laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

きのう、苦しみは遠いことのように思えた・・・

2013-12-27 | spectacles

THE TIGERS2013ファイナル@東京ドーム見てきました。タイトルはシローさんの歌から。泣いちゃったよ。

全体の感想としては、まあ二度目ということもあり前回の「全員いてくれるだけでありがたい」感がない分、一ヶ月もやってた割に巧くなってねーなってのが正直な感想。
アリーナ席だから余計だったのか、場内の残響が酷く感じられ、音楽を聴くという目的はかなぐり捨ててただ思い出に浸る、という感じでしたかなあ。

そんな中やはり新鮮かつ感動的だったのがシローの登場。
前回(二年前?)よりさらに痩せた感じで、声も弱弱しくなっていたけれど、それでも精一杯のユーモアと、部分的に往年と変わらぬ歌声で、どんなになてもエンターテイナーだなあ、と思いました。
歌的には前回の青春の影のほうが好きだけれど、YESTERDAYの歌詞はまるで今のシローのことを歌っているようで、なんだか胸に突き刺さってしまったよ。
そしてびっくりしたことに全歌詞覚えていて一緒に歌えた!
若いころに覚えたものって本当に忘れないもんだなあ。

まだまだ見たいなあという気持ちと、毎年やられたらしらけるなあという気持ちが相半ば、ってのが本音でしょうか。
でも聞きたいけど聞けなかった曲もあるし、ヴァージョン2(マイナー曲を、もっと小さな会場で)なんていうのなら見てみたいかも。

ってことで年末多忙中につき、簡単ですが。

これで年内エンタメ納めだあ。
皆々様もよいお年を!


あっぱれ!?眠れる森のOG

2013-12-20 | kabuki a Tokio

王子またはお爺(師直なのでね)と読んでくださいね。

歌舞伎座昼の部見てきました。

大序
こういう「形」が必要なものは、花形だとやっぱりうっすいなあ。
幸四郎も玉三郎も出てこないからよけいにうすさを感じてしまった。
うん、綺麗だけど「うすっぺらい」のよね。この厚みだけはどうやっても30代40代のひよっこwには無理。
なかでは直義の巳之助が奮闘。まあ身の丈にあった役だからってこともあるんだけど、とにかく凛としていて品格という点では先月の七之助よりよかったなあ。
その七之助も顔世ののほほんとした無自覚な美貌がぴたりとはまっていて、今月は良かったと思う。

三段目
芝居が動き出すと、若手ならではの勢いと熱が説得力を持ってくる、この段、とてもよかったと思う。
…って実は途中で寝ちゃったんだけどさw
寝られたところが大絶賛のポイントでもある。
今まで海老蔵の丸本物で寝られたことなかったんだもんwww
あれだけ台詞があって、気持ち悪くならなかったのは正真正銘初めてなのさ。
大序では目玉ひん剥きすぎて、相変わらずの勘違い芝居で感心しなかったのだけれど、三段目では
ねちねちと塩冶をいたぶる師直が、まあそんなに巧くもないんだけど、腹も立たず、気持ちも悪くならず、すやすや眠れたというこの一点で「あっぱれ!」と言ってしまおう。どんだけ要求レベル低いんだって話ですが。
いや、ここが原点だからね。大切、大切!
菊之助は、そういうわけで寝てしまったのだけれど、起きている間は、梅幸を思わせる典雅な塩冶がさすがでした。
伴内の幸太郎は先月の松之助と比べると実直な感じ?滑稽味は少し足りないような。
lavie的大根ベスト10に確実に入る勘之丞が本蔵。なぜかこの人けっこういい役つくよねぇいつも。謎の厚遇。

四段目
…なんかあっさりしてなかった?
先月の菊五郎のも十分あっさりしてたと思うんだけど、菊之助はもっとあっさりしてたような。
本気で由良之助待ってないみたいな。
勅使役で染五郎が出てくるんだけど、直前の三段目の若狭の扮装とほぼ同じなので、初めて見た客はきっと同一人物と誤解するんじゃ?
あそこで染五郎出さなくても、亀三郎とか権十郎とかにやらせてやればいいのに。と思ってあ、そうか。四段目の由良之助を舞台上で勉強させるための幸四郎のはからいなのね、と納得、やっぱり親が生きてるといいなあ。。。
その幸四郎はさすが。
彼が出てくると舞台が締まるんだよなあ。城明け渡しの花道なんか泣きすぎで、やっぱり好きじゃないと思っちゃったけど、でも巧いことは巧い。
巧いといえば力弥の右近。これ、すっごくよかった!
出てきたときからすでに憂いに満ちた佇まいで、判官と向き合う背中が完全に泣いていて。
力弥で泣かされるとは思ってなかったので、ちょっとびっくりした。
先月今月と鷹之資に感動しすぎて、ひよっこナンバー1は入れ替え戦かなあと思っていたところだったのを見透かされた?wwwかのような右近くんの名演技。うん、やっぱり右近くんも好きですw

