小樽の夜。
「母ちゃん家」でうまい酒ととびきりの肴をいただいた後、ボクの記憶は途切れ途切れになる。ビール4合程度。ホッピー外1.5本、中5杯。これが、ボクの臨界点。
弱い。年々顕著に、そして確実に弱くなっている。
気がつくと、湯の煮立つ温かい匂いのする店にいた。明るい店内のカウンターには、ボクらしかいない。
お蕎麦屋さんだ。
白木のカウンターは清々しく、いかにも清潔だ。気がつくと、みーさんは、お酒を頼んでいる。蕎麦屋の酒は、やたらと効く。このまま、飲ますと、片足を突っ込んでいる奈落の底にまっ逆さまだ。
みーさんと赤羽で、飲んだことを思いだす。「まるます家」でしこたま飲むと、その後、必ず岩渕の方まで行き、「ラーメン工房 胡山」さんへ。カウンターに座り、ラーメンのずんどうで熱した、超熱燗の「丸真正宗」をいただく。何度かお邪魔したが、一度不覚にもカウンターに突っ伏して眠ってしまったことがある。あのときもみーさんには、失礼してしまった。
お酒がうまい。
「母ちゃん家」で、ホッピー1本、中3杯で終わりにしておけばよかったと後悔する。そうすれば、真打ちのお酒を、もっとおいしくいただけたのに。
ただ、お酒を飲む毎に、自分が行き着くところまで行きそうな気がした。もう、臨界は目の前だった。
みーさんが、「そろそろ」と言った。
ボクの臨界を悟ったらしい。
蕎麦のチョイスだが、ボクは、「もり」と言った。その後の記憶がない。
ただし、こしの強い蕎麦をいただいたという記憶だけは鮮明だ。蕎麦の香りが、ボクのへべれけをだめ押しした。
なんということか。
ぷっつりと蕎麦のこしを確かめるように、ボクの記憶もぷっつりと途絶えた。
その日の最後の映像は、みーさんがタクシーに乗り込み、坂の上を走り去っていくシーンである。
おいしい、お蕎麦を味わいもせず、いただいた無礼をお許しください。しかも、翌日、財布から一円のお金も減ってなく、どうやらみーさんには、「こびやま」さんでもご馳走になってしまったらしい。
みーさん、ありがとうございました。
そして、「こびやま」さん、必ずまた、おいしいお蕎麦をいただきにあがります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます