laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

二月まとめ

2008-02-27 | agenda

今月のMVP

 

勘太郎

 

該当者なしにしようか迷ったくらい、今月は出来のいい役者が少なかった。
勘太郎はなるべくMVPには選ばないようにしている(ほっておけば毎月選びかねない)のだが、今月ほどほかにいいのが見当たらないときはしょうがない。
高坏、車引、蜘蛛のなんちゃら、すべて絶賛するほどではないが、いい出来でした。

 

次点

同じような感じで、福助。大感動もしてないけど、よかった。

関の扉の押さえた色気は今までにない持ち味。

 

今月のMIP

 

これは圧倒的に鏡獅子の胡蝶コンビ。
とくに松本錦政くん。

今度どんな形であたしらの前に現れてくれるのか、楽しみです。

 

次点

澤村國矢

 

高坏の太郎冠者。すばらしい踊りとユーモアセンスに感服。
また稚魚の会あたりで大役を見たいものです。

 

今月のMDP

 

博多座楽の鳴神を見てしまうと、

愛之助

 

次点

七之助

 

といわざるを得ない。

若手、猛省を望む。

 

今月のいちおし演目

 

うーん。

これこそ「なし」にしようかと思ったけど、

ン十年ぶりの再演、またいつ見られるか分からない珍品、梅玉三津五郎のコンビの絶妙な舞踊、ということで

小野道風青柳硯

これまた、積極的にお薦めというよりは、ほかにないもんねぇ、という感じです、正直に言えば。

 

次点

車引(博多座)

松王丸がいまひとつぴりっとしてたらかなりの出来のよさだったのですが・・・

 

 

本当の、というか隠れいちおし、というかla vieカンゲキ!(古っ)だったのは、
勘太郎ご挨拶節分ヴァージョンお嬢独白
♪月は朧に~

でした。
隠れ次点はもちろん世界遺産ヴァージョン。「勘太郎のご挨拶、まもなくです

 

ご挨拶、毎日全部違うヴァージョンだったんだろうか。
浅草だったら毎日通ったのに(嘘)。


大穴?

2008-02-25 | cinema

数年ぶりにアカデミー賞授賞式を生で見てます。つまらないね。
華やかさもかなり減ってる感じだし、そもそも
アメリカ映画について無知蒙昧だから、作品もほとんど知らないし。

唯一よかった!と思ったのがマリオン・コティヤールの主演女優賞。
LA VIE EN ROSEのピアフ役、たしかメイク賞も取っていたけど、メイクと役者の力量の二人三脚で、小雀ちゃんにしか見えない熱演でした。(感想はこちら

WOWOWの中継スタジオ(八木亜希子とか戸田奈津子とかキクチリンコとかいろいろ)はやたら「意外意外」を繰り返してたけど、そんなにダークホースだったの?

超美人さんなのに、田舎のねーちゃんみたいに垢抜けない感極まったスピーチがまた
好感度アップ。

頭真っ白になっちゃったんだろうけど、作品やエディットピアフについて一言くらい触れてくれればもっとよかった。

まずは、フランス映画好き的にはめでたいめでたい!

 

画像は本日の衣装。

マーメイドをイメージしてるんだろうか?
日本人的には色の抜けたこいのぼりみたいでいかがかと思われますが。
誰のデザインだろう?→追記 J.P.ゴルチエだそうです。

 


ぎりぎり日帰り

2008-02-23 | kabuki en dehors de Tokio

強風のあおりか、他社便、ANA便ともに欠航相次ぐなか、奇跡的に予約していた便が10数分の遅れで飛びました。けっこうゆれたけどね。

同じ便に役者やスタッフ多数。はっきり視認できたのはしどー(スーパーシートね)、さくじゅーろー、かんのじょー(我らがエコノミーね)くらいだけど。

カンタはもちろん、さとぴーと隣席になるなんていうのも夢のまた夢だったわ。

 

…てなことはどうでもいい、のか。

 

じゃ、昼の部のカンタの挨拶の話。

 

「勘太郎のご挨拶、まもなくです」

低いトーンのあの声は・・・知る人ぞ知る、知らない人はだれも知らない(博多座は知らない人率高かったみたい)、『世界遺産、まもなくです』のアレです。
せっかくセクシートーンで始まったのに、出てきたら博多山笠スタイル、というより、「荒れる成人式スタイル」だって紋付羽織袴に赤はちまき、サングラスだよ!

荒れる成人式に見えるところ、まだまだお若いとだけ言っておきましょう。

三階席の立ち見客(朝5時から並んだらしい)に「愛しとーよ!」とこの一ヶ月中州や大名で何回言ったかわからないお言葉を投げられておりました。

あたしは、「勘太郎のご挨拶、まもなくです」と高坏の満面の笑みと蜘蛛の糸の後ずさりが見られただけで、ほかの不満は帳消しにすればいいんだと思います。

 

はい、明らかに芝居の感想を後回しにしてますね。

書きたくないようですね。

 

本当に簡単に、自分用のメモとして書きます(すなわちいつもにもまして、他人がどう思うかは無視してます)ので、気に入らない部分は読み飛ばしてください。

月初めに観た時のわりとまともな?感想はこことか、こことか、こことかからどうぞ。

 

 

千本桜

七之助、お柳はかなり手の内。典侍の局は、力みすぎ。いつからこの人力みすぎる癖がついちゃったんだろう。
獅童は、すっかりダメ。なんなんだろうこのだめっぷりは。前半のしおしおっぷり、後半の大劇画調の、七もびっくりの力みっぷり。
それに引換え、亀鶴・愛之助の気の抜けっぷり。
メリハリじゃなくて穴ぼこだらけの芝居だった。
男女蔵の引っ込みだけが力感あふれていてよかった。おめちゃん、今月見せ場あそこだけだもんねぇ・・・

これが酷い!と思ったらもっと酷いのがあったんだけどさ。

 

高坏

なぜかこの演目は、みんな粒が揃っていて、きちんと自分の場をこなしている。

亀鶴の大名にもう少しおおらかさが欲しいけど、七之助の、今までにはないあっけらかんとした滑稽味など、収穫も多かった。
特筆すべきは、抜擢に応えた國矢。踊りが巧いひとだとは思っていた(団子売を見たことがある)けど、色気のある踊り手さんです。


勘太郎は最後まで父親なみの馥郁とした色気には到達しなかった。でも、26歳の高坏としては十分合格点かと。
ただ、あたしは勘太郎の踊りならほかのものをもっともっと見たいので、これはあと10年は封印してくれていいです。

 

団子売

 

千本桜でも思ったけど、愛之助に覇気がない。
踊りの巧拙じゃなくて、なんとなくお疲れ?
亀治郎は、本当に巧くて臭い。
踊りの名手新旧という意味で、三津五郎勘三郎とついつい比べてしまうのだが、
踊りのタチは、亀が勘三郎でカンタが三津五郎なのよね。カンタは勘三郎の息子なのに。不思議だ。

 

 

車引

 

