしても声も怖くないし、後ジテが弱いので、こういう形で補強したのは正解だったと思う。
染五郎のスサノオは、迫力不足すぎ。今月の座組だったら松緑で観たかったかな。たぶん玉三郎の好みじゃないんだろうけれど。

 

マイナーミーハーの部分のあたしは、ここでは7尾のおろちに興味津々。筋書き買って、早く誰がやってるのか確かめたくてしょうがありません。
これまた再見で大チェック大会!

 

どんだけ再見再見って騒いでるんだあたし。

いや、それほど、歌舞伎芝居としても充実し、ミーハー心も満足させてくれた、稀有の狂言立てだった、ってことです。

 

おヒマとお時間がおありの方は是非、歌舞伎座昼の部見てください。きっと後悔しないと思います。

 

冒頭の画像は、脳内ミーハーコラージュ。右が松次郎、左が左十次郎
実際の舞台写真はこんな形になってます。
染五郎も吉右衛門もトリミングしちゃう、おっそろしいミーハー魂!


尻上がり

2008-09-18 | kabuki a Tokio

初日の悪印象が嘘のように、どんどんどちらも良くなってます。

 

どちらもって、どちらの芝居も、って意味じゃないよ(まあそれもあるけど)。

赤坂歌舞伎に関しては、ただのミーハー。狐狸狐狸は段治郎、棒しばりは勘太郎しかみてませーーん。

 

段治郎

基本は二度目の観劇と変わってない。もっと自由奔放にやってもいいんじゃないかな、とはまだ思う。アドリブでも出しちゃえばいいのに。そこまで望むのは無理か。

とりあえずあの座組みで、重要な役を、さほど見劣りすることなくやっていてくれるだけで今月は満足といたしましょう。

二度目の引っ込みの弁慶ばりの六方、本舞台の勘三郎と扇雀を見ている人が多いのが残念。とても綺麗でダイナミックな引っ込みなのに。できればロビーでお出迎えしたいくらい(ストーカー登録されるとやばいのでしない)。

もうひとつの見所は、毒を飲まされたと思って手のひら返すところ。この二箇所、段ちゃんファンは必見です。

 

そして勘太郎

 

これがよかった!

ようやく勘太郎本来の伸び伸びした大きい踊りが見られた!

そして勘太郎本来の、心から踊ることを楽しんでいる表情が見られた!

聞けば数日前に一度棒を折ってしまい、そのままの状態で踊り続けたことがあったそうな。

それで、何かふっ切れたのかな。

巧く踊ろう、客を笑わせよう、そういう邪念みたいなものが今日の踊りからはほとんど見受けられず、本当に久しぶりに「踊りの神の愛したもうた子」の面影を観ることが出来た。

 

こういうとき、バカみたいに通ってよかったと思うのですよ。

初日一回でうんざりしてやめていたら、この幸せは味わえなかったわけですから。


四組の母娘の物語

2008-09-17 | spectacles

もちろん、物語の主人公は安倍貞任だったりするのだけれど、通しで見て印象に残っているのは、タイトルどおり母と娘のさまざまな悲劇。

朱雀堤の段

いきなり爆睡。物語の発端がまったく見えないまま物語の中心に突っ込む形になっていまい(筋書きも持ってなかった)、ちょっと辛かったです。特に生駒之助と恋絹が何物なのか分からないままずっと一つ家を見る破目になったのは自業自得ですね。というわけで感想もなし。

 

環の宮明御殿の段

 

後段は歌舞伎でおなじみ袖萩。前段は一度亀治郎の会であらすじっぽいものを見たことがある。前段は引き続き夢の中が多かった。
半分眠りながらも感心したこと。
宗任が書いた血文字が、書いてすぐは朱色、後に出てくるときは茶色とちゃんと褪色していたこと。芸細かい!

