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蕎麦屋さすらい 015 - 宵越し前の、酔いごしの蕎麦 - 「そば処 こびやま」(小樽市稲穂)

2017-09-20 22:23:40 | 蕎麦屋さすらい

小樽の夜。

「母ちゃん家」でうまい酒ととびきりの肴をいただいた後、ボクの記憶は途切れ途切れになる。ビール4合程度。ホッピー外1.5本、中5杯。これが、ボクの臨界点。

弱い。年々顕著に、そして確実に弱くなっている。

 

気がつくと、湯の煮立つ温かい匂いのする店にいた。明るい店内のカウンターには、ボクらしかいない。

お蕎麦屋さんだ。

白木のカウンターは清々しく、いかにも清潔だ。気がつくと、みーさんは、お酒を頼んでいる。蕎麦屋の酒は、やたらと効く。このまま、飲ますと、片足を突っ込んでいる奈落の底にまっ逆さまだ。

 

みーさんと赤羽で、飲んだことを思いだす。「まるます家」でしこたま飲むと、その後、必ず岩渕の方まで行き、「ラーメン工房 胡山」さんへ。カウンターに座り、ラーメンのずんどうで熱した、超熱燗の「丸真正宗」をいただく。何度かお邪魔したが、一度不覚にもカウンターに突っ伏して眠ってしまったことがある。あのときもみーさんには、失礼してしまった。

 

お酒がうまい。

「母ちゃん家」で、ホッピー1本、中3杯で終わりにしておけばよかったと後悔する。そうすれば、真打ちのお酒を、もっとおいしくいただけたのに。

ただ、お酒を飲む毎に、自分が行き着くところまで行きそうな気がした。もう、臨界は目の前だった。

 

みーさんが、「そろそろ」と言った。

ボクの臨界を悟ったらしい。

蕎麦のチョイスだが、ボクは、「もり」と言った。その後の記憶がない。

ただし、こしの強い蕎麦をいただいたという記憶だけは鮮明だ。蕎麦の香りが、ボクのへべれけをだめ押しした。

 

なんということか。

ぷっつりと蕎麦のこしを確かめるように、ボクの記憶もぷっつりと途絶えた。

その日の最後の映像は、みーさんがタクシーに乗り込み、坂の上を走り去っていくシーンである。

 

おいしい、お蕎麦を味わいもせず、いただいた無礼をお許しください。しかも、翌日、財布から一円のお金も減ってなく、どうやらみーさんには、「こびやま」さんでもご馳走になってしまったらしい。

みーさん、ありがとうございました。

そして、「こびやま」さん、必ずまた、おいしいお蕎麦をいただきにあがります。


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