夕暮れ迫るJR線田町駅。
大勢の人が改札の向こうに吸い込まれ、また吐き出されていく。
ここに立ち止まっているだけで、一体どれくらいの人とすれ違うと言うのだろう。
たくさんの群集が自動改札機をくぐりぬける中に、我がホッピー研究会怪鳥の姿を見つけた。
ホッピー研究会が初めて田町に進出した瞬間である。
西口方面に出て、エスカレーターを降りると、もう目の前が「立呑処 やまとや」だ。
店の暖簾をくぐる前から、賑わう様子がよく分かる。店内の活気が外にまで伝わってくるのだ。「やまとや」と染め上げられた暖簾をくぐると案の定、店は満員御礼だった。
それでもなんとか、空いているテーブルをひとつだけ見つけ、我々はそこに陣取ることができた。時刻は6時半を少し回った時分。サラリーマンの姿で店内はごった返す。
店内は30歳代以上のサラリーマンがほとんど。女性はちらほらだ。我々が飲み始めてしばらく経った頃、女性だけの2人組が入ってきた程度で男性:女性の比率は9.:1といったところか。
店内の人口密度はかなり高い。
テーブルとテーブルをすり抜けるのにも細心の注意が必要だ。テーブルの飲み物をひっくり返す恐れがある。それほど、店内は所狭しとテーブルを置いてあり、人々が密集しているのだ。
その店内を縦横無尽に行く、印半纏を着た店員を呼びとめ、我々は生ビール(400円)を頼んだ。
店員は快活に返事をして、厨房の方角に消えていった。ほどなくして、生ビールが運ばれてきた。時間にすれば1分弱。ウチの社長もこれならばOKだろう。
ビールはキリンラガー。そして、ラガーという名の生ビール。
しかし、ラガーをメインビールに据えているのは珍しい。
支払いはキャッシュオンデリバリー。つまり、その都度方式だ。
つまみを頼んだ。
「おまかせ5本盛り」(600円)、「ポテトサラダ」(200円)、「煮込み」(300円)である。
さて、懸案のホッピー問題だ。
我々はメニューをひっくり返して、ホッピーの文字を探した。或いは店内の貼紙をひとつひとつチェックした。だが、その甘美な飲み物の名前はどこにも見当たらない。
やはり、この店にホッピーは置いていなかったのだ。わたしは、記憶が混同し、ついこの店にホッピーがあると勘違いしていたのだ。ご指摘いただいた「通りすがりの者」さん、ありがとうございました。
しばらくすると、頼んだつまみが次々に運ばれてきた。
まずはポテトサラダ。
早速食べてみる。味は悪くない。
怪鳥は「うむ、これは業務用じゃない」などと一人相槌を打っている。
なるほど、安物の居酒屋には業務用のポテトサラダが出回っているのか。
そして、次に「煮込み」を味わってみる。
まずくはないが、味わい深いわけでもない。可もなく不可もなく、平均点といったあんばいか。
とにかく、心に残るものではなかったことは確かだ。
ビールを飲み干し、次に我々は「ホイス」(300円)に手を染めた。
なんといっても幻の酒である。
運ばれてきた「ホイス」を味わってみたが、うむむ何かが足りない気がする。
居酒屋放浪記NO.0049「田吾作」で飲んだ「ホイス」とは一味もふた味も違う。味が薄いのか。それとも雰囲気の差だろうか。
とにかく、気のせいではない何かが、同店の「ホイス」に欠如していた気がするのだ。
店内を見渡す。
溢れかえるお客の声のトーンは大きく。店内はざわついている。
店の奥の頭上にはテレビが据えられており、プロ野球の讀賣VS東京ヤクルトの一戦が放映されている。店内左側に目をやると、富士山が描かれたペンキ絵が否応なく目に飛び込んでくる。銭湯によくある大きなペンキ絵だ。
怪鳥は「これは新しく書き下ろしたものだ」などと言っていたが、わたしはこう思った。どこかの畳んでしまった銭湯から譲り受けたのではないだろうか。これだけ、豪壮なペンキ絵を、この大衆酒場のインテリアのあために新たに発注するだろうか。何かの縁で銭湯のペンキ絵を戴いたと考えるほうが自然ではないだろうか。
ともあれ、このペンキ絵は非常に見事だった。富士山の雄大さが絵のスケールとともに伝わってくる。やはり、ペンキ絵は富士山でなくてはならない。
藤子不二雄A原作、「まんが道」(秋田書店、中央公論新社」で主人公の満賀道雄も同じことを言っている。
ホイスのチョイスが失敗だったことから、わたしは3杯目の酒として、次に「雷門サワー」を頼んだ。ここは港区三田。何故、浅草の雷門がサワーの名前に冠せられているのか分からないが、とにかく好奇心が頭をもたげた。
しかし、なんてことはない。
ライムとレモンのサワーなのである。
ライムとレモンでライモン。だから雷門なのだ。
7時を過ぎて、店はますます込み合いはじめた。
人の出入りも急に激しくなってきた。
ホッピーがない、というのも我々の気持ちをやや消沈させたというのもあるだろう。
お互い3杯目の杯を空けて、我々は再び夜の田町に溶けていった。
大勢の人が改札の向こうに吸い込まれ、また吐き出されていく。
ここに立ち止まっているだけで、一体どれくらいの人とすれ違うと言うのだろう。
たくさんの群集が自動改札機をくぐりぬける中に、我がホッピー研究会怪鳥の姿を見つけた。
ホッピー研究会が初めて田町に進出した瞬間である。
西口方面に出て、エスカレーターを降りると、もう目の前が「立呑処 やまとや」だ。
