平成中村座追加公演、これが本当のラストショー、見てきました。
いや本当にめ組の大詰め喧嘩シーン、リアル嵐だったのですよ。びっくらした。
十種香
前日パスしてしまったのが惜しまれるほどよくなっていた。
何がよかったって七之助。相変わらず丸本物をやると固いなあと思っていたのだが、驚くほど柔らかく、悪い意味で人形ぽかった動きも、まだまだところどころダメではあるものの、この人のクドキで笑わなかったのは初めて、というくらいの上出来。いやあ発展途上役者は見守らないといけませんな・・・このまま丸本物もちゃんとできる役者になれば本当に名優になる可能性をはらんでると思うんで。
直接教わったのは玉三郎化福助だろうし、目に残っているのは芝翫だったり、ビデオで見た歌右衛門だったりするんだろうけれど、なぜかいちばんダブって見えたのは京屋だった。玉三郎の再来とか一部で言われている七之助だが、個人的には京屋+神谷町のような可憐でかつ義太夫味あふれる役者を目指してほしいな。
20日過ぎには全員枯れていた声だけど、七之助と勘九郎はなんとか調子を取り戻していたのもよかった。やはり女形が声が荒れてると興ざめだしねぇ。
これ、染五郎が勝頼だったら花形歌舞伎として相当高水準行ったんじゃないかなあ、と別に扇雀が悪いわけではないのだが大きさのバランスがねぇ・・・
勘九郎濡衣についてはもう・・・好みどストライクなので、なんもいえねぇ!!!
ええわあやっぱり勘九郎のけなげ系女形。
勘九郎七之助の女形コンビでぜひ見たいもの1に野崎村2に梅ごよみ34がなくて5に四谷怪談(見たけど)。
そして七之助がこのまま順調に丸本物できるようになったらぜひ見たいのが妹背山の久我之助と雛鳥。大判事が播磨屋なら理想的。
…なんて脳内妄想するほど、七之助の丸本物としては初めて、といってよいほどよかったのでした。
三社祭
これ、どう思ったらいいんでしょうか?
昨日で楽が終わっていて、あくまでおまけの追加興行だと思えば楽しかったんだけど・・・
ちょっとやりすぎ?と思わないではなかった。いや、善玉勘九郎はほぼいつもどおりにやってたんですが、悪玉染五郎が単独で踊るパートがあまりにオリジナルwで、ほとんど日舞の振りになってなかったんで。
もともとごく一部に「ひげダンスw?」テイストの振りを入れていてまあそれは一瞬だったんでご愛嬌かと思ってたんですが、追加公演のこの日は、ブレイクダンス入るは、ムーンウォークするは、のもうやりたい放題。客席は大喜びなんだけど、いくらソロパートwとはいえ、振り付けの先生とかに了承は取ったんだろうか、とかふと思ってしまったのも事実。
そして石橋での獅子の毛振り。これがまたもノ凄くて。
回数とスピード「だけ」は前代未聞だったかな。こんなにやってると脳が揺れてバカになるぞ、と思うほど振ってた。
ただし形がめちゃくちゃ。特に染五郎の毛振りはもともと形が変なんだけど、回数とスピードを優先するあまり、足元は三回くらいふらつくし、身体は完全に斜めになっちゃってるし、ちょっとどうしようもなかったのでした(二階席から見ていたので特に毛振りの形が目に付いてしまったのかもしれないけれど)。
ダンス風の振り付けもスピード回数優先形無視の毛振りも、現場の客は湧きに湧いていて、「客を喜ばせてなんぼ」の芝居だといえば確かにそれでいいのかもしれないし、追加興行なのだからもっと許容範囲はあっていいのかもしれないけれど・・・狭量なファンであるあたしは、やはり、せっかく前日あんなにいいアンサンブルを見せてきた二人の「まともな」「がっつりした踊りを見たかったのだ。
め組の喧嘩、そして・・・
千社祭と同様、楽のぴりっと締まった芝居に比べてどうしても緩んだ部分はあちこちに見られたけれど、それなりに楽しかった。ただ、今回数回見た中ではいちばん退屈だったのも否めない。特に勘三郎と梅玉、歌女之丞の芸達者が丁々発止を見せる焚き出し喜三郎内の場面で初めて眠気が・・・役者の緩みは微妙に客に伝わるのだね。
まあ乱暴に言ってしまえばこの芝居、大詰めの喧嘩場を見せるためにあるようなもので、長ーーーーーーいプロローグは寝ててもいい(実際寝てる客多し。某評論家とかもずっと寝てた)ともいえるのだがw。
この日、午後に嵐の予報は出ていたのだが、千社祭のころまでは昨日に引き続く超好天。ところが一天にわかに・・・め組が始まったころからものすごい強風が吹き荒れ、場面転換で大道具を入れ替えるたびに外でばたんばたんと騒音が。大道具さん大変だったと思う・・・
