laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

一月まとめ

2008-01-31 | agenda

年初からトータル13回の歌舞伎見物。

熱が衰えたといいながら、けっこうぶっ飛ばしてます。

 

今月のMVP

團十郎と亀治郎と松緑の三人でかなり悩みました。

うーん。

 

 

亀治郎

 

理由はなんといっても「やれば押さえた芝居もできるじゃん!」

 

次点は松緑

 

パロディ暫、押し出しといい、力強さといい、凄かったっす。本物の暫が見たい。

 

 

 

今月のMIP

 

これはもう誰がなんといっても、芝翫!!!

尉を気遣いながら踊る姥の暖かさと、満江の堂々たる貫禄。もう、手放しの賞賛ですよ。

なぜMVPじゃないかというと、あまりにimpressiveすぎて、MVPにはもったいない(ミーハー的にはMIPのほうが上だったりします)から。

 

今月の芝翫さんにはハートをわしづかみにされてしまったあたしです。
福ちゃんと芝翫さん、成駒屋親子にやられつつあります(中村屋もそうですが、なぜか次男には興味がないらしい)。
そういえば西の成駒屋も父親と長男は好きだが、次男は・・・

lavieの次男嫌い、法則化しそうです。

 

次点はあるようなないような。

一応、国立の徳松、浅草の三津之助、歌舞伎座の京紫、演舞場の立ち回りチーム(判別できたのは京珠、京純、猿琉、猿治郎など)と、各劇場一組ずつ選んでおきます。

 

 

今月のMDP

 

アレはもう殿堂入りにしましょうかねぇ、とうんざりしながらも、

 

やはり成田の若様をあげないわけにはいかんでしょう。

勘違いが極まって、どこまでいくかもう見守るしかないんでしょうか。
ダメなものはダメだって、誰か言ってやればいいのに。もう手遅れかしら。

 

次点は

ごめんね、まだ若いし、楽には少しマシになってたんだけど、期待も込めて

巳之助。


不器用、というか声の使い方が根本的に分かってない感じ。
お父さん、ちゃんと教えてやってください。

 

 

今月の一押し

 

これまたかなり悩むところですが。

僅差で

 

小町村芝居正月(国立劇場)

 

一度しか見てないのだが、とにかく文句なく楽しかった。
芝居として成立してない部分もいっぱいあるし、ぐだぐだだったりもしたのだが、
THIS IS KABUKI!の王道を満喫したという感じ。

菊五郎劇団はいいなあ。ああいう手堅い脇で勘太郎にも一度芝居をさせてやりたいなあ。(自分で育てろって話ですな、そろそろ)。

 

次点

助六(歌舞伎座夜の部)

 

同じく

THIS IS KABUKI!を
MR.KABUKこと團十郎Iが身をもって示してくれた舞台。
福助揚巻の堂々たる立女形ぶりにも感動。

 

 

さて、明日から二月!

二月といえば博多座!(なのか?)

カンタの高坏楽しみ!

 

 


 


あさくさ名物おめちゃんコスプレ

2008-01-27 | kabuki a Tokio

本日は一部のみ。

 

吃又

 

 

きょうはおとくが目覚しい出来。三津五郎さんが来てたからまた神妙に戻ったのか?
又平も悪くはなかったけど、三回目のすばらしさには叶わなかったかな。ちょっとだけ間のおかしいところとかあったし。三津五郎さんが来てたから上がったのか?

というわけで、吃又は全部で四回見たわけですが。

おとく   ◎  △  ○  ◎

又平   ○  △  ◎  ○

って感じで、残念ながらあたしが観たときはどっちも最高!っていう日ではなかったみたい。25日のうち、何回かは双方◎っていうすばらしい日があったんでしょうね。その確率をこれからどんどん高くしていってほしい。

三津五郎さんが来てたからか(こればっかり)巳之助がかなりがんばってた。
台詞まわしや間は相変わらずダメダメだけど、この人、受けの芝居というか、ちゃんと相手を見て芝居が出来てる分、まだ見込みはあると思った。
来年も出るらしいので(カテコで亀ちゃんと約束してた)それまでにお稽古がんばっておくれ。

 

 

弁天小僧

 

うーむ。

七之助は今日が最悪だったと思う。

人によっては動きが派手でよかった!とも思うんだろうが、なにしろ、力みすぎ。声も張り上げすぎ。精一杯の若さを発散させていればいい時期はそろそろ終わりだと思うんだけど。
しかも初日ならともかく、一ヶ月練り上げてきた最後があれですか、っていう感じでちょっと暗澹たる気持ちになった。正直初日のほうがまだマシだった。彼もまた三回目がいちばんいい出来だったような。

ここでも巳之助がそれなりに形になってきている。
五人勢ぞろい、前の幕の主役二人と、花を添える三人の力量の差が余計広がったような。

とくに亀治郎の忠信利平は、本当に貫禄もの。この人、そのうち本格的な立役もがんがんやりそう。またよさそう。

 

 

お楽しみカーテンコール

 

 

昨年の身替座禅奥方の扮装で度肝を抜かしてくれた男女蔵、今回もやってくれました。吃又の虎のぬいぐるみ。
みんながまじめくさって挨拶しているときもなんやかんや動いて愛嬌を振りまいてくれるので、挨拶なんて上の空(あたしだけ?)。
虎で出るっていうのは役者も知らなかったらしく、みんな笑ったり、あきれたり。

それに引き続き、寸劇まで。
これは予定通りだったらしく、博多に行かない巳之助が「兄さんたち、これからどこへ行くのかえ?」に対して亀ちゃんが「これから博多へ!」みたいなからみのあと、
7人衆は花道から去っていき、残された巳之助が本舞台で平伏。幕。

面白くてあたたかくて、綺麗な幕切れでした。
こういうカーテンコールは、まあありかな、と思っちゃいました。

 


東銀座でお買い物

2008-01-25 | kabuki a Tokio

二度目のえんぶじょー。

一度目の感想はこちら。

 

いえね、あたしはいいんです。

一階で段ちゃんを間近に見られましたし、段ちゃんの舞台写真も買えましたし。

楽しかったですよ。

 

 

 

で、終わっておけば大人なんだけど。

 

あいにく大人になりきれないおばさんなもんで。どうしても一言余計なことを言っちゃいたくなる。なるべく一言にしておくけど。

 

 

えびぞーさんって、分かりやすい歌舞伎、新しい歌舞伎を目指してるっていう方向性は理解できるんだけど、若い層、歌舞伎を見る客層の理解力を低く見すぎてません?

ひょっとして自分並の頭脳が今の客の平均値だと思っちゃってるとか?

 

分かりやすい=現代語調で話して、身振り手振りを大げさにして、やたらテンポアップして次から次へと話をすっとばす=テレビみたいな歌舞伎になっちゃってると思うんだけど。

 

 

 

前半のつまらないとまで思わせる神妙さが懐かしいほどに、どんどんコントになってます。

 

 

毛抜は愛嬌と滑稽を取り違えてるし、
鳴神はただのエロ話になっちゃってるし。

芝雀の絶間姫まで、やたらあっは~ん声出してるし。
きっと座頭(笑)の指導(爆笑)によるんだろうけど。
芝ちゃんかわいそうすぎる・・・

 

下手とか、大根とか、うるさいとか、しつこいとか芝居を壊すとか、最近ではスカとか、

えびぞーに関してはいろいろ貶してきましたが、たぶんこの形容詞を使うのは

初めてだと思います。

 

下品。

 

 

 

残念です。

 

えっと。

 

噂によれば團十郎襲名の折には、手直しして、襲名狂言のひとつにしたいという野望まで抱いておられるとか。

 

その前に、お父さんの弾正と鳴神上人と不動で、本人が安倍清行と早雲王子(この二役がまだ、まともだった)で、一度やり直してみたらいいんじゃないだろうか。

 

もちろん、この演出、一人五役は永遠にお蔵入りすることを熱望します。

 

段ちゃん、今度はまともな芝居で見たいです。

 

 


二月以降の観劇予定&希望

2008-01-23 | agenda

2月

 

7日歌舞伎座昼
15日歌舞伎座夜

1-3&23日博多座

8&20&13日文楽

 

