小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

カジノ法案の意味   

2016年12月11日 | 社会・経済

 

安倍政権による強行採決に歯止めが効かなくなった。秘密保護法、武器輸出関連法、TPPなど、そして直近のカジノ法案の強行採決。昔ならデモの一騒動ぐらいあったものだが、もはやスマートに思えるほどの強行ぶりにものが言えない。マスコミにしても多少気色ばむ程度の報道で情けない。国民の60%もの信認を得ている安倍政権のこと、文句は言わせないという腹づもりか。以前なら、地下組織のカジノ賭博が発覚したら、即座に闇経営者、客もろとも犯罪者として刑務所行きだった。それがもう明日は、カジノはお上公認の正統ギャンブルに。


ギャンブル依存症が増加する不安も取りざたにされているが、射幸心を煽って金を巻き上げる賭場は「悪」そのもの。それを完全是認して、何とする。子どもへの悪影響、社会教育の観点からどう説明をつけるのか、私には想像にもおよばない。

ギャンブルの本質は、勝つか負けるかで、その金がどちらかに移動するだけのこと。コンスタントに儲けるのは胴元でしかなく、ディーラーが確実に、易々とキャッシュが入る仕組みになっている。

たとえば、競馬は全体の賭け金の75%(仮定)が配当金の原資になり、それを勝者が手に入れる。残りの25%がいわゆるテラ銭で、競馬運営の一切の経費、税金などとしてJRAなどの主催者(胴元)が手にする仕組みだ。競輪や競艇だろうが、パチンコや宝くじだろうが、すべて同じ原理で成り立っている。こんなに割り切った、しかも実収がのぞめるシステムはない。だから国家が運営するのだ。

さて、カジノ法案の採決をなぜこんなに急いだのか。前の石原都知事の時代から、カジノ運営が案件に上がっていたが、まず一番の理由が財源、新たな税収源をつくること(特殊法人の新設もあるか)。これ以外に考えられない。

民主主義の手続きを端折って、法案採決を焦る理由はなんだろうか。どこからのプレッシャーがあるんだろう。それは、たぶん外からの圧力と、国内からの圧力に大別される。

外圧と内圧に分けて、考えられるポイントを列挙してみよう。

外圧:アメリカでは、トランプ次期大統領のカジノも倒産したし、アトランティックシティという目玉カジノ都市もいまや斜陽だという。ラスベガスの大手カジノ組織が1兆円を投資するから、早くつくれと迫っているらしい。東南アジアにも有名なカジノがあるが、シンガポール、マカオなどは大分落ち込んでいて、その分を日本を新市場として狙っている。これらアジアンカジノのお得意さんは、中国の金持ち層(官僚も含む)たち。彼らはマネーロンダリングを主目的に、カジノを機能的に利用しているそうだ。法の網を掻い潜って、「元」を外貨に換える絶好の場だという。(円に換えれば、日本の不動産投資に。ドルに換えれば、アメリカの子弟や親戚の口座に)

内圧:これはもう権力側の、新たな利権の巣窟となる。自民だけでなく、民進など野党議員だって闇で動いているはず。警察官僚らの天下り組織が新たにできるとあれば、昨日まで厳しく摘発していた警察も、何もしなくてもカジノの上がりが自動的に収入源となる。こんな都合のいいシステム、楽な仕事はない。あと、目先のきくパチンコ企業が参入してくるだろうし、その利権のかすみを喰う関係者も多いのではないか。

戦後、GHQは、特例的に在日の人々に三つの職種を優先的に認可した。飲食業、タクシー業、そして私営ギャンブルであるパチンコ業だ。このパチンコ産業は、一頃30兆円市場といわれたが、利益の多くが北朝鮮、韓国に流れていったと言われる。パチンコとカジノはうまい具合に棲み分けができるのか、共存共栄は可能なのか・・。


ところで、カジノは市場として、将来そんなに有望なのか。このデフレ基調の日本において・・。

安倍首相は蓮舫にこんな説明をしていた。「カジノ施設は全体エリアの3%。その他は娯楽、商業施設が充実し、経済規模として相当の収益がのぞめ、わが国の経済成長にも大きく寄与するでしょう云々」と・・。これは詭弁である。全世界のカジノにおける付帯施設、飲食などは基本的に無料。そのかわりカジノ入場料があるが、日本は違うシステムにするのか。誰でも自由に入れるカジノにすると、世界の基準から外れる。それにセキュリティ面での課題が大きい。