店の暖簾をくぐる前から、賑わう様子がよく分かる。店内の活気が外にまで伝わってくるのだ。「やまとや」と染め上げられた暖簾をくぐると案の定、店は満員御礼だった。
それでもなんとか、空いているテーブルをひとつだけ見つけ、我々はそこに陣取ることができた。時刻は6時半を少し回った時分。サラリーマンの姿で店内はごった返す。
店内は30歳代以上のサラリーマンがほとんど。女性はちらほらだ。我々が飲み始めてしばらく経った頃、女性だけの2人組が入ってきた程度で男性:女性の比率は9.:1といったところか。
店内の人口密度はかなり高い。
テーブルとテーブルをすり抜けるのにも細心の注意が必要だ。テーブルの飲み物をひっくり返す恐れがある。それほど、店内は所狭しとテーブルを置いてあり、人々が密集しているのだ。
その店内を縦横無尽に行く、印半纏を着た店員を呼びとめ、我々は生ビール(400円)を頼んだ。
店員は快活に返事をして、厨房の方角に消えていった。ほどなくして、生ビールが運ばれてきた。時間にすれば1分弱。ウチの社長もこれならばOKだろう。
ビールはキリンラガー。そして、ラガーという名の生ビール。
しかし、ラガーをメインビールに据えているのは珍しい。
支払いはキャッシュオンデリバリー。つまり、その都度方式だ。
つまみを頼んだ。
「おまかせ5本盛り」(600円)、「ポテトサラダ」(200円)、「煮込み」(300円)である。
さて、懸案のホッピー問題だ。
我々はメニューをひっくり返して、ホッピーの文字を探した。或いは店内の貼紙をひとつひとつチェックした。だが、その甘美な飲み物の名前はどこにも見当たらない。
やはり、この店にホッピーは置いていなかったのだ。わたしは、記憶が混同し、ついこの店にホッピーがあると勘違いしていたのだ。ご指摘いただいた「通りすがりの者」さん、ありがとうございました。
しばらくすると、頼んだつまみが次々に運ばれてきた。
まずはポテトサラダ。
早速食べてみる。味は悪くない。
怪鳥は「うむ、これは業務用じゃない」などと一人相槌を打っている。
なるほど、安物の居酒屋には業務用のポテトサラダが出回っているのか。
そして、次に「煮込み」を味わってみる。
まずくはないが、味わい深いわけでもない。可もなく不可もなく、平均点といったあんばいか。
とにかく、心に残るものではなかったことは確かだ。
ビールを飲み干し、次に我々は「ホイス」(300円)に手を染めた。
なんといっても幻の酒である。
運ばれてきた「ホイス」を味わってみたが、うむむ何かが足りない気がする。
居酒屋放浪記NO.0049「田吾作」で飲んだ「ホイス」とは一味もふた味も違う。味が薄いのか。それとも雰囲気の差だろうか。
とにかく、気のせいではない何かが、同店の「ホイス」に欠如していた気がするのだ。
店内を見渡す。
溢れかえるお客の声のトーンは大きく。店内はざわついている。
店の奥の頭上にはテレビが据えられており、プロ野球の讀賣VS東京ヤクルトの一戦が放映されている。店内左側に目をやると、富士山が描かれたペンキ絵が否応なく目に飛び込んでくる。銭湯によくある大きなペンキ絵だ。
怪鳥は「これは新しく書き下ろしたものだ」などと言っていたが、わたしはこう思った。どこかの畳んでしまった銭湯から譲り受けたのではないだろうか。これだけ、豪壮なペンキ絵を、この大衆酒場のインテリアのあために新たに発注するだろうか。何かの縁で銭湯のペンキ絵を戴いたと考えるほうが自然ではないだろうか。
ともあれ、このペンキ絵は非常に見事だった。富士山の雄大さが絵のスケールとともに伝わってくる。やはり、ペンキ絵は富士山でなくてはならない。
藤子不二雄A原作、「まんが道」(秋田書店、中央公論新社」で主人公の満賀道雄も同じことを言っている。
ホイスのチョイスが失敗だったことから、わたしは3杯目の酒として、次に「雷門サワー」を頼んだ。ここは港区三田。何故、浅草の雷門がサワーの名前に冠せられているのか分からないが、とにかく好奇心が頭をもたげた。
しかし、なんてことはない。
ライムとレモンのサワーなのである。
ライムとレモンでライモン。だから雷門なのだ。
7時を過ぎて、店はますます込み合いはじめた。
人の出入りも急に激しくなってきた。
ホッピーがない、というのも我々の気持ちをやや消沈させたというのもあるだろう。
お互い3杯目の杯を空けて、我々は再び夜の田町に溶けていった。
場所柄、大繁盛って感じだよね、あの店は。やはり駅前は強いなあ。
しかし、わたしがサワーを飲むなんて。
居酒屋放浪記始まって以来ですよ。
たまには田町もいいでしょう。
次回のホピ研を企画しないと。
店の素性に驚いたよなあ~。
あの店はまたリピートしたいなぁ。
次週の居酒屋放浪記は田町の少し変わった居酒屋を紹介しちゃいます。
お楽しみに!
確か以前もやまとやに行かれてますよね~。
私もさくらに行く時に、前を通りすがっていきますが、
あの熱気はすごい!
世の中の大企業のサラリーマン(とくに田町)も、
この夜のお店と同じくらい熱気を持って仕事すれば
もっと良くなると思うんですが・・・。
なかなか、足が向きませんが、一度は訪問しなければいけないと常々思っています。
わたしも仕事より、夜の酒場でパワーを発揮しています。
すみません…。