鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

183 花園の守護聖獣

2021-03-04 13:31:00 | 日記

我が荒庭も花咲き鳥が囀る季節となって、朝目覚めるのが楽しい。

そのような暮しが永遠に続くよう、古人達は花鳥の楽園を守護する多様な聖獣を創造した。


(古伊万里色絵壺 幕末〜明治時代)

花園の中で子育てするコミックタッチの獅子が微笑ましい。

唐獅子と牡丹の取合わせは俗化した近世現代でもよくあるが、各種の花々が咲き乱れる中の聖獣伝説の方がより古くからある。

西洋では邪悪なモンスター扱いのドラゴンやライオンも、東洋では古代からの聖獣である。


下の写真は私が一番気に入ってよく使っている麒麟の皿。


(古伊万里染付皿 江戸時代)

蝶の舞う花園に生息する麒麟の絵の七寸皿だ。

草花と同じくらいの背丈になって、我が庭の小楽園を護ってもらうのには丁度良い小さな麒麟だ。

この宙を仰ぎ見る麒麟の構図が当時人気だったらしく、19世紀の古伊万里には良く登場する。


同種の発想がもっと古い中国にある。


(古染付皿 明末頃)

蝶と戯れる名の知れぬ聖獣の絵で、上の古伊万里ほど模様化されていない時代の物だ。

花時の我が荒庭や鎌倉の山野を見ていれば、この楽土楽園を開発や自然破壊から護る守護聖獣は現代にこそ必要だと切に思う。


楽園の建立は全人類の永遠のテーマであろう。

20世紀の社会的な意味でのユートピア建設は挫折した。

それを教訓に今世紀は己が夢幻界に守護聖獣を復活させて、個人個人の小楽園を建設する所から始めるべきだろう。


©️甲士三郎