結局この一幕が博多座で唯一歌舞伎座レベルに達していた演目だと思う。
今月歌舞伎座でも見たが、桜と梅王に関しては、歌舞伎座以上の好演、力演。
勘太郎の数年前の梅王に比べて、格段に声のコントロールが進歩している。喉が弱い人だけに、声のコントロールができるようになったのは力強い。
ほとんどの人(特に獅童)が喉をやられていた中、勘太郎と亀治郎が一応のどの調子を保っていたのはさすが。
脇(いてうや男女蔵)がもうひとがんばりしてくれればねぇ。
松王は、まあ、あんなもんでしょう。

 

鳴神

 

これが、もうびっくりするほど酷かった

ナニをどうやったらここまで凄くなっちまうのか、とあきれかえるほど。
あまりに酷くて、ときどき退場しようかと思っいました。

通路際じゃなかったので我慢しましたけど。

我慢しながらいろいろ考えました。

たぶん今月中に別エントリーで語ります。ので、細かい酷さについては
語るとすれば(語らないかもしれない)そこで。

 

蜘蛛なんちゃら(最後まで正確に書く気がないらしい)

 

これはもう、亀ちゃんショーですから。
そう思えばよく出来ている。
芝居としてはまったく成立してないけど。
亀ちゃんのフンガフンガぶりと脇役の熱の入らなっぷりの対比がおかしい。

鳴神とこの芝居を続けてみて、「歌舞伎と大衆演劇の境目」ということを
つらつら考えました。

 

「歌舞伎と大衆演劇の境目」についてのlavieの繰言、まもなくです
(わかりますね、どのタッチで読めばいいのか?)

 

 

画像は博多座プログラム(表紙かわいい!)の上のアレ。文句言いながら持って帰ったのか自分! 

 

 

2/25こっそり追記。わざわざ別項立てるほどのことでもないので。まじめに論ずるのもなんだかなーだし。

歌舞伎と大衆演劇の境目~博多座の舞台と客席ウォッチング~

 

最初に言っておくが、歌舞伎は十二分に大衆芸能であるし、またそうあるべきだと思っている。
高尚な芸術の部分ももちろんあるだろうが、基本的には誰にでも分かりやすく、ばかばかしいところが好きだ。

ただ、現在言われているところの「大衆演劇」とはやはり一線を画すべきだと思ってもいる。

どちらが上下ということではない。

「THE カブキ」として、世界遺産にも登録され、ある程度とはいえ国家の文化保護政策下にある存在として、そして何よりも一子相伝の名の下に血縁関係を重視、優遇し続ける体制があるところなど、通常の大衆芸能とは明らかに一線を画している部分が歌舞伎にあることは否めない。

そして、そういう御曹司システムや、「世界遺産」というご大層な冠を被っている以上、最低限クリアすべき品とか格とかってあると思うのだ。

 

先月の演舞場鳴神(後半)の海老蔵芝雀に、その品格を踏み外す一歩手前の危うさを感じた。(感想はこちら

今月楽の博多座、まったく同じ鳴神で、はっきり歌舞伎としての枠を大きく踏み越え、悪い意味で大衆演劇に堕してしまったと感じた。

博多座の愛之助七之助による鳴神は、高貴な上人の激烈な怒りをなだめようと計る宮中から使わされた才色兼備の姫、にはまったく見えず、
うらぶれた中年のおっさんを色仕掛けでたらしこもうとする金めあてのキャバ嬢にしか見えなかったのだ。

結果として、ある意味非常にわかりやすい展開で、一部の客には非常に受けていたようだ。

 

「わかりやすい」「客受け」。
これは確かに大衆芸能には必要な部分である。
だが、「それだけ」を目指すのであれば、歌舞伎である必要はない。
色仕掛けの部分はエロチックにやってくれて構わない。
ただ、それはそれぞれの役者のハラがきちんと出来ていて、立っているだけで「高貴な上人」「宮中一の手弱女」に見えることが前提条件ではないだろうか。

博多座の両優は、残念ながら、受けを狙うあまり、役の性根を取り違えてしまっているようにしか見えなかった。

後半あたしの目の前に展開されたのは、松竹歌舞伎ではなくて、松竹新喜劇の舞台だったようにすら思えたのだ。愛之助がマジ、寛美に見えたもの。(七之助は直美には見えなかったけど)。

 

たとえば勘三郎がどんなにおちゃらけた芸を見せても、その下品っぷりの底には、きちんと完成された芸が透けて見える。
勘三郎の芸が好きとはいえないあたしだが、彼の古典歌舞伎は、一度も「歌舞伎」から堕したことはない。(新作という名のお遊びは例外あり)。

 

芸も出来てない花形が、客に煽られて、とんでもない方向に進んじゃってる、
残念ながら博多座楽の鳴神はあたしにはそうとしか見えなかった。

浅草と違って、幹部もめったに観に来ないだろうから、修正もしてもらえないんだろうな。

 

で、実はこれまでこの座組のなかでいちばん「大衆演劇」のにおいを感じていたのは亀治郎なのだが。

予想通り、亀治郎座長(座頭というより座長だわな、どうしても)の蜘蛛の糸なんちゃら、これは明らかに大衆演劇だった。

でも、これはこれでいいような気もする。
元はあるとはいうものの、かなり改ざんがくわえられて「亀治郎の、亀治郎による、亀治郎のための」ほとんど新作になっちゃってるわけだし。

鳴神のように、歌舞伎十八番を大衆演劇に改ざんしちゃったのとは意味が違う。

しかも、亀治郎は意図して「大衆演劇」をやっている(たまに勘三郎が見せるテクニックだね)と思われるのに、愛之助と七之助は、勝手に客に引っ張られて「大衆演劇」になっちゃってるとしか見えないところが根本的に大きく違うのである。

最後に、客に引っ張られる役者が悪いことは大前提の上で一言客にもいいたい。

 

なんでもかんでも拍手すればいいってもんじゃないよ!



 

 

 

 

 


お楽しみきいちご賞

2008-02-21 | cinema

日本アカデミー賞は相変わらず変わったチョイスでしたね。

まあ日テレが主催してるから、制作にからんでる『東京タワー・・・』が賞を独占するのはわかるんだけど、主演男優賞がALWAYS「続」の吉岡秀隆だったのには、吉岡ファンで「続」もちゃんと劇場後悔(わざと)で見ちゃったあたしですらびっくりしたもん。

 

というわけで、「よくできました賞」よりむしろ関心のあるきいちご賞。文春が主催だから、あまり力関係とは関係ないはず。と思いたい。

ベスト(ワースト)10はこちら。

【文春きいちご賞】
1位『蒼き狼 地果て海尽きるまで』
2位『恋空』
3位『ラストラブ』
4位『愛の流刑地』
5位『監督・ばんざい!』
6位『どろろ』
7位『西遊記』
8位『俺は、君のためにこそ死ににいく』
8位『HERO』
10位『インランド・エンパイア』
10位『殯(もがり)の森』

 

ああ、よかった。一個も見てないや

 

HEROと俺は、君のため・・・は近所二本立てで見そうになったので危なかったけど

殯(もがり)の森は、なんとなくそんな気がしてた。。。
監督ばんざい!はそんなにつまらなかったのか。大日本人のほうがつまらないような気がしていた。まあどっちも見ないけどね。

