先月の熱狂とは打って変って、今月は、初日もパス。
今日はたった一回のNYヴァージョン上演ということで、行ってまいりました。
上演前に、伝法院の庭園(こちら特別公開中。噂によれば今世紀中は~ってあと100年近くじゃん! 公開予定なしってことなので、お近くの方はぜひ16日までにいらっしゃいませ)を拝観。思ったほどの人ごみではなく、わりとゆったり見られました。お茶振舞いもあったりして。うん、くつろげた。
で。肝心の芝居ですが。うーむ。
なんせNYに行きそこなったあたし(てんまつはこちらから)。
NYヴァージョンは見なくちゃってことでがんばったのですが。
パパのモノローグ、けっこうがんばってました。NYから二年も経ってるわりにちゃんと覚えてたほうじゃなかろうか。
NYヴァージョン云々はべつにして、今回の串田版法界坊は、あまり好きじゃないかも。
数年前歌舞伎座でやったときの串田法界坊がかなり好きだっただけに、それとどうしても比べちゃうんですけれど、なんというかその場その場の盛り上がりとギャグばかりが目立ってしまい、全体を通しての法界坊の物語が全然見えてこないというか・・・
特に違和感を感じたのが笹野高史の勘十郎。やたらお笑い方面に役作りを膨らましているようですが、この役はお笑いである半面、悲しみも感じさせる、いわゆる「道化」であってほしいのに、ただの下品なエロおっさんに堕している気がしてとても残念だった。
とにかく主役の法界坊を含め、すべての登場人物がちっとも魅力的に感じられない。
人としてどうなの?というところで練り上げるのが歌舞伎と違う串田演出だと思っていたのに(三人吉三なんかはその手法が大成功してると思う)、この芝居では番頭はただのグロ、勘十郎はただのエロ、そして法界坊はただのエログロ。
まともチーム(苦笑)もお組はどうしてあんなにもてるのか不明だし、野分姫はずれまくったKY姫だし、甚左衛門もKY大将だし・・・で、ご贔屓勘太郎演ずる要助が唯一まともかと思いきや・・・いきなり一瞬狂気の遠吠え・・・(役者としては見せ場かもしれないけれど、芝居のなかではわけわかんねーっつーの)。
その場しのぎのつまらない受けに走った役者+演出家の結果がこうなっちゃうのかね、と、先月の充実振りと比べてあまりにさびしくなってしまった、というのが本音。
客席は大盛り上がりを見せた大詰め、NYヴァージョン(テレビで観た)のときもなんだこれ?法界坊じゃなくてTHE KABUKI DIGEST?と思ったのだけれど、それがますます拡大した感じで。
法界坊のストーリーはどこに行っちゃったの?という感じの双面ちょこっと+道成寺+鳴神+小金吾+三人吉三土蜘蛛+・・・・・といった感じのとりあえず派手な扮装、大立ち回りをやってみました、ってな演出。
てんこ盛りの大サービスに客席総立ちの大喜び。カテコ三回。はいよかったですね。
本当に初心者さんは喜ぶでしょうね。だってこれ一回見ておけばKABUKIを見たような気分に当分なれますもの。
ってことは当分歌舞伎を見なくてもいい気分にもなれるってことで。
で、法界坊は????どこに行った?
耳に入ってきた他人の感想は
「すばらしかった!」「これなら10000円以上でも高くない!」
など、ほぼ全員興奮&大満足だったので、不満を感じた客=あたしは本当に少数派なのだと思います。
変に歌舞伎なれしているいやらしさなのかも、と自分で反省もしたりしつつ、でもやっぱりああいう初心者客に媚び媚び(と敢えていわせていただく)の本筋無視の舞台では悲しくなってしまう自分もいるわけで。しかもそこに大の贔屓の役者が存在しているわけで。
チケットは先月より今月のほうが売れているそうで、つまりは面白くて分かりやすいのが勝ち、ってことになってしまうのだろうか。
てか、本当にみなさん、分かりやすかったですか????
うちに帰ってから、結局法界坊はどうなったの?とか考えないですか、あの幕切れで?
それを考えさせないために、序幕でもギャグばかり目立たせてそれぞれの役のキャラはいい加減にしたわけですか、串田さん?
勘太郎びいきゆえに、必要以上に中村屋・中村座の芝居を見続けてしまい、それゆえの辛口、あるいは期待過剰ということもある、というのは重々承知しています。
ただ、不満を感じたのがあたしだけではない、ということの一端として、(NYヴァージョンということで)格安?で呼び集めたガイジン(会場の2-30パーセント?)のうちの少なくとも数十人が、大詰め前の休憩で席を立ってしまったという事実のみを淡々と付け加えて、あたしの感想を終わりにしたいと思います。
こっからは愚痴という名の期待。
先月4ヴァージョンも作ったこのプロジェクトだからこそ、今月は串田ヴァージョンと、もうひとつ、昔ながらの法界坊(先代勘三郎が大得意としていた)を並行上演する、くらいの試みがあってもよかったんじゃないか、と思ったりしながら、帰路についたのでした。
それくらいのキャパというかポシビリティというか、そんなものを包含している小屋だと、あたしはこの中村座にどうしてもまだ期待してしまうわけでして・・・ミステラレナイ
ま、いっか。伝法院楽しかったし。