3月

3&4&6日中村屋親子公演

7日中村中コンサート(sept)

14日歌舞伎座昼の部
10&21日夜の部

5&19&25日演舞場(スーパー歌舞伎)

27日獅子虎阿吽伝SEPT

26日芝雀一人公演

 

4月

 

24日歌舞伎座昼の部
14&26日歌舞伎座夜の部

8日大阪文楽公演昼夜

9日松竹座浪花花形公演1・2・3部

15日どん底(コクーン)

23日ハリジャン(シアタートラム)松緑出演 

28日49日後・・・(PARCO)

 

 

5月

 

15&20,21日中村屋ベルリン公演
23日 ベルリンフィル

2日歌舞伎座昼&演舞場夜
9日歌舞伎座夜
7日演舞場昼夜
10日国立文楽

5日コクーン蜷川亀三郎出演芝居
28日EUcinema(ブルガリア)
29日藤十郎、平家物語

 

6月

1日EUcinema(フランス)
2日瞼の母 sept
コクーン歌舞伎(夏祭浪花鑑)11日&28日
歌舞伎座昼夜
29日~7/31公文協巡業 東&中央コース
新派公演(演舞場)
27日中日劇場ヤマトタケル

 

7月

歌舞伎座昼夜

松本芸術座?(演目による)中村屋

18日道元の冒険(コクーン)

 

8月

納涼歌舞伎

8&10日パリオペラ座ガラ(オーチャードホール)

新水滸伝(ルテアトル銀座)21世紀歌舞伎組

コクーン大人計画&染五郎芝居

 

10月

ソフィア国立歌劇場(考え中)

 

12月

勘太郎・七之助兄弟公演(11/30~12/10)まかしょ、舌だし三番叟ほか
3日シビックホール

 

 

 

 

見たい映画

 

エンジェル

転々

やわらかい手

潜水服は蝶の夢を見る

モンテーニュ通りのカフェ(ユーロスペース)

屋敷女

パリ、恋人たちの2日間(恵比寿ガーデンシネマ)


楽しいことはいいことだ

2008-01-22 | kabuki a Tokio

一度目の感想はこちら

 

概ね同じような感じなのでちがうところだけ簡単に。

 

鶴寿千歳

後半の翁嫗が見せ場なのだが、富十郎、大丈夫かと思うほど急に衰えた?

足元が危ういのは以前から感じていたが、それ以上に目にまったく光が感じられないのだもの。ちょっと、というかかなり心配。
翁の弱弱しさを演じるために目の光まで消した名演だとすればいいのだが。そうであって欲しいのだが。

対する芝翫、こちらは元気というかラブリーというか。
前から好きな役者ではあったのだが、すっかりやられちまいました。
あんなおばあちゃんに
「ここに直れ!」って叱られたい!(おじいちゃんなんだけどさ)

 

連獅子

 

前シテはかなり好感を持ってみました。踊りというより、芝居のような。
親子の情愛が、濃く感じられた。
とくに千尋の谷から這い上がる直前の花道の仔獅子と本舞台の親獅子がはっきり目と目を合わせて無言の会話を交わしているところなんて、中村屋の三人連獅子では見えにくい、見せにくい空気。芝居上手の二人だからこそかもし出せる空気だったと思う。

間狂言は初回よりはだいぶこなれていた。
特に松江が固いながらもちょっと愛嬌がでてきたのは、良かった。

後ジテ。
途中まではこれまた悪くないと思った。
スピード感はまったくないけれど、ひとつひとつ丁寧にこなす幸四郎の踊り、ちょっと見直した。ラストの毛振りも、のろのろと、回数は少ないながら、きちんと腰を銃身にして綺麗に回していたし。

問題は染五郎
途中までは幸四郎に合わせていて、初回よりいい感じ(初回はとにかく自分のペースで走り回っていたって感じ)だと思ってたんだけど、最後の毛振りがどうしようもない。
あそこまで汚い毛振りを見たのは初めて。
腰高でというより、ほとんどたったまま、首の力だけでぶん回しているという感じ。
正直海老蔵ですら(何かというと悪い見本で名前を出して申し訳ないが)、もう少し腰の入った毛振りをしていた。

翁の富十郎同様、ぐれた仔獅子を演じようとするあまり、舞踊の基本をあえてはみ出してみた、と思ってみようか。いや、こっちはやっぱり無理だ・・・

とにかくこんな動きを毎日続けていたら、いつか、首や肩を壊してしまうよ。気をつけたほうがいい。

そしてこんな酷い毛振りでも、回数さえ増えれば拍手する客も反省したほうがいい。

…これって中村屋の悪影響なんだろうかね。
彼らの毛振りの回数と回転数は、踊りの基礎ができてる人が三人(二人といいたいが、最近七もなんとかがんばってるので)揃った奇跡から成立してるわけで、本来の連獅子って、回数とか毛振りのそろいを愛でるものではなかったのではないかと思うんですが。
奇跡のアンサンブルがデフォルトになってしまった客(実はあたしもそうだ)が、今日みたいな、いい親子の情愛を見せてくれる連獅子を評価できなくなっているのは情けないことだ。

ただただ毛振りが早くて回数稼いだら拍手。それは違うんじゃなかろうか、とミーハーなあたしですら思っちゃった今日の染五郎への拍手でした。

 

助六

 

いやあ楽しかった!

 

前回とほぼ感想は同じなんだが、福助が、前回にもまして魅力的な揚巻になっていた。前回ちょっとやりすぎて気持ち悪くなっていた出の酔っ払い場面、今回はほどもよく、なんだか妙な余裕すら感じさせた。
確実に大きい役者への一歩を踏み出しつつあるという手ごたえが、今月昼夜とも感じられる。

昨年来延々と続いている松竹による「金を取っての」福助→歌右衛門選考試験、
ようやく仮免OK、路上研修へ、という感じじゃなかろうか。
別にあたしは福助が歌右衛門になろうがなるまいが全然どっちでもいいんだが(歌右衛門を生で見てないからなんの思いいれもないので)、紛れもなく次代の立女形であることは、今月確信できた。

ついでにお父さんの芝翫。この満江は、前にも書いたとおりもう絶品中の絶品。これを見るためだけでも助六は惜しくないと思うほど。

…というわけで成駒屋親子にやられちゃった感じですが、今月の助六は地味ながら実にいい座組だと思った。

初回と被るけど、やっぱり通人の東蔵、白酒売の梅玉、くゎんぺらの段四郎は最高だし、初回ちょっと弱いかと思った白玉の孝太郎は情のある朋輩って感じが出るようになってきたし(声がちょっと甲高いのは何とかして欲しい)、意休の左團次もかなり大きさが出るようになった。
ちょっと思ったのは意休、幸四郎あたりに振っても面白いんじゃないかな、と。連獅子で瀕死のお疲れだから無理だろうけど。
超とおい将来的には浅草の大膳くん(獅童)もキャラ的にはやれそうな気がするなあ。

 

…主役が最後になりました。

 

上手い下手、声が出てる出てない、顔がいい悪い、そんなことを超越して、助六と毛抜と鳴神は今のところこの人の右に出るものはいないと思います。
(暫は、国立の松緑が相当よかったし、迫力は海老蔵もかなりあるので、若い二人のほうが強いかも)。
のどかで、でっかくて、おおらかで、とにかく見ているだけで幸せにしてくれる役者ですね、團十郎は。下手糞役者だいきらい!のあたしが唯一認める、すばらしき大根役者です。


…というわけで、ででででっかいめでたい楽しい助六でした。

 

いやあ、歌舞伎って本当にいいもんですね!