 

前回のきいちご賞への感想はこちら

 

ちなみに映画秘宝のトホホ大賞は邦画対象にしぼってより充実した模様。

こんな感じ。

生涯功労賞の角川春樹に笑いました。

第1回 HIHOはくさい映画賞(今年から新設の邦画専門秘宝版ラジー賞みたいなやつ)
最低作品賞 『どろろ』
 ノミネート 
 『大日本人』
 『ミッドナイト・イーグル』
 『ラストラブ』
 『恋空』


最低監督賞 行定勲(『遠くの空に消えた』『クローズド・ノート』)
 ノミネート
 原田眞人(『伝染歌』『魍魎の匣』)
 塩田明彦(『どろろ』)
 グ・スーヨン(『THE焼肉MOVIE プルコギ』)
 北野武(『監督・ばんざい!』)


最低主演男優賞 田村正和(『ラストラブ』)
 ノミネート
 大沢たかお(『ミッドナイト・イーグル』『Life 天国で君に遭えたら』)
 織田裕二(『椿三十郎』)
 堤真一(『魍魎の匣』『ALWAYS続・三丁目の夕日』)
 松田龍平(『伝染歌』『THE焼肉MOVIE プルコギ』)


最低主演女優賞 竹内結子(『ミッドナイト・イーグル』『クローズド・ノート』『サイドカーに犬』)
 ノミネート
 伊東美咲(『ラストラブ』『Life 天国で君に遭えたら』)
 柴崎コウ(『どろろ』)
 黒木瞳(『怪談』『魍魎の匣』)
 安藤さくら(『風の外側』)


最低助演男優賞 石黒賢(『ミッドナイト・イーグル』『未来予想図』)
 ノミネート
 高橋ジョージ(『恋空』)
 伊勢谷友介(『伝染歌』『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』)
 チャン・チェン(『遠くの空に消えた』)
 津川雅彦(『蒼き狼 地果て海尽きるまで』)


最低助演女優賞 もたいまさこ(『めがね』)
 ノミネート
 木村佳乃(『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』『伝染歌』)
 桃井かおり(『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』)
 長谷川京子(『愛の流刑地』)
 鈴木杏(『監督・ばんざい!』『椿三十郎』)


最低脚本賞 NAKA雅MURA(『どろろ』『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』)
最低編集賞 遊人(『伝染歌』)
最低原作賞 市川拓司(『そのときは彼によろしく』)
特別賞 桜井和寿(『どろろ』『恋空』『ミッドナイト・イーグル』への主題歌提供により)
生涯功労賞 角川春樹(『蒼き狼 地果て海尽きるまで』『椿三十郎』のプロデューサーとして)

 

ついでに映画芸術の日本映画ワースト10も。

ベストや詳細が気になる方は、こちらにどうぞ。

あたしはワーストが好きなんです。

1 大日本人(松本人志監督)
2 俺は、君のためにこそ死ににいく(新城卓監督)
3 監督・ばんざい!(北野武監督)
4 恋空(今井夏木監督)
5 さくらん(蜷川実花監督)
6 オリヲン坐からの招待状(三枝健起監督)
7 スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ(三池崇史監督)
8 遠くの空に消えた(行定勲監督)
8 どろろ DORORO(塩田明彦監督)
10 蒼き狼~地果て海尽きるまで~(澤井信一郎監督)

 

ふむふむ、ワースト選びにもいろいろ個性があるわけですな。

でも、恋空と俺は君のために、とどろろあたりは不動の地位を占めてるっぽい。




 


人形か人か

2008-02-20 | spectacles

義太夫に人形遣いに国宝率高し、の第二部。そのせいかどうか満員御礼でした。

 

二人禿

 

文楽の所作事はいまいちどこがいいのか分からないあたしですが、これはなかなか楽しかった。

子供の設定だからしぐさが愛らしいし、なんだか今月の鏡獅子の胡蝶コンビを見ているようだったのですよ。背の高いほう(勘弥)がしぐさは綺麗なんだけど、ちっこいほう(清三郎)が、ときどきやたらいい動きをするところまで。

今月の梅丸錦政コンビで見たらよけい楽しかったろうな、ってやっぱり文楽の所作事、分かってないあたしでした。

 

中将姫雪責

 

玉也さんの岩根御前が♪どんだけ~~~~残酷な責めをやってくれるのか、楽しみにしすぎたみたいです、あたし。

意外と責め場面はさらっとしていた。

 

こんなこと思うのはあたしだけかもしれないけど、なんだか中将姫ってやな奴だな、と。岩根御前に感情移入しちゃったのは、玉也さんが遣っているというからだけではないと思うんだけど。

「あたしをいじめたいならいじめなさい。だけどお義母様が自ら手を下すのは世間体がよくないですよ」って、そんなこと言われたら、ナニが何でもいじめたくなっちゃうわよね。え?そんなことない?

 

一昨年同じ小劇場で玉三郎主演でやった中将姫物の新作歌舞伎のほうが、(義弟の横恋慕がからんでいて)ストーリー的には分かりやすかったような。

文雀さんの姫は、品格があってよかったし、嶋大夫の語りは絶品だったんですけどね。嶋大夫、相当好きです。
あのお年で娘の語りがしっくりくる可憐な語りができる点では住さん以上だね。義太夫界の雀右衛門さんとでも呼びましょうか。

 

 

壺坂霊験記

 

住大夫の語りに乗せて蓑助さんが縫い物をしてる(微妙に違うわけだが)ところを見られただけでもう感動。

世間的に評判の高い演者だとどっか悪いところを見つけてやろうと思っちゃう性格の悪いあたしですが、この二人にはいつもいつも圧倒されっぱなし。

特に蓑助、出てくるだけでもうそこに女房がいるのよ。

子供のころ、テレビで文楽を見ながら、母親に
「人がうろちょろしていて邪魔じゃん」といったら母親が
「巧い人のを生で見ると、人が気にならなくなるんだから」といっていたのを思い出した。
母が言っていたのは人形の動きがすばらしいと、横の人が目立たなくなる、っていう意味だと思うんだが、蓑助の場合はそれともちょっと違う。

蓑助が邪魔にならないというより、蓑助が人形そのものになっちゃってる感じ。人形の背後霊が蓑助だというか、蓑助の前方霊(ない)が人形だというか。
どんな人形遣いにもありえない、人形と人の二者一体感が彼の人形つかいには感じられるのだ。

そこに渋く、あくまで渋く、抑え気味の住大夫の語りがかぶさると、これはもう凄いとしかいいようがないです。

この二人が共演する、沢市内の段の冒頭数分を聞いただけでも、二部を観覧した甲斐があったと思いました。

 

この演目では、全体に義太夫さんがよかった。入を語った睦大夫も滑稽味がすごくよかったし、山の段、伊達大夫の代役の千歳大夫もよかった。
女房のほうはちょっときつかったけど、沢市の滑稽味と悲しみを両方過不足なく描いていたと思う。

 