咲甫大夫の声の伸び。声量は以前から凄かったけど、伸びが一段とよくなった。

しかしこの段はなんといっても千歳大夫でしょう。袖萩、号泣させられました。

人形では浜夕の文雀が秀逸。幕切れ、こんなに愛情を込めておきみを抱いた浜夕、歌舞伎でも見たことがなかった。
袖萩の紋寿はちょっとバタバタしすぎかな。もう少ししっとりした動きのほうが袖萩はいいと思うのだけど。

 

 

道行千里の岩田帯

 

ご飯後、いい感じの箸休め。寝る暇もなく終わりました。

 

一つ家の段

 

暗そうだし、寝ちゃうかも、と思ってたらどっこい、凄く面白かった!

ご贔屓呂勢大夫さんと清治さんが組んでたのがなにより嬉しかった。呂勢さん、これから清治さんにしごいてもらえるのかな。わくわく。
清治さんの三味線の音は、いつもながら一味違う。
人形ではなんといっても岩戸の勘十郎さん。表情がたまーにうるさく感じることもある人形遣いさんなのだが、きょうはそのど迫力の表情が、もう怖くて、怖くて。正直岩戸の頭より、怖かった。って褒めてないのかもしれないけど。
いくらなんでもあまりに胎児がリアルすぎじゃないの?と思ったりもしたけど、それも含めて楽しかったです。
本日いちばんの段だったと思います。内容も、出来も。

 

谷底の段

 

谷底で大団円ってのも考えてみれば凄い話。
例の、「再会は戦場で~」って奴で、ちっとも大団円ではないのだけれど、幕切れに登場する主要人物はすべて男。関係がまったく分かってないが←無知の涙
し~ば~ら~く~の鎌倉権五郎まで唐突に出てきちゃったよ。

タイトルにもある、本当に印象的だった四組の母娘~浜夕と袖萩、袖萩とおきみ、岩戸と恋絹、恋絹と胎児は死んだり、散り散りバラバラになったり、結局本筋とは違うところでいろんな犠牲になっていってしまう。

男権社会のご都合主義といってしまえばこれほどご都合主義の展開もないのだが、でも、最後に印象に残るのは、主人公の安倍貞任でも、歴史上有名な八幡太郎義家でもなく、架空の、でも美しく必死に生きた(あるいは生きることすら許されなかった)女たちのエピソードだ、というのが、文楽作品の真骨頂なのだと思う。

通し狂言五時間。

前半を終わったときはきっついなあ、もう文楽は当分いいかなあ、なんて思っていたのですが、全部見終わったら、ああ面白かった!また見たい!が結論でした。

 

 

 


四人目

2008-09-16 | kabuki a Tokio

画像はもちろん四人目の単独舞台写真。いちばんあたしの中の尾上っぽい表情。

加賀見山

 

というわけで、もう時蔵の尾上がすばらしい!だけで終わりたいくらい。
尾上は時蔵のためにあり、時蔵は尾上のためにある。
今月の演舞場夜の部は時蔵のためにある。
そんな感じ。

あとはつけたしですが。

 

海老蔵は初日のほうがずっとよかった。

亀治郎は今日のほうがずっとよかった。

なかなか全員絶好調とはいかないようで・・・

亀治郎、初日を拝見したときは、妄想劇場第二弾(第一弾は俊寛)とかまで考えちゃったくらいわざとらしい芝居が多かったんですが(妄想劇場はこちらで先に、綿密にやられちゃってます。同じようなことを考える人っているものですね)、今日のお初は、陰謀とか暗躍とかそういうことは一切感じさせない、純真でかわいいお初でした。少なくとも尾上が死ぬまでは。

海老蔵は岩藤を少し女形らしくしようとでも思ったのか、作り声が気持ち悪くて、聞いていられませんでした。

そのほかの人はまあ初日とおおきく印象変わりません。
S蔵さん、居眠りはやめてください。坊ちゃんのお守でお疲れかもしれませんが。

 

当初の予定通り、岩藤を團十郎がやっていたなら相当すばらしい水準の加賀見山になっただろうな、と思うと惜しくてなりません。

 