 


伸び縮みいろいろありました

2008-01-18 | kabuki a Tokio

二度目で感心した人がそうでもなかったり、その日によって出来がまちまちなのも若いってことなのかなあ、と改めて新鮮な浅草歌舞伎です。三回も見ることないか、と当初は思ったのですが、やっぱり若い人が試行錯誤してるのは、見ていて面白いし、気持ちいい。

 

今回は伸び縮み評価で個人別に。

 

 

本日の伸び盛りさん

 

 

 

勘太郎

 

吃又が、ようやく手の内に入ってきたという感じ。初日近辺のどたばた感はすっかり消え、若いながらもまっすぐな絵への情熱と、妻への愛が手に取るようにかんじられた。亀治郎の初日のおとくに今日の又平の出来だったら、大歌舞伎でもまったく遜色のないすばらしい吃又だっただろう。
又平に完璧に感情移入できたのは、今日が初めて(すべての吃又観劇体験を通じて)だった。勘太郎にはずいぶんあたしの歌舞伎鑑賞を助けてもらってる感じがするよ。
ありがとねの意味も込めて本日のナンバー1。

 

 

七之助

 

ちょっとおまけだけど。

弁天はやっぱり無理。お嬢様ぶりと七五の台詞は綺麗だが、それ以外でちょっと気を抜くととても不恰好。なにより、やはり男に見えないのが、弁天役としては致命的ではないだろうか。兼ねる役者を目指すのが中村屋の方針なのかもしれないが、真女形のほうがいいんじゃないか、この人は。


なのになぜ伸び盛りかというと、きっと最後までダメだろうと思っていたお富がびっくりするほどよくなっていたから。
玉三郎の影がほとんど消え(初役は教えてもらったとおりに、という原則からすればいけないのかもしれないが)、七之助なりのお富になっていて、それが、ちっとも無理じゃなく、ごく自然にちょっと投げやりで、成り行きのままに生きていくくせに、なぜか汚れていないお富さんの色がとてもよく出ていたんだわ。実際玉三郎よりいいお富になる可能性を感じた。

 

本日の伸び悩みさん

 

 

亀治郎

 

いや、上手いんだよ。上手いことは百も認めたうえで。

おとくは初日がよすぎて、見るたびにどんどんおとく+亀ちゃんトッピング(臭い)になってきてる。
全体としてはとても神妙にやってるんだけど、聞かせどころの語尾の上げ方や、間の持ち方が、微妙に臭いのよ。

まあ、まだ我慢できない臭さにはなっていないので、ここで止めておいてくださいね。お願いだから。

 

雪姫は、そもそも彼の声質からすると限界に近いカンの声を出しているので、そのせいもあるだろうが声を出す前に「へぇ~ん」としゃくりあげるような掛け声を掛けるのが、以前から気になっていたのだが、今日は特に多かったような。
まあニンじゃないわりにはがんばってるとしかいいようがない。

 

 

 

愛之助

 

やっぱりダメでしょう。あの与三郎は。
七之助が玉三郎のお手本からなんとかオリジナルのお富を作り上げつつあるのに、
仁左衛門に教わったまま。しかも仁左衛門ほどの魅力はないし。
下手じゃないだけに悪く言うのはしのびないのだが、彼にとって仁左衛門に似ているというのは諸刃の剣なのだな、と今回痛切に感じた。

 

ほかの二役も今回はなにか生彩を欠くのだが。
行儀が良くて、まじめで、芸達者なだけでは役者はダメなんだなあ、と彼を見ていると感じずにはいられない。

 

 

本日のダメ男くん

 

獅童

ダメ男というにはちょっと申し訳ない。そこそこがんばってはいるのだけれど。

なにしろ前回の大膳が良すぎたのでね。

今回はまた初日の「大声のいばりんぼさん」に戻ってしまったような。
前回獅童大膳に感じたニヒルなダンディズム、あれは一日だけの偶然だったのだろうか。あのニヒルさは幸四郎より三津五郎より魅力的な悪になりうる可能性を秘めていると思い込んじゃったのだけれど。違ったのか?
あと、言っても詮無いことではあるが、動くと全然ダメ。大膳の大きさが全部消えて、ただの現代っ子の兄ちゃんになっちゃう。踊りが身体に入ってないからなんだね。これは今から取り返せるか、と思うとかなり険しい道になるのでは?


南郷は少しずつよくなってるが、やはり捨てゼリフになると急に現代調になっちゃうのは仕方ないのかな。これは七之助も含めて。

 

ほかのかたがたにも一言

 

亀鶴は、堅調株といったところ。初日からレベルの高い芝居をしていたからか、特にいまさら感心するところはなかった。

 

男女ちゃん、元気でなにより。

ミノスケ、いてうくん、がんばれ。

 


めでたさも中くらいなり木挽町

2008-01-17 | kabuki a Tokio

久々の三階後方、しかも体調不良での観劇なので、ちょっと辛めかもしれません。

 

猩々

 

数年前、カンタと七のきびきびした踊りで見たのとはだいぶ印象がちがう。

梅玉は本当に基本がきちんと出来ている(なんて失礼だが)踊りだな、という印象。比べたら気の毒なのだろうが、染五郎はやはり腰高、不安定。
どちらも白塗りはよく似合う典雅な外見なのだが、三階からオペラグラスなしでみていると、梅玉が、木目込み人形が動き出したのか?と思わせるのに、染五郎はオートマタのからくり人形を見ているよう。同じ振りをすると、圧倒的にぎこちないのが分かる。
こんな染五郎が、夜の部の連獅子では巧く見えるんだよなあ。あれ、相手誰だっけ?

 

閑話休題

 

梅玉、いいな。なんか最近頓にいいよ。
と基本的に梅玉を見つめて、得意の梅玉妄想(なぜか妄想をそそられるのよねこの人。詳細はこちら)にふけりながら、たまに後見の梅之くんを見たり、松江さんはいつでもなんか固いよなあ、生締めものとかやらせてあげたらいいんじゃないかな、とか例によってボーっと考えているうちにめでたい踊りは終わったのでした。

 

 

一條大蔵譚

 

特筆すべきは、福助
実はとても心配していた。
揚巻よりもっと。

 

だって、常盤って品と風格と情と高潔さと、そしてなによりかなりの義太夫風味を必要とする大役。かといって主役ではないから、目立ちすぎてはいけない。
個人的には三姫より難しいんじゃないか(とくに福助にとっては)と思っていたのだもの。

 

結果オーライというか、いやはやすばらしい出来だった。
やれば出来るじゃんあんた!
品と情は文句なし。でしゃばらないけどちゃんと存在感もあったし、嘆きのクドキも、綺麗に糸に乗っていて十分のでき。
風格はまだまだ物足らないけど、これはこの役で場数を踏んでいけば自然とおおきくなってくるでしょう。高潔さは・・・ははは。そこまで求めちゃ悪いか。
あたしの中でこの役のデフォルトは雀右衛門だから、永遠に高潔さは届かないんでしょうね。まああんまり福ちゃんには高潔になってほしくもないし

 

吉右衛門、悪いはずもないのだが、期待しすぎたか、つくり阿呆の声が高すぎて、なんだか酔っ払いのように聞こえた。ちょっと気持ち悪かった。
見顕し後は大きさといい台詞回しといいさすがだったけれど。

 

最近プチマイブームの梅玉だが、鬼次郎役に関してはなんだかなあ、だった。
以前ずっとなんだかなあと思っていたころのサラリーマン風段取り芝居で、敵(だと思っている)屋敷に踏み込む緊張感とか、主君を思う熱血ぶりとか、ほとんど感じられなかった。
魁春は、梅玉よりはよかったんだけれど、あたし、この人の台詞回しがどうにも好きになれないんだよなあ。歌右衛門直伝なんだろうけど、歌右衛門とはニンも味も違う人なんだからもう少し普通に、歌い過ぎずに(それも独特の節回し)台詞を言ったほうが似合うと思うんだが。

ほかに良かったのは吉之丞の鳴瀬。一時体調を崩したのかあまりでなくなったけれど最近、播磨屋の芝居にはほとんど一座して、ぴしっと脇を固めてくれている。こういう人がいるといないとで、一座の芝居が大きく変わるから怖い。
段四郎勘解由、手堅い。
勘三郎襲名のときと同じ太刀持ちで芝のぶ。コレがおそろしいほど綺麗だった。夜の並び傾城よりずっと。勘三郎のときも感心したが、太刀が微動だにしない。華奢に見えて筋肉を鍛えているのだなあ。

常盤御前と一條大蔵はそのままで、勘三郎襲名時の鬼次郎仁左衛門、お京玉三郎で見たい(常盤とお京の格からいってありえないけど)なあ。
福助の歌右衛門襲名興行あたりならありえるか。

