「文庫の読書」
荒川洋治 著
とりあえず文庫が好きだ。
手に持ちやすく、持ち運びの軽さ。
どこでも簡単に読める。
栞をはさみ、ときどきカバーをつけ、
積まれた中から選んで手に取る、気紛れに手に取る。
いくつかの読み止しをしばらく手に取っていなかったものを、
また読み始めると、すらすらと物語へと入っていく。
没入の心地よさ、様々な感情に囚われる。
顔を上げた時のなんとも言えない現実と物語の世界のあわい。
荒川洋治の本棚から抜き取られた文庫のちょっとした内実から、
物語の隙間を除いて味見する。