この演目は、以前テレビで歌舞伎版(吉右衛門+芝翫)を見て、いずれは勘太郎で見て見たいと思っているんだが。内容は吃又に良く似た夫婦愛+奇跡物なんだから、吃又ばかりかけないで、たまにはこれも歌舞伎で見て見たい。できれば勘太郎と亀治郎日替わり夫婦で。

 

 

 


追善になっとるんかパート2

2008-02-15 | kabuki a Tokio

対面

 

五郎と十郎逆だろう、と配役が発表されたときに思ったのを、見ていて思いだした。
十郎の橋之助は意外とよかった。こういう和事っぽい拵えだと、父親に似てくるね。
五郎の三津五郎、とっても巧いんだけど、八方破れで力が余っちゃってる感じの従来の五郎のイメージとは余りに違って。だからといって、三津五郎ならではの新しい五郎のイメージをあたしに与えてくれるには、魅力が足りなかったような。

全体にマイルドというか小ぶりというか力感が不足というか、物足りないというか、そんな対面だった。工藤の富十郎がそもそも、彼の持ち味であるところの朗々たる台詞の響きがもはや見られない。
女形の芝雀孝太郎も、悪くはないが小ぶりのそしりはまぬかれないし。
なかで健闘していたのが歌昇の小林朝比奈。声の張りと言い、動きの美しさといい、曽我物の人物として一級品。

個人的に痛恨の極みだったのが、八幡三郎が亀寿だと思い込んでいたこと。贔屓の一人、亀三郎だったのに最後まで気づかなかった。釣り目の顔をしていたからか、at a glanceで弟だと思い込んじゃったんだよね。今までそんなに似てると思わなかった兄弟だが、やっぱり血のつながりは争えない。というか、亀サブファン失格じゃん、あたし。

 

口上

 

白鸚丈にはなんの思いいれもないので、ぼーっと聞いてました。

五人ってなんか少ないね。

雀右衛門さんが無事に口上を終えてよかったよかった。

 

 

熊谷陣屋

 

今月いちばん期待していたんだけど。

 

なんか薄かったなあ。

なにがどう薄いのか、ちょっと説明できないんだけど。
前回大感動したときとほぼ同じ座組なのに、どこがどうちがっていたのか。

いちばん感じたのは幸四郎芝翫(やはりこの二人が核だわな)の声の悪さというか張りのなさ。
二人とも風邪をひいているのか?(幸四郎はいつも悪声だけど)と思うほど、耳障りな声で、物語に入り込む前にとても気になってしまった。


追記。翌日(2/16)芝翫さん休演だと。やっぱりどこか悪かったのか・・・
そんな悪い方向で見る目があるのはちっとも嬉しくないぞ。
代役は福助。つい先日やったばかりだから安心だけど。
三日で戻ってこられることを激しく祈ります。

 

あと、幸四郎、泣き過ぎ。 

あんなにずっと泣かれていては、眼目の「十六年は一昔」の台詞と、最後の引っ込みの大芝居までに客のほうが白けてしまう。

藤の方の魁春、今日はなんか化粧ののりが悪いのか、ヒゲ跡が目だって、これもまた白けた原因。

良かったのは義経と四天王。梅玉さんは義経やらせて今の日本に右に出る人はいない。二番目は勘太郎だが。
四天王(亀寿(ここだよ弟は!)・松也・宗之助・錦弥)は美形ぞろいで行儀もよく、ここだけ見てれば目の保養。

前回あんなに感動したほぼ同じ座組でこんなに退屈するなんて。

自分が分からないのか、歌舞伎が不思議なのか。
奥が深いなあ。

 

鏡獅子

 

前シテ。

最初の部分、すごく感心した。

まったく期待していなかったのに、染五郎が女小姓弥生に見えるんだもん。無理やり舞台に引きずり出されてきた戸惑い、品格、ちょっとした体の硬さも、逆に緊張した弥生の心象を表わしているようで。この好調は、音頭の部分まで続くのだが。

…扇を持ってちょっとテンポアップした時点でぐだぐだになっちゃった。
身体を使うことを意識するあまり、動きが女じゃなくなっちゃうんだね。
この後、弥生の動きはまったくダメ。
ただ、牡丹に浮かされ、、蝶にひかれていくあたりの表情はとても豊か。勘三郎にならったのかな。表情がとても似ていて、もともとの顔立ちが綺麗なだけに、染五郎のほうが上品で、顔だけ見てればとてもよかった。二度いいますが動きはダメダメ。

 

ここで胡蝶。
実は梅丸が胡蝶だと聞いてとても楽しみにしていた。
梅丸、全然悪くない。どころかとてもよかった。
可愛いし、きちんと動けてるし、行儀いいし。

ただ、もう一人の胡蝶の印象が強くて、正直ぶっとんじゃった。

立ち読みした筋書きによれば「松本錦政」という子らしいんだが、誰?
「高麗屋!」と大向こうがかかっていたので、ちゃんとした弟子か部屋子なんだろうか。松本流の弟子なだけじゃ高麗屋とはかからないよね?

梅丸よりかなり小柄なので見た目は小学校低学年か?

動きはまだまだ不安定で、もちろん梅丸のほうがずっと綺麗なんだけど。

なんなんだろうこの色っぽさは、という動きをときどき見せるのよこの子が。
ちょっとした首の曲げ方の角度とか、足の開きとか。たぶん本人も意識していないんじゃないかと思うんだが、どきっとさせる瞬間が多々。
まったく知らないが子役時代の玉三郎ってこんなだった?と妄想しちゃう感じ。

きちんと仕込まれたすばらしい動きの梅丸がときどきかすんじゃう。
で、顔は奥目気味の目とちょっととがった口元が染五郎に似て(以下自粛)・・・うーん。気になる。錦政、あんたは誰なんだ。

 

…で後シテも、実は胡蝶をずっと目で追っていたので、獅子はきちんと見ていない。

はは。ははは。

たぶん先月?の連獅子のときよりは安定した毛振りだったような。なんてたって、老獅子がいないぶん安心だわな。

 

本日の大発見、謎の少年、松本錦政

あんたは本当に誰なんだ???

 


桐竹勘十郎、宙乗り相勤め申し候

2008-02-13 | spectacles

フィデル↓を見て、おなかがすいたのでパスタをゆったり食べていたら、遅刻しました。

 

なので、鳥居前、じゃなくて伏見稲荷の段、途中からしか見てませんが。

基本は歌舞伎と同じかな、と思ってみていたら、いきなり藤太が淘汰されちゃった(おやじギャグです。すんません)。ええ、殺しちゃうの?(歌舞伎でも目の玉飛び出したり、十分死んでるっぽいっちゃ死んでるんだけど。あんな殺伐とした殺し方じゃないし。ちゃっかり後でまた出てくるし)。

 

で、道行吉野山。

 

歌舞伎ではたっぷり見せてくれる舞踊なんだけど、なんだかちょっと物足りなかったかな。

淘汰された藤太は当然ながら出てこないし・・・

あたしの大好きな♪星まんまんたりといえども・・・・の台詞は歌舞伎だけのものだったんだね。ということを学習しました。
この段に限っては、圧倒的に歌舞伎のほうが好き。


ほかに学習したことといえば、

♪恋と忠義を・・・の冒頭の節ですが、歌舞伎だと清元がやることがほとんどなんだけど、あたしはずっと清元の某家元が音痴だからあそこが気持ち悪いんだと思い込んでいましたが、義太夫節でも、微妙な節回しなんですね。クラシックで言うところの不協和音寸前というか。
清元の○○太夫さん、すいませんでした。

 

 

そして三部眼目の河連法眼館。

ここはもう、人形遣い勘十郎一人舞台といっても差し支えないですね。

人形と人形遣い同時の早変わり、出たり入ったり、最後は宙乗り。勘十郎さん好きにはたまらないのではないでしょうか。

えっと。

文楽のこの場面を観るのは初めてだったので、佐藤忠信と狐忠信が別の人形遣いだったのが、妙に変な感じでした。

どうして?