 

 

女五右衛門

 

三階の雑踏は凄い。お昼ごはんの後のこともあり、長唄が鳴りはじめてもどんどん人が押し入ってくる。そもそもおばちゃまたちは、置きの長唄を落語家の出囃子かなんかと勘違いしているのだろうか。役者が出てくるまでは声をひそめる必要すらないと思っているらしく、大声でしゃべり続ける。

浅葱幕が切って落とされてもあちこちでおしゃべりは続く。
おいおい、雀右衛門が「絶景かな絶景かな」の名台詞を言ってるじゃないか。静かにしてくれないかなあ。

90近いんだから三階まで朗々と響き渡る声を出すなんて無理なこと。耳を澄まして聞き入りたいのに、耳を澄ますと、聞こえてくるのは後方からの弁当の感想話。

 

ああ、けちらずに一階席を取ればよかった・・・

 

 

雀右衛門、初日近辺は台詞が入っていないどころか、プロンプが聞き取れず、えらいことになっていたらしいが、今日は、よどみなく、勢いこそないが表情豊かに女五右衛門を演じていたと思う。たぶん。

後ろのおばちゃんの弁当の卵焼きが辛かったことのほうが確信を持って断言できるが。

 

吉右衛門が競りあがってきて、見得、あっという間に幕。

 

「あららもう終わっちゃうの?」

っておばちゃんたち、10分という上演時間知らなかったのか?あなたたちそのうち7分はしゃべってましたもんね・・・実質3分。そらびっくりするわ。

 

…けちらずに一階席とればよかった×2

 

 

雀右衛門、二重の金ぴかが似合うなあ。生涯姫なんだなあ。

無理な望みとはいいながらもう一度雪姫が見て見たい。亀治郎に見せてやりたい。福助にもみせてやりたい。

 

 

魚屋宗五郎

 

前半、意外と面白かった。

 

幸四郎、顔は怖いし、声は重々しいし、絶対ニンじゃないだろ、と思ってたんだけれど、生活に鬱屈していて、だからこそ酒癖の悪い、ちょっとひねくれた町人って感じで、新しい宗五郎のイメージを見せてくれた。

ただ、やはりインテリに見えちゃうんで、この人がやるときは前進座風に、大詰めの磯部屋敷の場はカットしたほうが芸風に合うと思った。

ラストに殿様に謝られてキゲンを直してへいこらしちゃうのは、菊五郎や勘三郎がやるとさもあらん、とも思えるのだが、幸四郎だと、「そんなことでこの人は納得するはずないだろう。理屈に合わないことは抗議しなきゃいかんだろう」と思っちゃうんだよね。

酔っ払って屋敷に殴りこむところでチョン、なら、かなり高評価をつけられたと思うんですが。

だけど、その屋敷での殿様役の錦之助と家老役の歌六がよかったんだよな。特に錦之助は、本気で反省していて情け深い殿様で、品もよくて、今後この人の当たり役になっていくんじゃないかと思わせる出来。

 

前後するが、ほかの役者では、おなぎの魁春と近所の娘京紫に惹かれた。
魁春は、前述した節回しが好きになれない時代物より、かえってこういう世話物のほうがいい味をだすように最近思える。
また京紫は今月目覚しく美しい。助六の並び傾城でも芝のぶより目立ってたし、この芝居でも、品よく初々しい娘を好演していたと思う。

染五郎の三吉、なんか全然目立たなかった。宗五郎が酒を飲むのを本気で止める気ないんじゃないのこの人?って感じ。

 

 

…磯部屋敷で、宗五郎といっしょにだいぶ寝ちゃいましたので、部分的に記憶が飛んでいることを付け加えさせていただきます。

 

 

 

お祭り

 

三箇所大事なところで團十郎にからむ左十次郎が個人的に最大の見せ場。助六の肩貸し男はなんだかかっこよくなくて老けたように思ったんだけど、この若い衆は、目覚しくかっこいい。

唯一の不満は、とんぼを返らないこと。昨年の何月だったかに見たとんぼが最後のさとぴーとんぼだったのだろうか。
これで一度でもとんぼ返っていてくれれば再見決定!だったのに。超残念。

雀右衛門の雪姫とさとぴーのとんぼ、どっちも見たいよぉ。見たいよぉ。
どっちかひとつだけならさとぴーのとんぼだけど。

 

…主役についても少しは書かなければ。

少し痩せたのか、すっきりイナセな鳶頭でした。
踊りについてはどうこういってもしょうがない。
おかめひょっとこの面をつけて踊るところが新鮮でした。

そうそう、お祭り前で帰る客多すぎますよ。

短縮バージョンで15分で終わるんだし。せっかく團十郎がめでたく打ち出してくれるんだから最後まで見ようよ。

…そういうあたしも、左十次郎が出てくることを知らなかった開幕前は

「どうして15分だけの踊りを最後にくっつけるんだよ、しかも團十郎かよ

と思っていたことをここに懺悔いたします。

 

 

余談1舞台写真が出ていました。

 

福ちゃんの揚巻の世にも美しいプロフィール(冒頭の画像)と、さとぴーとの2ショットの二枚購入しました。福ちゃんの舞台写真を単品で買ったのは初めてです。
お祭りでの團十郎さとぴー2ショットを買おうか買うまいか、激しく悩んでいます。

 

余談2

 

体調不良につき、食事抜きでヒマだったので、幕間、久々に三階西ロビーの思い出の歌舞伎役者たちのコーナーを見ました。

ここって、かなりの大幹部じゃないとかからないんだな、ということを改めて確認。まさか源左衛門さんがいるとは思わなかったけど、松助さんも(坂東)吉弥さんも、いわゆる脇の役者は全部カットなのね。
現在のスペースのままだとあと二人しかスペースないし、余計狭き門になってるのかもしれないが。

 

だって、あの人とあの人あたりは、歌舞伎座建て替え前に来ちゃうかもしれないもんねぇ場所明けとかないと。

 

…ってな不謹慎なことも考えたのですが、いちばん思ったことは、あたしが好きな役者の大部分は、ここには載らずに、客の心の中にだけ残っていくんだな、ということ。
勘太郎と福助以外は載りそうもないもんなあ。

 

まあ、あたしゃどっちにしても亀鶴や段治郎より早く死ぬ(はずだ)から関係ないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ここに幸ありっていうより

2008-01-16 | cinema

映画を見る前にけっこう時間が空いてしまったのでひさびさに写真美術館へ。三つの展示のうち、コレを見ました。これがけっこう当たり。

 

「文学」というより「文字」と遊ぶって言う感じで、とくに面白かったのが、現役作家がオンタイムで執筆中(もちろんまったくのリアルタイムってわけには行かないんだけど)のタイピングが視覚で分かるっていうもの。

作家の思考時間が長くなるほど文字が大きく表示されるし、書きかけた言葉が削除されたり、途中に挿入されたりする、執筆作業の過程がリアルな感覚として味わえる。

ほかにも手をかざしたり振ったりすると詩の言葉が手のひらからこぼれるように見えたり、文学なんて構えることなくブンガクと遊べる仕掛けがいろいろ。

映画の開始時間がもう少し後でもよかった、と思うくらい楽しかったです。

 

で、肝心の映画。

 

ここに幸ありという邦題も、秋の庭園という原題直訳も、ちょっと日本語としては違うかな。最初に書いたように「いい加減の人生」(いい加減は良い加減というポジティブな意味でね)っていうか、「ノンシャランバンザイ」というか。

大筋は大臣を罷免された中年男が、幼馴染や町の女などとの出会いを重ねながら、名誉や富じゃない、人生の楽しさを知っていく。。。

みたいな話なんだけど、こういうあらすじを書いちゃうことが無意味なほど、実にいい加減で、かといって、そこここにもう無数の寓意・風刺・メタファー・意図的な演出がちりばめられていて、百人の人が見たら百通りのレベルでの受け取り方があるんじゃなかろか、(そして監督はそれを見てほくそ笑むって寸法か)とかんぐりたくなるほど、ある意味奥の深い話でした。