 

かさね

 

初日の印象が悪かったのだから、もう見ないで帰ればいいものを。

1.ケチ

2.亀治郎のお初が初日に比べてずっとよかったので、ひょっとして?と思った

3.友人と一緒だった。

 

ってことでやっぱり見ちゃいました。

 

やっぱり見なきゃよかった・・・・

 

亀治郎のかさね、形は綺麗だけど、芝居しすぎ。顔が怖くなってから、それを自分が知らない設定なのにやたら脅しっぽい表情を作りすぎて全然哀れさがない。

海老蔵前半のあの迷惑そうな嫌そうな顔は好きです。彼のプライベートを垣間見たようで。

後半のどたばた変形連理引きは論外。
引いてくれてるほう(亀治郎)がせっかく綺麗に見せてるのに、あのどたばたじたばた運動会はなんなんでしょう。

そしてそれに大拍手(でもないか)してる客はなんなんでしょう。

 

ああ、夜の部は加賀見山、もっといえば長局まででさっと帰れる潔さを持ちたかった。

そうそう、延寿太夫さん、歌舞伎座との綱渡り掛け持ちお疲れ様です。
今までずっとlavie的には出てくるとがっかり、いう扱いのお家元だったのですが、今回のかさねは、なかなかいい声で聞かせてくれます。
人は進歩するものなのですね。(超失礼!)


俺の味方はおらんのかby清盛

2008-09-12 | kabuki a Tokio

義賢最期

実盛とかぶらないためか、年長の雰囲気を出すためか、低音の海老蔵
これが功を奏したのか、海老蔵主演の丸本物で、初めて気持ち悪くならないで済んだ。進歩してる?

(というのは過大評価だったとあとで分かるんですが)。

気持ち悪くならない代わりに、なんだかちんまりまとまってつまらない義賢だった。
神妙な海老蔵なんて、神妙な福助よりもっとつまらない。
前半、多田蔵人(権十郎)と源氏への思いを打ち明けあうあたりのハラの薄さとか、義朝のどくろが大事すぎて足蹴にできないはずなのに、扱いが粗雑なあたりとか、小万(門之助)に対して早く行け、と促すあたりが脅しにしか見えないあたり、芸は非常に荒っぽく未熟なままなのに、妙にちんまりと、とりえだった派手さだけがなくなっている状態では、客としてはどこを面白がっていいのか、途方にくれる。

立ち回りは、と期待したんだけど、これまた戸板倒しもあっさりしてるし、仏倒しは膝が曲がってびびってるの丸出し。身体能力「だけ」は一流かと思ってたのにあの迫力不足はなぜ?

昼夜奮闘でお疲れ気味なのか?
っていったって、義賢最期の立ち回りで頑張らなくてどこで頑張るんだ?仁左衛門に負けない部分があるとしたらそこだけだろうに・・・。

というわけでただただつまらない一幕。

中では松也の葵の前が若手にしては糸に乗った台詞回しでいちばん聞かせる。この人、老けのほうがいい味出すかも。

 

竹生島遊覧

 

歌舞伎ではめったに出ないというから楽しみにしていたのだが、なるほどめったに出ないはずだ。出る必要がないのだもの。
結局後段の実盛物語で実盛自身が物語る部分をリアルに説明しているだけの段。
実盛をいい役者がやればやるほど、必要はないものだと思う。
逆にいえば、この段を出そうとした海老蔵の判断は正しかったともいえる(皮肉だよ!)。
昨今見直し始めていた門之助、義賢最期でもこの段でもやたら張り切りすぎ。いくら女武道でも海老蔵以上に声張ってもしょうがなかろうに。

 

実盛物語

 

うーん。
義賢最期で、つまらないながらもいくらか発声だけは安定してきたかと思った海老蔵クン。

全然そうじゃなかったです。

 

