「男」
柳美里 著
物語は柳美里がポルノ小説を書いてみないかと
副編集長に言われたことからはじまる。
あいだに挟まるポルノ小説ふうは単調だが、
からだの部分を語るのはポルノグラフィはみせる。
ひとは生きもの。
生きものであることからはじまる。
言葉を持ったことからはじまる。
目、耳、爪、尻、唇、肩、腕、指、髪、
頬、歯、ペニス、乳首、髭、脚、手、声、背中。
なににふれているだろうか。
なににふれただろうか。
男がいて、女がいて、男はいる、女がいる。
コロナ。
この世界でやさしさを持っていられるだろうか。
やさしさとはなんだろうか。
夢はやさしくなりたい。
ある本のことばにあった。
明らかになにかがこころに兆している。
やさしさがないからそう思うのだろうか。
ねがわくば、本心を花びらにいだかれ。