 

映画を見終わってから公式hpの監督インタビューを読んだんだけど、まさに一筋縄でいかなそうな監督ですな。直接に逢って

「あんた、あの映画の寓意やメタファー教えてよ」っていっても

「そんなのなんにもないよ。素直にそのまま見ればいいんだよ」って言われちゃいそう。

 

頭でっかちのあたしとしては、もうあちこちに「ああこれは何の意味なんだ!あの場面とこの場面はどうつながってるんだ!」と頭を抱えたくなるpointが多すぎて、素直に楽しめなかったというのが正直なところです。

 

百歩譲って何も考えずにストーリーを楽しむとしても、あんないい加減(こっちは悪い意味)な男にはどうしても感情的に共感することができないし、日本の団塊世代(まさに主役とその幼馴染たちはその世代っぽい)のまじめに生きてきたおっさんには絶対真似のできない「秋」の時代のすごし方だとも思う。

絶望的なまでにフランス的な映画なのですよ。

グルジア人ながら長年フランス在住というこの監督が、フランスとフランス的生きかたを愛してやまないことだけはしっかり感じ取れました。

 

これもhpで知ったのだが、監督含めてほとんど全員の出演者が素人(というより監督の友達)らしい。で、たった一人ともいえる有名俳優のミシェルピッコリが主人公の母親役ってどーよ。

 

あたしが現役編集者のころだったら、この監督をインタビューして問い詰めて(というかとっちめて)やったのに!!!

 

結局「あんた考えすぎだよ」って言われそうだけど。

 

 

畜生。

 

 

 

 


適度に豪華なおせち詰め合わせ

2008-01-15 | kabuki a Tokio

おせち料理、と書いたのは褒め言葉でもあり、ちょっとだけ貶してもいます。

 

 

めでたくって、綺麗だけど、グルメは文句つけるかもね、って感じ。

栄養価とか、味の良さを追及するとかなり物足りない。

 

 

おせちがそうであるように、この狂言も初春を寿いで

ああ楽しかった!めでたかった!と思って満足できる方にはまさにお薦めという感じ。
やれ、話の筋が通らないとか、二役三役の役者が分かりにくい、とか難しいことを言い出すと、それこそ穴だらけの芝居。

 

 

どちらかというとあたしはいつもは後者の重箱隅ツツキーノタイプなんだが、なぜかこの芝居はあまり細かいことを言わずに楽しめた。

 

 

なぜかと考えれば、なんといっても舞台の上の役者たちが楽しそうにやっていたからではないだろうか。

座頭の菊五郎以下、息のあった菊五郎劇団一人ひとりがそれぞれの持ち場で、生き生きとがんばってる。
特に田之助や四人貴族(菊十郎・橘太郎・大蔵・徳松)の重厚な巧妙さから、亀三郎亀寿の歯切れのよさ、亀蔵萬次郎のユーモア(個人的にこの四人・特に萬次郎はもう少しいい役をつけて欲しかったけど)、松也や三人娘(梅枝・菊史郎・菊三呂)の初々しい美しさまで、脇役の層の厚さが全体のレベルを非常に高いものにしていると思った。

 

 

序幕の菊五郎の黒主の大ゼリを何台も使っての迫力ある空中浮遊は、どこぞのラスベガス仕込の鳴り物入りのしょぼい浮遊より何十倍もスペクタクルで楽しかったし、だんまりの所作の揃った美しさも(菊五郎・田之助・時蔵・菊之助・松緑・團蔵)特筆物。

 

御殿の場面で阿古屋を思わせる琴責めがあったり、けだもの屋では二人夕霧をぱろった?かと思われる二人女房を見せたり、あちこちでにやり、としながら劇団お約束の大立ち回り(なぜ四天が犬なのか、分からなかったけど)まであっという間だった。

 

 

そして最後におまけというにはあまりに豪華な「暫」もどき。

松緑扮する善玉孔雀三郎が権五郎ばりに「し~ば~ら~く~~~~」といって花道から現れて、黒主以下悪者をやっつける(首をなで斬りにするシーンなどはない。めでたい正月だからか?)お約束の一場だが、なんともすかっとして、気持ちよく打ち上げられた。

 

松緑、揚幕内からの「し~ば~ら~く」の掛け声こそ、海老蔵の重さには負けていたが、出てきてからの声の張り、台詞の調子、柄の大きさ、すべてすばらしかった。成田屋がちょっと弱ってきた現在、ひょっとしていちばんの権五郎役者になる可能性を秘めているんじゃなかろうか。

装束も荒張りを入れた袖のデザインが当然ながら三升ではなくて、代わりに孔雀の羽になっていたり、孔雀五郎っぽい仕立てになっているのがなんとも楽しかった。
この場面でも四貴族が、顔も芝居も楽しい。

 

 

ほかにも、鳴神を思わせる龍神の仕立ての派手さといい、所作事の長唄に菊五郎や時蔵の名前を読み込んだ趣向といい、おなじみパロディ(小島よしおとどんだけ~・どっちもあ個人的にただいまいちおし中の徳松さんがやってた!)といい、とにかく細かいところまでみんなで楽しんで作ってるなあ、ということが、客席にも伝わってきた。

 

 

そら、細かい不満はいっぱいあるよ。

 

道行きまでしたらぶらぶの深草少将と小野小町が、次の幕でなんの説明もなく険悪になってるのはなぜか、とか、大詰めに、準主役のはず(善玉の首領だよね?)深草の少将が影も形もないのはおかしいだろ、(菊五郎が黒主で出てるから不可能)とか、明礬で浮き出す手紙の細工と、水で流れなかった書き込みの細工は筋が通らないだろ、とか、ぶつ切りで休憩が多すぎて興が削がれるとか。

 

 

まあそんなちっちぇ~ことは♪そんなの関係ねー♪(違う)といいたくなるほど、楽しいお芝居でした。

 

 

あと歌舞伎座昼の部を見れば、お江戸全部制したことになりますが、たぶん今月いちばんのお薦めはここ、国立ではないでしょうか。(歌舞伎座昼かもしれないけどさ)。

大の贔屓が一人も出ていないあたしが言うのですから、間違いなし!

 

 

同じような題材を扱って、スカのような内容に仕上がっている演舞場が満員なのに、こちら国立には空席が目立ったのがまことに惜しい感じでした。

 

こっちのほうが絶対面白いよ!みんな!!!

 

(といいながら国立は一回しか行かないのに演舞場には二回行く言行不一致なあたし・・・)


成人の日?

2008-01-14 | spectacles

成人の日コンサートだよな?と思わずプログラムを見直してしまった。

お決まりの振袖姿はもとより、20歳っぽい客がほとんど見当たらない。どころか、OVERダブルスコアだろ、あんたたち(あたし含む)と突っ込みたくなる客ばかり。

 

別にいいんだけど、成人の日コンサートと銘打つなら、何組か招待するとか、ちょっとは形に拘ってくれてもよかったんじゃなかろうか。

 

まあ形はともかく中味がよければ。

 

肝心の中味ですが。

 

無伴奏フルートパルティータ

 

なるほどここが成人の日か。成人の日は客じゃなくて舞台だったのか。
微妙に成人は超えているけれど超若手、21歳の小山裕機による演奏。
才能のきらめきは感じさせるものの、いかんせん、たった一人(しかもフルート)でサントリーの大ホールを埋め尽くす客に対峙するだけの実力も魅力もまだまだ、という感じ。まあ「成人の日」なんだから暖かく見守ろう。

 

 

藤娘

 

で、ここでまた首をひねる。

なぜ福助

いや、福助好きだし、これがお目当てで来てるんだから文句言う筋合いじゃないんですが。

 


舞台の上が「若手」っていうコンセプトなら、ほかにいたでしょうに。


 

「名演」を見せるっていうんでもほかにいたでしょうに。

 

 

歌舞伎座とダブルブッキングして、とんぼ返りでまで「なぜに福助?」

 

サントリーホールで、大道具なしで踊られた藤娘、悪くはなかったけど、最後まで「なぜに福助?」の疑問は残りました。
特に藤娘の演目なら、本当に若手か、あるいは大御所がよかったなあ。
藤娘を踊るにはいちばん中途半端な年齢のような気がしちゃった、福助。