というか、よく考えてみれば別のほうが筋は通ってるような気もするし。

逆になんで歌舞伎では必ず同じ役者がやるんだろう?
同じでもいいけど違う役者がやるバージョンがあってもいいような気もする。

 

まあ、それはおいといて。

 

勘十郎さん、今日見て、ああ、この人は歌舞伎でいうなら、勘三郎さんだな、と思いました。

巧いし、華もあるし、文句をつけるところはないんだけど、どっか少しずつ「過剰」。そしてそれが好きな人にとっては堪えられない魅力ある存在なんだろう。

あたしも嫌いじゃないけど、今後ずっと文楽を見続けていくと、ちょっと食傷しそうな予感が今日ちょっとしました。

そうそう、ちょっとやりすぎ?と感じてしまったのにはもう一因。今日初めてなんだけど、左遣いさんがちょっとタイミングずれてる感じがしたんです。
その分主遣いの勘十郎さんが必死になってるように見えて。

文楽ど素人の感想ですんで、読み流してくださいませ。

 

あと、義太夫(咲大夫)がとっても物足りなかった。
義経も静も忠信もみんな一本調子。
勘十郎があんだけ過剰なほどドラマチックに人形を駆使しているのに、語りが一本調子って、はなはだしくアンバランスなような。

 

暴言を承知でいうならば、歌舞伎チョボの葵太夫がやったほうがずっとドラマチックだったと思うよ。
これまたど素人の発言でごめんなさい。ごめんなさい。

 

 

でも本音です。

 

 

大詰め、宙乗りした勘十郎さん、いつも半眼のポーカーフェイスだったのに、幕が閉まる直前、なんだかとってもウレシそうに笑ってました。
高いところお好き?

 


ぜんぶ、フィデルのせい

2008-02-13 | cinema

なに不自由ない生活を送っていた'70の仏蘭西ブルジョア美少女が、両親がコミュニズムに目覚めたことによって、180度違う生活を余儀なくされ、フィデル(カストロ)にいわれなき?反感を燃やすというストーリー。なのかな?

 

 

まあ、いかにも仏蘭西女監督が作りそうな、ちょっと頭でっかち政治色ありの結末だったりするんだけど、そんなことはほっておけば、物凄く魅力的な、不機嫌でインテリなフランス人美少女を堪能できる映画です。

 

 

主役のアンナ(スペイン人貴族との混血という設定だった)を演じるニナ・ケルヴィル。不機嫌な写真しか公開されていなかったせいか、「可愛くない子役」を観にいくつもりだったのだが、どうして、どうして、超美少女、しかも子役というよりはもはや出来上がった美貌です。この人、すくすく育てば相当いい女優になるんじゃなかろうか。撮影当時9歳ということらしいんだが、すでにヒップラインなんてけっこうセクシーよん♪

 

この子が、やたら不機嫌なんだけど、すごく頭のいい役(たぶん本人も頭いいと思う)で、とにかくひとつひとつ頭で理解していきたいタイプなんだよね。
あっという間にコミュニズムに洗脳されてしまう両親のほうがずっとおばかに見えてしまうのはあたしが脳内ウヨクだから?(行動はサヨクだったりするんだが)。

弟役の子役が、こちらは頭じゃなくて感性で環境になじむタイプの役をこれまた好演。



監督がこの映画でナニを伝えたかった、はあたしはあえて無視させていただきました。

 

二人の子役の名演とかわいらしさ、トラッドフレンチファッションを堪能しました。

 

 

この映画の鑑賞態度としてはきっと間違っているのだと思う。

 

いいじゃないか、楽しければ。


かぶくもん

2008-02-10 | passe-temps divers

モーニングで歌舞伎をテーマにしたコミックが連載されているという噂は耳にしていたが、最近コミック誌を読む習慣がとんとなくなっているのと、一気に読みたいほうなので、気になりながら無視していた。

なんせ隔週連載だから、たまるのも遅いのか、いつ単行本がでるのかと思っていたら、昨年末に2巻まとめて出されていたのね。amazonで見つけて、即購入。

 

 

…おもしろいじゃないですか。

 

 

コミックならではの破天荒な設定と、割と緻密に取材してるんだろうな、と思わせる部分が、適度にミックスされていて、歌舞伎の入門書としても、独立したコミック作品としても、充実してると思う。

破天荒な部分、いわゆる三階さんといわれるであろう身分の役者(主人公)が、路上で歌舞伎ストリートパフォーマンスをやっちゃったり、大御曹司にタメ口聞いちゃったり、その主人公は実は生島新五郎の末裔という設定だったり・・・
は文句なく娯楽的に楽しいし、勧進帳や籠釣瓶の舞台が実に入念に書き込まれていたり、作品解説や、業界用語の解説も丁寧だし。

 

歌舞伎ファン的には、主要登場人物三人のうち、主人公を除く二人があの人?いやあっち?をモデルにしてるんじゃ?みたいな覗き見的楽しみもあるし。

 

主人公とライバル的立場になっていきそうな純血御曹司は海老蔵+勘太郎っていう感じ。
高慢にみせて神経質、あちこちで乱暴狼藉を働きつつ、芸には熱心。売れっ子女優とラブロマンスも・・・ってところは海老蔵を思わせる。
芸道精進がすごい割に、いい加減な主人公にいいところを掻っ攫われていくまじめな役者の悲劇性、しかも左ひざはがったがた、ってところは勘太郎っぽい。名前も仲村宗太郎だし、この御曹司。

二巻になって登場する、「綺麗なものしかわたしの舞台にはいらない」と豪語する孤高の女形はまんま玉三郎だし。
主人公は彼に大抜擢されて、籠釣瓶の栄之丞をやることになる(佐野じろざえもんは御曹司宗太郎)のだが、さて・・・というところで二巻は終わっちゃってる。いぢわるな年増名題女形なぞも出てきたりして、どんどんときめきの展開になってきたのに。だから完結してないコミックはいやなんだよう。

すぐ読めちゃうんだもん。


 

大王道のガラスの仮面的な、「まずしい育ちの天才vs正統派二枚目」みたいな設定はちゃんと踏まえつつ、生島の霊が出てきたりする、歌舞伎ならではのお江戸風味も加えたサービス満点の素材展開。まずは出だし好調といったところだが。

 

 

これ、モーニングではどういう人気なんだろう。歌舞伎ファンがたくさん読んでいるとはとても思えない雑誌なので、ちょっと気になる。
コミックって面白いと思っていても人気投票でちょっと下がるとすぐ打ち切り。
広げるだけ広げておいた展開がいきなり尻すぼみっていうのが少なくないからね・・・

 

モーニング誌の読者と編集者に期待しつつ、3巻以降の発売を手ぐすね引いて待つことにいたしましょう。

 

 

画像は二巻の帯より。左から女形の大スター、天才肌の駆け出し役者、梨園のプリンス


冥土の飛脚

2008-02-08 | spectacles

国立劇場でかかる文楽をほぼ欠かさず観るようになって一年?二年?