道行
おかる勘平がぱっと笠を取ったときの高揚感、絵になる二人。やっぱり二人とも金になる役者だなあ、と深く納得。
踊りとしてはとてつもなく巧い役者か、とてつもなく綺麗な役者がやらないと必ず退屈するタイプの踊りなので、とりああえず後者に該当するからそれだけでOK。
特に海老蔵は、憂いに満ちた若者を丁寧に踊っていて、なかなか。
玉三郎、まあこの人はもう、うろうろしてるだけでいいw
なんつか、別の次元だよね、もう。
ケチをつけだせば限りなくあるんだけど、特に海老蔵と並んでここまで恋人に見えるその存在だけで、まあ価値はあるんじゃないですか。
踊りとして云々というより、ただただ目を休ませるwのに適した一幕でした。
たまにはぼーっと綺麗だなあ・・と思うだけの一幕もあっていいのかも。


 


じいちゃんと孫

2013-12-19 | cinema

清須会議見てきました。

日本映画を定価wで見るって何年ぶりだ?もちろんカメオ出演に近いちょい役の勘ちゃん目当てです。

信長の長男でともに本能寺で討ち死にしちゃって、清須会議の原因ともなった信忠。
あったかくてまっすぐで人望のありそうな、この人生きてれば織田家は安泰だった?と思われるような人物像、だそうですが。
うん。いい感じでした。つけ鼻したら超いい男になるかしらと思ってたらそうでもなかったけどw

で、タイトルにつながる感想だけど。

三法師は信忠の息子だけど、残された人々がいうのはただただ「お館さま(信長)に生き写しじゃ!」なのよね。
父親の信忠は無視かい!
てなことを、ある歌舞伎のお家にだぶらせて思ってしまったのでした。偉大なじいちゃん(父親)持った息子は大変だなあ。まあ信忠は死んじゃったけど、勘ちゃんは生きてて父親超える可能性もあるわけだから、がんばってくださいw

 

勘ちゃんがらみを置いておくと。

まあ普通に面白かったけど。
三谷世界特有の突っ込みどころとか、破綻もなくて。
そこが面白くないといえば面白くない。
あえて、だと思うけどくっだらないギャグも抑え気味で。
旗取り競争なんて、通常運転の三谷だったら抱腹絶倒に仕上げたんだろうけど。

全体としては、信長と秀吉にもっとカリスマ性が欲しかった。
特に信長は出番が少ないからよけいにああこの人の求心力を失ったから織田家はてんやわんやなんだなあ、と納得させるだけの魅力が欲しかったかなあ。篠井さんはいい役者だが、あれだけの出番で魅力を拡散するタイプではない。
唯一のせりふが「で、あるか」ってのは、三谷的には信長をおちょくりたかった?でもそれじゃこの映画成り立たないよなあ。「で、あるか」の反町でよかったんじゃないの、台詞あれだけならキャスティング。あ、ひょっとして断られちゃった?とか思ったよ。
秀吉の大泉洋はとてもよくやっているのだが(姿形は例の肖像画そっくりだし)、やればやるほど、姿形どおりのちっちゃい奴に見えてきてしまうのがねぇ・・・ちっちゃくみえて実は途方もなく大きい奴っていうタイプじゃないと、秀吉がすべてを持っていってしまう歴史的事実に説得力を持たせられない。
それは役所さんの勝家が立派過ぎるってのも一因かも。こちらは見た目とちがって、単純でちっちゃいやつ、ってことなんだろうけど、役所がやると、懐深そうに見えちゃうのよなあ。体臭きつい田舎者、っぽくやってはいたけど、やっぱり根のかっこよさが隠せない。
これ、むしろ佐藤浩市がやったほうがよかったのかも。

よかったのは妻夫木くんの信勝。本人が「地でいけました」という底抜けのばかっぷりで、笑いの少ない芝居の中で一人受けを取ってたかな。

三谷作品だから、戦国時代とはいえ舞台が限られているので、これ、舞台化しても面白いんじゃないかな。
そのときは秀吉に古田新太(三谷って彼を使わないよね?なんで?)じゃ西村雅彦、勝家に中井貴一か香川照之あたり希望。池田恒興にはぜひとも生瀬さんを。
お市は宮沢りえ、ねねは松たか子。松は蒼井優。きゃー見てみたい!

