上本町にオープンした新歌舞伎座に行ってきました。
なんばにあった旧・新歌舞伎座(なんたる形容矛盾)は、あたしが大阪に通うようになってからは杉良太郎とか舟木一夫とかしかやってないイメージになってたんですが、以前は猿之助一門の本拠地でもあったそうで(東京の演舞場、名古屋の中日みたいな感じか?)新・新歌舞伎座のコケラ落としは二十一世紀歌舞伎組が相勤めております。
昼夜でABとプログラムjがあるのですが、冒頭の太閤三番叟の一部と、最後の圓j目が違うだけで、口上と連獅子はAB共通。なのでまとめて書いちゃいます。
三番叟
大阪城ヴァージョンで、北政所(笑也)が翁、藤の丸(春猿)が千歳、そしてAプロでは太閤、(段治郎)、Bプロでは淀の方(笑三郎)が三番叟という役割。
目に美しく、めでたければいい、という踊りなんだけど。。。
笑也・・・段治郎・・・
Aプロでは、春猿が踊り名人に見えてしまったよ。
段治郎は後半立ち回りになって、いくらか生き生きとしてたけれど、笑也はなんであんなにからくり人形みたいな動きしかできないんだろう。最低でも20年以上は踊ってるわけで、ここまでうまくならない人も珍しいのではなかろうか。
口上
下手から猿哉、弘太郎、春猿、右近、笑三郎、段治郎、笑也。
あれ?春猿と笑三郎逆だっけ?段ちゃんしか見てないからなあwww
右近が名披露目をしたのが新歌舞伎座だったとか、他愛もない思い出話のなかで、笑也が今後もこの劇場に出続けたいって言ってたのが妙に真に迫っていてどきっとした。大阪の本拠地だったのに、ずっと出してもらってないもんねぇ。
ところで、この日は昼夜口上に出ていた段ちゃんだが、翌日から口上欠席とのうわさ。また膝がダメなのか・・・
「正座ができない歌舞伎役者」はまずいよねぇ。どうしても直らないなら、本気で新派あたりに転進も考えていいのでは、と思っちゃう。来年正月の「日本橋」での健闘をまずは祈る。
連獅子
弘太郎の仔獅子が目覚しいでき。
小さい身体がばねのように弾み、竹のようにしなり、動きも、そして何より身体のなかから出てくる熱気のようなものが、まさに「仔獅子」そのもの。
今まで見たどの仔獅子より、仔獅子っぽさという意味ではすばらしかったと思う。元気なだけでなく、前シテでは能取狂言っぽい折り目正しさも除いていたのが、ただの若手とは一味違ったし。
大阪の観客たちにとっては「弘太郎、WHO?」だったと思うのだが、ラストでは猿哉にも負けない大拍手をもらっていた。
対する猿哉の親獅子、昼夜連獅子ということもあってかいささか省力ヴァージョン。活動量は息子wにまかせた!ってところかな?背丈も程よくそろっていて、安心してみていられた。
間狂言は欽哉と猿四郎。うーむ。
Aプロ 吉野山
師匠の芸だけあって、丁寧に、丁寧に踊っている印象の右近。
悪いわけではないのだが、おとなしすぎてやや魅力にかけるかな。ここらへんデストロイヤー海老蔵と、つき混ぜられるといいんだけど、難しいもんだねぇ。
おもだかの吉野山は忠信が狐だっていうことをすごくはっきりあらわすので、大阪の客には受けてたかな。
笑三郎の静は、本当に安心してみていられる。古風で、品があって、白拍子で義経の思い人っていうことがはっきりわかる位取り。
某立女形や某おしゃべり御曹司よりずっと吉野山の静では、いいと思うんだけど。
藤太の猿三郎。この人は何を見ても安心していられる。
Bプロ 黒塚
最高でした!
途中までは連獅子以外はなんだかなあ。・・・とぶうたれ気味だったんですが、最後の最後に大阪まで来てよかった、と思わせてくれた。
一月の演舞場でかかったときもかなり感心した覚えがあるのだが、右近はさらに磨きをかけてきた、という感じ。
糸取り唄を口ずさみながら過去の悪行を語る部分の悲しみと後悔の表現の繊細さにまず感心。
特にススキが原でさまよいながら、過去の罪を悔いつつ、浄罪の可能性に心浮き立つ表現など、全身から哀れさと、ほんの少しの怪しさがにじみ出て、胸を締め付けられた。右近で泣かされるとは思わなかったよ・・・
後半の鬼に代わってからも、迫力はもちろんのこと、鬼に代わらざるを得なかった老婆の悲しさのほうがむしろ勝った印象で、最後まで「救いたくて救われなかった老女」を感じさせた。個人的にはとても好み。
右近だけじゃなく、脇もそれぞれによかった。
強力猿哉は、こっけいすぎず、まともに演じていてそこはかとなくおかしい。本人の持ち味もあるんだろうけど、すばらしい実力。
脇侍の猿三郎と弘太郎。ふたりとも出ず入らず、しかも芸達者。こういう役者をもっといろんな芝居で生かしてほしいものだ。
そして、ここまでいいところなしの段治郎(誰のために遠征してると思ってんだよ!)。も阿舎利(字違うけど出ない)の高貴さ、大きさなど魅力的に見えた。ああよかった!
今月、まだ秀山祭の昼の部は見てないし、南座はパスしたわけだが、あえて言ってしまえば今月一番は黒塚!!!じゃないかな?
ってことで結果的に終わりよければすべてよし、だったコケラ落とし。
劇場についての感想も簡単に。まあ今後ここに通うことはなさそうなんですが。
複合商業ビルの六階。五階にレストラン街があるので、便利だけれど、六階フロアにレストランはおろか、食事するためのスペース(椅子すら)が一切ないのはちょっとびっくり。
客は弁当を座席で食べるか、30分休憩であわただしく下のレストラン街に下りるか、終演後に食事するかしかない。特に昼の部なんて12時10分から30分の休憩とかいうタイムテーブルでは、レストラン街は混んでいて30分で食事するなんて無理だろうし、休憩時間に客がほとんど席を立たずにもくもくと弁当を食べてる姿って、あまりエレガントとはいえないと思うんだが・・・劇場にとっても、席を立ったついでにグッズ買ってもらったり、というチャンスも減るわけだし。
スペース的に無理だったのかなあ、しかしロビーに椅子がゼロっていう小屋も初めて見たような気がする。
客席そのものはなだらかなスロープで、観劇しやすかった。(一階席)。二階席後方は歌舞伎座みたいな感じで、天井が低く、舞台上部が見切れて、これはあかん!と思いました。二階後方なら、三階席をお勧め。
一階席では、桟敷にあたる左右が、普通の椅子席なんだけれど、グラウンドフロアーとは区切られていて、足元のスペースが広々で出入りもしやすく、左右席のやや後方くらいは、一段高くもなっているし、舞台も見やすくお勧めだと思った。(右11番とか特にお勧め。コーナーにかなり荷物も置けるし)
トイレは十二分にあって、トイレ待ちの行列が少ないのはいい。
上本町って初めて降りた?と思うんだけど、おいしいチョコレートやさんとおいしいお惣菜やさんを発見したので、また行きたいです。近鉄さん、歌舞伎組も呼んであげてね。