低音域のみで発声していたときは気にならなかった、不安定な発声、裏声の滑稽さなどはすべて「健在」でしたよ・・・
竹生島・・・を見ていたときはこんな説明的な幕いらないよ、と思っていたのだけれど、あの酷い物語を聞きながら、ああ、あそこで説明しないとこの台詞回しじゃ、客には竹生島の情景は伝わらないよなあ、と妙に納得してしまったのでした。
爆睡してる客も多かったけど。あたしゃ音感があるもんであの節回しを聴きながらじゃ眠れないのよ。たしかにあの物語、寝られる人は寝たほうが幸せです。せっかく竹生島もあることだし。

松也の葵の前が引き続き健闘。変に色っぽいのよ眉なし姿。
門之助、この幕はとてもよかった。哀れで母親の情があって。この幕の哀れさを際立たせるために前の幕で無駄に元気いっぱいだったのか、と思うほど。
市蔵手堅い。太郎助に首を討たれるときに前にとんぼを返る形は初めて見た。かっこよかった!新蔵右之助も悪くはないけど、右之助はもう少し綺麗な役で出してあげたいなあ。
咲十郎がちょっとした悪でいい味を出していた。そういえば彼も名題になっちゃったのかな?もう立ち回りは卒業?

 

以上なんだかなあ、の源平布引滝通し。通しでみていちばん印象的だったのはタイトルどおり「どいつもこいつも源氏の味方!」
源平といっておきながら、平氏方の主な役者は全員多かれ少なかれ源氏の味方。平家から見たら裏切り者だらけ。これじゃ清盛さんもお気の毒。知盛さんも化けて出たくもなろうってもんだ。(狂言が違う)。

 

枕獅子

 

前シテの時蔵、綺麗なのだけれどどこか華やかさに欠けるというか、空間を埋め切れてないように思えてしまった。
美貌なだけに傾城や赤姫も似合うのだけれど、実はこの人片はずしが真骨頂なのでは?と夜の部の尾上に超ベタぼれ中のあたしは思ってしまった。

というわけで、どうせ大曲をやるなら、枕じゃなくていっそ鏡獅子が見たかったなあ。振りも派手だし、なによりいろんな人のを比べる楽しみがある。
枕獅子って、鏡獅子の原曲だとは知っているけれど、地味だし、現藤十郎でくらいしか見たことないのよね。

胡蝶、じゃなくて禿の二人、梅枝松也、どっちもまだまだだね。丁寧に踊ってるけど固い松也、動きは柔らかいけどちょっといい加減な梅枝という印象。それぞれにかわいいので目の保養にはなりました。

後シテの獅子、枕なのでアレでいいんだろうけれど、迫力不足の感は否めない。しつこいようだが、鏡を見たかった。玉三郎だってやってるんだから真女形はやらないってわけでもないでしょうに。

市川宗家の御曹司が一座してるから遠慮したのかな?

 

 


宣言!

2008-09-11 | la vie quotidienne

なんの耐性が強いって、きわめて「散らかった部屋」耐性が強い人間である。たぶんアルコール耐性より、強いと思う。

言い換えれば、世に言う「片付けられない女」。夕方のニュースの取材が来たら二つ返事でお受けできるくらいの惨状なのである(冗談だよ、取材受けません)。

ただ、何年かに一度、このきわめて強い耐性に限度が来る。
これまではたいていそのときに引越しのタイミングが重なってきた。
家を変えないまでも、生活拠点を変えるとか、共同生活者がいなくなるとか。
結果的に
引越しは最大の片付け。

ってことでなんとか乗り切ってきたのだが。

 

今のマンションに引っ越してかれこれ5年?
貯金は減るばかりなのに、身の回りのガラクタだけが増え続け・・・

もう限界である。

 

 

そもそも、ここに引っ越す前どれだけガラクタのリストラをしたことか!

