鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

119 冬籠りの薔薇

2019-12-12 13:01:00 | 日記

我家の庭はこの時期の花は乏しく、花屋でもクリスマス飾りばかりで良い花が見当たらないので、前回の写真もドライフラワーを使った。
一方で薔薇は一年中売っているので取り敢えず飾るには重宝するが、季節感を考えれば同じ薔薇でも冬はドライフラワーが良い。
また乾燥ハーブや木の実を吊るして飾るのも、冬籠りの感興が深まる。
昔の収穫後の農家の趣きで、芋や根菜も飾になる。

ゲーム オブ スローンの「Winter is coming」には恐ろしい危機感が含まれているが、日本の季語の「冬深む」などには東洋哲学的な老成感がある。
現代人には冬仕度とか冬籠りなど縁遠い物になったが、隠者は断然冬籠りする。
本や映画や音楽を山ほど買い込んで、ぬくぬくと過ごすのだ。
ぬくぬくと言っても私の暖房設定は17度なので暖まる飲物が欠かせない。
人により好みの酒類や各種のお茶珈琲を溜め込んで並べるのも楽しいと思う。
そう言った季節に花だけは足りないので、年中同じような花屋の薔薇も大いに飾って楽しみまた乾燥させて更に楽しもう。

写真中央の瓶のピコンはナポレオン軍の薬用酒で、糖質制限の隠者は時々舐める程度に嗜んでいる。
主成分は苦竜胆の根だそうで、これは源氏の紋章の笹竜胆にも通じて親しみが持てる。
酒精が糖類ゼロの缶チューハイだけではあまりに情けないので、冬籠りに舐めるくらいは御勘怒頂きたい。

我家は幸いに冬でも鳥や栗鼠が訪れてくれて飽きない。
聖フランチェスコはいつも小鳥達と戯れていたと聞くが、清澄な花鳥達の楽園を心底愛しんでいたようだ。
日本人にも花鳥浄土のイメージが根付いていて、古来から綿々と冬でも花咲き鳥が歌う楽園を夢想して来た。

楽園や浄土への到達は言わば人類の究極の目標なのだが、真冬でも暖房の中で生き生きした薔薇がいくらでも飾れるようになった現代人の、真に目指すべき楽園はむしろドライフラワーの側にある気がする。
冬枯の今こそ理想の楽園を熟考するのに最も良い季節だ。
冬に現物の薔薇を咲かせるのでは無く、冬は夢幻の薔薇こそ咲かせるべきなのだ。

©️甲士三郎

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