小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

極私的アメリカの点描その②

2021年11月09日 | エッセイ・コラム

前記事の続き。

『ヒルビリーエレジー』の著者J.D.(ジェームズ・デイヴィッド)ヴァンスは、1984年生まれ現在37歳。両親がはやく離婚し、祖父母に養育される。実母の麻薬依存症に悩み、白人の低所得層に多いスコッツ・アイリッシュのなかでも、極めて特異な家庭環境に育つ。

「鳶が鷹をうむ」という諺があるが、「都会の残飯を啄む鴉が、刻苦勉励により大鷹になる」ぐらいの立身出世の人物。州立大学から名門イエール大学院法科を卒業し、弁護士から著述&実業家へ。近い将来、地元の州知事になっても不思議はない、と小生は彼の『ヒルビリーエレジー』という半自伝を読んで、強く思った次第。

アメリカ北東部に暮らすWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)には属しないと自らを規定し、大学に行ってIBリーグの大学院へ行けたのは奇跡だという。本人の努力がいちばんだと思うが、自分の家族とりわけ育て親の祖母、姉にたいする感謝を全編を通じて触れている。後半は伴侶となる妻も登場するが、彼の波乱万丈の半生となる立志伝。それが『ヒルビリーエレジー』で本国では100万部を突破している。現在のアメリカ人からすれば、ある意味ぶっ飛んだエピソードの数々、400pの本も一気読みしてしまった。

▲J.D.ヴァンスは1984年8月2日にジェームズ・ドナルド・ボウマンとして誕生した。

▲JDヴァンスのほぼ現在。

彼の出自は曽祖父の時代から、ケンタッキー州の北部のジャクソンという小さな村から始まる。南部黒人奴隷制が支配する経済時代には、遅れてきた白人たちは日雇い労働者として働いた。アパラチア山脈の裾野に広がる今日のラストベルトと言われる地域の一角、テネシー州の小さな農村ジャクソンで、ヴァンスの祖先たちは小作人や炭鉱労働者として働くようになった。

そんな生活から逃れたかったのか、青春期の「春の目覚め」だろうか、ヴァンスの祖父母はオハイオ州に移住した(16歳の頃に14歳の彼女と駆け落ち)。その後、彼らは子どもを産み、ある程度の財産をつくり故郷ジャクソンに戻る(ヴァンスと実姉はその後、祖父母がいるジャクソンを拠点に生活。多感な思春期を過ごした)。

ヴァンス曰く、スコッツ・アイリッシュはアメリカのなかでは特異な民族集団で、他の移民たちとは違い自分たちの伝統を放棄しなかった。(アーミッシュはスイス系でもっとアナクロで柔軟性に欠く人々だとおもう)。「家族構成から、宗教、政治、社会生活にいたるまで、昔のままの姿を保っている」のは、郷に入っては郷に従えの日本人の感性とは真逆なのか・・。

とにかく己の出自と沽券は大切にまもる。そのことが矜持となる。そういう人たちが「外見にしても、行動様式にしても、話し方にしても、とにかく文化的背景が異なる人やよそ者を好まない」のは、意固地で思い入れが激しいとしてか小生には思えない(はっきり言うと、人間として狭量なのだ)。

 

『ヒルビリーエレジー』では、社会学者など識者の論文がいろいろ紹介されている。アパラチアンの若者は「自分にとって嫌なことは回避し、都合のいいことは採用する。『明らかに予測可能な抵抗性(レジリエンス)』がみられる」点が特長だ。

ひるがえって逆境に対処する力を生むが、同時に、自分自身の真の姿を直視することを困難にしている。自分たちが貧困にあえいでいるのに、それは自分たちのせいではなく、外の世界のせいだと考える。政府による食費補助(フードスタンプ)に頼る、あるいは現実逃避から麻薬に依存するのは、黒人よりも圧倒的に白人が多いらしい。

