小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

己のナニかを破棄する

2019年04月08日 | 日記


社会人になって4,5年経った頃、愚生は、詩人にはなれないだろうと思った。身を切るような気づきがあったからで、自身を見極める為でもあった。

しかし、それでも詩を書く魅力に抗することができず、ひっそりと「詩みたいなもの」とか「ベタにならない詩」を時折書いている。並行して、優れた作品を読むことは、凡庸な「己」を破棄することにも繋がる、と思うようになった。この齢になって詩と正対し、我流だが読解し、かつ詩語の胚珠の深みを見つめることができるようになった。

といって、自分が本物の「詩」を書けるかというと、それはまた別の話で、重々承知している。

今回もやはり、同様に恥をさらすことになる。事の結果を、あれこれ推測するのは嫌いだ。ま、しかし、己のブログで「試詩」シリーズの作品の新局面をめざして、性懲りなくも書いた。結果、力量いまだ伴なわず、「詩」という言語構造物とは、やはり底知れない「ナニかの必要」を感じている。(だから、もう少し発酵と昇華の往復の時間が必要なのだ)

「ポエジー」は引力、重力を超える星、卑近な譬えで、そう宝石を描く。いやそれ以前の、賢治由来の鉱石とか原石を想像し、辿ってみる。

ほんの少しを齧ってはいる。が、その何たるかの淵源を探しだし、ひたすらに言葉の土塊を掘ることの実感は、やはり薄いのかもしれない。

▲北園克衛の作品。彼の発する言語と、想像した果てのビジュアルの、臨界点としての造形。サンプルとして見ていい。

何故ならば、詩の言葉の実質的構築は、まだ完成の領域にたっしていないからだ。ただ、それ以前の、イメージを言葉として置換できるような具象的イメージと、四千年の歴史を内包する「漢字」の換喩及び直喩、その在りかを自分なりに見出すことができる気がする。少なくとも、明示すべく適確な言葉にして作り変える。それを彫琢し、宝石のように煌めく言葉の「詩語」として仕上げる。

以上のプロセスを噛みしめて、実体の言葉をさがすようにしたい。

かつて、産みの苦しみと、その困難さに「己」は耐えることができなかった。もとより才覚に欠けていた。可哀想な奴め、と思われてもしょうがない。

ともあれ、書いてしまったものは詩以前のもので、詩の構造の体さえ成していない。だが、この世の暗闇のなかにおいて、伝えたい意図を微かでも発光してくれるのではないか、と自分勝手な願望を抱いている。

ま、とにかく面倒くさい爺だということは自分自身で思う。世迷言に近いものだと断じて結構、ご免下さい。

▲同じく北園克衛の作品。アングルを変えているが、これが自然体のカタチだと思う。

 以上、断片的でぼやきのような言葉の羅列そのものが、「己のナニかを破棄する」行為でもある。そんなことよりも、目の前には美しいものが隠れている。そのことに何故おまえは気づかない、と天の声が聞こえてくる。「自然」に対して虚心で対峙すること。社会に起きる様々な事象を考えることはまだしも、そのソリューションに頭を悩ますのは、もはや無理かと思う。諦めはしないが・・。

老人性痴呆になっても、何某のセンターに収容されても、健在であった過去の己は、今の俺とは違う。その証拠としてIT空間にエビデンスとして残す作業の一環なのだ。こうした行為を「イタい」と思う人は、いつか変化していく「己を痛く」感じる時がきても不思議ではない。、蓄財せよとか、権力に阿るべき、なんて一語にもないのでよろしく。

 

ということで、関係なくもないMVを自分のために貼りつける。

ボブ・ディランの「Subterranean Homesick Blues」、有名な歌詞ボードをめくるビデオを模倣したMVはたくさんある。愚生の好きな女子ロックバンドTricoのそれが、ディランのビデオを踏襲していて面白い。ただし、歌詞のボードではなく、いまの若者たちの個人的なワードを書いたもの。世界の国々のふつうの若者たちが、次から次と登場して引き込まれる。すべて英語だが、ほとんど中学生英語だから理解でき、なるほど切実な「己の破棄したいナニか」をボードに書いている。

昔の自分、いまの自分が現在に生きていたら、過去を後悔する自分などを見出すことができて、なかなか秀逸だとおもう。涙腺がゆるむところがあったりで、Tricoのセンスを誉めたい。

tricot『Break』MV

 

 なんといっても本家本元はこれ、ディランだ。彼が詩人たる由縁を知る格好のビデオであり、たぶんアメリカの詩神・アレン・ギンズバーグも登場しているのではないか。映像だけは前篇後編で繋いでいるが、曲は同じものだ。歌詞をボードにしてめくるというパフォーマンスはその後、数えきれないくらい続出した。Tricoもそうだが、本人たちではなく、普通の人々を登場させたのが偉い。

①Bob Dylan - Subterranean Homesick Blues (alternate music video) (Digital Video)

 

②Bob Dylan - Subterranean Homesick Blues

 ▲ギンズバーグは、誰と話しあっているのだろうか?

 

 


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