「怒り」
吉田修一 訳
だれも救われない。
きっとそう。
犯した罪や奪われたものたち。
なにがほんとう、なにがしんじつ。
それでも歩み続けるのは生きるという
ほんの小さなともし火のため。
怒り。
この本に怒りはそっとしか描かれない。
でも怒りは人のエネルギーとなる。
良い方にはまずいかない怒りという感情。
隣り合わせなのか、背中あわせなのか
喜怒哀楽の重複が、光と影の顔かたちを現し、
隠れさせる。
逃亡犯、山神一也の顔に似ていたために関わった、
三つのストーリー。
怒りはやがて悲しみとなる。