まず世界のカジノマーケットがどれほどの規模か調べた。2年ほど前のデータだが、約1700億米ドルだから18兆円ほどだ。日本のカジノは、当初ヨーロッパ程度の市場規模になることが予測されている。

▲2014年予測。単位100万USドル Source:: “Global Gaming Outlook 2011” (PricewaterhouseCoopers)よりCIB Japan作成/ カジノ・インフォメーション・ジャパンより)


次に日本のパチンコ市場の推移を調べた。


▲パチンコ業界 WEB資料室より

なんと10年前と較べると、10兆円ほどのマイナスとなっている。しかし、2015年度においては、それでも23兆円もの市場規模だ。
これは売上額だが、粗利としては3兆3200億円を計上するという。税収がどれぐらいになるか知らないが、いやーギャンブルって儲かりまんな。
 
以上のデータから、年々減少しているパチンコ市場であるが、パチンコだけで20兆円を超える規模だ。これに競馬はじめ公営ギャンブルを含めると、日本のギャンブル市場は膨大であり成熟しきったマーケットである。
日本人がいかにギャンブル好きで、新規の依存症候補者が見込めると踏んでも、さあどうでしょう。
 
日本におけるカジノが隆盛するかどうか。オリンピック、中国はじめ海外からのギャンブラー客、中国の超リッチ層から委託された「ジャンケット」(※1)がビッグマネーを日本のカジノに落とすか、誰にも予測できない。
それにしてもカジノは世界合法のギャンブルではあるが、競輪、競艇、オートが落ち目だからといって、カジノに足を運ぶ日本人はどれくらいいるか。基本的に頭のいいお金持ちはギャンブルはやりませんから。バブリーな成金さんが手をだすのが相場。上のデータで明らかなように、日本経済全体が右肩下がりだから、ギャンブル市場も細っているのです。ほんとに今の政治家は節操がなくなった。この際、無理やり合法化して、少しの上がりでも自分たちの収入として確保しようなんざ、浅ましい限りだと思わざるをえない。
 
世も末なんですね。はやく消えちまいたい。
 
 
 
(※1)「ジャンケット」なる存在は、ユーチューブで苫米地英人という人の解説で知った。今回のカジノ法案における強行採決が、民主主義を愚弄する行為だと語る。また、日本におけるカジノ導入の内幕を、既に2年前に上梓していたと、その本を見せた。しかし、この方は200語で端的に語れることを10分ぐらいかけて話す。詐欺師的な話法といえるのだが、この法案は「悪」そのもので、売春や麻薬を合法化するのと大差ないと断定したことについては、いちおう評価しなければならない。但し、HSBC(香港上海銀行)について、少々的外れの議論があった。以前、赤坂に支店はあったが、特殊なバンキングが目的だったら出店は不可能だったはずだ。撤退理由そのものは、私は知らないが。

 
{追記:} 記事をアップして2,3時間後、ビデオニュースで期せずして「カジノなんてやめておけ」という放送を公開した。「カジノ幻想」という著書をもつ静岡大の鳥畑 与一氏をゲストに迎え、この法案及びプロジェクトのいい加減さを論議したものだった。コンテキスト及び問題意識は、このブログ記事と大差ないと判断し、修正しないことにした。但し、私の事実認識、理解の至らない点があったので、ここに追記する。

「カジノ法案」ではなく、正確には「IR法案」(統合型リゾート)という。これを推進する議員はなんと220人いて、自民、維新の会の議員がメインで小池百合子や民進党の前原議員らも名を連ねているとのこと。
パチンコは法律的にはギャンブルとの規定はなく、例の景品交換なんたらという法で推して知るべし。またギャンブル依存症は、国際的には脳の機能障害で、自己責任能力欠如や性格の問題ではなく、立派な疾病だということ。また、日本では人口の4.8%、530万人がギャンブル依存症であり、そのうちの約八割がパチンコ常習者ということだ。
カジノ設置が統合型リゾートIRの一部としても、この事業基盤をささえる収益性は現時点で破綻し、設置を予定している全国20か所以上の候補地も、住民の意向を無視したものである。今回、基本法が通過しても、今後さまざまな問題が山積している。IRの先行モデルというべきシンガポールのそれも、今や中国富裕層が離れ,2014年以降経営が悪化しているという。国会での推進派の答弁は、すべて2013年までのデータに依拠しているとのこと。IR法案は議員立法だから今後どうだろうか。しかし、基本法は成立したわけで、これを悪用しようとする官僚が出て来ないともいえない。 2016 12月11日 11時 記


 



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