 


♪回って、回って、回って、返る~

2013-12-17 | kabuki a Tokio

リスペクトまどかひろし。

てなことはともかく、国立劇場見てきました。面白かった~。
前々日に行われた若手勉強会(歌昇・米吉・種之助の七段目がメイン)はチケット取ってたのに面倒くさくなってパスしちゃったんですが、見ればよかったかなあ、と思うくらいに、吉右衛門学校の生徒さんたちが頑張ってました。

主税と右衛門七

初めて見る芝居。
なんつーことのない軽い(内容は重いよw)芝居なんですが、主人公二人+一人の年齢が役年齢に限りなく近いことによって出てくるリアルさというか、哀れさは、胸を打つものがあった。これ、隼人と歌昇それぞれの父親がやってたら、台詞は巧かっただろうけど、胸に迫る感動は得られなかっただろうな。
隼人が彼なりにどんどん巧くなってきてるのに感心。父親ゆずりの不器用さと顔に似合わぬw真面目さが芝居から感じられて、このまままっすぐ育って欲しいなあとおばちゃん思ったよ。
米吉は可愛いんだけど、私はやっぱり立役のりりしい顔が好きだ。このまま真女形になっちゃうのかなあ。
米ちゃんの琴とか隼人の鼓とか、鳴物のお稽古も吉右衛門校長先生はうるさそうだなあw
…などと目を細めてみてたら、突如登場の歌六内蔵助にやられた。
無言で庭に立ってる姿のかっこいいこと!若い二人をみつめる苦渋と愛情に満ちた目の温かいこと!
台詞を言えば言ったで、説得力ありすぎで、この人になら命をささげてもいいわ!と思える大きさ!

若いって素晴らしいけど、若くないのも素晴らしいわやっぱりw
幕切れは歌六の引っ込みと同時に幕閉めたほうがよかったなあ。
残された若い二人の思い入れ、これがあの若さでは難しすぎる。ただぼーっと間があいただけで、感動が薄れてしまいました。

 

弥作の鎌腹

これも初めて。って今月の演目全部初見だわ。こんなことも珍しい。
役者からいっても、作品からいっても今月のメインはこれだよね。
分かっちゃいるけれど寝てしまったw
吉右衛門は、もう少し早くこの役やればよかったんじゃないかなあ?
なんかもはや立派過ぎて無理して人のいいお百姓やってる風に見えてしまった。いや、巧いんだけどね。
吉右衛門と橘三郎の二人の芝居のところで爆睡・・・たぶん数十分ほぼ意識がなかったのだけれど、
それにもかかわらず物語を完璧に理解してるつもりになれたのは、つもりになってるだけ?
何か重大なことを見落としてる?
ずっと起きてたらもっと感動できたのだろうか。
しかし、忠臣蔵のサイドストーリーを知れば知るほど、純朴な一市民たちを何人、何十人、いや何百人不幸に陥れてまで忠義を貫くって、昔の武士道も「たいがいやなあ」と思ってしまうのは私がこってこての現代人だからかな。
弥作が死のうとして死に切れず葛藤してる場面で笑い声が湧いてしまうのも、観客がこってこてのドリフ世代だから?あそこで笑う神経は現代人の私にも理解できないぞ。途中寝ててもあそこは笑えないぞ。
むしろもっと若い世代はドリフの洗礼を受けてないから笑わずに素直に弥作の感情に寄り添えるかな?


忠臣蔵踊りパロディ

例によって外題を覚える気がないらしい。なんとか合わせだったねぇ?

コレ、面白かった!
チラシに何十年ぶり復活とか書いてあったけど、もっとやればいいのに。
黙阿弥ってこんなのもできるのね。すごいじゃん。
七段目までのいろんな場面を切り取ってパロディー風舞踊劇にしてる。
大序の師直、若狭、塩冶がぶっかえって三人奴になるところとか、(又五郎親子三人だってのも気が利いてる)、門前のおかる勘平の美しさ(隼人と米吉)とか、五段目の定九郎とじいさんの早替わりとか、六段目の後日談的おかや(東蔵)と三人猟師の話とか、それぞれに面白かったなあ。
七段目の人形振りは、もう少し頑張ってほしかったけどw最後に吉右衛門が不精せずにちゃんと出てきて締めてくれるのもいい。歌六さんでも個人的にはよかったんだけどねw

でもいちばんよかったのは四段目かな。切腹場面じゃなくて、顔世が心配してる場面。ここにだけ登場(もったいない!)の魁春さんがなんともいえず品のある顔世。そして力弥の鷹之資が・・・もうこの人は一人前の歌舞伎役者だねぇ。堂々たる存在感。
ほかの平成御曹司たちよりずっと年下のはずなのに、一線を画す出来上がりっぷり。いや、芸そのものはまだ拙いところもあるんだけど、なんというか、本当にあたりを払う気というか、オーラというか。
そして踊るときの手先から発するビームがwwww
勘九郎以外に誰も出せない、私を癒す「神の手」ビームなのだった。
容姿も、また少し痩せてそこそこ二枚目になってきたし、うん、今後超期待しちゃうぞ。