アパラチアンだけでなく、ケンタッキー州から南西部のテネシー、アラバマ、ミズーリ、アーカンソーなどの中部は、アメリカのなかでも所得が低く、また農地・牧草地が延々と広がるデルタ地帯だけで、中小都市だけがポツンと点在し、それを道路が結んでいるだけのロケーション。

アメリカに駐在した方の話を聞いたことがある。「言い方はわるいですが、アメリカの中部に駐在するのは寂しくて、生き地獄のようで、誰もが行きたがらない」らしい。まわりに何もないから不安なのか、地元の人はやはり銃を所持している。放牧している牛を盗む輩、自分の土地に平気で入込む人間を撃退するには、銃を撃って威嚇するのもやむを得ない? そんな土地柄といえようか。

見たこともない人間には、攻撃的というか鼻白む言葉を女性でも平気に吐く。そんな祖母や母をみて少年ヴァンスも、それに輪をかけて粗野に成長したと思われる。ヴァンスが子供時代の頃を回想した話のなかに、育ての親の祖母が銃をことも無げに平気でつかうエピソードが2,3あった。曾祖父の時代に他愛のない喧嘩から殺人を犯したことも書いてあった。

先手をうって暴力で相手をへこませる、武器をちらつかせて敵を黙らせることは常套手段、人生の勝者になる秘訣だ。それがアパラチアン気質なのか・・。今日のアメリカもまた、おなじような手口を使っていそうか・・。

 

ラストベルトと同じように「✖✖ベルト」という名称の地帯は10以上もアメリカにある。中部から南部ではバイブルベルトやサンベルトとして重複しているが、ほぼおなじ土地柄だ。キリスト教プロテスタントでも福音派(エバンジェリカルズ※追記)が多く、国会を襲撃したトランプ派が多く住むところでもある。

ヴァンス自身は地元の高校を卒業後、アメリカ軍海兵隊に4年間従事。イラク戦争にも従軍。子供の頃から不真面目で勉強などしない劣等生だったヴァンスは、この海兵隊での体験で、忍耐強い向学心に燃える男として生まれ変わった。故郷でのほとんどの仲間は高校卒だったが、その後、オハイオ州立大学法学部を最優秀の成績をおさめ、2年で卒業。IBリーグの名門イェール大学院法科を卒業。弁護士への途へと着実に進んだ。

この頃を語る後半のエピソードとして、彼が使う言葉に「社会関係資本」という言葉がちらほら出てくる(追記・宇沢弘文のアジェンダは、日本よりアメリカで浸透している)。ニュアンスは異なるが、フランスの社会科学者ブルデューの「ハビタス」と同じ意味あいの使い方だ。J.D.ヴァンスは、いま明確に祖国と故郷を意識した、社会参画的活動をしている。とうぜん、テネシー州を基盤とした政治、ロビー活動に邁進するであろう。

 

ところでアメリカにおける移民構成はどんな割合なのか、あるテレビ番組で紹介されていた。それが意外な比率だったので、急いでメモしたことがある。

 1. ドイツ     13.3%      
 2.メキシコ          11.3%
 3.スコッツ・アイリッシュ10%   (スコットランド8.3 アイルランド経由1.7)
 4.アイルランド   9.7%
 5.イギリス          7.1%
 6.イタリア          5.1%
 7.ポーランド      2.8%
 8.フランス          2.4%
 9.プエルトリコ  1.78% 
 10。中国                1.5%

上の表でわかるように、「スコッツ・アイリッシュ」と言われる人はアイルランド人を含むのではなく、スコットランド出身で、時代は分からないがアイルランドの北東部アルスター地方に移住し、その後アメリカに移民した人々をいう。(現在の北アイルランドとの違いは詳しくはわからない)

         

▲ラストベルトにある州は産業の衰退で白人中流層まで生活が一変。企業は法人税が安い中西部に移転した。右の地図いたは、スコッツ・アイリッシュ系や北部ヨーロッが多く定住した、アパラチアの山岳丘陵地帯。

