今週は鎌倉の樹々も少し色付き始めたが、紅葉の見頃は観光客の少なくなる12月に入ってからだ。
いくら怠惰な私でも12月に入る前には冬支度を始めるべきだろう。
冬籠りの用意はまずは厨の整理からだ。
冷蔵庫の上に置いてある厨神の恵比寿大黒をもう少し良い場所にお祀りしたいので、取り敢えず片付け終わるまで別の所に御遷座頂こう。
(木彫恵比寿大黒像 幕末〜明治頃 信楽酒盃 江戸時代)
恵比寿様が魚類、大黒様が穀物の神だ。
作業机の仮の祭壇に地元産の冬野菜と御神酒を御供えし、その間に台所と食器類の大整理をしよう…………と思い丸1日いろいろ試してみたのだが、結局新たな場所は空かず祭壇は元の冷蔵庫上となった。
昔の京都の町屋のような立派な神棚を設る以外、我が厨ではそこが最も上等席なようで情け無い。
ーーー冬支度断固動かぬ厨神ーーー
冬籠りで最重要なのは食糧の備蓄で、特に最近値上がりしている珈琲は安売りの時に買溜めしておいた。
ついでに珈琲卓にも小さな福の神を飾ろう。
(木彫恵比寿大黒小像 江戸時代 ウエッジウッド ペナインポット&カップ 1940年代)
珈琲卓は英国アンティークのライティングデスクなので、洋風の箱額に入れて飾るようにした。
この位の大きさだと置き場所にも困らなくて良い。
神像等は小さい方が日常生活の邪魔にならずに、結果として現代でも生き残れる可能性が高いだろう。
さらに神々と言うより茶飲み友達のように親しめるならいつも居て欲しい。
今月は神無月で日本の神々は出雲に行って留守なのだが、恵比寿大黒は渡来神なので我家に居る訳だ。
ーーー珈琲の湯気を舞はしめ福の神ーーー
古代ローマの竈の神はヴェスタだ。
(ヴェスタ フォルトナ ケレース他のイコノグラム シルバーコイン ローマ時代)
下段中央のヴェスタを囲み色々な家内守護の女神達で祀陣を組んで、朽木の小額に入れれば本棚の隅にも置ける。
このような古代遺物や発掘遺跡の装飾などを見ると、ギリシャローマの多神教時代は一般市民の家庭にも色々な神が居て当然だったのだ。
美しき神々に囲まれた暮しはさぞ賑わしく華やかだったろう。
隠者も冬深く幽居のこれからを、この古の女神達と明るく過ごしたい。
ーーー古の金貨銀貨の女神像 たんと並べて世から隠れむーーー
古人達にとっては神々や精霊とは奉り崇拝する以前に、当たり前に四季を共に暮らすものだった筈だ。
私にしても虚しき日々の傍らに居てくれるだけで楽しく心強く、「我、神と共に在り」とはそう言う事だと思う。
©️甲士三郎