アプローズに答える姿は、さすが中村屋系の芝居で慣れてるって感じで、なかなかのプリマドンナぶりでしたけど。黒衣姿の芝喜松さんがりりしかったし。


 

今日いちばん印象に残ったことは「洋楽の音響と邦楽の音響は違う」ということ。
サントリーホール、クラシックの音響としては東京でも1.2を争ういい響きだと思うんだが、最初の三味線の音色を聞いたとたん「違う!」と思ってしまった。
響けばいいってもんじゃないんだね、邦楽は。

 

 

 

ドンジョヴァンニへの招待

 

オペラ「ドンジョヴァンニ」のダイジェスト。狂言回しとしてマゼット役にクラシック畑じゃない浦井健治を持ってきたのは、オペラを身近に感じさせるためには効果的だったかも。
演出意図としてはなかなかよかったかと。

 

これで本職のオペラ歌手がもう少しがんばってくれれば相当いい感じの舞台になったのだろうが。
錦織健(ただのミーハー人気じゃないね)木下美穂子(本調子じゃなかったかもしれない、でも風格はさすが)長谷川顕(知らなかったけどよかった!)以外の歌手がちょっとね・・・

特にタイトルロールをやった与那嶺某、顔で選んだでしょう、といいたいほど声が出ていない。どうせ顔で選ぶなら秋川某でもそんなに違わなかったんじゃないの?

 

ラストの六重唱、浦井には一切歌わせてなかったけど、マゼット役なら歌わせてもよかったんじゃないか。クラシックとは発声は違うだろうけれど、歌える人なんだから。
最初から歌わせないつもりなら、ミュージカルの役者を選ばなければよかったようにも思う。

なんか一人だけ歌ってなくて不自然だし気の毒だった。本来のハーモニーとも違ってくるんだろうし、一人欠ければ。

 

 

…ということで舞台の若々しさもいまいち、客席はもちろん、という

「こーらまたなーんのこった」な成人の日コンサートでした。

 

改装なったサントリーホールに久々に入ったのが収穫といえば収穫かな。っていってもどこがどう変わったのかよくわかりませんでしたが。

 


伸び盛りバンザイ!

2008-01-11 | kabuki a Tokio

浅草歌舞伎一二部、見て来ました。

 

とりあえずエントリー。詳しくは多分、明日。

 

1/12追記

一部二部ともに初見よりよくなっている役者が多かった。

一部初見の感想はこちら。二部はこちら

 

一部


吃又

数少ない初見より悪くなってたのがおとくの亀治郎
初見が良すぎた、というか、勘三郎らが観てたので神妙だっただけなのか、悪い癖の、見得のときに力みすぎてしつこいのがちょっと出てきちゃった。
義太夫狂言のしかもおとくが力んじゃったら気持ち悪いよ。
巳之助、声のだしどころを変えてきたのか、低い声になっていたが、今度は若さがなくて、魅力がますます減ってきた。今後どうなるんだろうか。
勘太郎は初見と同様、力演。不満な点も変わらず。もう少しだけ自然に激する芝居と静かな芝居の演じわけが出来ればねぇ。まあ26歳の初役としては上出来ですが。
愛太夫がとてもいい。彼は本当に将来の竹本をになう逸材だと思う。

 


弁天小僧

七之助獅童がかなりよくなった。
七は見顕し後の台詞が、初見のときより格段によくなった。若い男の色気がきちんと感じられるいい弁天だった。
獅童の南郷はまだまだとはいえ、初見で感じた「見ているのも辛い」ような状況は脱した。
このままこの二人が後半に向けて昇り調子になってくれれば、最終的にはけっこう魅力的な芝居が出来上がるかも。


 

二部

 

金閣寺

 

ここでも獅童、かなりいい。
初見のときのただでかい声で威張っているだけの大膳から、ちょっとしたニヒリズムのただよう、ちょっと魅力的な悪に、数日で進化している。
特によかったのが勘太郎。初見でなんだかとってもがっかりした生気のない東吉が、別人のように鮮やかで切れのある武勇と二枚目を兼ね備えた魅力的な人間に代わっていたんだもの。
亀治郎は・・・巧い事はうまいんだけど、苦戦ですな。これがニンにない、ということなのか、と。
でも、大膳が大きく感じられるようになっただけで、この狂言全体が魅力的になった。
がんばれ獅童。

 

お富与三郎

 

愛之助はさらにもっちゃりしちゃった。
初見のときはあまり気にならなかったなまりがそこここに。
無理してこんな役やらせなくても、上方のつっころばしなら上手なのに。
七之助お富は、大人っぽくみせようとするあまり、なんか老けて見えた。
亀鶴の蝙蝠安、もう少し滑稽味が出てくるということないんだけど。松之助の藤八は、主役二人をカバーしようとがんばりすぎなのかちょっと大げさすぎ。
酔っ払いの三津之助がとても巧い。
いずれにしても主役二人が魅力的でないので、脇は充実しているのにどうもいまいちという印象。

こちらは技術云々の問題だけではないので、後半になっても、あまり期待できそうもない。
大膳愛之助、与三郎獅童のほうが、両狂言とも出来がよくなったのでは、と思うが。
ついでにいえば、女形も、お富亀治郎、雪姫七之助のほうがよかったかと。

しつこいようだが前後半でダブルキャストで競演させたほうがより役者も客もテンションがあがると思うんだが。

 

まだまだ不満も残るが、若手、特に獅童と七之助が

初見と再見の間にかなりよくなっていたのは、さすが若手の公演の楽しみ。

特に獅童、本腰を入れてちゃんと歌舞伎を勉強しなおせばかなりいい役者になりそうな片鱗が見えたように思う。

 

 

 

 


 


腐っても歌舞伎座

2008-01-10 | kabuki a Tokio

今年最初の歌舞伎座。

直前の演舞場がナニだっただけに、どうかと思いましたが、いや良かったです!

 

 

鶴寿千歳


 

昼の部頭でもいいんじゃないの?と思われるめでたい踊り。後半の御大二人が朝イチだときつかったんだろうね、とも思います。

前半、松竹梅の三人(歌昇、錦之助、孝太郎)は、まあ無難というか綺麗というか、いい踊りっぷりでした。

後半がやっぱり凄かったです。

動きこそやや鈍くなっている(特に富十郎)けれど、なんというかとにかくめでたい。
芝翫さんは、国宝様のなかで、藤十郎と並んで、ありがたいというよりは「現役感」が優先する役者さんなのですが、今日は富十郎と一緒のせいか、とても「ありがたかった」。それがめでたい踊りとマッチして、見ていてはは~~っとありがたく、、めでたい気持ちにさせていただきました。

 

連獅子

 

あたしの中で、どうしてもデフォルトなのは、中村屋の三人連獅子なので、それと比べてしまうのだが、何しろテンポが遅いのにびっくり。
テンポが遅いことにより、ゆったりした感じは出るのだろうが、それを埋めるだけの味が、高麗屋親子には不足していたような。

間狂言の高麗蔵松江の生真面目すぎるのもなんだかなーだったし。

高麗屋(幸四郎)がそろそろきつくなってきているので親子で今のうちに連獅子をやっておきたかった!という以外に意義を見出せない狂言だった、と思う。

一階最後列で見ていた染五郎の息子に、祖父の意図は伝わっただろうか?

 

助六

 

よかった!