ところで五代目のいのししの中の人は誰だったんでしょうか?
踊りが巧いんで当然名題さんだろうと思ってたらさいごにトンボ返ったんでびっくりした。
筋書見ようと思って忘れたんでかなり気になってます。
ツイッターで聞いてみようかしらん。フォローしてる人凄い少ないんだけどw

タイトルは
とにかく最初の二演目でまわり舞台使用が多くて、最初は♪回る回るメリーゴーラウンドのメロディーが脳裏をめぐってたのですよ。
そうしたら三つ目は七段返しっぱなし&衣装のぶっ返りやトンボ返りだったんで、急遽脳内メロディーがチェンジしたというわけでした。

弥作の鎌腹の睡眠中の謎&いのししの中の人調べ&完売だった隈取パック購入の三つの心残りを埋めるためにもう一度見にいこうかどうか悩み中。とりあえずそういう気を起こさせる程度に、楽しかった。昨今珍しい!


最強!三人馬鹿

2013-12-13 | kabuki a Tokio

三人笑じゃなくて三人馬鹿。いやわりと褒めてますw

歌舞伎座夜の部見てきました。

先月とほぼ同じなのだけれど、演者によってこうも話の印象が変わるのか、という意味でとても面白かった。

五・六段目

染五郎がはまっている。少なくとも見た目含めてニンという意味では現存ナンバー1じゃなかろうか。
勘平という役、敵討ちにまっすぐ向かっていく武士という性根があるにせよ、表にでた性格としては
女にうつつを抜かし、女に引きずられて、あげく早とちりの勘違い(早野勘平という名前はこれを表しているという説も)で独り相撲で死んでいくという、まあ、「引き」で見れば正直お馬鹿キャラでもあるわけで。
染五郎の勘平はまさにそのお馬鹿な二枚目にぴったり。
彼の持っている不思議なユーモラスな雰囲気が板の上で起こっている悲劇を、悲劇としてではなく、なんとなく「勘違いの喜劇」として楽しませる要素になっていて。
今回三階席だったから余計に俯瞰して全体を見る視点がこちらにも強かったせいかもしれないけれど、
谷底で這い回っている哀れな色男を、傍目八目で見守るサディスティックな観客、という斜めな楽しみ方が出来ました。
今斜めといったけれど、本来六段目ってこうやって色男が堕ちていくのを楽しむのが正しいのかな、などと思ってみたりもする。
こんな見方は勘平が染五郎だったから生まれたわけなので、(菊五郎はおろか、勘三郎でも感じなかったなあ。勘九郎に至ってはもう大悲劇を通り越して大惨劇になってたしw)そういう意味では新しい楽しみ方を教えてくれた染五郎に感謝。
七之助のおかるは悪い意味で目だたなすぎ。この段のおかるは、目立ちすぎてもいけないけれど、これまた名は体をあらわすとおりの「軽さ」をもっと感じたかった。勘平にもっとらぶらぶでいいと思うの。特に勘平が染五郎の場合はらぶらぶおばかカップルのほうが似合う。
おかやの吉弥はとても巧いのだけれどやはり地が若いせいか哀れみが弱い。六段目の影の主役はおかやだと思ってるので、先月の東蔵さんといい、なんだかまだまだ生命力にあふれてる老婆では悲しみが弱いなあ。
ガタイがでかくても竹三郎とか十分哀れだったんだけど。
祇園の女将の萬次郎、音羽屋型とはわかっているけれど、あまりに江戸の下町言葉すぎないか?祇園の水に洗われた女の香りがしない。江戸の下町で井戸さらってるおかみさんだわ、同じおかみでもあれじゃ。

 