歌舞伎みたいにお勉強もしないまま、相変わらずど素人レベルで楽しんでます。

 

今日の冥土の飛脚が、封印切や新口村のもともとの原作だということは知っていたけど、ここまで設定が違ってるとは知らなかった。

八右衛門さん、いい人じゃないですか。
友のためを思ってかばいもすれば苦言も呈す。
原作をすべて読めば深い事情もあるのかもしれないが、今日見た部分だけではどう考えても、忠兵衛が女にはまって勝手に金を使い込み、友の忠告も聞かずに一人で傷口を広げて、自分で自分を追い込んだようにしか見えない。

自己保身のためにした働きのねーちゃん口説いたりしちゃうし。ったくもう。

 

 

というわけでこの作品での忠兵衛にはまったく感情移入できないんだけど、梅川には物凄く移入できた。

彼女は死にたかったんだろうな。安女郎の毎日もうんざり、田舎のお大尽に請け出されるのもいや。
都会の優男、忠兵衛は、一緒に死ぬ相手として、女心を満足させるのにちょうどよかったんじゃなかろうか。

 

ふらふらしてるダメ男を、死にたがってる女が道連れにするって、なんか太宰治と山崎富栄の心中を思い出しちゃった。

でも史実では、忠兵衛だけが死んで、梅川は生き残っちゃったらしいから、なかなか思うようにいかないもんだね。

 

 

封印切一人で語った綱太夫、渋いけど声が弱ってる?
禿の語りにはちょっと無理があったような。
禿の三味線弾き、本当の三味線の手とぴったり合ってるのが当たり前だけど凄い。
人形遣いさん(玉誉)は語る三味線の手をちゃんと覚えてるんだよね。
1綱大夫の息子の清二郎の三味線がなかなかよかった。

 

梅川が朋輩に自分の身を嘆いてる場面で、別の間で一人手持ち無沙汰にしている茶屋の女将の人形が、煙管を吸ったり、火鉢の火をおこしたり、本を読んで泣いたりしてるのが妙に面白くて、リアルで楽しかった。人形遣いも巧かった。清五郎さん。今後要チェック。



肝心の玉女紋寿の主役の人形遣い、どうも固いような気がしていまいちだったけど、最後の最後の道行きで泣かせてくれた。
紋寿さん、梅川のあの腰はないよ。反則だよ。いろえろっぽすぎ。死を前に、エロスが輝く、っていう瞬間を人形浄瑠璃で見せてもらえるとは思わなかった。

 

やっぱり文楽凄いわ。

 

2/9追記

 

道行で美声を聞かせてくれている新大夫さん、咲甫さんと並んで若手のなかでは超有望だと思うんですが。

やばいことになってるみたい・・・

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080201/crm0802011459034-n1.htm

 

悪いことは悪い、と認めた上で、なんとか除名とかそこまでの処分はしないでやって欲しい。ただでさえ若手のいい大夫が少ないんだから。

除名、じゃなくて助命嘆願運動があれば署名したいです!!!

しかし、ちょっと封印切みたいな話やなあ。封印切の場を語らせれば面白かったのに←超無責任。


追善になってるのか?昼の部

2008-02-07 | kabuki a Tokio

白鸚(先代幸四郎)の舞台は生で見たことがないので、どんな役者だったのかほとんど知りません。当たり役が熊谷とか大石とかいうんだから、ででででっかい系の役者さんだったんでしょう。

当代幸四郎はちょっとタイプが違うのかも。当代の息子はもっとタイプが違うように思う。だけど追善ということで、先代の当たり役をやらなきゃいけないわけで。大変ですな。

で、追善興行の昼の部で、いちばん面白かったのは、いちばん追善と関係がなさそうな(一応先代がやって以来、60年ぶり?の上演らしいけど)


小野道風青柳硯 でしたとさ。 

 

なんてことない舞踊劇に、いきなり相撲の手がからむ。
この破天荒さと、小野道風とカエルの名場面でのカエルの仕掛けがなんとも歌舞伎っぽくて楽しかった。
カンタが雨乞狐で道風をやったときのカエルはずっと差し金つきだったけど、今回のカエルは差し金から独立wして、ぴょんぴょんやってるように見えた。むーん。メカニック。

ルックスからしてもう道風さんそのものの梅玉さんはもちろん、相撲取り役?の三津五郎さんがもうカッコ悪いい。あげく、最後には三津五郎の角力六法(んな言葉はないだろうが)まで見られて、楽しかった!また60年も見られないのは惜しいなあ。だれかやってよ。

 

車引

 

今月すでに三度も見てしまった勘太郎・亀治郎・獅童ヴァージョンが脳内デフォルトになっちゃってるのでどうしてもそれと比べてしまう。その上、歌舞伎座だし、年長者ばかりだし、っていうことでどうしても辛口になってしまうのだとは思うが。

正直、迫力も芝居としての面白さも、型の綺麗さすらも、博多座のほうが上だった。
特に梅王松緑と松王橋之助。にらみ合うところといい、それぞれの見得といい、あんたら本気でやっとんかいと言いたくなるほどだった。
松緑は特に悪いというほどでもないが、何しろ、限界まで腰を割り、隅々まで神経の行き届いた勘太郎の梅王を見た直後なので、分が悪すぎ。幕切れも腰高のままだったし。長老ならともかく若いんだから、腰割ろうよ。
橋之助は声もかれてたし、すり足でずるずるなってるし、ひょっとすると具合でも悪いのかも。
三人の中では桜丸の錦之助が割とよかった。亀治郎ほど型が綺麗に決まるわけではないが、なんというか悲劇性をいちばん感じさせてくれた桜丸だった。ああ、この人本当におやじ様の賀の祝いが済んだら自殺するな、って感じ。そういう感じを車引きで感じたのはこの人の桜丸が初めて。

三人以外では時平の歌六も迫力不足。どんな役でもこなしちゃう巧者歌六にして、怪しさと大きさは出し切れなかった。若いながら必死にやってる博多座の男女蔵も悪くはなかったし。
杉王丸は種太郎。きっちりこなしていて好感が持てた。こういう型どおりのものは、稽古の数で出来が決まるのかも。この子は本当にいつも「よくお稽古できてますね」って印象だ。もうひとつ個性が出てくれば面白いのだが。