前の住居より10平米も狭い現住居、十分自覚して、衣服は半分に、本は500冊近く売り飛ばした。
CDとビデオもかなりの部分涙を呑んで捨てた。
その後、本は図書館で借りる。服は、一枚買ったら一枚捨てるヴィデオはよほどのことがないと録らない、覚悟だった。

 

はずだったのだが・・・

 

現状、でっかいウォークインクロゼットからはみ出た服は、寝室のフリーラックを一杯にし、かつベッドの足元に散乱。
本、ヴィデオの類はキッチンの床のダンボールに一杯。そこからもはみ出て床積み状態。

 

なんでこーなるねん!

 

 

数年に一度のたまりかね状態炸裂。

 

ここに宣言します。

 

秋のうちに大リストラ作戦を展開して、うちのなかをすっきりさせる!

まず服は半分に。靴は20足捨てる。引越し以来手を触れていない雑貨は全部捨てる。本は二つの本棚と2つの収納スペースに収まらないものは捨てる
思い出の品も、ごく一部を除いてきっぱり捨てる

ここに書いておかないと、稀代の面倒がりやのあたしのこと、なあなあでちょこちょこ片付けて終わりにしそうなので。がんばれ、あたし。

目標は写真のような部屋なのだが(ネットからお借りしました。我が家とは一切関係ありません)、まあ無理だろうから、現実的なところで、床にモノを積んでない部屋、とした。

 

まず、第一段階。

本日、玄関脇の収納を整理して、大きなゴミ袋三杯捨てました。

 

 

…あれだけ捨てたのに、収納が相変わらず満杯なのはなぜなんだ?

 

目標は遠い。

 

再度いう、がんばれ、あたし。

 


 


ひと安心の参観日

2008-09-10 | kabuki a Tokio

初日の感想はこんな感じ。こんな感じのままあと二回行くことにならなくてよかった。今日はなかなかいい感じでしたよ。尻上がりになるといいなあ、段治郎も勘太郎も。ほかのひとは、まあどうでもいいけど。ひひひひ。

そうそう、ACTシアターの当日のチケットを持っていると、(半券でももちろん可)サカス内の飲食店でいろんなサービスが受けられます。ワンドリンクサービスで、850円のランチで500円のビールただにしてもらったよ!あと、ウエストでシュークリームをお土産に買ったら、5パーセントオフでした。いらっしゃる方、上手に利用なさっては?

 

狐狸狐狸ばなし

 

重善ってこの物語のキーパーソンなのだな、と今日つくづく。
段治郎がかなり生き生きと色っぽくなっていた、ただそれだけでこの話全体が楽しく見えてくるから不思議だ。
とにかく重善が色っぽくて「いい仕事をしてそう」にみえないと、扇雀のおきわ(今回いちばん出来がいい)があそこまで重善に骨抜きにされてしまうことへの説得力がないわけで。
今日初めて、この話は最初の幽霊話のネタがばれたあとが真髄なのだな、と分かった。遅いか?
今まではこの話の面白いのはあそこまでで、「おもろかったなあ」という勘三郎と彌十郎のからみでちょん、のほうがすっきりしていいんじゃないかとすら思ってたんだけど。
狐の狸の化かしあい、男と女のだましあい、本当におとなの御伽噺なんだな、ときょうよく分かった。
段治郎に関して言えば、毒だと思っておきわに心中を迫られたときの手のひらを返した小悪党ぶりが本当に色っぽくて、いやらしくて絶品だった。

先日の夕方のニュースで勘三郎からダメだしをささやかれてるといっていたが、勘三郎さん、どんどんささやいてやってください。それでこんなによくなるんなら!

 

棒しばり

 

相変わらず、悪くもないが、どことなく「楽しさを作っている」感は拭い去れない。
あたしが兄弟のこの踊りへの要求が高すぎるのかもしれないけれど。
今日何よりすばらしかったのは、勘太郎の「松や田子の浦♪」のくだり。
踊りがおおきくて、勇壮な松原が目に浮かぶようだった。
こういう滑稽舞踊劇でも、いや、だからこそ、要所要所できちんと踊れることが大切なのだと思った。

そこらへん、太郎冠者をやってる弟にもわかってほしいのだけれど。
どうも、滑稽にさえやればいいとおもっているのではなかろうか・・・

 

あと二回見ます。

せっかく見るんだから、参観日気分はもうやめて

たのしい芝居見物気分で行きたいです!