七段目

やっぱり玉三郎の七段目は鉄板だと思う。
決して好きじゃない役者、巧くもないと思ってるんだけど、はまる役のときの玉三郎は他の役者には永遠に出せない光(もはや華を通り越してる感じ)を発するのよね。
相手役が仁左衛門でないのもよかった。仁左衛門とだとあまりに似合いすぎて、色気が勝ちすぎて、兄妹でありながらこいつら出来てんじゃねーの、というにおいを撒き散らしすぎて、この段にはふさわしくないと思ってるので。
「どやさ!」と出てくるところでシジワが来なかったのにはびっくりした。玉三郎のああいう出方でジワが来ないのは初めてのような気がする。さすがの玉三郎の容色にも衰えが・・・とそのときは思ったのだけれど。
芝居を始めたらもはやそこは玉三郎ワールド。まあ私がいつもいうところのザ・玉三郎ショーではあるのだけれど、七段目のあそこの場面に関してはそれでいいんじゃないかと思ってる。
海老蔵が拙いながらも控えめに、必死な足軽役を演じているのが、玉三郎をとても引き立てている。少なくとも他人の足を引っ張るレベルからは脱したのかな。こういう役を演じると、團十郎に時々似ていて、なんだかとても懐かしくなった。
馬鹿ゆえに夫を失い苦界に身を沈める女、玉三郎は本当にぴったり似合ってる。(褒めてるってば)。
そして一途に一途に敵討ちだけを思いつめる馬鹿まっしぐらの平右衛門も海老蔵に似合ってる。(褒めてるよ!)

色馬鹿、一途馬鹿、この二人に対する由良之助がクールなインテリっぽい幸四郎ってのもこれまたとてもよく似合っている。この三人の七段目、海老蔵がもう少し成長すればなかなかよいかも。

小山三の健在振り、児太郎の成長ぶりに、ここにいぬ人たちを思ってしまうのは、海老蔵を見るときと同じで、こういう思いはここ数年続くのかなあ。
新しい役者たちの魅力で、こういう喪失感を補っていくことが果たしてできるのだろうか。
そこまで私の歌舞伎愛は細々と続いていくのだろうか。

ここのところ観劇するたびにそういう自問自答をしてしまうのは、仕方のないことなのかなあ。

蛇足

海老蔵が金のネックレスをして舞台に出ているといううわさがネットに流れていて気になって確かめてみた。不自然なまでに襟を詰めて拵えをしていて、しかもはだけないように何かで留めている。動くとそこが引き攣れてかえって気になるのでますます襟元を見てしまったわけですがw
斜めから見るとやはりきらりと光る細いチェーンが見えた。うーん。
何かとても大事なものなのかもしれないけれど、そして不自然な着付けで隠してまでも舞台にして出たい思い入れのあるものなのかもしれないけれど、どうなんだろう?
誰か注意してくる人がいないのかなあ。もしそうならやはり海老蔵の最大の不幸はそこなんだろうなあ。

 

十一f段目

つけたしではあるものの、先月は大盛り上がりだった立ち回りがつまらない。
獅童も松也も運動神経はいいはずなのに・・・どんなに殺陣っぽい振りではあってもやはり歌舞伎の立ち回りは殺陣ではなくて、所作事の延長なのだなあ、と思い知らされる。
ジャンプや動きの派手さではごまかしきれない所作の美しさが二人にはないののよねぇ。
なんだか今月の十一段目は本当に本当の「つけたし」って感じで残念でした。
幕切れのえい!だけは(錦吾さん?)先月よりよかったけど。

 

先月の重い芝居を見た感動ではなく、三馬鹿がんばる!って感じの軽い人間観察をしたようで、それなりに楽しめた夜の部でした。




老虎再来~裏向きの男でいてくれよ

2013-12-03 | spectacles

ザ・タイガース2013ライブに行ってきました。ライブそのものより、帰路の混雑で疲れました。
一箇所しかあけてもらえない出口にだらだらだらだら各方面から出るときには残り少ないマヨネーズチューブの中身になった気がしたし、武道館敷地も工事中で二メートル以下?と思われる工事中の出口に向かって各方向から殺到しているときには、便秘の○便が校門(あえて誤字)に向かっていく気分になりました。○痢になっちゃえ!と思わないでもなかったが、そうしたら事故ですわなwww

肝心のライブですが。いろんなとこにたっくさん目と耳をつぶれば、とても素敵でしたwww

のでお世辞にも素敵じゃなかった↓の顔見世の感想より前に書いちゃいます!

ニ階スタンドの真裏という最悪の環境かと思われたのですが、ぷりぷりのおけつや意外にちょいさびしいジュリーさんの後頭部など、ふだん見られない光景が楽しめました。
かつみも正面のだるだるなお顔と比べて、たまに見せる横顔はフランスの老紳士みたいで素敵だったわ。
演奏に関しては、何がすごいってあのハコで、しかも今や素人同然の五人の爺さんが他人の助けも借りずに、とりあえず二時間演奏しきったってところ。
あちこちで音がずれてたとか、ミスだらけ、とか指摘することはたやすいですが、それでもやりきっちゃう老人、いや老虎のパワーには素直に感動しました。
ラストにまた東京ドームで見る予定なんですが、太郎とかつみは指の体操しておくように!(太郎さんってしょっちゅうライブやってんだよね?どうしてあんなに下手なの?もともと?)

