鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

179 立春の祭典

2021-02-04 13:58:00 | 日記

隠者は旧暦の暮しなので立春が真の正月となっている。

寒入り前に新春を祝う新暦の正月には、真の春の訪れの喜びは無い。

読者諸賢もせめて個々で立春を祝う事をお薦めする。


私は一応鬼門守護職なので追儺の夜は破邪の儀を司る。


建て前としては篝火と火の粉で邪を祓い、伝世の護法剣で幕営の丑寅(北北東)を護る訳だ。

今年は病魔退散の威も加えて、マスク姿の隠遁形となった。


ーーー立春の光の窓を曇らせて 菜を煮る湯気に温まる厨ーーー

明けて春立つ日。

屏風を冬用の水墨花鳥図から華麗な伊勢物語に変え迎春の飾りを添えれば、家中がぐっと明るい雰囲気になる。


(伊勢物語図屏風 土佐派 江戸時代)

屋外も温かい日が続いて椿の蕾もふくらんで来た。

この飾りを前に春の祝ぎ歌を詠み、後は春菜が主菜の宴となる。


恒例の和歌の女神衣通姫絵姿を祀り、もう一つ和洋折衷の洋の祭壇も築いた。

春にふさわしく、花の女神像だ。


ピカソのオリジナルリトグラフで、花飾りの女(フローラ)

御供物は古萩茶碗の抹茶に鶯餅で和の要素を加えてみた。

リトグラフで気を付けるべき点は写真製版の物で、特に原画のタブロー(日本画や油絵等の本画)をフルカラー印刷したのはポスターとしての価値しかない。

本来のリトグラフ(石版画)とはあくまで作者本人が数色の版を重ね、自分で刷った物を言う。

さらにサインは版の外に一枚一枚手書きで入れる。

版の中にサインがある物は写真製版なので複製画の扱いとなるが、悪質な業者はこれをオリジナルと偽って高額で売付けている。


花咲き鳥の歌う春の訪れは、人間にとっても最も自然に喜びを感じられる時だ。

年中行事の筆頭に据えるべき立春の祭典を、子子孫孫忘れてはいけないと思う。


©️甲士三郎