またまたエンタメはしごその2.二人のよっすぃ、または家族愛part2

2008-09-09 | kabuki a Tokio

今月の歌舞伎、通う回数は結果的に赤坂>演舞場>歌舞伎座なんだけど、楽しみにしてる度合いは逆だったりして。頭と身体って一致しないのよね(なんじゃそりゃ)。

で、いちばん楽しみだった

盛綱陣屋

 

いや~期待を裏切らないいい出来!

あえてケチをつけるなら、
吉右衛門が立派過ぎて、高綱の策を、小四郎が自害するあたりまで気づかないってのも不自然。もう少しあたふたした感じの盛綱(勘三郎とかそんな感じだった)のほうが、ラストの盛り上がり感は高まったかな。
玉三郎がなんか浮いてる。
歌舞伎味の濃い面子のなかで、一人いびられてる嫁、見たいな感じ。レベルは違うけど、赤坂の狐狸狐狸で段治郎が浮いてたのをちょっと思い出しちゃった。
早瀬と盛綱に夫婦の情が感じられないんだよね。相性ってことなんだろうか?
これは個人的な超わがままな意見ですが、福助の篝火が神妙すぎてつまらない。もっと女武道風にがんばってくれてもよかったんじゃなかろうか、特に前半。はじけると神妙にやれよ!と思い、神妙にやるとはじけてよ!と思う。
これは福助ファンが永遠に逃れられないアンビバレントな欲望なのでしゅ。

 

子役二人がともにかわいくかつ立派!
ご贔屓玉太郎くんは(もうちゃんじゃ悪いみたい!)花道の見得もしっかりできていたし、いちばん不安だった(きっと芝翫さんも)小四郎役の宜生が思いのほかしっかりしていて。三越も含めて、はっしー三兄弟、今月なかなかのがんばりぶりですね。

とりあえず、小四郎くんはきっちり台詞を覚えてください。
盛綱さんはろれつを回してください。しばらくがらきたろう、笑いました。
微妙さんは足元大丈夫ですか。
早瀬さんは盛綱さんにかわいがってもらってください。
篝火さんはも少し元気でもいいですよ。
そして、小三郎くん・・・そのままでいいよ!お口がとんがってるのもかわいい!

 

とぐちゃぐちゃいいながらも、全体としてはとても満足できる盛綱陣屋でした。
こういうのが見たいんだよ!!!

 

鳥羽絵

 

まあ、テーマは家族愛!の一環ってことで。
ひとことだけ言うと、同じ短い舞踊なら富十郎一人のものが観たかった。
親子愛大会は富十郎の後援会ででもやっててください。

後見の京蔵、大ちゃんが出てくるときは必ずこの人が後見だよね。
なんか好かれちゃってる?好いてる?
ある意味大ちゃんの、天王寺屋の将来が心配なような楽しみなような・・・

 

河内山

 

うーーーん

 

なんつか、吉右衛門一人、無駄に巧い。

本当に巧い。感心する。

 

だけど、芝居としてはつまんない。

 

そんな感じ。

 

脇では家老役の左團次ほうが、明らかに北村大膳役の由次郎より悪いでしょう!
しかも松江候の染五郎がまた、色狂いの青髭公爵に見えてしまって!(見たまんまかい!)
アホだけど愚直でまじめな由次郎を全員でよってたかっていじめてる!の図に見えてしまったのはあたしだけ?

大詰めのぶぅわぁかーめー!!!