個人的にはかつみの最初のひとこと♪ホリディーの一言が聞けただけで昨日は満足!!!でした。
あの最初の一声だけは本当に往年のままだった。ああ、この声が好きだったのよねぇ・・・とうるっときた。その後ちょっとあれれな部分もありましたが、とにかくあの一声ですべて許せる。それほどのむかしの「トッポの神の声」だったのよ。

そしてタイガースのいちばんの魅力だと思っている「ジュリーのボーカルに負けじと張り切るトッポの不自然なまでにでかい高音のコーラス」も基本昔のままだったw
本来コーラスってあそこまででかくチューニングしないと思うんだけど、バックでもトッポの声だけものすごく目立っている編集(あるいは当時は音量チューニングとかできなかったのかね?まさか?)で、本当に二大美声のツインボーカルで持っていたバンドだったのだ。
かつみの声が出なくなっているという評判を聞いて、あの対立構図wの歌唱は無理なのかしら?と不安だったのだけれど、少なくとも昨日はかつみ、がんばってました。
特に青い鳥君だけに愛をでは本当に昔のままのジュリー蹴散らす高音ぶりが聞けた!
忘れかけた子守歌も♪母は毎日~のところはジュリーじゃなくてかつみの声で聞きたかったので満足!
そうそう、かつみはやたら後ろばかり振り向いて私にwwww手を振っていたなあ。
一人だけちっともあがらないといってたみたいだし、相変わらず虚勢張ってるんだなあwww
虚勢張ってかっこつけて、後ろ向いて・・・うんうん、そういうところが好きだったんだなあ、と結局こっちもあっちも中身はそれほどかわっちゃいない、ということを再確認。
もう一生後ろ向きでいてください。あなたはジュリーになれない、いやならないで生きていくしかないんだよ、と
手を振る白髪の老人にテレパシー送ってしまいました。

選曲は本当に不満だらけ。
外国曲でやって欲しかった傷だらけのアイドル(今のジュリーがやるのみて大笑いしたかった)、ヘイ・ジュテーム(TG時代としてはレアなフランス曲)とか、シングルカットされた中では都会と怒りの鐘を鳴らせ。
傷だらけ~と怒り~は可能性高いと思ってたんだけどなあ・・・

傷だらけ~で笑えなかった分、アンコールのタイガースのテーマ?で大笑いさせてくれたみなさん、ありがとう。特にジュリーさんが腹揺らしながら踊ってるのは本当に本当に楽しかった!

太ったり、髭だったり、はげたり、声でなくなってたり、演奏も下手になってたり。それでもこれが半世紀後のありのままの姿です!
どうぞ好きなように見てください!

という姿が潔くて、うん。最初に言ったとおり技術の巧拙や見た目の美醜なんか、どうでもいいとは言わないけど、それ以上の何かが確かにあったコンサートでしたよ。

最後に真裏だから見られた素敵な光景。
五本のピンライトがそれぞれにまっすぐ当たっている光景。
各人が動くとそれが交差して、まるでそれぞれの人間関係を象徴してるようで、とても綺麗だった。
青い鳥のラスト、五人の足元から照明でまるで本物の鳥が飛び立っていくような美しい効果が見られたこと。

おまけとして、幕間にヒマだったのでアリーナをオペラグラスで見ていたら柄本明と渡辺えり発見。えりさんのお隣の人は黄色いTシャツ着てたので、本物のファンかと思われ。柄本さんの付近には若めのタレント風の人が何人かいたけど、若い子は容姿に特徴が少ないので特定できなかった・・・オペラグラスじゃなくて双眼鏡もって行けばよかったのだ。

正直もう少し近くで見たかったのだけれど、逆に遠かったからこそ見えたものもあったようで、うん、面白かったよ!

 


史上最悪のシノキリ

2013-12-02 | kabuki en dehors de Tokio

過激なタイトル付けてしまったので検索除けのカタカナだあw
途中まではなかなか楽しかったんですがねえ昼の部…
最後の演目で思いっきり罵倒してますんで、某襲名役者さんのファンの方はスルーしてくださいませ。

日招ぎの清盛

顔見世名物、朝イチ我當さんの幕。
段ちゃんが出るから遅刻できないわ!なんせ20分で終わっちゃうから。
…結局この幕がいちばん面白かったかもwww
歌舞伎の様式美にぴったりはまる美形揃いの一幕。
なんてたって段ちゃんと萬ちゃんと亀鶴さんがいっぺんに見られるのだから、個人的にはこれほどお得な幕はめったにない。
京都に住んでたらどうして幕見がないんだ!と怒りそうw
進之介くん亀寿くんも含め、いや座頭の我當さんも美形だし、エミサブさんと壱太郎も美女だし。
ここまで目にやさしい幕も少ないってくらいに。
内容はなんもありゃせんのだが、そこがまた様式美。うん。ここに猿之助とか中車がいなくてよかったw