今は酔っ払っていて(夜23時半)具体的に良さを書くのが面倒になったので、明日かあさってきちんと追記で書きます。

とりあえず良かった役者は團十郎、福助、段四郎、梅玉、東蔵、芝翫etc。

 

 

ここから翌日追記。

 

なにより、昨日再確認したのは、この芝居、実によくできているなということ。
あれだけ大ぜいの人間が並んで、一人として邪魔なものはなく、二時間の長丁場、客を退屈させずに引っ張ってしまう。
もちろん助六役者と揚巻役者が魅力的であるにこしたことはないが、ある意味、そこそこの役者なら誰がやっても(それは失礼か?)面白い芝居なのだと思う。

 

…と書いておいてから役者を褒めるのもなんだが、團十郎と福助、どちらもとても魅力的だった。
外見的にはいまや海老蔵にニンを譲ったかのように言われている成田屋の助六、あたしは息子よりずっと素敵だと思う。
なにより、助六の一筋縄ではいなかいすっとこどっこいさがこの役者の味にぴったり。助六、実は曽我五郎のハラが 茫洋とした風貌のなかのときどき鋭い目つきにしっかりと感じられたし、何より他人の頭に下駄をのせたり、うどんをかぶせたりの悪行が、この人がやると嫌味な感じがしないのが凄い。(息子のは悪いけど「いじめ」を思い起こさせた)
花道の出端も、動きのきれはともかく、悠然とした構えで、飽きさせなかったのはさすが。
当代一の助六役者、まだまだ息子には譲って欲しくない。
心配なのは声が枯れ気味だったこと。まだ中日前。労わっていただきたい。

 

 

福助、これがまた素敵に魅力的な揚巻だった。
生舞台では雀右衛門、玉三郎、菊之助で見たことがあるが、個人的にはいちばん好み。雀右衛門の品とも玉三郎の押しも押されもせぬ大花魁ぶりとも菊之助のお人形さんっぽさとも違う、ナマの人間っぽい揚巻。
花魁でありながら、心は助六の妻、満江の嫁という感じ。冒頭の「心の闇」という台詞が実にこの役者の口から出ると、真実味を持って聞こえる。
出の部分の生酔いの芝居、あそこがもうひとつなんとかなれば、もっとすばらしくなると思う。後半に期待。



それ以外の役者ではなんといっても芝翫の満江の貫禄と愛情。特に花道で助六と揚巻を振り返るときの慈愛に満ちた表情は、絶品。
梅玉の白酒売りがこんなにいい味を出すとも思っていなかった。
まじめに演じていてたくまざるユーモア感をかもし出す、という点では音羽屋より中村屋より、好きかも。最近梅玉、いいよなあ。
段四郎のくゎんぺらは手の内に入った役、という感じ。この人で意休も見たい。
東蔵の通人はやりすぎていないのがいい。

 

 

…ということで主要登場人物では意休と白玉が弱かった意外はほぼ満足。
意休(左團次)は、身体は大きいのに役者が大きくみえない。やはりここが助六とタメを張るくらいの存在感を持ってくれないと、芝居が弱くなるよね。仁左衛門や吉右衛門で一度くらい見たい。
白玉(孝太郎)は、いい意味でも悪い意味でも目立たず。揚巻が引き立つからいいともいえるのだが、もうひとつ華やかさが欲しかったような。

 

小さな不満点はほかにもなくはないが、いやあ新春一発目の吃又以来、久々にいい芝居がみられたという満足のほうが大きかった。ありがとう、團十郎&福助(とあたしのさとぴー♪)

 


スカ

2008-01-08 | kabuki a Tokio

演舞場に成田山からご来臨中の不動明王像を拝みに行って来ました。

…で済ませたいほど、見るべきものはほかにない、といっても過言ではない芝居です。

 

見る前にいろいろ予想はしていた。
プラス方向では「かっこいい、スペクタクル、ダイナミック、楽しい」など、
マイナス方向では「くどい、しつこい、うるさい、下手糞(まあこれは予想じゃなくて事実だが)」など。

ある意味すべての予想を裏切ってくれました。

 

退屈。

 

あたしは海老蔵が好きじゃない。でもそれは基礎もできてないのに、へんな工夫をしたり、大げさすぎる芝居で芝居全体を台無しにするから、という理由がほとんどで、裏をかえせば、芝居全体を覆せるほどのダイナミックな存在感、ともいえるわけである。ひとつはまれば大当たりする可能性がある、そういうところが魅力でもあるのだ。

だけど、今日の芝居での海老蔵は、唯一のとりえともいえる存在感すら希薄だったような。
台詞が浮くとか、見得するときなぜいつも唸るのかとか、立ち回りのときばたつくとか、そんな技術的な部分を指摘する気もなくなるほど、なんだか本当に影の薄い、スカみたいな役者に見えたんだよなあ。

 

特につまらなかったのが毛抜。
弾正の愛嬌も世知もなんも感じられない、台詞の語尾が詰まる悪い癖だけが團十郎を彷彿とさせる。
やたら早口で段取りを踏んでいるだけ、としか見えない芝居。
毛抜があそこまでつまらない芝居だと思ったのは初めてのことだった。


成田屋の弾正とは比較するまでもないが、面白さでも魅力でも、数年前浅草でみた男女蔵の弾正にはるか及ばず、あまつさえ、同時に上演された獅童弾正のほうがまだマシだったのでは、と思うほど。


 


海老蔵個人の出来を除いても、五役早変わりを売りにしようとするあまり、芝居の筋がめちゃくちゃで、陰陽師がただの三枚目にしか見えないし、早雲王子(この役あたり、ちゃんと描けばかなり面白いと思うんだけど)が出たり入ったりあわただしくて、歌舞伎初心者には筋を追う事も難しかったのではなかろうか。
やはり、鳴神上人と弾正と不動明王の三役をきっちりやって、ほかの役は適材適所で、というほうが、結果としてずっとまともな舞台になったように思うのだが。

 

 

もちろん、最初から座組が薄いことはわかっているから、それを逆手にとって、海老蔵ワンマンショーにしたてようとしたのだろうが。
肝心要のワンマンショーの主役、海老蔵が生き生きしていない、という最悪の展開。座頭だからちゃんとやらなきゃ、と思いつめた結果芝居が小さくなってしまったのだろうか。それなら逆じゃん。座頭のときは派手にやってくれていいから、他の役者が主役のときにおとなしくしようよ、海老蔵くん。

シンが魅力的じゃないのだから、脇ががんばっているかといえば、そうでもなく、なぜか市蔵、右之助、猿弥、笑三郎といった芸達者が全員つまらないんだわ。

個人的に贔屓の段治郎も含めて、主役にも脇役にも、ほとんどすべての役者から熱気とか新鮮なことをやっているのだ!という意気込みとか、こういう芝居には不可欠なそういう空気が一切感じられなかったのはなぜなんだろう。



 

 

…ご開帳中の不動明王以外にいいところを強いて探すなら、
鳴神の絶間姫、芝雀
絶間姫の物語の場面だけが、ちゃんと歌舞伎を見たという満足感を与えてくれた。

あともうひとつ。京屋とおもだか屋の若手による立ち回り。
菊五郎劇団が国立に行っているのによくがんばったと思う。特に京屋の京純、京由、京珠らは本来女形なのに実にキレのいい動きだった。



で、ようやく立ち回りで盛り上がったと思ったのに最後の最後のイリュージョンのしょぼさできっちり失笑させられるし。

いろんなところで猿之助のアイデアを盗んでいつつ、ちっとも活用できていないどころか、これでは猿之助が泣くだろうと思われる部分もたくさん。
おもだか屋の役者たちは何を思いながら脇を勤めていたのだろうか。

 

 

海老蔵嫌いを自認するあたしですが、海老蔵ファンの人は、今日みたいなスカスカの海老蔵でも、たくさん出てさえいれば満足なんでしょうか。
あたしが海老蔵ファンだったとしても(いや、ファンだったら余計)今日みたいな芝居を見たら怒り狂うと思うんですが。

どうなんでしょう。

 

 


 

 

 

 


 


前夜祭

2008-01-06 | spectacles

なんの前夜祭かって。還暦だそうです。

いや、もちろんあたしじゃなくて、この方。(かなり現況とは差があります)

昨年は阿久悠さんがらみや、年末の交通事故がらみで久々に世間にもクローズアップ?されたせいか、正月コンサート@CCレモンホールは、二階席のてっぺんまで超満員。例年出る得チケや招待券も(少なくともあたしは)見かけませんでした。このプチブームを持って還暦コンサート(なんと東京大阪両ドームで開催するそうな)まで突っ走っていただきたいものです。

 

で、肝心のライブですが。

 

カバー曲が半分近く。それもグループサウンズ時代にライブハウス(違う。当時はジャズ喫茶といった)でやってたようなえーべー系のものばかり。同じカバー曲でもおフランスものを期待して行ったあたしは正直肩透かしでした。