ドイツが1位でメキシコが2位は意外だったが、現在のイギリスとアイルランドの島国からの移民を合計すると26.8 %になり、英語を母語とする人々がだんぜん多いことがわかる。

以前、森本あんりの著書を読み、彼らの多くがクリスチャン・プロテスタントであっても、その宗派は様々であることを知る。また、先住者としてイングランド系の多くが土地を所有する既得権益者であり、スコッツ・アイリッシュ系はじめ多くのヨーロッパ系移民は小作人や日雇い労働者、ノマドと同じようなカウボーイになるのはタフな青年たちだったのか。

南部は気候は温暖で、農業を営むのは安定した土地柄だったといえよう。アフリカ系の黒人を奴隷として酷使する大規模農法だったので、入り込む余地はなかったのだろう。ただし、白人の子弟たちは召使いの黒人たちの世話になり、彼らの音楽やソウルフードに親しみ、黒人たちの尊厳にも目をむける者もいた・・。

スコッツ・アイリッシュの人たちは後れて移民した人たちであり、その多くが農民であり、炭坑掘りの仕事のような肉体労働をする道しかなかった。また寒冷な北国で暮らしてきた人々であるから、北はニューヨーク州から南はアラバマ州にかけてのアパラチア山脈にかけての比較的に冷涼な丘陵地や放牧地などに移住した。そこで暮らす人々を「アパラッチ」「アパラチアン」と呼ぶそうだが、特にスコッツ・アイリッシュ系の人々を「ヒルビリー(田舎者)」と呼ぶそうである。

▲ウォーカー・エヴァンスの有名な写真。アラバマ州の農民『バド・フィールズとその家族』(1936)ヴァンスが語る祖父母の時代を彷彿とさせる家族写真だ。

「アメリカ社会では「ヒルビリー」のほかに貧しい白人たちを「レッドネック(首筋が赤く日焼けした白人労働者」「ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)」と呼ばれる」と書かれている。こんな言葉を白人同士でぶつけ合う。日本人にはちょっと真似ができない(そうでもないか)。

スコッツ・アイリッシュ系の多くの男たちは、第2次世界大戦においてヨーロッパや太平洋に出兵し、女たちは現在のラストベルトといわれる工業地帯で働いた。戦後、彼らは結婚し子供が生まれる。いわゆる「ベビーブーマー」というが、低所得者層はやや中所得層になっていく。戦後の好景気を、多くの人々が実感するが、戦争のリアルや「負」の要素・エッセンスを体感できない、愚生もふくめて。

近代以降、これらの地域はアメリカの重産業の核となる鉄鋼業や自動車産業に組み込まれていくが、そうした大手の生産工場で働けるのはエリートだといえるかもしれない。

話がだらだらしてきた。今回はこの辺にしておく。

次回は、テレビドラマ『ブレイキング・バット』にからめて、アメリカの暗部の深刻な問題、オビオイド、麻薬依存について触れてみたい。かつてエルビス・プレスリーやマイケル・ジャクソンなど麻薬づけになって若くして亡くなった。いまや、ギャングを潤わすだけとしてマリワナを合法化する州もちらほら出てきた。

医療皆保険のないアメリカでは、終末期を迎えるがん患者は安価な鎮痛剤オビオイドで痛みを散らし、重いストレスを緩和する。これらの鎮痛剤は軽い麻薬から強い麻薬ヘロインの入門編、こんなことはアメリカ人の子どもをはじめ、誰もが知っていることだ。

今後アメリカがどうなって行くのか・・。日本の老人といえどもちょっとは気になる現象なのである。

 

※追記:当初、「福音派、エバンジェリストが多く」と表記していた。福音派(エバンジェリカルズ)に訂正。アメリカのプロテスタント系のキリスト教では、バプティスト派(洗礼派)が最大教派といわれる。南部のそれは、神学的・政治的に保守・右派であり、キリスト教根本主義の傾向が強いとされる。