喜三郎内のあたりから雨も加わり、なにせ「小屋」のこととて雨音で梅玉さんのせりふが聞き取りにくくなったり、ああ、これは大詰めのお遊びなしかなあ・・・などと危惧しながら見守る感じ。
最大の見せ場、喧嘩場もあちこちに楽、じゃなくて追加公演スペシャルが隠されていて(気づいたのは彌紋を小屋の屋根まで担ぎ上げる振り、咲十郎が参加していたことなど)。
いちばん目立ったのは、通常出ていない染五郎・七之助・国生・鶴松などが鳶で、彌十郎が取的で参戦。こういうお遊びはあっていいと思うのね。ほかの場にとびいるのではなくて新入りグループwの場をひとつ作って「隔離」してたのもよかった。芝居を壊さずに客も楽しめる。女房役の扇雀まで鳶に変身してたのはちょいやりすぎ?まあギリ許容範囲か。
そして幕切れに昨日と同様神輿乱入。神輿の担ぎ手の中には宜生もいたな・・・梅丸くんも入れてあげればいいのに、と心の中で思ったんだよおあたしは。
ここからが追加公演スペシャル。
前述したとおり、どしゃぶり、強風のなかみこしはどこで待機してたんだろう?担ぎ手がびしょぬれというわけでもなかったからどこかテントでも張ったのかしら?とにかく、大嵐のなか、わっせわっせとお神輿担いでる勘九郎の楽しそうな顔を見てなんだか救われたような気持ちになった。中日過ぎくらいから本当につかれきった顔で、大丈夫なのかこの人と思ってたから、さ。
カーテンコール的な場ではたいてい隅っこにいる勘九郎が「神輿だけは譲れねぇ!」って藤松が乗り移った感じでずっと先頭で担いでるのも微笑ましかった。
新三の女中の扮装?を拵えて小山三も登場、幹部役者のご挨拶も一通り終わって、ここからがスペシャル第二弾。これが凄かった!
新門の鳶頭の木遣り歌(いやあ美声でした!)に続き相撲甚句(もと関取大至。この人甚句名人だよね)。これまたなんていい声、いい節回し。♪はぁ~ドスコイ、ドスコイの合いの手を入れてるのが彌十郎さんともうお一方で。彌十郎の美声と、もと関取と並んでも見劣りしない体躯にも感動w
木遣り唄のときには雷まで始まって、天然のドラムサウンドまでプラスされ、なんだかものすごいコラボになってましたw聞こうと思って聞けるものじゃないからねぇ、こういうのって。なんか本当に中村屋(たぶん父親)は「持ってるんだなあ」と実感。
ここら辺から腕組シニカル観劇派のlavieも立ち上がりいわゆるスタオベ状態。これで興奮しなかったら江戸っ子じゃねぇ!
って江戸っ子じゃないんですがwww
耳はいろんな江戸の音に傾けながら目は勘九郎と萬太郎を探せ!
勘九郎はわかりやすいんだけど、萬太郎はちっちゃくてわかんねーや、と思ってたら、勘九郎がみこしを担げよ!と新悟を誘っていて、その新悟が萬太郎も一緒に行こう!と袖を引っ張っている現場を目撃。「ねぇねぇいこーよ!」「いやだよ、絶対いやだよ」みたいなやり取りがあって、結局新悟も担ぐのをやめてたw
なんなんだこの引っ込み思案な二人は。かわええ。まったくかわええ。
てな感じで会場もlavieも最高にもりあがってるところに七緒八登場。パパ→じぃじ→パパ→叔父さんに交互に抱かれている姿は祭の日と同じなかむら格子で特注した鳶装束。鉢巻が似合うねぇ。さすが七緒八なんて名前伊達に付けられてないわw
あまりのうるささ(客も天気も神輿も)にさすがの動揺しない王子様も泣きそうになって早々に引っ込んじゃったけど。
ああ、この子も泣くんだ、とちょっとほっとしたりしてw
とりあえず大騒ぎをしているうちに大嵐も収まって、小屋を出たときには小雨、浅草駅に到着したときには完全に雨がやんでいたという・・・
最後の最後までドラマチックにやってくれるなあ、ともう喜んだり苦笑したり、(さすがの仕込み嫌いのlavieも天気の仕込みまでは文句付けられませんわwww)の最終公演でした。
生来の皮肉屋ゆえ、いろいろいちゃもんもつけましたけど、この七ヶ月を一言で締めくくるなら、
「あー楽しかった」になるんだなあ、これがwwwww
だったら最初から素直に楽しんだほうがいいじゃん、と思った方、正解!いやあもうこれはサガなのでしょうがないですな、突っ込み体質。
蛇足ですがタイトルの言葉、文学史で習いましたよね?ドイツのある文学運動を示す語で、一般には疾風怒濤と訳されてますが、実は大嵐と衝動、みたいな意味なんですってね。
この訳のほうが今回の大詰め嵐にはふさわしい!
画像は七ヶ月毎日通った中村座近くの隅田公園入り口付近。最後は紫陽花が綺麗でした。