道行旅路の嫁入

時蔵の戸無瀬、梅枝の小浪。
個人的には芝翫さんと勘ちゃんのをテレビで見て凄く面白かったのと、勘三郎と七之助のを見てるもんで、ん、この踊りは踊りが巧くないとつまらんなあ、という印象。
梅枝くんは踊り巧いねぇ。つかなんでも巧いねぇ。おれって巧いでしょ!の匂いが少し消えてきたので、これは名優になるかも!
少なくとも踊りに関してはおとっつあんを超えた気がする。

ぢいさんばあさん

中車と扇雀が主役なのだけど、個人的にはもう、眼目は段ちゃんと春猿さんのらぶらぶ若夫婦。いやあ段ちゃん綺麗だった!
春猿さんが少し老けてるのが残念なくらい。
隣のおばちゃん二人連れが「誰?ええ顔しとるねぇ。。。」とささやきあってるのが聞こえて、思わず
「つ・き・の・す・け。♪つきのすけ~」と教えたくなったよ。
このふたりのぢいさんばあさんもいつか見たいなあ。
中車はこっちのほうがよかったかな。ただ扇雀も歌舞伎味の薄い役者なので、これまた歌舞伎として成立していたkというとものすごーく微妙。

ニ人椀久

なんだかとっても疲れてしまったので、ぢいさんばあさん終わりで祇園方面へお散歩&お昼ご飯。
孝太郎と愛之助の椀久にはあまり惹かれなかったしね・・・
20分くらい遅れて入ったけれど、結果的に「質」としてはこの幕が一番だったかな。特に孝太郎の松山太夫。はかなげで美しくて(三階から見たから?w)時々雀右衛門に見えたよ←大絶賛。

四の切

そして問題の・・・・

いや、もう技術的には何も申し上げることはございませんのよ。台詞術といい、ケレンの機敏さといい。
ただねぇ・・・もう・・・これ、四の切じゃなくて、四の切を題材にした猿之助ショーでしょ。
前半、佐藤忠信のところは相変わらず貫禄ねーな、と思ってるうちに寝てしまいましたのでw割愛。
出番大幅カットながら、段四郎さんが法眼で復帰してたのはめでたい。

狐になってからが・・・
狐言葉を不自然なまでに歌う歌う・・・伸ばす伸ばす・・・
もちろんおもだか屋のスタイルであることは知っていますが、それがどんどん誇張されていて。
たとえば海老蔵がおもだか屋型でやったときはそれがもう気持ち悪くて気持ち悪くて生理的に不快になったのだけれど。
そういう気持ち悪さは一切ない。そりゃ巧いわけで。
でも、あまりに歌いすぎで、聞いてるうちにまるでオペラのアリアかよ、お前のコンサートかよ、という、不愉快さが生まれてきて。
なんだろう?もう親を思う狐じゃなくて、俺様の技術を見せ付ける役者でしかないのよ、舞台の上のあの方は。
所作も同じ。ここまで細かくやらんでもよかろう、というほどに小刻みな欄干渡り、誇張がすぎて思わず笑ってしまう鼓との踊り。
はいはい、わかりましたお上手ですからとっとと帰って!といいたくなる過剰な感じ。
ああいやだ。ああ不愉快。

下手なものをみせらる不快感より、本来ある芝居の範疇を超えて押し付けがましく技術をご披露されることへの不愉快さのほうがずっといらだつものだ、と初めて分かったわ。
私の一生で最低の四の切は数年前のオモダカ型海老蔵版で不動だと思ってたんだけれど、まさかそれを上回る最悪最凶が、「超絶技巧猿之助」版だったとは・・・・

宙乗り直前、山城屋と秀太郎が素に戻って苦笑してた気がするんだけどw
秀太郎さんなんて本当に素で拵えなおしたりしてたよ・・・しらけるよねあれ見てたら!
注意とかしないのかしら?しても無駄つーか所詮おもだかさんだからねぇ、みたいな感じ?

ああ思い出しても不機嫌になってしまうよ。これは相当なものだ。

ほうほうの体で南座を逃げ出したら、南座の裏口あたりで「ありゃちょっとしつこいよね、やりすぎやない?」というおばちゃんの会話が!
客はバカじゃないんだよ猿之助さん!

おれさまパフォーマンスを押し付けるのは自分ちのファンクラブ公演だけにしたほうがいいんじゃないですか?