おっと一人忘れてた。金棒引きの亀蔵
こんなていたらくのやつらに混じって申し訳ないほどの朗々たる立派な金棒引き。たしか浅草?では時平もやってたよねこの人。この人だけは文句なく博多座(山左衛門)よりずっとずっとはるかに上。

 

 

関の扉

 

 

 

うーん。けっこう楽しみにしていたのだが。

吉右衛門って本当に、どうしようもないほど、舞踊が下手なんだなあ、と改めて認識させられちゃいましたよ。

白鸚追善っていうことで、メインは七段目と熊谷陣屋で、どっちも吉右衛門は超得意なんだから、二つとも兄に渡さないでどっちかやればよかったのに。いくら他家に出たといっても、彼も息子であることに変わりはないんだから。

関の扉も先代の当たり役であり、かつ、ニンとしては吉右衛門にあるんだろうけれど、どうにも動きのひとつひとつの鈍重さが気になって、しょうがなかった。
特に常盤津のあてぶりなんて酷かったあ・・・

「吉右衛門の関の扉はすばらしい」
といっとけばいい、っていうのが世間の流れらしいですが、あえて反旗を翻してみました。だってアレ、踊れてないよ!

大きくて立派ならいいっていうなら舞踊劇の必要ないじゃん。

 

 

この幕の救いというか、収穫は最近絶好調の福助。
赤姫の小町はともかく、(出来て当たり前)墨染の幽玄な感じが、十分とは言えないまでもかなり出ていたのに驚いた。
この人は、外見は歌右衛門似真女形。だけど中味は父親の芝翫似(普通の男が作りこんでいく女形)ってことで、きっと長年どっちをなぞればいいのか、ふらふらしてたんだと思う。
ここ1年くらい、急に顔の仕方も歌右衛門風に変わったし、本人歌右衛門なぞりの方向にふっ切れたんでしょうね。
どっちにしてもふっきって、進み始めた迷いのない気持ちが彼の芸を確実に進化させていると思う。

本当に素敵にグロテスク(絶賛)な立女形になってきた。
下手糞、とか気持ち悪い、とか散々言いながら、嫌いにならずにいて、よかった。
今後が、ますます楽しみだ。

 

染五郎は・・・綺麗でした。

 

 

 

 

七段目

 

昼の部の眼目。なんだろうけど。

 

よく出来た芝居だからそれなりに楽しめたが、大石が無理なら、せめて平右衛門を吉右衛門で見たかった。
幸四郎の大石、後半は悪くなかったけど、特に前半、すべてをわかって、身をやつしている大きさが見えなかった。底知れぬ大きさじゃなくて、底知れぬ怪しさって感じなんだもん。
染五郎は、巧いから何でもこなしちゃうけど、平右衛門の愚かなまでのまっすぐさ、熱さは、今の彼じゃ無理でしょう。

吉右衛門が平右衛門で付き合ってくれたら、芝雀のおかるももっともっと熱くなれたと思うんだけど。
なんか芝雀も先月に引き続き中途半端だったなあ。

坂内の幸太郎、九太夫の錦吾と、追善だから高麗屋の古い弟子を重用するのも当たり前なんだろうけれどどれもコレもいまいち。

 

 

もうひとつの追善メイン、夜の部の熊谷陣屋に期待します。

芝翫さんも出るしね!

 


生きてたらシアワセ

2008-02-05 | monologue

冒頭から数曲聴いて

あたし、このおっさんのどこが良くてツアー追っかけまでしたんだろう?

と自問自答したくなった。

 

 

で、チャプターサーチで『探偵~悲しきチェイサー』にしたら、イントロでの涙目を見ただけで胸が締め付けられ、絶唱でこっちまで涙、涙。

結局このツアーはこの一曲だけで(あたしにとっては、ね)地方まで追っかける価値があったんだな、と再確認。

 

 

博多座も全体的にはつまらなかったけど、節分の日のカンタの♪月も朧に~

だけですべての不満が消し飛んだし。

 

99の灰がたった1のダイヤモンドで帳消しになるどころか、全部ダイヤモンドかもしれないとさえ思えるんだね。

エンタメライフってやっぱりリアルライフとシンクロしてるかも。

 

人生の最後に、たった一つのダイヤモンドと出合って「生きててシアワセだった」といえるといいなあ。


節分スペシャル昼の部とカブキ野郎どもの夕べ

2008-02-04 | kabuki en dehors de Tokio

初日から三日連続観劇というのは、kabukimanieを自認するあたしdも、めったにないことである。

もう持久戦というか、耐久レースというか。

二日目でパスしちゃった朝イチのもちゃんと見ましたよ。

二日目から昼の部開始前のご挨拶が開始され、昼の部は(朝イチに出番のない)勘太郎がぜ~~~~んぶ挨拶を仕切るというのを聞いたからってのもあるが。

おかげで、朝イチ前にすっごくいいものを聞かせてもらいました。

挨拶節分スペシャル。
三人吉三から、お嬢の有名な台詞を朗々と謳いあげてくれたんですよ!

 月も朧に白魚の 篝も霞む春の空
 つめてぇ風もほろ酔いに 心持ちよくうかうかと
   浮かれ烏のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で
棹の雫か濡れ手で粟 思いがけなく手に入る百両

ほんに今夜は節分か

西の海より川のなか 落ちた夜鷹は厄落とし
豆沢山で一文の 銭と違って金包み

こいつぁ春から縁起がいいわぇ

春から縁起がいいのはあたしだわ!ふふふ。
しかも、ご挨拶の中ってことで、女形の声じゃなくて地声で、というスペサル感ますます!の珍品。今後何十回カンタがお嬢をやったとしても紋付羽織袴で地声っていうのはたぶん二度と見られないのでは。

今回の博多座、芝居の内容は残念ながら感動的とまでは行ってないのですが、この一瞬だけで、数万円は惜しくないとすら思いました。

そうそう、自分たちのことを役者「ども」っていうのも凄く好き。イマドキの若い役者はだれも「ども」なんていわないよね。古色蒼然としていて、隅々まで歌舞伎してるカンタがやっぱり好きだ。

 

で、昼の部。

 

渡海屋・大物浦

 

初日よりはだいぶよくなっていた。
七之助は、がらりと変わって力みのないいいお柳になっていた。典侍の局にモドッテからは、大きさを出そうとするあまりか、まだ力みがちょっとあったけど。少なくとも二年前の浅草で感動した程度のレベルには戻っていたような。
獅童は、きっと、二年前の浅草は期待値が相当低かったので、必要以上によかった!と思ったのかも。今回、獅童の知盛はいいのよね、と思ってみちゃたら、まあ粗が目立つこと・・・・
「生き変わり死に変わり・・」の台詞でぞっとさせる声質と顔はなかなかすばらしいんだけどね。最後の碇のシーンで、やたら唸り声を上げすぎて、あれじゃ知盛「卿」じゃなくて、ガテン系のお仕事中だわよ。
亀治郎が相当良くなっていた。初日は自分に酔っている感じだったのが、三日目はちゃんと安徳帝にも知盛にも思いやりのあるいい義経になっていた。もちろん勘太郎がやったほうがこの役はいいに決まっているんだが。
愛之助亀鶴についても逆がいいに決まっている。特に愛之助は滑稽味を出すのが下手だね。
そうそう、安徳帝の子役。この芝居の成否のかなりの部分を握っているのが実はこの子だと思うんだが、ダブルキャストの一人しか観てないけど、この子に関してははなはだ物足りない。天皇なのだから、せめてじっとしていることくらい出来てほしい。子供とはいえ、プロなんだろうから。