でも、やっぱり歌声はさすが。

でてきたときは、顎のもふもふマフラー(自前)が一回り大きくなったなあ、やっぱりただのデブおやじだなあ、髪位染めてこいよ、白髪交じりで栄養のいいホームレスみたいじゃん、などとすっかり毒舌ばかりの心の中だったのですが、歌い進むにつれ、どんどんかっこよく見えてくるのが本当に不思議。

衣装替えして将校服(サムライのときのセカンド衣装を黒くしたみたいな)+ジョッパーズ+乗馬ブーツになったときには、白髪交じりが、世紀末の退廃貴族の銀髪に見えちゃいましたもの。

 

こんだけ短時間でかっこよくなるなら、24時間365日歌ってろ、といいたくなります。

いや、そんな無理はいいまへん。還暦のおっちゃんやもんねぇ。

 

…というわけでかなり満足度は高かったのですが、
あたしのツボにはまった曲はなかったので、前回ライブツアーみたいに遠征してまで、という気にはなりませんでした。

 

余談

前半、萎えていたときに周囲の客を観察していたのですが、

長身痩躯の中年男性が一人、終始双眼鏡(断じてオペラグラスではない。かなり高倍率のもの)を離さないのが気になって、ついつい見てしまったのですが、この人、なんと2時間ちょっとのライブ中、一度も双眼鏡を離さなかったのですよ!

あたしの席からは斜め前で、その人を見切ってステージ、だったので間違いありません。当然拍手もしない。それどころかご自分の頭をかいたり、そういうことすら一切しなかったような。
ただただ双眼鏡でジュリーウォッチング。
言い方は悪いけど、隣の二階をストーキングしているみたいに見えちゃいました。ちょっと怖かったです。

ジュリーさんもいろんなファンがいて、大変だなあ、とこっそり心の中で思ったものでした。


一所懸命やればいいってもんじゃない@浅草二部

2008-01-05 | kabuki a Tokio

まさにタイトルどおりの感想を二演目通して持ちました。

 

金閣寺

 

浅草7人衆のうちの6人が揃っているんだけど、ほぼ全員が不出来。不出来といっても、みんな不出来の度合い、具合は違うわけですが。

最初にいいところを。

1.浅草とは思えない豪華竹本陣。
東→葵→幹と続く竹本リレーは歌舞伎座レベル。特に12月の喉の不調が直った葵さん、久々にすばらしかった。
2.爪先鼠の後見総元締め、縄担当の京蔵さん。
黒衣ベール(なんていうの?)を通してもばっちり分かる鋭い目はちょっと?だったけど、今まで見た雪姫のどの縄より縄がよかった(なんじゃそら)。雀右衛門のときも京蔵が捌いていたのだろうけれど、姫の動きがいまいちだったからね(動き以外はすべて超一級品でしたよ)。

…くらいかなあ。あはは役者は総崩れ

では、崩れ方を一言ずつ。

亀治郎@雪姫

がんばってる。神妙に、楷書で、きちんと演じてる。
だけど、いかんせん、可憐で哀れに見えないんだよなあ。
亀治郎本人がプログラムで「縄を引きちぎりそうな雪姫」といっているけど、そういう力強さというより、ときどき見せる目の配り、小鼻の動きなど、どうにもタクティックを弄する小ざかしい女に見えちゃうんです。
後述する獅童の大膳が、ダメなので余計、大膳なんかすぐ篭絡してしまいそうで、話が変わっちゃいそうなんだよな。
これは亀治郎の責任というより、いわゆるニンにない役をお勉強してみました、ってことなんでしょう。
「お勉強」だと思えば、神妙にできていたと思います。ただ、ファンじゃないので、お勉強に付き合いたくはなかった、という感じ。

 

獅童@大膳

うーむ。
獅童もがんばってた、とは思う。
世話物よりずっとマシ。きちんと型にはなっていたし、大膳の大きさもある程度は出していた。
ただ、獅童にそこまで望んではいけないのかもしれないが、大膳ってただの悪じゃなくて、ニヒルなインテリジェンスとエロチックな感じが欲しいんだよね。
そういうものは一切感じられず、ただ威張ってるだけ、って感じだったので、雪姫とのバランスがまことに悪かった。
いいところで、刀を取り落とすなど、所作が致命的なのはもう、あきらめてますけど。まあいい加減にしろ、と実はいいたい。

 

勘太郎@東吉

なんでよくないんだろう。
こういう品格と武勇を兼ね備えた役は得意中の得意だと思うんだけど。
で、どこといって特に悪い部分があるわけでもないんだよね。
ただ、所作のひとつひとつにいつもの勘太郎の研ぎ澄まされた美しさが感じられず、
碁笥の見得も、なんだか大きさが足りない。
どこがどう、と取り立てて指摘できないんだけど、覇気がないというか、生気が足りないというか・・・体調不良?と思いたくなる出来だった。
本当にどうしたの、カンタ?

 

亀鶴@慶寿院

台詞は悲しみと気品があって、悪くなかった。
立ち居振る舞いが、どうしたって将軍の母とは見えないけど、これはやらせるほうが無理である。田之助だけが慶寿院に見えた唯一の役者かも、っていうくらいの難役だもんんね。

男女蔵@正清

いちばんニンだったかもしれない。だけど台詞をいってないときにきょろきょろするのはいかがかと。

七之助@元信

これまた無理でしょう。あれだけの出番で格と色気を感じさせるのは。
カトンボみたいだった。

ついでに

いてう@鬼藤太

大抜擢で期待したのだけれど、やっぱりいっぱいいっぱいだったね。
大きい声ではっきり言えました。えらかったですね。以上の何者でもなかった。

年寄りいっぱい@花四天

主役級が若いからバランスを取ったつもりなのか。んなあほな。
今まで見た中で最高齢に近い花四天じゃなかっただろうか。
トンボの重いこと重いこと。
これまた歌舞伎の小屋開けすぎの弊害ですね。

 

ってことで、本当になんというか、みょうちきりんで微妙で、がっかりの金閣寺でした。

 

 

切られ与三

 

…これまた。なんというか。

良かった部分だけ先に書きます。

脇の役者がこの芝居に関しては充実していた。

藤八の松之助
下女の京蔵
茶屋女の千彌(久しぶりじゃないかな?)
針女の小山三(最近若返ってない?)

と安心してみていられる顔ぶれが揃った。

で、肝心のお富与三郎ですが。

七之助@お富はある程度がんばってると思う。
玉三郎に習ったというのがバレバレなほど忠実に口跡まで真似ているのは初役としては当然。
ただ、まあ年齢的にもしょうがないんだろうけど、まったく色気不足。
台詞を言っていないときの体の線や動きが硬くて硬くて。
菊之助のお富が硬いと思ってたけど、比じゃない。

がんばっているといえば愛之助@与三郎もとてもがんばっているのは分かる。
これまた仁左衛門を必死でなぞっている。
ただ、顔も台詞回しも似ているのに決定的に違うのが、仁左衛門は「すっきり」愛之助は「もっちゃり」ってところなんだよね。
で、客としてはもっちゃりした与三郎なんざ、死んでもみたくないわけですよ

硬いお富ともっちゃりした与三郎、最悪でしょう。

 

救いだったのが蝙蝠安を演じた亀鶴

もう少し愛嬌がでればかなりのレベルだと思う。
世をすねたチンピラの風情がとてもよく出ていた。
この人で三人吉三(どれでもいいけど、和尚かな?)とかいいだろうな、と思った。
今月、浅草を一通り見て、7人衆のなかで圧倒的に出来がいいのがこの亀鶴。

四月には浪花花形で濡髪をやるらしい。
見に行くよ!

 

 

ここ数年、歌舞伎座と比べても遜色ないところまで来てたように思った浅草だが、振るメンバーが揃った今年、なんだかつまらなくなってしまったような。

なにがどう悪いのか、一部も含めてあと数回見るので、見ながら考えてみようと思う。

 

とりあえず今日の感想は、タイトル以外の何者でもない。
二部、金取ってみせるレベルのものじゃなかったっす。