バプティスト派はキング牧師暗殺を契機に、北部に住む白人たちのなかで人種差別を忌避する動きがあり、南部から分派したとされる。黒人のキリスト教信者の多くもバプティスト派であるが、マルコムXやカシアス・クレイに代表されるように、イスラム教に改宗した黒人もいる。

トランプ元大統領は、ドイツ系移民の末裔ということでキリスト教プロテスタント長老派に属していた。大統領再選挙のとき「Q]という人物がSNSにキリスト教の聖書を引用した陰謀論を書き込んだことで、超保守的な福音派の人々が「QAnon」を鵜呑みにして活動した。トランプ陣営はこれら社会現象を巧みに利用したことで、福音派の支持を拡大したといわれる。『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』の著者松本佐保によれば、福音派(エバンジェリカルズ)はアメリカ国民の3分の1の勢力をもっているそうだ。

アメリカの先の大統領選をふくむ各宗教会派の動向は、森本あんり、渡辺靖、松本佐保氏らの著書を参考にしたが、この「QAnon」についての分析はなされていなかった。小生はアメリカの主要マスコミの記事を参考にしたが、トランプ派からすればこれらのマスメディアが陰謀論に汚染されているということになる。

アメリカにおけるキリスト教のカトリックにおいても、南部が保守、バイデン大統領にみるように北部はリベラルで、妊娠中絶やLGBTに理解をしめす。ことほど左様に、アメリカにおける宗教は、政治の動きと密接に関わり、「政教分離」の精神とはほど遠い。むしろナショナリズム的な色彩が強く、その信念の強度によって家族の分断さえも引き起こす様相を呈している。 (2021.11月10日 記)

 

 