 

高坏

 

ここからはもう三回目の観劇なのでごく簡単に。

三日目にしてまだまだ必死の勘太郎。余裕が感じられないのは当たり前なんだけど、もう少しふんわりとのどかな感じが出ればなあ・・・
タップ云々のところじゃなくて、♪花がちらちら・・駒が勇めば・・♪のあたりの色気とおおらかな雰囲気が。あたし、勘太郎には相当要求水準高いので。

 

団子売

 

何回見ても笑っちゃう亀治郎の腰つき。
お団子売のおばさんにしたら色っぽすぎじゃないでしょうか?ふふふ。

 

そして、お芝居終わりにも節分スペシャルが。

赤鬼青鬼(松之助さんと、富彦さんかなあ?自信ない)が花道からやってきて、

そのあと、7人衆が升持って出てきて、ご挨拶→豆まき。

若い衆、いろいろ工夫して大サービスしてるだけあって、土日は満員。日曜日は補助席まで出てました。

 

そして、連中は櫛田神社で豆まき→川端商店街でお練→博多座前でご挨拶、というスケジュールをこなし、なんと6時半からKABUKI NIGHTなるイベントまでやるというハードな一日です。

ところどころパスしながら全部付き合ったあたしも相当ハードだったけど。

 

 

KABUKI NIGHTというのは博多座二月恒例?のイベントらしく、まあなんてことなない、アイドルトークショーのようなものです。喜んでる人が多かったからいいんでしょうけど。あたしゃきゃつらの「今はまってること」とか「死ぬ前に食べたいもの」なんてちっとも知りたくないもんで・・・

2500円という料金と、旅先でほかにすることもないという状況でなければ参加はしなかったでしょうが、唯一、亀鶴くんの超ラブリーなおかましゃべり(もちろん芝居)と、まじめくさって「誰にでも妖精がついてるんですよ」と言い張るこれまたラブリーっぷり(おそらく芝居)を見られたのが楽しかった!
亀鶴「くん」なんて言ってましたが、なんと今年年男なんですね。31.2かと思ってたらけっこうおっさんやん。

ってあたし、好き好き言っておきながら年齢もしらんかったんかい!

 

KABUKI NIGHTというタイトルなのに歌舞伎の話は本当に少ししかなかったし、NIGHTでもなかった(8時には終わってたからね)んで、これって来年からカブキナイトのタイトルはそのままでも、KABUKI KNIGHTSにしたらいいんじゃないかと思っちゃいましたよ。そうすればタイトルに一応偽りなしってことになりますよ、博多座さん。

 


節分の日

2008-02-03 | voyage

博多座公演は昼の部のみ。

午後、七人衆は櫛田神社の豆まき、川端商店街のお練、そして博多座でのご挨拶と大忙しです。

夜まで暇だったので生まれてはじめて追っかけ?らしきものをしてみました。

 

三回目の昼の部の感想は、帰京後まとめる予定。
そうそう、舞台にも、節分らしきとってもスペシャルなサービスが最初と最後についてました。ふふふ。ふふ。

だけどあたし、ちゃんと東京に帰れるんでしょうか。羽田の積雪が気になる・・・

 

豆まき後のお練風景をちょっとばかし。

まだ来ない、まだ来ないと待っている博多の衆。まだまだ平静です。

そろそろ行列の先頭が見えそうになってくると、だんだん熱い戦いが・・・

そして、戦いにまけた東京モノが撮った画像がこれ。→

あれ、このぴんと伸びた背筋は・・・・(本当はもう少しちゃんと撮れたのもあったけど、いろいろ問題ありそうなんで)。

豆まき会場、挨拶会場、お練の一番人気はさすが獅童くん。というか、獅童くんしか知らない人が多かった・・・

二番人気が意外なことに?勘太郎。

つづいて七之助、亀治郎。亀治郎は、「信玄の人よ。名前は知らん」が代表的な意見でした。勘太郎は「新撰組」といわれるより「勘九郎(三郎じゃないのよ)の息子たい」といわれておりました。

まあ、そんなもんやろたい。←変な博多弁が身につきつつあります。

 

では皆様、明日あたしが東京から更新できることを祈っていてくださいませ。

 

 

 

 

 


おさぼり?

2008-02-02 | kabuki en dehors de Tokio

あまりに退屈だったアサイチ碇知盛をパスして、太宰府に行ってきました。

梅はちらほらだったけど、ひととき気持ちいいお散歩ができましたよ。

 

で、高坏から。

二回見て感じた事。

この狂言はそんなに面白くない。

パパで一度見たときもそう思ったけど、六代目がタップを取り入れたのが新しかっただけで、それ以外に見るべきものはない。

この芝居を持たせるには

強烈な色気・こっけい味・そして最高の舞踊技術の三拍子が必要なのだと思う。パパはそれを持ってるからかろうじて歌舞伎座の舞台空間を埋めることができてる。
勘太郎にはまだまだ色気とこっけい味が不足してる。
まあこの芝居に必要なこっけい味はあたしは無くてもかまわないんだが。

 

団子売

技術差は歴然としてるんだけど、カップルとしてはなんとなく愛之助亀治郎っていい感じかも、と思った。

 

車引

今日の勘太郎梅王は抜群の出来。
亀治郎はやつしの型にこだわるあまり「戦う兄弟」っていう感じがしない。技術は落ちるかもしれないけど、七之助の桜丸のほうが好きだった。獅童の松王も悪くない。所作がひどいのはもうしょうがないし。

 

鳴神

時代の部分、愛之助は品格があってよかった。七はダメだねぇ。時代なのに世話になっちゃってる。最初からイケイケじゃ、絶間姫じゃなくて女郎さんだよ。
ラストの立ち回り、さとぴーがとんぼ返ってるのを発見。初日は角度が悪くて見つからなかった。実はこの立ち回りはひどいと思ってたんだけど(演舞場のと比べてあまりにテンポも切れも悪いので)さとぴーのとんぼが一回見られただけで文句言うのはやめておくことにします。てへへ。

 

蜘蛛の糸・・・

構成・演出に関しての不満は同じ。
愛之助の押し戻し、唐突感は抜きにすれば、なかなか立派で似合ってる。

鳴神といい、コレといい、意外と成田屋芸風合ってる?

常磐津が浅草のときに引き続きすばらしい。

こんなばたばたの芝居でもカテコ。スタオベ。

糸をたくさん撒いて、足を踏み鳴らして、七人がそろえば客は満足なのか。
これが浅草流ショーアップなのか。

なんだかとっても不満。