難行苦行の…

2013-12-01 | kabuki en dehors de Tokio

南座顔見世夜の部
最初は昼の部との入れ替えの混雑から。
昼の部が15分押して終わり、夜の部の入場待ちの人が歩道、いや車道にまであふれて・・・年末京都の風物詩の南座前の混雑も、「倍返し」状態でした。

夜の部も当然そのまま押して、16時15分開演予定が16時半。終演は22時またいじゃいましたね!これで内容がすばらしければもう少し疲労度も少なかったんだろうけど。もう何やってたかも忘れたくらい、なんだかうっすい感じでした。

ってことで感想もうっすい感じですw

御浜御殿

中車と仁左衛門の組み合わせで見たかったなあ、やっぱり。
誰とでもやさしくあわせてくれる梅玉さんとではいろんな意味で迫力にかけた。
ここんとこ個人的に梅玉さんブームなんだけど、そして夜の部は結果的に三演目出演の大車輪なんだけど、いや、だからかな?なんだか省エネ走法でつまらなかった。
中車の青果ものは何がいいって本人が台詞の意味をちゃんと理解してるっぽいところ。だから技術云々は別にして台詞はちゃんと伝わってくる。
勘ちゃんの助右衛門とかつばと汗が気になって台詞の意味よくわからなくなってたもんなあ。www
ただやはり所作やふとしたときの雰囲気が歌舞伎じゃない。前のときはただの時代劇に見えたけど、今回は新国劇に見えた。その分進歩してるともいえるけど、歌舞伎じゃない点については同じ。うーむ・せめて一度は古典やらせたかった。あ、絶景かな~やったかw

口上

山城屋以外は襲名役者のみの簡素極まりない口上。誰を並べるとか誰が出ないとかごちゃごちゃ幕内事情が透けて見えるよりこのほうが潔い気もする。
後半、山車wに乗って猿翁登場。見るたびに肉が落ちていく。人はこんなに痩せても生きていられるんだというくらいに。そしてとうとう声も辛くなったのか、猿之助が口上を代読。ただそれにあわせて不自由ながら両手を使って挨拶する表現力、存在感、そして眼力はちっとも衰えていない。たぶんこの人は病室のベッドより舞台の上のほうが治療効果があがる人なんだなあと思った。ずっと舞台に乗せとけ、とか思ったりw
最近のお別れ続きのなか、どんな状況になっても生きて、こうやって客の目に自らを晒すことの潔さ、私は好きだ。

黒塚

うーんん。
踊りの巧さは分かるんだけど、前シテは哀れさが足りず、後シテはおどろおどろしさが足りない。全体として岩手の女としてのストーリーが見えてこない。
翌日見た四の切で如実になるのだけれど、襲名興行で回数を重ねているうちに、深いものが出てくるというよりは、自己満足の方向に突き進んじゃってるんじゃないのかなあ?
山伏役で右近が出ているのをみるにつけ、ああこの人の岩手はよかったんだよなあ、と愚痴っぽく思ってしまう。
もう右近の岩手&段ちゃんの阿闍梨は見ることがないのかな・・・

道行新口村

新口村を舞踊にしたもの?初めて見た。孫右衛門も出てこないし、台詞もほぼないので、芝居を知らない人にとっては何がなにやらなんじゃないのかな?
しかも翫雀と藤十郎コンビでは美しさに酔いしれるというわけにもいかない。いや、二人とも美男美女ではあるんだけど、男は二枚目というには明かに太りすぎだし、女は・・太った療法士にリハビリ指導されてる中年美女って感じで。
次男と踊ったときみたいに老人虐待に見えるよりはましか?w
夜は藤十郎さん口上だけでよかったんじゃないですかね?顔見世で一幕持たせないわけにはいかなかったのかな?

児雷也

これまたなんのためにやってるのか分からない一幕。
発端とだんまりだけやられてもそれこそ芝居を知らないひとにとっては(以下略)。
顔見世で集めた東西の役者をとりあえずそれこそ「見せる」ために作ったとしか思えない。
唯一の拾い物が、前代未聞空前絶後(たぶん)だと思われる梅玉と笑也のカラミ。
これがあっさりとした芸風と、美形のコンビでなんだかとってもいい感じだったの。
笑也は今までの誰と絡んでるときより自然で綺麗に見えたわ。梅玉さん、笑也のことお気に入りにならないかしらん?

 

少なくとも後半二つはなにかまとめてもう少し面白い出し物一本にしたほうが客も役者も喜んだんじゃなかろうか。
ここまでつまらない顔見世って久しぶりだなあ、というのが夜の部終わりの感想。
翌日の昼の部、途中までは面白かったけど、最後に怒って帰る羽目になろうとは。。。。。というわけで次↑に続く!