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5 コメント

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Unknown (スナフキンÀ)
2022-06-08 20:00:14
麻薬から話が逸れますが……。
やはり、そう来ますかという感慨があり、アパラチア山脈沿いの話にならざる得ません。私は右寄りな者ですがトランプは大嫌いです。そもそも「その気は無かった」の弁が嘘でないとしても、大統領が暴動を扇動し議会を襲撃させたのは「国家反逆罪」であり、彼が娑婆にいる事が(他国の者ながら)納得がゆきません。ディープステートと戦う戦士だとか、
ナントカQとかの勢力も勘弁して欲しい。頭の中がコミックなのかと思ってしまいます。
私もオバマケアを評価する者ですし、それを骨抜きにしたトランプやリバタリアン、サバイバリストには反吐が出るのですが、しかし、そこにはオバマにも責任と功罪があります。そこにはオピオイド問題と、アパラチア山脈沿いのヒルビリーらの話は避けては通れないと思うのです。
先ずはこの本が出版される2年ほど前に、アメリカの海外ドラマで「ジャステイファイド」という作品が放映されてました。
連邦保安官(刑事警察ではなく、拘留中の被疑者の護送や、保釈中に逃亡した容疑者の追跡逮捕など行う司法官)の主役が故郷のケンタッキーに戻ってくると、重要参考人が逃亡し、それをかつてイラクで戦友だった高校の同窓生が関わっているらしい。戦友はアジア系移民に対する
組織的ヘイトクライムの首謀者であるらしい。資金源は覚醒剤とオピオイドの違法な売買。二人が軍隊に入り、中東で戦ったのは訳があった。
それは町や地域の主産業である炭鉱を、オバマ大統領が温暖化対策で閉山した為だった。荒廃する故郷を捨て、軍隊に入隊する事で運命を切り開こうとした二人。主役は退役後、大学入学への支援を軍から受け、
連邦保安官へ。学費と生活に疲れて故郷へ帰った戦友は……。
と、何故に海外ドラマなのか御理解いただけますね??
まんま著者とカブるのですよ。
映画化された「アメリカンスナイパー」がそうですが、もともとケンタッキーから北部の何州でしたか、カナダ国境のナントカ襲撃まで広がる丘陵地帯をアパラチア山脈と呼びますが、ここは名狙撃兵の産地です。
理由は簡単で、アルスター地方(IRAと抗争したアルスター義勇軍はここが中心。つまり英国国教会を中心としたプロテスタント系の地域)から来たプロテスタント系は、貧しさ故に幼い頃から猟銃を持ち、栗鼠や兎や山鳩などを撃って、食肉を調達する伝統があるからです。
ドラマの中で、ケンタッキー出身のインディを数回制覇した地元天才ドライバーの話が出てきますが、その天才ドライバーは、実はヒルビリーで家業がウイスキーの密造酒製造なのですね。
彼は密造酒を積んだバンで、州警察のパトカーやヘリ、検問を突破する為に、山道を駆け回り、それによってドライビング技術を身に着けた。
土地柄が解りますでしょう??
そして、オバマに話は戻るのですが、この地でオピオイド被害が酷くなるのは結果として彼の政策に依るのですよ。
実は白人ラッパーのエミネム(ホワイトトラッシュの歌としてラップを歌った)の故郷である五大湖の錆びついた工業地帯ですが、実は息絶え絶えで続いていた工場を温存していたのは、ケンタッキーなどアパラチア山脈で産する安い石炭を燃料にしていたからなんです!
特にケンタッキーはこの錆びついた工業地帯の9割の石炭を産してた。
ところがオバマ政権の民主党は、韓国との取引で韓国産の鉄鋼の輸入規制を取り払い、さらに地球温暖化対策で、co2を絞る為に、積極的にケンタッキーやアパラチアの炭鉱を閉山させた! 
これが他にはバーボンと密造くらいしかマトモな生業のないケンタッキー周辺を没落させる訳です。 そしてもともと密造酒製造が盛んで、
ドラッグに対する精神的障壁の低いラストベルトに、オピオイド被害を蔓延させてゆく。さらに同じ南部に、メキシコの麻薬カルテルからの大量の覚醒剤が流れ込む。
もちろん、もともとアメリカがドラッグ文化(麻薬の話ではなく、民間治療薬やサプリメント文化の事を言ってます)が盛んなのも、鍼灸など東洋医学や、カイロプラクティックが盛んなのも、そもそもは「先進国なのにマトモな国民健康保険が存在しない!」という現実から来てます!!
それをオバマは改善しようとした! 
しかし、結果としてオピオイド害、さらにオピオイド乱用をゲートドラッグとしたヘビードラッグへの道、これを南部で流行らせてしまう! 
その背景には、密造酒運びする若者がインディのレーサーとして成功するような、「わけの解らん汚いヒルビリー」たち、アパラチア山脈に住む
時代遅れな赤っ首の白人の屑への、「理解の無さ」「偏見」「嫌悪」が、
クリーンな知識階級のオバマの脳裏にあったからではないでしょうか?
私がオバマ大統領を手放しで評価する気にならないのは、そういう東部エスタブリッシュメント特有の「汚い者は排除する」意識を彼に感じるからなんですね!!
この記事シリーズ、他にもフックする切り口があるので、また機会を観て続けます。
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皮膚の黒い白人 (小寄道)
2022-06-08 22:49:19
コメント感謝です。
米国のドラマはあまり見ないのですが、スナフキンさんの話をうけて、米国のドラマはラストベルト出身の落ちぶれた白人たちの物語がけっこうありそうですね。
彼らの凋落ぶりは深刻らしいのですが、いまや「ビッグリプレイスメント(大置換)」=現在の自分たちの位置(白人であることの微かな特権)を有色人種に乗っ取られ、地位が逆転してしまうという幻想、抑圧に苛まれていると聞きます。いや、もっと日本では知られていない複雑で悲惨な現実があるんでしょうけど・・。

