鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

163 楽土の残照

2020-10-15 13:21:00 | 日記

今週はやや曇り日が多かったが、陽光が穏やかに降り注ぐ日には気象変動で短くなってしまった秋を満喫しに外出したい。

光族の精霊が舞うような野辺に遊行して、詩に画に存分没入するのが隠者の本然という物だ。


夢幻を記録してくれる例の古式写真機を持って我が楽土をうろつけば、いつしかミューズの天啓も降りてこよう。

上の写真でも隠者の幻視した光が、100年前のレンズによってうまく写り込んでくれた。

隠者はものぐさなのでデジカメの場合も「JPEG撮って出し」で、PCでの編集加工はほとんどしていない。


光の精と戯れる時間は刹那に過ぎ去り、谷戸の陽は早くも山に陰ってしまった。

下の写真の青影は昔のタングステンフィルムの効果を使っている。


さて忘れないうちに句歌の草案をメモし、そろそろ帰り支度だ。

私の句歌の仕上げはカフェや家でお茶を飲みながらゆっくりやるのが習慣で、それもまた楽しみな時間となっている。


まことに秋の日は釣瓶落しで、帰路は少し薄めの夕焼けとなった。


SNSなどの息を飲むような大自然の夕焼け写真と比べればこの程度では月並に思われるだろうが、歳を重ねると日常の普通の夕焼けにこそ哀愁を感じるものだ。

そんな身辺の些細な自然の愛おしさが、行く秋には一際身に沁みる。


ーーー行く秋の光を庭に囚へむと 垣を繕ふ楽しき愚行ーーー


©️甲士三郎