は本当は大膳に言っているように見せて、陰にいる松江候に言ってるんだと思うけど、昨日のsituationだと、ただただ由次郎を馬鹿にしてるように見えちゃったよ。

家老を歌六にするとか、(大膳は左團次)出来なかったのかなあ。いつもの吉右衛門軍団に左團次が加わって、かえって変なことになってしまったという座組みの妙(本当に妙)でした。

 


またまたエンタメはしごその1.半蔵門の猿と狐

2008-09-09 | spectacles

文楽に通いだして日が浅いので、初めて(たぶん)の襲名興行。三味線方の燕三の襲名もあったけど、そのときは見てないと思うのだ。

歌舞伎みたいに華やかさはないけれど、通常では聞けない人形遣いさんの肉声が聞けたり、口上は楽しかった。前一列にお偉いさんが並び、後ろには弟弟子?たちが並ぶ。本人は一言も口を利かないのがちょっと物足りなかったけど。
蓑助さんの、不自由ながら一生懸命の「清十郎と文楽をよろしくお願いモウシ~アゲ~タテマツリマス~」にはちょっと泣けた。

 

順番が逆になりますが、この口上の後、襲名狂言

本朝二十四孝(十種香・奥庭)

勝頼を遣うのが蓑助、濡衣が文雀。二人の国宝に見つめられつつ八重垣を遣うって・・・名誉でもあるけれど、さぞかしど緊張なんだろうな。
清十郎、清之助時代から思っていたけれど、いわゆる「行儀のいい」遣い手さんなんですよね。ポーカーフェイスで人形に感情移入するというよりは、あくまで遣い手に徹する。
脇をやっているときには凄く好感を持っていたのだけれど、主役をやるときは、ある意味サービス精神を兼ねてもう少しドラマチックにやってみてもいいんじゃないだろうか。

人形浄瑠璃はあくまで浄瑠璃を聴くのが主、人形は従、という考えには賛成だけれど、今の観客の多くはどうしても人形を見て筋を追うわけで。ってことはついでに人形遣いの顔も見ちゃうわけで。
人形遣いの顔は関係ない!という信念があるなら、ずっと黒衣をかぶっててもいいわけで(実際そういうこともあるしね)。

この感想は実は、奥庭でより強まったのだ。
襲名サービス?バージョンで左遣いに勘十郎さん、足遣いに清五郎さん(たぶん?違ったらすみません)が顔出しで出てたんだけど、勘十郎さんの思いいれたっぷりのおおきい(これも要因)顔を見ていると、こちらが主遣いみたいに見えてしまって。
裃着て真ん中にいる清十郎さんの存在感が・・・
これは勘十郎が悪いのではなく、清十郎が悪いのでもなく、双方のキャラのせいだとは思うんですが。

最後の最後に一門の兄弟弟子がFIVE FOX(コムサデモードか!)で顔だしで並んだところは襲名ならではで、楽しかった。

 

人形遣い襲名なのでlavieにしては珍しく人形に注目しちゃいました。

嶋大夫よかったです。
ところで、三味線の人間国宝といえば寛治はちゃんといたけれど、清治は最近見ないのだが。好きなんだけど、どうしちゃったんだろう??
まだ若いはずなんだけど。

 

と、これが最後で、最初に

近頃河原の達引

 

猿回しの段しか、歌舞伎では見たことがないのだが、それに四条河原の殺し場がつく。文楽で歌舞伎の補填勉強をよくさせてもらうのだが、まあこの殺し場は、見なくても想像がつく程度のもので、やや退屈でした。

住大夫の鳥辺山(猿回しの段でのいれごと)を楽しみにしていたのだけれど、やっぱりもうきついのかねぇ。昨日が特に調子が悪かったということだといいんだけど。
高音が苦しいだけじゃなくて、声量も・・・

逆に世話の語りになったらさすがに聞かせてくれたんだけど。詠ったり張ったりは、さすがに衰えが隠せない。

ラストの猿夫婦の踊りはとても楽しかった(長かったけど・・・)。この人形を遣っているのが終始黒衣の遣い手なんだけど、あの技術は主遣いの人なんじゃ?とか思ってしまった。初心者ゆえ、誰なのかまったくわかりませんでしたが。