オバマが大統領になった時は、彼は黒人にみえてやはり白人だということは当初から分かっていました。母方の白人家庭に育てられたし、その上昇志向、エスタブリッシュへの途は白人のそれです。
彼は自分の皮膚の色を政治的にたっぷりと利用した人ですね。心優しい紳士ですけどね。昔、少年時代に好きだった米国のTVドラム『パパは何でも知っている』の色の黒いパパって感じかな。

大統領になった当時、リーマンショックの直後だったので、大胆な経済政策でアメリカ経済の立て直しをするもんだと期待しました。つまり軍産複合の改編なり、超富裕層の課税強化、金融政策の見直しなどです。

ところが、民主重視リベラルだけに注力し、国際的なパワーバランス政策では手を抜きました。
どうも、歴代アメリカのトップは、トランプもふくめ、就任当初の政策の偏りがあまりにも激しい。シリア、クリミア、アフガンはじめ中東などの問題を実質的に避けた。それまでの歴代政権の実績を反故にするかのように、コミットしませんでした。

私だって人権重視、リベラル寄りを自認してますが、保守思想の大切さだって弁えています。
ただ、トランプさんはハチャメチャでしょう。というより、白人保守つまりアメリカの既得権益層に利用されている面が大きい。
彼のルール無視、人格の強さが、アメリカの旧きよき「強さ」=グレイト・アメリカンを体現する。それも強引にです。そんな期待を抱かせる稀有な男ですよ。
彼の人格とか知識、言動に惚れ込んじゃうのは、残念ながら白人至上主義を堂々といえるヒルビリーたちなんでしょうね。ということで、これにて終りにいたします。
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Unknown (スナフキンÀ一言)
2022-06-09 00:08:07
省いてしまいましたが、ケンタッキー周辺の炭鉱閉鎖は、その安価な
石炭でかろうじて命脈を保っていた五大湖の錆びついた工業地帯も、
完全にトドメを刺します。
環境や、アジアに力を注ぎたくない故の韓国鉄鋼への妥協。それを急ぎすぎたのが、南部の自殺率を上げ、麻薬だらけにしたトリガーと言えます。だから、オバマケアおよびオバマ大統領は、貧乏人に税金を使われたくない富裕層だけではなく、貧困層にも恨まれているのですよ。
メロンぱんちさんが言われる「リベラルへのウンザリ」もあるけれと、
それには具体的な政策結果としての評価もあると言う事です。
それを「低学歴な連中の無理解」としてきたインテリやエリートは、そもそも自分たちがアメリカンの「基本」で、それ以外は禽獣に等しいと見てきた。それがトランプ登場で爆発した。そもそもはオバマの失策です。
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エリートは嫌われるでしょ (小寄道)
2022-06-09 00:41:28
コメントありがとうございます。
あちこちでコメントいただきまして、正直くそ頭が混乱気味であります。まあ、嬉しい悲鳴をあげさせてください。ひゃっほー、嬉しいぞー。先ほど、メロンぱんちさんからコメントいただきました。

さてさて、韓国鉄鋼がとつぜん出てきましたが、妥協しなければならないほど影響力はあったんですか? 鉄鋼に関していえば、わが日本の特殊鋼はハイクオリティでまだ君臨していたと思っていたんですが・・。
アメリカ北東部の白人層はエリート意識がむき出しとききます。いわゆる民主党の支持基盤ですね。
トランプと競った民主党の大統領立候補はヒラリー・クリントンでしたが、「トランプを支持するラストベルトの白人たちは、無教養で頭が悪いんじゃない」と口に出してしまった。この禁句が知れ渡り、ヒラリーの人気がいっぺんで失ったといいます。中間層の白人からも、鼻持ちならない女だと毛嫌いされてしまった。
「口は災いのもと」は英語で何と言ったかなあ。では
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Unknown (スナフキンÀ蛇足一言に)
2022-06-09 06:53:58
韓国鉄鋼は影響大ですよ。質は悪いがやたらと安い。国家ぐるみで不当に安くなるよう後押ししてますから。日本鉄鋼などとうに駆逐されてしまいました。
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